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ユリア・フィッシャー ヴァイオリン・リサイタル [国内クラシックコンサート・レビュー]

自分のクラシック音楽人生の中で、ユリア・フィッシャーを生で観れるとは思ってもいなかった。
自分からヨーロッパに出向いて会いに行かない限り縁のない類のアーティストだと、ずっと思っていた。
 

若くして10代の頃に8つの国際コンクールで優勝するという凄さで、そのうちピアノ部門が3つというから、本当に恐れ入る。まさにヴァイオリンとピアノの両刀使いの才能なのであるが、彼女自身としては、ヴァイオリンのほうが演奏家人生としての本筋である、ということも周囲の知るところでもある。

2006年7月には23歳の若さでフランクフルト音楽・舞台芸術大学の教授に就任している。(ドイツ史上最年少記録!)

本当に若くして、大変な才能の持ち主なのだけれど、不思議と日本とは縁がなかった。

トッパンホールが、2004年に彼女のリサイタルを招聘して(現在も続く「エスポワール・スペシャル」)大成功を収めた後、2006年、2009年の2度にわたってリサイタルで招聘したのであるが、いずれも中止。そして今回のリサイタル開催において、じつに12年振りの来日ということになった。

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今回の来日に際して、さらにジャパン・アーツが東京オペラシティで、同内容のリサイタルを招聘してくれた。

本当にうれしい限りである。
この時期に、彼女を呼んでくれるなんて夢にも思わなかった。

ユリア・フィッシャーのことは、過去に何回も日記に書いてきているので、繰り返しになるので詳細には書かないが、自分にとって、ユリア・フィッシャーといえば、PENTATONEレーベル。PENTATONEといえば、ユリア・フィッシャーだった。

それだけ自分の青春時代の圧倒的な存在。

PENTATONEの存在を知ったのは、mixiに入会した2009年であるから、彼女を知った時期としては晩年なのかもしれない。でもPENTATONEから次々とアルバムをリリースする彼女はじつに輝いていた。

いまは亡きヤコブ・クライツベルク指揮のオランダ放送フィルとの数々のコンチェルト、そして室内楽では、今回のパートナーでもあるマーティン・ヘルムヘンとの作品。ユリアとマーティンは、まさに美男美女のカップルで、PENTATONEの黄金時代を支えてきた看板スターの2人と言っても過言ではなかった。 

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ご覧の2人のシューベルトの室内楽作品は、まさに珠玉の作品でかつ優秀録音で、この作品で、ドイツの名誉ある「エコークラシック賞」を受賞している。

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mixiに入会したての頃は、自分はどちらかというと音楽というよりオーディオ寄りのスタンスだったので、その点からしても、PENTATONEのユリア・フィッシャー盤が、いわゆるオーディオオフ会の定番のソフトだったりしたのだ。

コンサートホールでのセッション録音全盛時代のいまと比較すると、彼らポリヒムニアがよく使うオランダ・ヒルヴェルスムのMCOスタジオや、ロシア・モスクワでのDZZスタジオ5といった専属契約のスタジオで、比較的小編成のスタイルで録る”スタジオ録音”というのが主流だった時代。

結構エンジニアの脚色がよくついた技巧的な作品で、オーディオ的快楽を強調したような、オーディオマニアが喜びそうな、聴いていて気持のいい録音作品が多かった。

いまでこそ聴く機会も少なくなったが、ユリア盤は自分の宝物であるし、今回リサイタルを聴いてきて、久し振りにユリア&マーティンのシューベルトの室内楽作品を聴いていたりする。

さて、そんなじつに12年振りのユリア・フィッシャー&マーティン・ヘルムヘンによる室内楽リサイタル。東京オペラシティ&トッパンホールともに、当初のプログラム3曲に出演者側の要望で、1曲プラスされるという構成だった。

東京オペラシティ
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トッパンホール
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はじめて、ユリアを生で観た印象。

