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アリーナ・イブラギモヴァを聴く。 [ディスク・レビュー]

かねてより実演に接してみたいと思っている若手の女性ヴァイオリニストにアリーナ イブラギモヴァがいる。

去年の来日でイザイをやったとき時は所用があって、いけなかった。彼女は2005年あたりから日本で演奏するようになってくれて頻繁に来日してくれるので、日本でも高い人気を持っている。

自分にとってイブラギモヴァといえば、やっぱりバッハの無伴奏というイメージがある。
2005年の来日の時もこの曲の演奏で、火がついて、2009年のこの曲のCD発売で、ベストセラーになって一気に著名になった、そんな印象を持っている。

自分も、確か2011年の時に銀座王子ホールではじめて生演奏を体験したのであるが(確かにこのときバッハの無伴奏だったような....)、素晴らしく感動したこと、いまでも忘れられない。

時の人、という感じだったが、でも彼女の一連のCDを買って聴き込むというところまではいかなくて、そのままになっていたのだが、昨今の業界全般での彼女の評価が高くて、非常に気になる存在になってきた。

写真を見てもわかるように、フンイキがある、というか、”持っている”感覚がある。

結構自分のアンテナにビビッと来るものがあって、今年も来日してくれるようで、これを機会にちょっと嵌ってみようかな、とも思ったり。(笑)

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ロシア出身なのだが、幼少時にイギリスに家族とともに移住して、現在もイギリスを中心に活動している。

彼女の演奏会のプログラムというのが、普通の演奏家と違って、かなり特徴があって、それはいわゆる”全曲演奏会”(チクルス)にこだわっているところ。一回のツアーで、その作曲家を徹底的に掘り下げて完全克服していく、その姿勢は、芯がしっかりしているというか、結構骨のあるアーティストのように思える。

これまで、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・バルティータ全曲」、ベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ全曲」、イザイの「無伴奏ヴァイオリン全曲」など、これをツアーで完結してしまうのだからスゴイ。

その彼女が、その盟友のセドリック・ティベルギアンと組んで、今年2015年に、モーツァルトの「ヴァイオリン・ソナタ全曲」を開いてくれる。

東京銀座・王子ホールでの公演。2015年の10/1,2,3と、2016年3/24,25の2回に渡って完結する。

この王子ホールでのコンサートを聴くために、王子ホールの会員になったら(相変わらずこの手法(^^;;、会報が来て、今月は彼女とパートナーとのインタビュー特集がありました。作曲家に対する見解、ツィクルスに対する見解、ふくめ普段の考え方が垣間見れて興味深かったです。

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さらには、そのちょっと前の9月27日に自分が定期会員になっているミューザ川崎の東京交響楽団の名曲シリーズにもソリストとして登場する予定で、そこでモーツァルトのヴァイオリン協奏曲を披露する予定なのだ。

まさに今年はモーツァルトづくし。

自分は、このミューザ公演の日と王子ホールの10/1,10/2と3連荘で経験する予定。

10/3からヨーロッパに行くので、10/2はまさに羽田の近辺に前泊予定で、この日に彼女の公演を聴くということは、カートなどを事前に数日前にホテルに送って、裸一貫でコンサートを聴いて、そのままホテルに向かうということである。

まさに音楽三昧の日々。

彼女は、バロック音楽から現代曲までピリオド楽器とモダン楽器の両方で演奏する、そういう器用な面も持ち合わせている。

所属レーベルは、イギリスのハイぺリオン・レコード。

クラシック音楽を専門とするインディーズ・レーベル、つまりマイナーレーベルである。

彼女は、世界のいろいろなオケ、指揮者と数多くの共演をして世界中を回っているが、ディスコグラフィーはイギリスでの録音が圧倒的に多い。このハイぺリオン・レコードからの録音リリースと、あとウィグモア・ホールの自主制作レーベルのライブ録音の2本立てが彼女のアルバムの骨子になっている。

彼女の活動の基盤のひとつとして、イギリス ロンドンのウィグモアホールは欠かせない存在のようだ。

いまの自分にできること、そんな彼女の演奏、録音、そしてハイぺリオン・レコードのサウンドを確認してみたくて、一気に6枚も買い込んでみた。

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ハイぺリオン・レコードは、2chステレオ録音のCDが基本。

