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PENTATONEの新譜:アラベラ・美歩・シュタインバッハー&スイス・ロマンド管のコンチェルト [ディスク・レビュー]

来日コンサートの前にどうしても入手したく、PENTATONEのWEBショップで購入した。そうすると5日も経たないうちに到着。スゴイ誠意ある対応。彼らのHPで直接購入すると、日本の代理店の正式リリースよりも圧倒的に早く入手できる。

いざ届いてみると身震いした!

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輸入盤であるが、国内盤のほうも、日本語解説が読みたいので、別途購入。(笑)こちらは正式リリースを待つことにする。

メンデルスゾーン&チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。

まさに定番中の定番の名曲で、ヴァイオリン奏者にとっては、勝負曲とも言える。

表現は下品であるが、いわゆる耳タコ名曲であるこの2曲に対しては、名演と呼ばれるものはどうしても肉食系サウンドというイメージが強い。でもアラベラ嬢のこのアルバムの印象は、真逆のゆったりした草食系サウンドというイメージ....が自分の第1印象であった。全体としてゆっくりめのテンポで女性らしいしなやかな雰囲気が匂い立つような感じで弾ききっている。録音レベルは幾分低めで、マイクが比較的遠くに感じる。ホール感は抜群にある。

結論から言うと、素晴らしい録音、いかにも彼女のイメージに合った素晴らしい作品に出来上がっていて、自分としては本当に安堵で胸をなでおろした。(本当に心臓に悪い。(笑)これで凡録音だったらどうしよう~とか心配だったりしたわけです。)

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女性ヴァイオリニストは、本当にいろいろなタイプがいて、ムターやキョンファに代表されるような、いわゆる女王と呼ばれるタイプは、演奏も力感溢れるダイナミックなもので、その弦の音色もいわゆる色気、エロさなどの妖艶な香りが漂う。

でもアラベラ嬢はそういうタイプとは全く違う、と思う。

体格もかなりきゃしゃな感じで、女性というよりは女の子という感じに近い。”高音質マイナーレーベルのマドンナ”、というイメージにぴったり合うような、いわゆるコンパクトな感じで、レーベルの彼女のイメージ戦略はすごく上手、と感じるところがある。日本人の血が半分入っていて、ちょっとエキゾティックな風貌で、それでいてコンパクトでクールな絵柄で通す格好よさがある、そういうイメージ戦略がレーベルのイメージとすごくマッチしていて、じつに上手なプロデュースだなぁと思うのである。

なので、いわゆる、そういう”コンパクト”な格好よさに相応なサイズの演奏、いかにも彼女らしい演奏という感じがしたのである。

腕の力やボーイングなどのダイナミックさでは強いとは言えないかもしれないけれど、彼女のサイズに合った相応の力感、迫力というのは、感じれとれたのである。

彼女は新人ではなく、じつはORFEO時代からPENTATONEに至るまで、多数のアルバムをリリースしているのだが、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲を出したあたり(PENTATONEのジャケットが新しくなったタイミング)からの彼女の急な躍進ぶりは本当に驚くばかり。本当に昔と比べて驚くほど垢抜けた。レーベルも全面的にプッシュしている。

今回のパッケージの作りは、おそらく過去最高と呼べるくらい丁寧で豪華な仕上げになっている。彼女の今回のこの2曲を録音することに対する決意の言葉が記載されていたりする。こういう丁寧な真心のこもった仕上げが、また購入者であるファンの心を掴む。決してハイレゾのようなストリーミングやファイル形式の音楽スタイルでは、その誠意は伝わらないだろうと思う。

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ドイツ・ロマン派音楽を代表する名作である、いわゆる「メン・コン」。その哀愁漂う第1楽章の主題での彼女の音色は、かなり泣きの旋律というか、本当に泣いているような哀愁感が漂っていた。

いままでオーディオで聴く彼女の弦の音色というのは、どちらかというとドライというか乾燥質な感じで、もう少し潤いが欲しいなぁ、と感じていたことも事実。でも去年のトッパンホールはじめリサイタルで生演奏を聴いたとき、発音の瞬間、ふっと浮かび上がるような感じがして潤いがあってとても美しいと感じた。だから自分のオーディオ再生能力のせいだと思っていた。

