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準・メルクルと小菅優の水戸室内管弦楽団定期公演 [国内クラシックコンサート・レビュー]

「水戸室定期を水戸芸術館で聴く」ことにこだわり始めて、今回で3回目の体験。特に前回の年初の公演は、首都圏記録的な大雪でご存知のように大変な目にあった。

そうまでしても水戸まで出向くその魅力.....それは、やはり上質な室内楽を、音響の素晴しい専用室内楽ホールで聴く、という、そのシチュエーション、その瞬間を経験したいことにある。

前回の日記で書いたが、室内楽を聴くにはそれに適したホールの容積というのがあって、広すぎればその空間を音で埋めることが難しくて、音が散るような感じになってしまうし、狭すぎれば壁からの反射音を、減衰を十分に経ないで受けるので、響きに音像が埋もれる感じで、聴いててぼやけた感じになる。

音数の少ない音源と、ホールの容積.....水戸芸術館のホールは、ちょうどそのうまい塩梅の空間の佇まいという感じで、もうそれだけで音響が素晴しく感じてしまう先入観を抱いてしまう魅力があるのだ。

響き具合もちょっとライブな感覚で、座席位置はそんなに経験していないけど、いままで聴いた印象では帯域バランスもニュートラル。弦などの中高域の音色も妖艶だし、低弦の分厚さ、打楽器などの衝撃音の炸裂感など申し分なし。上下において聴こえてくる聴感バランスがいい。

なによりも、その最大の魅力は、普通の室内楽ホールというのは、都内で言えば大ホールの付属施設のような感じでいっしょに併設されているのに対し、この水戸芸術館は、室内楽ホールだけで、独立して単独でその存在を主張しているところだと思う。これがすごい素敵だ。

また水戸室のメンバーもサイトウキネンのメンバーなどを中心に編成された特別な感がある。それを小澤征爾さんが率いる。箱(ホール)と楽団の両方の魅力を兼ね備えたやっぱり特別な存在だと思う。つくづく故人・吉田秀和さんの先を見据えた指針、偉業に敬服する。

今回は、指揮者に準・メルクル、そしてソリストに小菅優を迎えての第87回定期公演。吉田秀和さん生誕100年を祝う記念コンサートでもある。


今回の私の座席

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まず準・メルクル。水戸室定期で最多登板で、水戸室の次期音楽監督の呼び声も。じつは私は、あまり彼の公演を観た回数が少なくて、ほんの数回程度。つい最近では横浜みなとみらいで、N響のサン=サーンスの3番オルガン付きをオルガン下のP席で観た。だから彼の指揮振りがよく観れた。現在、フランス・リヨンを拠点として活動しているようで、サン=サンーンスなどのフランス音楽をさかんに取り上げている。

いままでの公演を観ていて思うのだが、彼の指揮振りというのはすごい見ていてわかりやすい。曲の流れ、旋律に応じてそれに呼応するように、左手と棒をうまく使う。よく指揮者によっては、その棒の振り方で独特なものがあり、見ていて必ずしも曲の流れと合っているか、というとそうでもなく、やはり指揮者独自のリズム、解釈のもとで振られている、ことが多い。

でも準・メルクルは、すごい流暢というか綺麗な指揮振りで、棒を振るタイミングと左手の動きが曲の旋律に合っているのだ。観ていてシャキとするというかキビキビした感じで振るので、それが曲の進行によく合っていて素人の私が観ていてもすごくわかりやすい。たぶん演奏者の立場からすると、ずいぶん演奏しやすい指揮者じゃないかなぁと思うのだ。

指揮振りが流麗な指揮者ですぐに思いつくのはカラヤン。すごいカッコいいというか美しい指揮振りだ。カラヤンほどでなくても準・メルクルの指揮振りを見ると、その共通した美学というか、類似した指揮者の態様というのを感じてしまう。なんか歩き方や振る舞い方も颯爽としている感じで、とても印象がいい素晴しい指揮者だと思う。

そして小菅優。吉田秀和さんに絶賛され、小澤さんからの信望も厚い本当に素晴しいピアニスト。ちょっと肉感的で、個性的なルックスだけどじつは私は大ファン。(笑) いま欧州在住だが、彼女の来日公演はなるべく足を運ぶようにしている。なんと言ってもその最大の魅力は、ゴムまりのように弾ける鍵盤さばきと、そのダイナミックあふれる演奏能力の高さだろう。オーディオマニアの私にとってピアノの打鍵による響きにはこだわりがある。コロコロ転がす音色ではなく、一音一音に質量感がないとだめなのだ。そんな欲求を満たしてくれる数少ないピアニストなのだ。コンクール歴はなく、演奏活動のみで国際的な舞台まで登りつめたピアニスト。

その演奏能力を高く評する演奏家や評論家は多い。

小澤/水戸室と彼女とのメンデルスゾーンのピアノ協奏曲のBDをもう何回繰り返して観たことだろうか?まだまだ若いし、これからが楽しみなピアニストで応援していきたい、と思う。

まず今日不思議だったのは、開場になってホールの中に入ったら照明が消されて薄暗いのだ。開演近くになっても一向に照明がつかない。そしていよいよ楽団員登場で、薄暗いまま1曲目の演奏が始まる。帰りの電車の中で、パンフレットを見てようやくわかった。

先日亡くなられた潮田益子さんの死を悼み、演奏されたのだ。照明が消されているのもそういうことだった。モーツァルトのディヴェルティメント 第2楽章だった。心からご冥福をお祈りします。

そして本編、まず細川俊夫さんの室内オーケストラのための〈開花 II〉。日本初演だそうである。準・メルクルは細川さんの曲を世界の各オーケストラと競演してプロモートしているそうで、今回の水戸室との演奏もそういうお互いの信頼関係の中で生まれたもの。