6枚全部を今日一日かけて聴いてみた感想は、概ね2chステレオ録音としては、いい録音の部類に入ると思う。

難を言えば、ちょっとバラつきがあるかな、という感じがあって、6枚中、バッハ、シマノフスキ、プロコフィエフの3枚は素晴らしい録音だと思う。2chとは思えないレンジの広さで、Vnの艶、光沢感やピアノの沈み込むような深い音色が美しくて、響きの余韻が伝わるその空間の存在がきちんと感じ取れる。拙宅の貧弱2chシステムでも。(笑)

CDを通して聴く彼女の演奏は、一見、非常にパワフルで男性的に思えるのだが、抑揚や感情の起伏の表現が豊かで、この部分はやはり女性奏者らしいな、と思うところで、しかも情緒的に熱く唄うような演奏スタイル。そんな印象。

彼女の弦の音色は非常に艶がある。使用楽器は、ゲオルク・フォン・オペルから貸与されたアンセルモ・ベローシィオ(c.1775年製)。

オーディオを通しても、その雰囲気の良さが伝わってくるアーティストだ。

では1枚ごとに聴いた順番にレビューしていこう。

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無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲(イザイ) イブラギモヴァ

http://goo.gl/KweXOn


彼女の最新アルバム。

イザイが、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」に影響され、一夜にしてスケッチを書き上げたとされる6つの無伴奏ソナタ。

イギリス、モンマス、ワイアストン・コンサート・ホールでのセッション録音。
 
最初聴いたときは、かなりオンマイクな録音で、そんなに心惹かれる録音には思えなかった。
コンサートホールでの録音なのに、その空間の広さの魅力を活かしていないように思えた。(というよりは、これは、もう個人の好みの問題ですね。自分は空間を認識できる録音が好きなので。他の人にとっては問題ないくらい素晴らしい録音だと思います。)

でも12トラックあたりから、グイグイ引き込まれるようになって、後半トラックになるほど魅力的な録音だということがわかる作品だと思います。

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無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(バッハ) イブラギモヴァ(2CD)

http://goo.gl/VHe6C9


イブラギモヴァの「無伴奏」と言えば、2009年のこのJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの発売。瞬く間に大ヒットとなり、来日公演でもたびたび演奏されてきただけに、彼女を一躍日本で有名にしたアルバムがこの作品。

この6枚だけに限らず、たぶん彼女の作品の中では、この作品が最高傑作だと思う。演奏、録音、双方において抜きんでている。抜群のホール感、空間。さっきのイザイとこんなに違うのはなぜだろう、と思うくらいバラつくというか違う。

2009年にロンドン、ヘンリー・ウッド・ホールでのセッション録音。

Vnの音色が、空間の中を響き、消えゆくさまが余韻があって美しい。ちょっとエコーかけてる?という気もするくらい。でも気持ちイイから許す。(笑)無伴奏だからVn1本の音色だけで、これだけ、美しいと思わせるのは素晴らしいの一言。

ちなみに同じバッハの無伴奏で大ベストセラーになったイザベル・ファウストのシングルレイヤーSACDよりも、ずっと、ずっと、遥かにこちらの録音のほうが素晴らしいです。(ファウスト・ファンには申し訳ない。あくまで自分の好みの見解です。)

シングルレイヤーSACD vs ただのCD なのに、こんなに圧倒的にイブラギモヴァのほうがいいと思うのは、やっぱり優秀録音って信号のフォーマットの優劣でなくて、収録時のその場のアンビエンスをいかにありのまま豊富に捉えるか、そしてその後の編集のテイスト、ここが分かれ目なのかな、とも思うことを確信。

ソースによっては、SACDよりもCDのほうが優秀録音のものが多々あったりするのも、そういうところに起因して、やみくもにスペック至上主義的な考え方は昔からオーディオ業界には根強いが、自分はそういう傾向に警笛を鳴らしたい。(現在のハイレゾのUSB-DACのスペック争いも似たようなことが言えて、1番自然に聴こえるパラメータってある程度わかっている訳であって、生演奏が基準である自分にとって、生演奏とあまりに乖離した音というのは、自分は受け入れられない。)

もちろんフォーマットも大事なファクターではあるけれど、いい録音と思うには、その頭の部分が大事だと思うのです。
自分の考え方ですが.....

