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宮田大「チェロ一會集」 [ディスク・レビュー]

宮田大くんの2'ndアルバムを聴いた。大くんがCDを出していることすら、全く知らなかったくらいだから(笑)、大変楽しませてもらった。


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宮田大「チェロ一會集」


デビューアルバムは、まだ聴いていないのだが、この2'ndアルバムを聴く限り、誰か仕掛け人がいるのかもしれないが、演奏曲目の選び方が知的というか折り目正しい印象を受ける。

フランク・ソナタ、そしてラヴェル、フォーレ、黛敏郎、そして尾高尚忠という選曲。チェロという人の耳にやさしい音域で紡がれる音楽作品集としては、とても珠玉の作品集のように思えるほど、よく出来ている組み合わせだと思う。

大くんの売り出し方にもよると思うが、要はヘビーなスタンダードな大曲で構成する一般的な方法ではなくて、もっと小作品、あるいは有名な楽曲の一番いい楽章部分の旋律だけを取り上げるなど、アルバム全体が誰でも入りやすい親しみやすい旋律の小作品の集まりで構成されるシンプルさがある。こういう構成って、いかにも大くんのイメージにぴったりだと思う。

国際コンクールで名を馳せた演奏者の売り出し方としては、自分の記憶に間違いがなければ、神尾真由子さんもそういう感じだったような記憶がある。

とにかくアルバム全体が、とても癒し系で美しい小作品の集まりで、聴いていてとてもうっとりする。

そして、そのチェロの音色のなんと美しいことか!チェロの音域、音色って、人の脳のアルファ波をふんだんに出し尽くすような癒しの帯域なのだとつくづく思う。緑の中の自然の中のイメージが良く似合う。

特に最初のフランクのチェロソナタ。このヴァイオリン・バージョンのほうは、アラベラ嬢のアルバムで、もう散々聴き尽くした感のある曲なのだが、これのチェロ・ヴァージョンというのも、いやはやこれまたじつにいい。

元々この曲はチェロで書かれたのが最初らしいのだが、本当にため息が出るほど美しい。そして5トラック目のラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。この曲が、私はこのアルバムの中で1番好き。

涙腺を刺激するような甘い旋律だ。

録音のテイストもじつに素晴らしい。空気感たっぷりの広い空間がはっきり分かる素晴らしさで、教会ばりの豊潤な響き。チェロの音色が青天井でストレスフリーな感覚で上下に伸びきるさまはオーディオマニア心をかなりくすぐる。録音レベルはかなり高い。

私は聴いたことがなかったのだが、N&Fレーベルの作品で、元フィリップス系の録音エンジニアの福井氏とプロデューサーの西脇氏が立ち上げた会社(NとFはお二人の頭文字)のようで、ガラスCDを世界で最初にリリースしたレーベルだそうである。

この録音を聴いた限りでは、かなり優秀な録音スタッフであることも納得できる。

またSACDにも対応していて、サラウンド5.0chにも対応しているから嬉しい限りだ。

三鷹市芸術文化センター「風のホール」での収録のようで、空席でのセッション録音と思われるような豊潤な響きと空間の広さは圧巻だ。

宮田大くんといえば、もちろんロストロポーヴィチ国際コンクールで優勝して一躍時の人だった頃から知っている。

そのときのパリのサル・プレイエルでの演奏姿も拝見したし、NHKでもドキュメンタリー番組を組まれたりしてしっかりと録画して観ていた。いまは水戸室のメンバー(サイトウキネンもかな?)で演奏で接する機会も多く、ずっと応援してきている人だ。

そんな中でも忘れられない公演がある。

小澤さんが癌療養から復帰間もないころ、公演のスケジュールはどんどん組まれるのだけれど、体調不良でドタキャンが多く、いくら小澤さんとはいえ、ファンからのバッシングも多かった時期だった。

水戸室のサントリーホールでの東京公演に行った。この公演で大くんはソリスト独奏で登場していた。

このとき、2階席中央の前方で観ていたのだが、左隣の席にゴローさんがいた。他にも右横に、omiさんとgfyさんがいた記憶がある。そのとき、ゴローさんは、「今年の6月にエム5さんを連れて、ヨーロッパの三大ホールに行くんだよ」と嬉しそうにネタバレしていたのを思いだす。(笑)

その公演は、モーツァルトのディヴェルティメント、ハイドンのチェロ協奏曲第1番、そしてメインが、モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」 だった。

普通は休憩後にメインにハフナーを持ってくるのが普通のメニュー。現に水戸芸術館では、小澤さんはこのハフナーをメインで振っている。

ところがこの日の東京公演は、天皇皇后両陛下の天覧コンサートであった。この大切な日に小澤さんは、ハフナーではなくて、当時若干20歳の宮田大くん独奏のハイドンのチェロ協奏曲第1番をトリに持ってくる変更で、皇族観覧の晴れ舞台に、あえて大くんとの演奏を選んだことに、親心というか心意気を感じたものだった。

演奏はもちろん素晴らしかった。

最終楽章のエンディング、全体的に一気にテンポアップして盛り上がっていくところで、小澤さん、床面をドンと踏みつける、まさしく広上淳一ばりのアクションで怒涛のフィナーレ。

思わず背筋がゾクっとしてしまうほどの感動。

そして大歓声と大拍手。

驚いたのは、ご覧になっていた天皇皇后両陛下がその直後に誰よりも率先して立ち上がりになられ、スタンディングオーベーションで拍手。

それを見て誘われるかのように次々と観客が立ち上がり、ついにはホール全体の観客が全員スタンディングオーベーションで讃えたことだった。

この瞬間、私は感動のあまり胸にぐっと来るものがあって、目頭が熱くなってしまったのを覚えている。

小澤さんは全方位に挨拶して、特に天皇皇后両陛下の方には何回も会釈をなされていた。
まさに演奏家と会場の観客がひとつになった瞬間だと思った。

大くんと言えば、そんな熱い想いがいまでも忘れられない。

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