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BISのピアノ録音と、エフゲニー・ズドビンというピアニスト。 [ディスク・レビュー]

DG録音は、ピアノ録音が美しく録れていることが大きな特徴だが、BISの録音も決して負けていないと思う。同じ美しいピアノ録音でも、DG録音とBIS録音では、テイストが違う。

DGサウンドは、いままで何回も書いてきたけれど、芯のある骨格感のあるサウンドが彼らの身上で、硬質で、研ぎ澄まされたようなピアノの音色。鍵盤のタッチの音、弦を叩くハンマーのフェルトの音、弦の響き、響板の響きの音、そしてペダルノイズやブレスなどの演奏ノイズまで聴こえてきそうな漆黒の中のサウンドと言うべきか。

ピアノの音が濃いというか、1音1音に質量感がある、タメの重みの感覚がある、そんな密度感の濃いイメージ。そこに響き&余韻が加わり、じつに美しい。

もちろん盤(録音)によってバラツキもあるが、このピアノを録るセンスは、エミール・ベルリナー・スタジオのエンジニアたちの天性の才能だと思いますね。

いにしえの著名ピアノストから、新鋭ピアニストに至るまで、みんなDGと専属契約を結んでしまうのも、よくわかるような気がする。

BISの録音は、ちょっと趣が違うのだが、これまたピアノの音色がキレイで、自分は大のお気に入り。

BISサウンドは、ワンポイント録音という表現がよく似合う。マイクからの程よい距離感があって聴こえ、ダイナミックレンジが広いこともあって、録音レベルも低め、全体的にクールダウンした温度感低めのサウンド。

でもBISのピアノは、こういう背景のサウンドの中で、これまたじつに美しく鳴る。

クリスタル、透明感がある感じで、こういうBISサウンドの中に妙に溶け込んでいて美しい。

音の質感や濃さという点では、DGほどではないと思うが、でも響きが柔らかくて粒子が細かい上に、音数も豊富なので、聴感上のバランスがとてもいい。

1番の決め手は、やはりピアノをマルチチャンネルで録っているところだと思う。

これが、全体にダイナミックレンジが広くて、サウンドのステージ感も広がって聴こえて、俯瞰している感じ、バランスよく鳴っているように感じる1番の理由だと思う。

これはDG録音にはない魅力ですね。

そんな魅力的なBISのピアノ録音なのだが、BISレーベルが、デビュー以来、ずっと育ててきている若手の男性ピアニストがいる。

私の大のお気に入り。

ノンノンさんは、女性美人ソリストばっかり、追っかけてるんではないの?という言葉も正しいが(笑)、でも意中の男性ソリストも数多いる。彼は、その中の1人。

1980年のロシア・サンクトペテルブルク生まれのピアニスト、エフゲニー・ズドビン。 
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彫の深い端正なマスクで、すらっとしたイケメン。
草食タイプの男性ソリストという感じだろうか。

スカルラッティ・ソナタ集で2005年CDデビューし、ラフマニノフ、メトネル、チャイコフスキー、スクリャービンなどを得意レパートリーとして録音を残してきている。

クラシック界のプロの商業主義的なところに、あまり洗脳されていないように見えるのも、自分にとって魅力なのかもしれない。

2011年に初来日を果たしており、相変わらず、全く気付かずスルー。(笑)
次回はぜひ足を運んでみたいピアニストだ。

実演に接したことがなく、録音でしか彼を知らないが、高度なテクニシャン。高速トリルなど、粒立ちの揃った音色の美しさは絶品だし、見た目のやさ男風に似合わず、たとえばコンチェルトなどで、打鍵もffからppに至るまで、緩急豊かな表現づけ、結構ドラマティックに魅せる。でも、やはり、どことなく端正な弾き方に感じてしまうのは、やはりイメージ通りなのかも。(決してじゃじゃ馬タイプではない。)

とくに静寂でメロウな旋律を弾かせたら、彼の境地、絶品だと思う。

2010年ころからか、ずっと彼のBIS作品を聴いてきて、いい録音だなぁと好印象をずっと抱いていたところ、ここ最近リリースされた2枚が、決定打になって、これはひとつ彼の日記を書かないとダメだと思った訳だ。 


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ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番、モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 
スドビン、ヴァンスカ&ミネソタ管

http://goo.gl/Y6qKPt


ヴァンスカ&ミネソタ管とのコンビで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集のプロジェクトをやり始め、その一環のアルバム。