誇張した表現・オーバーアクションがない極めて正統派の演奏スタイル。ユリア盤を聴いてきて、あれだけの音を出すのだから、さぞかしすごいダイナミックな演奏に違いないと思っていたのだが、ある意味拍子抜けしたくらい。じつに真っ当なスタイルで、背筋がピンとしていて、弓の上げ下げのボーイングも、幾分腕の動きが縦気味であるものの正統派そのものであった。

しかし奏でる音は極めて力強くパワフルで、安定感抜群。ボウイングの弓を引く力が段違いに強い。非常に男性的な演奏だと感じた。まずなによりも音程がいい。ホール空間の中の定位感、見事なまでにある。

体格は、かなり華奢で小柄なタイプなのだが、そのサイズからは想像できないくらいの上げ弓、下げ弓がパワフルで、キビキビしている。

それでいて的確で繊細なヴィブラートや情熱的なフレージングといった男性奏者顔負けの強烈で個性のある演奏なのだ。

PENTATONEの現マドンナのアラベラさんは、非常に繊細で女性的で弱音表現に長けていて、演奏表現自体も外から見て絵になることを意識しているヴィジュアル・クラシックだと感じる。ユリアはその対極にあるような男性的な奏者で全くタイプが違うのだと思えた。

前半3曲は、どちらかというと、「ソナチネ」という「ソナタ」よりも小さめの可愛いらしい作風ということもあって、完璧なまでに綺麗にまとめ上げているという印象で、つつがなく、という感じ。なので、そこには、美しい作品と思うことはあっても、こちらの心を大きく揺さぶるまでの感動を与えるとまでは言えなかった。

ところが、最終のブラームスのヴァイオリン・ソナタ3番。

これには恐れ入った、心が揺れた。

とくに最終楽章に向けて、怒涛の波が押し寄せるように、どんどんクレッシェンドしていくときの強烈なパッセージの連続、彼女の体全体も何回ものけぞるように、リズミカルで、観ているほうが、どんどん興奮のるつぼに陥ってしまう。

まさにブラボーだった!

終演後は大歓声。最後はさすがに魅せてくれた。

この最後のブラームスが、このリサイタルのすべてを語っていると言ってもよかったのではないか?

相棒のマーティンの安定した和音進行の妙は見事というしかなかく、しっかりユリアの演奏に華を添えていた。

ずっと長年自分が想いを寄せてきたユリア・フィッシャーというヴァオイリニストを、「どうだ!すごいだろう!」と周りに自慢げに思えた一瞬だった。

歓喜はこれだけは終わらなかった。

なんとアンコールでは、ユリアはヴァイオリンを持たず、マーティンと一緒にピアノを披露!
これには観客は湧いた!

しかし、本人のアイデアなのか、主催者側の要望なのか、わからないが、なんと気の利いたイケているアンコールなんだろう。(笑)ユリア・フィッシャーがピアノの達人ということをみんな知っているだけに、余計に盛り上がる。

素晴らしい饗宴の一夜だった。
自分の長年の想いは成就した。

今回、ユリアを呼ぼうという夢を実現してくれた招聘プロモーターのジャパン・アーツ&トッパンホールさんには、本当に感謝する限りです。

どうもありがとうございました。


東京オペラシティでのサイン会

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トッパンホールでのサイン会

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いずれも両日とも大変な長蛇の列でした。




ユリア・フィッシャー ヴァイオリン・リサイタル

2016/10/15(土)14:00~ 東京オペラシティコンサートホール
2016/10/16(日)15:00~ トッパンホール

ヴァイオリン:ユリア・フィッシャー
ピアノ:マーティン・ヘルムヘン

前半

ドヴォルザーク:ソナチネ ト長調 Op.100

シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ 第3番 ト短調 D.408

~休憩

後半

シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ 第1番 ニ長調 D384

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ 第3番 ニ短調 Op.108

~アンコール

ブラームス <<F.A.E.ソナタ>>より第3楽章 スケルツオ

ハンガリー舞曲集より第5番 嬰ヘ短調(4手連弾)


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