でも今回はホールでのセッション録音という録音の綾もあるのかもしれないが、弦の色艶、光沢感が以前と比べてずいぶん際立つように感じて正直嬉しかった。

全体を通して、テンポは幾分ゆったりめに感じて、情感たっぷりに弾いているのがとても印象的。そうかと思えば第3楽章で聴けるような軽やかに弾むようなスタッカートのような旋律を見事に弾いて、これがまた彼女の持っている華やかな雰囲気にぴったりで、この曲での最高潮の盛り上がりの聴きどころとも思えて、この1曲だけでもいろいろな表情を見せてくれる。

そして2曲目のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。こちらは第3楽章に代表されるように、聴いていてドキドキするくらいの疾走感が大切。彼女の持てる技術すべてを惜しみなく披露するかのように、この疾走感はものの見事に実現されていて爽快そのものだ。

この曲となると、どうしてもこのPENTATONEでの先輩のマドンナであるユリア・フィッシャー盤を取り上げないわけにはいくまい。

アラベラ嬢が目立つようになってきたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲の頃から、どうしてもこの初代マドンナのユリアの録音と比較することが多い。

ユリア盤とアラベラ盤を比較すると、録音スタッフは同じであるが、録音のテイストがかなり違う。

ユリア盤は、どちらかというとかなりオーディオ的快楽を強調したような過度な味付けの録音で、部屋中に音が回って、聴いていてかなり快感がある。録音レベルもすごい高い。いわゆるオーディオオフ会向きの録音。でもアラベラ盤は、もう少し落ち着いたテイストで、いわゆる化粧を施していない素録りのようなシンプルさがある。

悪い表現で言うと、ユリア盤と比較して、ちょっと地味に感じてしまう。

今回のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲でもまったく同じような印象で、ユリア盤は録音レベルがかなり高くて、音場感がスゴクて部屋中に音が回る感覚がある。クレジットを見るとモスクワでのスタジオ録音のようなので、やはり意図的な編集段階で調理をしているのかもしれない。

それに対して、今回のアラベラ盤は比較すると録音レベルがかなり低くて、オフマイク気味に聴こえる。(ちょっとワンポイント気味?)音の躍動感からすると圧倒的にユリア盤のほうがスゴイ。たぶんオーディオファンの方々からするとユリア盤のほうがいい、という人が多いんじゃないかなぁ、と思う。

でもアラベラ盤は、もっとホールでの素録りの感覚があって、ホール感、つまり聴いていてホールの空間がはっきりわかるので、いわゆる生演奏を聴いている感じに近くて、自分はこちらのほうがナチュラルな自然な録音のように思える。

知ったようなことを書くな、と言われそうだが(笑)、PENTATONEの中で、ユリア・サウンドとアラベラ・サウンドは意図的に違う音作りをしている方針なのでは?と思ったりする。(同じ路線じゃ2番煎じで面白くない)

今回のアラベラ盤は、特にアラベラ嬢がずっとヴァイオリンの独奏をしていて、そこからオケの合奏が入ると、その瞬間ぐっと沈み込みを感じるくらい奥行き、深さなどの空間を感じる。さらに目の前にオケの楽器群の配置通りに定位している感じがしてすごく素晴らしい。自分はこのアラベラ盤を聴いて、ここの部分がかなり快感ですごく気持ちがイイです。(笑)(あくまでマルチチャンネルで聴いている感想です。)

そしてオケの合奏のときの定位感抜群の重厚なサウンド。スイス・ロマンド管の卓越した演奏能力が垣間見れるようだ(結構揃った感覚で厚みのある弦サウンドですね)。

ホールの空間がはっきり認識できるので、このヴィクトリア・ホールのホールトーン(ホール固有の響き)もなんとなく想像できる。結構ライブな空間だったりする、と思う。

こういう空間表現力をしっかり収録できているポリヒムニア・スタッフの優秀さも相変わらず敬意を表明する。

まぁ、聴く人によって好みはいろいろ違うと思うが、自分は、今回のこのアラベラ録音は、とてもコンパクトな彼女らしい相応の演奏で素晴らしいと思ったし、なによりもホールで実際聴いているようなナチュラルな自然感が優れていて、大変素晴らしい録音であると感じた。最初1発目に聴いて心ときめくというより何回も聴きこんでいくことでその良さが十二分にわかってくるという、そんな録音ではないだろうか。

パッケージの作りも丁寧で手が込んでいて、おそらくPENTATONEが今年リリースするアルバムの中で最高作品で、最高のセールスアピールになる作品なのだと思う。

6/3からスタートするアラベラ様狂騒曲のはじまりのような予感がする。



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