So-net無料ブログ作成

PENTATONEの新譜:パーヴォ・ヤルヴィ&ロシア・ナショナル管のショスターコヴィチ交響曲第7番「レニングラード」 [ディスク・レビュー]

来年で生誕110年を迎えるソ連の作曲家ショスタコーヴィチの交響曲全集の企画が各レーベルで目白押しだ。

ショスターコヴィチ(通称ショスタコ)は20世紀のソ連時代の作曲家であり、そういう意味では現代音楽作曲家といえるのだろうが、20世紀音楽の代表である「現代音楽」と比較すると、その作品は割と分かりやすく、人々に受け入れられやすい要素が多い。

彼の作品集は、なんといっても15曲の交響曲と15曲の弦楽四重奏曲が有名で、あとは6曲の協奏曲、オペラ、映画音楽やバレエ音楽とその組曲、器楽曲等々、かなりの数にのぼる、いわゆる大作曲家の部類に入る。まさにシベリウス、プロコフィエフと共に、マーラー以降の最大の交響曲作曲家としての評価が確立されていて、特に交響曲の大家というイメージが強いのではないだろうか。

当初、ソ連体制に迎合したプロパガンダ作曲家というイメージで語られていたが、じつは、自らの告白によりショスタコーヴィチは皮肉や反体制といった隠れた強い志の持ち主であることも分かった。

芸術にとって当り前なことが保障されない体制、自由に作品を書くことが許されないソ連という特殊な環境で、作品を書いていかないといけない、そういうところに彼の心の葛藤があったのだと思う。

彼の作品(とりわけ交響曲)の作風は、一言で言えば”暗い”ということになってしまうが、ただその旋律は、社会主義体制に感化された負の雰囲気がある以上に、勇み良さというか、行進曲的な躍動感に満ち溢れていて、それが妙にマッチしていてスゴク格好良く感じる。

ちょっと不思議な謎めいたところがあって、単純ではない魅力がある。いわゆる長調的な明るい曲ではなく、ちょっと斜に構えた格好よさとも言えるところ。

特にそのコード進行は、一般の音楽ファンよりも、オーディオファンの心をほうをぐっとくすぐるような、いわゆるオフ会でかけるソフトとして音冥利に尽きる、そんなセンスの良さを自分は感じる。

自分は、マーラーの交響曲と並んで、このショスタコの交響曲が大好きである。
日本ではマーラーほど人気はないけれど、いつかブレークしてほしいな、と思っている作曲家で、この近年のショスタコのセレブレート・イヤーで盛り上がってほしいな、と思っている。

そんな中で、最近購入したショスタコの交響曲第7番「レニングラード」。PENTATONEの新譜。
 
897[1].jpg
 

交響曲第7番『レニングラード』 パーヴォ・ヤルヴィ&ロシア・ナショナル管弦楽団

http://goo.gl/uplwbC

PENTATONEは、じつは数年前から、「ロシアプロジェクト」と称して、ロシア・ナショナル管弦楽団とともに、このショスタコの交響曲全集の作成に取り組んでいる。ロシア・ナショナル管は、ベルリン放送響、スイス・ロマンド管と並んでPENTATONEの専属の看板オケである。

ポリヒムニアからはエルド・グロード氏がこのロシアプロジェクトの最高責任者として、現地に趣き、収録をおこなっている。

エルド・グロード氏 

erdo[1].jpg
 

そしてオケのシェフは、いまもっとも人気者で超多忙なパーヴォ・ヤルヴィ氏。

これは期待するな、というほうが無理な(笑)楽しみな作品であった。

収録場所は、モスクワ音楽院大ホール。
(ポリヒムニアのFBページから拝借してまいりました。そのときの録音セッションの収録の様子。)