これは衝撃だった。じつにピアノの優秀録音そのもの。ズドビンのBISピアノ録音を一言で表現しろ、と言えば、やはりクリスタル、透明感の一言だと思うのだが、その彼のイメージを最初に経験した1枚だった。サウンド全体としては、ソリッド気味で、オケの音ももう少しふくよかな音場感があってもいいかな、とも思ったが、全体的に硬質で締まったサウンドですね。

大変な愛聴盤です。

録音時期:2011年6月 / 2012年5月、6月
録音場所:ミネアポリス、オーケストラ・ホール

音声エンジニア:ジェン・ブラウン(ベートーヴェン)、トーレ・ブリンクマン(モーツァルト)
編集:ジェフリー・ギン
ミキシング:トーレ・ブリンクマン、ロバート・シェフ 



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ピアノ協奏曲第4番、第5番『皇帝』 
スドビン、ヴァンスカ&ミネソタ管弦楽団

http://goo.gl/wJzq2O

これも、ヴァンスカ&ミネソタ管とのコンビで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集のプロジェクトの一環。

これは、ズドビンのコンチェルトものでは最高傑作。先述の3番より、洗練されていると思う。
コンサートホールの空間がよく録れていて、ホールトーンもふんだんに入っていて、なによりオケが発音したときの音場感がすごく豊富。部屋中に拡がる感じ。音質は、3番に比べて、やや柔らかめという感じだけど、自分はこちらのほうが好みかな。オケのスケール感、広大な感じと、ズドビンのクリスタルなピアノが見事に両立して、最高。超ヘビロテです。

ベートーヴェンのコンチェルトの4,5番と言えば定番中の定番で、数多のピアニストの作品を聴いてきたし、CDもたくさん持っているけれど、自分は、やはり「新しい録音」が好きなので、この盤が自己最高。

過去に何回も言及してきたことだけれど、こういう録音を聴くと、過去の名演、名盤というのが、自分にはすごく色褪せたものに感じてしまう。

彼らの名演をそしるつもりはなく 録音された時制を考えれば、実に素晴らしいクオリティの録音だということに異論はない。

だが しかしだ。。。 しかし そのクオリティは 何十年前にすでに明らかに聴きとれた。
今聴いても、何十年前に思った以上のものが 新たには感じられない。

新しい録音には、何十年前には捉えることの出来なかった「音のさま」があって、デジタル再生の世界や新しい録音技術がその可能性を広げてくれる。そういう価値観のほうが、自分はオーディオをやっていく上で、自分の進むべき道なのだと思う。

もちろん趣味の世界ですから、正論はなくて、個人の嗜好は尊重されるべきだとは思いますが。

そんな想いを強くさせてくれる1枚でもある。


録音時期:2009年1月(第4番)、2010年6月(第5番)
録音場所:ミネアポリス・オーケストラ・ホール

音声エンジニア:ハンス・キプファー
編集:エリザベス・ケンパー、マティアス・スピッツバース
ミキシング:ハンス・キプファー、ロバート・シュフ 


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スクリャービン:ピアノ協奏曲、メトネル:ピアノ協奏曲第3番 
スドビン、リットン&ベルゲン・フィル

http://goo.gl/a19IK3

確かスクリャービンの生誕○○周年のセレモニーイヤーに出されたアルバムで、自分の日記でも試聴記を取り上げた。

この作品は、彼のどの作品よりもピアノの音色のクリスタル、透明感が素晴らしくて、なんか編集時に、締めに締め上げたという感じがする音の硬質感で、シビれた作品だった。

ある意味、生演奏よりもオーディオ的快楽に近い作品だと感じた。

スクリャービンを聴くことも普段少ないが、異国情緒たっぷりのちょっとオリエンタルムード漂う感じの旋律が美しく、新鮮だ。

このアルバムは、インターナショナル・クラシック・ミュージック・アワード(ICMA)2016の協奏曲部門を受賞したのだそうだ。

この作品を聴いてからだ。

自分が今まで、単にいい録音だなぁ、と思っていたピアノのBIS録音が、過去分を調べてみると、みんな、このズドビンの作品だということに気づいたのは。

これから、このピアニストを強く意識するようになった。


録音時期:2013年11月
録音場所:ベルゲン、グリーグ・ホール

音声エンジニア:トーレ・ブリンクマン(Take5 Music Production)
編集&ミキシング:マリオン・シュウェーベル


そして、最新作のこの2作。

この2作品を聴いて、あまりに素晴らしく、こうもずっと素晴らしいピアノ録音の作品をずっと世に出し続けてきた彼とBISレーベルの功労は大きいと思った。

ぜひ日記で特集してみたいと思った。 

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メトネル:回想ソナタ、悲劇的ソナタ、『おとぎ話』集、ラフマニノフ:前奏曲集 
スドビン