彼女のアルバムを1枚というなら、ぜひこれをお勧めします。


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ヴァイオリン協奏曲集、序曲『フィンガルの洞窟』(メンデルスゾーン) 
イブラギモヴァ、V.ユロフスキー&エイジ・オブ・インライトゥメント管

http://goo.gl/dFv5hd


逆にバラつきの反対の作品がこれであった。
2011年、これもロンドン、ヘンリー・ウッド・ホールでのセッション録音。
オケの音が、かなり薄っぺらいというか痩せているというか、鳴っていない感じで、こりゃ録音悪いなーと思ったり。彼女の弦の音色も乾燥質で、いままでの艶がなくてどうしたの?という感じ。

心なしか、演奏自体もテンポ早めで、急いでいるの?という感じのせっかちなフレーズの運びな感じて、どうも違和感がある。なんでこの作品だけこんなに印象が悪いのだろう?とずっと疑問に思いつつ、この日記を書くために、なにげにHMVのページからリンクを貼ろうとしたとき、なにげに解説文を読んで、すべてが判明。

「モダン・アプローチ」と「ピリオド・アプローチ」の両方に精通するイブラギモヴァなのだが、今回のメンデルスゾーンは「ピリオド・アプローチ」だった!

すべてが納得できたような気がする。やっぱり自分はピリオド奏法、そしてピリオド楽器の音色が苦手だなぁ。オーディオ的、サウンド的に魅力を全く感じない。

ピリオド・アプローチっていわゆる当時の楽器、奏法で具現化しようという音楽面での創意工夫であって、自分のようなサウンドにこだわる人種にとってのメリット、受けはどうなのだろうなぁという想いはあります。

もちろんピリオド楽器、奏法の価値観というのは、そういう分野できちんと確立されていて、それを理解することもクラシックを聴いていくうえで、避けては通れないひとつのジャンルであることは疑わないが、もっと単純な観点から考えると、音楽って聴いていて気持ちがよいことが第一なんじゃない?というのがあると、あのノンビブラートな響きというか音痩せする音色は、自分はどうも苦手意識がある。

あと、mixiのマイミクさんから指摘があったのだが、イブラギモヴァ自身が、メンデルスゾーンのようなロマンティック路線の曲を弾くこと自体が、なんかイメージに合っていないというか、そういうところから来る不自然さもあるのではないだろうか。確かに他の5枚のジャンルからするとメンデルスゾーンだけ少し毛色が違う。でもこの問題は彼女がもっとキャリアを踏んでいけば、解決する問題だろうと思う。
 

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ヴァイオリン・ソナタ第2番、第5番『春』、第10番(ベートーヴェン)
イブラギモヴァ、ティベルギアン

http://goo.gl/zZLnSs


この作品は、ウィグモアホールで録音されたもの。イギリス、ロンドンにある席数530余の小規模コンサートホールである。クラシック音楽、中でも器楽・室内楽・声楽リサイタルの場として有名であり、その独特の優れた音響でも知られる。

レーベルも、ウィグモアホール・ライブという自主制作レーベルで出している。

RCO Liveと同じで、このウィグモアホールも自主制作レーベルとして、そのライブ録音を発売している訳である。

イギリスのコンサートホール事情からすると、これっといった魅力的なホールがすぐ思い浮かばないのが現状であるが(でも本番に向けて調べていくと魅力的なホールが必ずいっぱいあるはず。)、その中でもこのウィグモアホールはぜひ訪問してみたいホールのひとつ。

FBの友人が先月の6月にこのホールを訪問して写真をアップしていた。

外観の面構えは、なかなか雰囲気があってオシャレ。内装空間もモダンである。

だが、なんと床が赤い絨毯を敷き詰められているのだ!(^^;;

これはショック!!音楽ホールとして、?であるが、でも昔のホールだとそういう基本概念などなかった時代なのでしょうね。ピアノの音色が素晴らしく綺麗だったそうである。

さっそく聴いてみると、美音、S/Nがいいという類で、確かにピアノの音色がホントに綺麗。録音を通じてもはっきりわかる。

でも、どうも違和感がある。暗騒音というか空間の音がしないというか、観客の咳などはもちろん、そういう空気の音を編集で全くカットして演奏の音だけを抽出しているような違和感があって、なんか自然じゃない。なんか演奏の背景が無音という感じなのである。

なんか、聴いていて窒息する感じ。もうちょっとその背景のノイズを表現してくれないと息ができないというか、自然じゃないと思う。でも最後の拍手はちゃんとある。(笑)

自分はふだんコンサートホールに頻繁に出向いて実演に接することが多いので、そのときは演奏者+背景のノイズというのは込みで実体験として経験する。なので、このように暗騒音をプロの仕事にあるまじき行為ということで、完璧に排除する考え方の録音には違和感を覚える。やっぱり実際の生体験と違うと変なのである。