25940505_2143903621_242large[1].jpg



そして下の写真がモスクワのDZZスタジオ5というところで、彼らはコントロールルームをセッティングして、そこで収録した音源をミックスして編集、確認している。彼らが自分たちの機材を持ち込んでセッティングしているのだ。N803が5本並んでいる。(こちらもポリヒムニアのFBページから拝借してまいりました。プレトニョフ&ロシア・ナショナル管のチャイコフスキー交響曲全集のときの収録の様子の写真のようです。この全集の大半は、このスタジオで収録されたようです。)

25940505_2143903619_244large[1].jpg




彼らは、やはり世界中のホールに出向いて収録することが多いので、このように出張キットというシステムをきちんと何種類も持っているのだ。5本のSPをはじめ、マイク、調整卓などこれらのキットを出張用として現地のホールに持ち込んで、スタジオにセッティングする。 その場で簡単なミキシングで確認したりするが、本格なミックスは、アムス郊外のバーンにある彼らのスタジオでおこなう。(以前この日記で、写真を紹介しました。)

そんな期待の作品を聴く。大編成のオケを聴くのは久しぶりだ。
7番「レニングラード」は、ショスタコの交響曲の中では、5番につぐ人気曲。
進撃してくるドイツ軍に対して、それを迎え撃つ国民の英雄的な姿、そして勝利への叫びが表現されている曲。

もっとも旬な人、パーヴォ・ヤルヴィのもと、演奏としての造形の彫の深さというか、完璧なまでに、彼のもとに統率のとれた演奏は見事というしかない。


サウンド的にも、いきなり冒頭の弦のユニゾンの出音を聴いて、思わずにんまり。
抜群の弦セクションの音の厚み、と抜群のホール感というか空間の存在。
やっぱり虜になる録音は、この最初の出音でピンと来てしまう。

アラベラ様の最近の新譜も、このエルド氏の作品なのだが、やはり共通したテイストがあるのがわかる。とにかくホール感が素晴らしいのだ。楽器群の位置関係も団子状態にならず、綺麗に分離してその位置関係が曇りなく見渡せる、そういう空間情報がきちんと立体的に余すことなく収録されているのだ。 


センターにぐっと凝縮感があって そこからエネルギーが炸裂・拡散していくようなストリングス(弦楽器セクション)を録音・再生すること、 そんな課題を持ってオーディオに取り組んでいるといくつかわかることがある。

先ず録音に関しては、センターまで厚みのあるように弦楽セクションを捉えることは別に難しいことではないと思うのだが、そうすると 今度は奥行きも出しにくくなってしまい全体に拡がりの無いモノラルっぽい、いわゆる分離の悪いオーケストラ録音となる。

センター付近で密集する弦楽器のパワーを出そうとすると奥にいる木管楽器が埋もれてしまうというバランスの悪さは いかんともしがたい。

されど補助マイクで 木管楽器をレベルアップすれば 音場がどんどん平面的になってしまうのである。 結局 弦楽器セクションのサウンドは、センターを薄くして 左右に開き、木管楽器を 補助マイクのレベルをあまり上げずして 浮かび上がらせる方が聴いていて気持ちが良いのだ。

メジャー・レーベルの優秀なオーケストラ録音というのはおよそ そういう風に出来ている。

そこには、2chステレオによるオーケストラ録音・再生の約束事というか限界があるのだ。 


自分が 5.0サラウンドの録音・再生に求めている、拘っているのは、その壁を超えたものがあるからだ。上記に書いたような制約をいちいち考える必要はなく、収録マイクの本数の増加、設定次第で滞りなく、その空間情報、位置関係を表現することが容易いのだ。捉える情報量も格段に多いし。マスターからユーザに届け送る部分を高解像度フォーマットにしても限界があるのだ。元の部分が大きなウェイトを占めるように思っている。


だから自分はこのホールの空間とオケの位置関係の構成を十分に表現できている、というのは自分にとってオーケストラの優秀録音としての1番のポイントなのである。

サウンド的には、PENTATONEらしい、少し柔らかい質感で、大音量と音の洪水ともいえる第1楽章も,
ものの見事に表現できている。

普段、室内楽を聴くことが多い自分にとって、久しぶりに聴く大編成もののオケのサウンドで、音の厚みがあって、しかもスケール感が広大でじつに気持ちがイイと思った録音だった。