準・メルクルが細川さんの音楽を称して、音が鳴っている状態と無音の状態との境界、いわば「静寂」の探求にある、と言っているのも頷ける感じだった。本当の静寂な微音から始まって、突然張り裂けるような炸裂音、などのその極端な音の展開の連続に、現代音楽で日本美の極致を表現するとこのような感じになるのだろうか、という感じ。とても神秘的だった。武満さん亡き後、まさに日本のクラシック作曲家を背負って立っている感のある細川先生、応援し続けたい。

そして小菅優を迎えてのベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番。この曲は今年のRCO来日公演でも聴く予定で、目下勉強中。ベートーヴェンのコンチェルトと言えば、4番、5番なのだが(4番が1番好き!)、今回のこの3番を何回も予習、そして今回の本番で聴くようになってじつに素晴らしい曲だということがわかった。4番、5番に負けないくらい素敵な曲だ。

ハ短調という調性で書かれた曲で、この調性でベートーヴェンが書くというのは、彼にとって特別な意味があるという。まず衝撃だったのが、第1楽章のカデンツァ。じつに華麗で魅せる、という感があって、この瞬間周りは息を呑んでいたように思う。第2楽章は、まさに至極の美しさ。途中で魅せる木管楽器との掛け合いの美しさなど申し分ない。

そして第3楽章、まさに共通主題の旋律が、これでもか、という感じで現れ、最高潮に盛り上がる。ちょっとタメを作って陰影の深さを魅せつけたと思ったら、続いて躍動感溢れる鍵盤さばき、まさしく私が一番こだわっている一音一音の質量感の真骨頂だ。本当に素晴らしかった。この曲はホントに素敵だと思う!

最後は、シューベルト:交響曲 第8番(グレート)。もともと大編成のオケが演奏する演目だが、それを小編成の水戸室の演奏で聴くとどのように聴こえるのか?そこに最大の聴きどころのようだった。もともと明瞭な展開らしい展開がなく、正直あまり得意な曲ではなかったが、ずばり小編成でありながら、凄い音の迫力で圧倒されてしまった。でも実はどこかその聴こえ方の美しさに違和感があった。

水戸室の弦は素晴らしく美しい。たぶん世界トップクラスのレベルだと思う。今日も聴いていて、弦の発音がふわっと浮かび上がってくる感じで音色に潤い感があってしかも分厚い。聴いていて、いやぁ~美しいなぁ、素晴らしい!と絶賛だった。それに合わせるように奏でられる木管も色艶のあるしっとり感があって、じつに美しい。

ところがそこに被せられる金管の大咆哮が、そのデリカシーをぶち壊してしまう感がある。

左奥にいる8人。(笑)この曲の構成とは言え、また小編成でありながら、大編成の曲をカバーするという宿命なのか、そこに違和感があった。確かに大編成オケに負けない迫力があって、今回の試みは大成功なのかもしれないけど、水戸室の魅力の本質をアピールするなら、こういう大仕掛けの曲ではなくて、やはり小規模な曲で弦中心のほうが彼らの魅力を引き出してとても美しいと思う。(好みの問題でしょうけど)


さすが最高技術集団だけあって、確かに見事な迫力ある演奏で、フルオケに負けないだけの凄さがあって本当に素晴らしいとしか言いようがない、それには全く異存はない。でもそこに自分的には引っ掛かりがあった。やっぱり小編成で音数の少ないばらけ感、ほぐれ感に秀でた隙間空間のある音楽を奏でるほうが、水戸室は美しい、と感じてしまうのは、自分が保守的だからだろうか。


今回の水戸公演も素晴らしい演奏に出会えた。やっぱり在京楽団の定期公演では味わえない一種独特の雰囲気を味わるのが醍醐味。じつは次回の10月の水戸室定期公演もチケットはもう手配済み。抜かりはないのだ。(笑)でも本命は来年1月にある小澤さんが振る予定の水戸室定期。今夏に、かねてからの3年越しの夢であるサイトウキネンを振る小澤さんを松本で観る、という夢が実現できそうだ。.....と同時に、水戸室を振る小澤さんを水戸で観たい、という夢が新たに湧きあがっていることも確かなのだ。

水戸室内管弦楽団 第87回定期演奏会
2013/7/7 14:00~ 
水戸芸術館コンサートホールATM

指揮:準・メルクル
ピアノ:小菅 優

潮田益子さんを偲んで~
モーツァルト デヴェルティメント ニ長調K.136(125a)より第2楽章

細川俊夫:室内オーケストラのための〈開花 II〉 (日本初演)
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37
シューベルト:交響曲 第8番 ハ長調 D944〈グレイト〉


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コメント 2

emi

はじめまして。

同じプログラムを先日サントリーホールで聴いてまいりました。東京公演では、モーツァルトのディヴェルティメントのみ、小澤征爾さんが指揮をされました。

私も念願叶って、「サイトウキネンを振る小澤さんを松本で観る」が実現しそうです。

今日、こちらのブログを知りました。少しずつ遡って読ませていただきたいと思っております。

by emi (2013-07-12 11:52) 

ノンノン

emiさん

はじめまして。コメントありがとうございます。
サントリー東京公演にいらしていたのですね!私も他の方の日記で小澤さんの指揮を知りました。なんとサイトウキネンも今年はじめて体験されるとのこと、似た者同士ですねぇ。(笑)

どうぞ遡って日記をご覧ください。私は海外にもクラシックコンサート鑑賞に出かけるほど物好きで、その模様ももれなく書いてありますのでお楽しみくださいませ!
by ノンノン (2013-07-13 23:42) 

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