これはライブ録音としての在り方というか、いずれセッション録音とライブ録音というタイトルで日記を書いてみたいと思っている。自分は録音という作品からするとセッション録音のほうが好きであるが、ライブ録音も作品としては雑かもしれないが、その場の臨場感、ライブならではの迫力が感じられて好きだ。そういうライブ録音の在り方として、このような暗騒音の取り扱いについては、いろいろ自分なりのポリシーがあったりする。

この自主制作レーベルの他のアルバムをまだ聴いたわけではないので、このレーベルの音作りの特徴なのか、はわからないが、この部分が自分的にはいまいちだった。

でも、それを除けば、いい録音のジャンルだと思うし、ホールの音響の良さも十分伝わってくるのが理解できる。

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ヴァイオリンとピアノのための作品全集(シマノフスキ)
イブラギモヴァ、ティベルギアン

http://goo.gl/lxqvWw


また元に戻ってハイぺリオン・レコードの録音。
2008年のイギリスでのポットンホールでのセッション録音。

これは素晴らしい録音ですね。バッハの作品と並ぶ彼女の最高傑作だと思います。やっぱり素晴らしい録音は、Vnの艶と光沢と、ピアノの深い音色、そして広い空間を感じる、自分の好みの場合、これに尽きます。

またポーランドの作曲家シマノフスキの作品は、本当にオリエンタルムード全開という感じで惹かれるものがある。自分の好みの旋律を描く作曲家ですね。


そして最後。

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ヴァイオリン・ソナタ第1番、第2番、5つのメロディ(プロコフィエフ) 
イブラギモヴァ、オズボーン

http://goo.gl/fHMBtR


2013年 ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホールでの録音。
これも素晴らしいです。録音の素晴らしさの要因は、だいたい今までと同じ理由です。プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタというと、どうしても樫本大進のSMEのデビューSACDを思い出してしまう。(これもじつに素晴らしい録音でした。自分のプロコフィエフ・ソナタのひとつのリファレンスになっている演奏です。)樫本のスピーディーで男性的な演奏と比較すると、そこはやはり女性らしいテンポの緩徐の雰囲気が漂うイメージはあります。

これだけのアルバムを聴きこむと、彼女がどのような演奏スタイルなのか、なんとなくわかってきたような気がします。
いずれにせよ、9月、10月の彼女の演奏会が、ますます楽しみになってきました。

本妻はもちろんアラベラ様ですが、ほんのちょっと浮気してみたい気持ちも出てきました。(笑)

                                      

                                                                                                                                                  

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2016年3月の銀座王子ホールでのリサイタル(モーツァルト・ソナタ)でのサイン会にて。


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michelangelo

ノンノン様

こんにちは。

海外遠征する友人や知人に、注目のヴァイオリニストは誰か?と尋ねると、主に2つの答えが返ってきます。アリーナ・イブラギモヴァさんと、ヒラリー・ハーンさんです。私は、リサ・バティアシュヴィリちゃんが好きなのですが・・・

10月1日・2日・3日に、イブラギモヴァさんが「モーツァルト・ツィクルス」を演奏なさるとは今日まで存じませんでした。何も知らず、私はトッパンホールにて行われる「モーツァルト・ツィクルス/10月1日・2日・3日・4日」を全日ではありませんが購入。その他、1日はベルナルト・ハイティンク氏、3日はパーヴォ・ヤルヴィ氏、4日はウィーン・フィル&エッシェンバッハ氏ですから・・・極めて迷惑なバッティングですね。

ノンノン様による、イブラギモヴァさん演奏会のご感想、非常に楽しみにしています。後2ヶ月とちょっとですから、あっと言う間でしょうか。海外遠征のお話も、待ち遠しいです。

追記:ノンノン様の床は、ツルツルでピカピカですね。オーディオやCD等、とても大切に扱われている様子が伝わって参ります。
by michelangelo (2015-07-13 18:45) 

ノンノン

michelangeloさま、私はその3人とも大好きでございます。(笑)10月は芸術の秋ですから、やはりいいコンサートが目白押しですよね。そこをうまく調整するのが私たちのコツでしょうか。

床がツルツルなのは、そういうところを選んで撮影しているからです。じつは見えない他のエリアは、ごみ屋敷だったりします。(笑)
by ノンノン (2015-07-16 01:06) 

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