このショスタコの交響曲の録音で、やっぱり取り上げないといけないのはRCO Liveの作品。
7番で言えば、ヤンソンス&RCOのこの作品。 
415[1].jpg
 

交響曲第7番『レニングラード』 ヤンソンス&コンセルトへボウ管

http://goo.gl/XkV9F0


RCO Liveなので、もちろんポリヒムニアの収録。
誰がやっているのか、クレジットを見ると、エベレット・ポーター氏であった。
ちょっと意地悪テストをやるわけではないけれど、エルド氏の作品と聴き比べをしてみた。

音場の広さ、全体にふわあっと広がる空気感、響きの豊富さでは、RCO Liveのほうがある。はっきりと区別がつく。またRCO Liveのほうが、幾分柔らかい質感である。

これは収録技術によるものではなく、収録しているホールによるものと自分は判断した。
RCO Liveはもちろんアムステルダム・コンセルトヘボウで収録している訳であって、ここで収録してその空間、アンビエンスを捉えるとなると、そこのホールの音響特性からして、モスクワ音楽院大ホールよりも響きが豊富で暖色系の柔らかい音色であることが原因でそういう違いが出るのだと思う。

ポリヒムニアは、きちんとその違いを収録できていている、という証でもある。

ゴローさん&エム5さんがポリヒムニアを訪問した時に、「あなた方のトーンポリシーはなんですか?」と彼らに聞いたときに、「その演奏されているコンサートホールのサウンドをそのまま表現できるようにすること。」と答えた、ということをいまでも覚えている。

そのホール固有の響きは、収録した時に、その情報はディスクの中にオケのサウンドといっしょに入っているのである。作り手側が作成した空間情報として。

だから、我々は、そのディスクの中の情報を万遍なく出し尽くしてやれば、部屋の中にそのホールの空間、響きが再現できるはずなのである。

ベルリンフィルハーモニー、ウィーンムジークフェライン、アムステルダム・コンセルトヘボウで収録されたディスクであれば、それぞれのディスクを再生したら、それぞれのホールの固有の響きが部屋に現れる。

部屋のルームチューニングなどで、その響きの音色を変えたらダメなのである。

このRCO Liveの録音との違いを聴いて、そんなことを思い出してしまった。

ショスタコの交響曲全集と言えば、もうひとつ忘れられない自分にとってのリファレンスなのが、ドミトリー・キタエンコ&ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 のSACD全集。

DSC03250.JPG



ショスタコーヴィチ:交響曲全集[SACD-Hybrid]

http://goo.gl/JKM3Z4

CAPRICCIOというちょっと変わったレーベルで、いまはもう存在しないで、全集も廃盤になっているのだが、アマゾンのマーケットプレイスだと、まだ新品を5個位入手できるみたいである。

これは、2004年ころの作品で、まだSACDサラウンドでの収録技術のノウハウなどがあまりなかった時代の録音とは思えないほどよく録れている。ケルンフィルハーモニーでのライブ録音や、スタジオでの録音が大半であるが、暗騒音がまったくしない、というかたぶん編集でカットしているものと思われるが、恐ろしくS/Nがよくてクリアな音にはびっくりする。

高さ、奥行きの深さも十分表現できている。そして何といっても彫が深いというか、エグイ音が堪らない。(笑)

PENTATONEが全集を完成するのも待ち遠しいが、このキタエンコのSACD全集も、入手できなくなる前に、ぜひ、みなさんに手に入れてほしい優秀録音だと思うのである。自分のサウンドを構築する上で音決めに使うヘビロテ(ヘビーローテーション)ソフトとして、リファレンスになる録音だと思います。


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。

Facebook コメント

トラックバック 0