http://goo.gl/JOiIaM


ズドビンにとってメトネルは得意中の得意の作品で、デビュー以来ずっと事あるごとに自分の作品に取り上げてきている。

静寂でメロウな旋律を弾かせたら。。。と書いたのも、まさにこの作品のことを言っていた。
特に第6トラックの朝の歌、そして第7トラックの悲劇的ソナタにかけての旋律は、まさに垂涎の体験とも言える美しさで圧倒される。

すでに紹介した3枚と比較すると、サウンド的にずいぶん大きな変化がある。

彼のアルバムは、どちらかというと硬質で解像度重視のカチカチともいえるサウンドなのだが、このアルバムからガラ変のイメチェン。

驚いた。

全体にウォームな感じで、音の角がとれているような丸みのあるピアノ・サウンドなのだ。音のディテールなどこだわらない、というか。正直イメージと違って面喰った。

でも空間も広くて、響きもすごい豊富。これは、これでいい録音なのでは、と感じた。

やはりメトネル~ラフマニノフと続くピアノソロの作品集は、その旋律があまりに美しくて、聴いていてとても癒される。

そこが魅力の作品だと思えた。


録音時期:2009年2,6月、2012年4月、2014年7,10,11月
録音場所:イングランド、ブリストル聖ジョージ

音声エンジニア:マリオン・シュウェーベル(Take5 Music Production)
ジェンス・ブラウン (Take5 Music Production)
編集:マリオン・シュウェーベル、ジェンス・ブラウン
ミキシング:マリオン・シュウェーベル 

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スカルラッティ・ソナタ集第2集 
スドビン

http://goo.gl/BvWaud

自分は、スカルラッティ・ソナタがとても好きで、よくホロヴィッツの定番のアルバムを聴いていた。

ホロヴィッツは、このスカルラッティ・ソナタを非常に好んでいて、自分のコンサートのアンコールなどによく弾いていた。

じつは、ズドビンのデビュー作もスカルラッティ・ソナタ。当時はこのデビュー作が大変な話題になったそうだが、今作はその期待の第2集になる。

バロック時代のこの作品を、モダンピアノを使って、そして最新の音響&録音技術を使う、という古楽アプローチのアンチテーゼのような作品作りなのだが、やっぱり自分はこういうアプローチ好きだなぁ。ただでさえ、この曲好きなのに、さらに近代的でハイセンスな雰囲気が漂っているように思ってしまう。

スカルラッティ・ソナタに関しては、「ホロヴィッツの再来」とまで言われているみたいで、ちょっと業界の宣伝入っている文言かな?(笑)とも思うけど、十分その資格ありと思う。




以上、これだけの彼のアルバムを2010年から5年かけて聴いてきたわけだが、BISレーベルにズドビンあり!という存在感が十二分に感じ取れる。

しかしパッケージメディアのSACD、つまりDSD2.822のマルチチャンネルでこれだけのサウンドが堪能できるのだから、自分はハイレゾなんていらないと思うな。(笑)

ゆうあんさんも言っていたが、自分もたぶんハイレゾのDSDマルチチャンネルの音声ファイルなんて、音質的にパッケージメディアには遠く及ばないんじゃないかな、と思う。

パソコン上で動くコンテンツプレイヤーなどが、5chの音声信号をきちんとデコードして位相も合わせて、オーディオに送り込める、そんな精度のいいもんとはとても思えない。現時点ではハードソリューションには遠く及ばないんじゃないかと。

先日の日記で、ストリーミングが主流になりそうだということも書いたが、よく考えると、リアルタイムにデコードしながら構築していくストリーミングだったら、尚更マルチチャンネル伝送・構築は、困難の極みのような気もしてきた・・・。

ここら辺のことは、いま正直あまり深く考えたくないね。


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