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児玉桃さんのECM録音 第2弾 永遠のパートナー [ディスク・レビュー]

ECMというレーベルは、マンフレート・アイヒャーによって設立されたレーベルで、ミュンヘンに拠点を持つ。まさにアイヒャーのワンマンと言ったら語弊があるが、彼の持っているビジョンが、レーベルのすべてのカラーを決めているような一種独特のセンスを持ったレーベルだ。

厳冬を思わせるシルエットで統一感のあるジャケット、寒色系でリバーブを少しかける鋭利なサウンド、メジャー路線には決して屈しない拘りぬいた所属アーティストのプロデュース、すべてがアイヒャーの持つポリシーのもとで、運営されている。

このようにあらゆる面で、レーベル全体が統一感をもって企画されているため、万人受けではなく、最初から固定ファン層を獲得することに狙いを定めているように思える。

かなり個性のあるレーベルだと思う。

元々ジャズをメインに録音してきたレーベルなのだが、1984年にECM New Seriesと称して、現代音楽、バロック音楽などの録音も始めるようになった。このジャンルが、彼らのECMレコードのクラシック録音ということになる。

こんな強烈に個性のあるレーベルに、日本人としてECMと初めて契約して、CDを出したアーティストがいる。

ピアニストの児玉桃さんだ。

2012年に第1弾が出て、武満さんやラヴェル、メシアンの曲などを収録している。

自分はこのCDの存在を後年に知ったのであるが、ECMから日本人がCDを出せるなんて、ということで、大層驚いたし、素晴らしい優秀録音で、自分の日記にも書いた。

そして、ついに第2弾が出たのだ。 


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『点と線~ドビュッシー:12の練習曲、細川俊夫:エチュードI-VI』 児玉 桃

https://goo.gl/pOBNMq (HMV)

https://goo.gl/QtiZOS (TOWER RECORDS)


作品は、ドビュッシー晩年の名作「エチュード(練習曲)」に、日本の現代音楽作曲家の細川俊夫さんが作曲した「エチュード(練習曲)」を交互に挟みながら構成されているコンセプトアルバムである。

なぜドビュッシーのエチュードと、細川さんのエチュードを交互に挟んだ構成なのか?

これはライナーノーツに児玉桃さんが詳しくそこに至るまでのプロセス、心情の過程を寄稿している。

いままで長い間、リサイタルで、ドビュッシーの曲を弾いたり、細川さんの曲を弾いたりしてきたことで、この2人が、前任者と後継者の関係にあるという立ち位置で、自分の中には、浮かび上がってくるのだそうだ。

そして桃さんが、アイヒャーに、この2人の作品(エチュード)を交互に配列して弾くことを提案。

でもこの試みには、もうひとつ大きな個人的見解があって、フランスと日本の音楽家、アーティストには、お互いの国の文化を交互に尊敬しあう興味深い嗜好があること。ドビュッシーは、日本の文化を深く愛していた。彼の作品の交響詩”海”の初稿の表紙には、葛飾北斎の画が使われていたり、フランスの画家のモネは、日本の木版画をコレクションしてたり、非ヨーロッパ的なものに憧憬の念を抱いてきた。

片や、日本人の作曲家の武満徹さんは、ドビュッシーに代表されるようなフランス音楽に大きな影響を受けてきた。

このようにフランスと日本人の芸術家たちは、お互いの文化を尊重し合ってきた。細川さんの曲を初演含め、委託されて弾くことの多い桃さんにとって、細川さんの曲は、とくにドビュッシーの曲に相通ずるものが多いのだそうだ。

自由な作曲技法、配色の重ね合わせ&表現などなど。特に黙想を思わせる”間”や、音楽表現の中に現れる、詩的表現、叙情的表現などがとてもかなり深い部分で、この両作曲家には共通しているものを感じるとのこと。

そんな想いから、両作曲家の曲を交互に並べるというコンセプチュアルなアルバムをアイヒャーに提案し、実現となったようだ。

以上は、児玉桃さんの寄稿の部分を私の拙い英語読解力で書いているので、かなり曖昧なこと、お許しください。(笑)



実際アルバムを全般に聴いてみての私の印象を述べてみる。

ドビュッシーと細川さんの曲を交互に並べ再生されるのだが、ドビュッシーは薄暗い闇の中の微かに漏れこんでくる採光、そして続く細川さんの曲は、陰影感たっぷりの漆黒の世界というまさに”明・暗”の世界が交互に並んでいるように自分には聴こえた。

でも、そこには、両者とも、現代音楽特有の前衛的な表現が共通していて、隙間の美学、鋭利な音表現の世界は、確かに相通ずるものがある、と自分にも理解できる。


いやぁ、かなり芸術的で抽象的・文学的でさえある精神性の高いアルバムに仕上がっているなぁ、と思いました。


かなり硬派な路線のアルバムです。

こういう硬派路線では、サウンドのクオリティーが高くないと洒落にならない。


そこで・・・サウンドの評価。

2chステレオ録音。

前作のECM録音第1弾は、先入観なしに聴くと、それはそれは素晴らしい録音なのであるが、どちらかというとオンマイク気味の録音で、ECM独特のリバーブを施しているのがはっきりと分かる感じのテイストであった。

ギラギラした感じの結構鮮烈なサウンド。

自分の好みからすると、もうちょっと空間感というか、マイクとの距離感が欲しい感じがして、スタジオもしくはコンサートホールのエアボリュームの存在が分かるようなアンビエンス&気配感があったほうがいいな、と感じた。

ある空間の中で、発音体があって、その空間と、実音&響きの3セットが遠近感含めバランスよく”立体的”に聴こえる。どこからか俯瞰して聴いているような感じの聴こえ方が好きなのだ。

つまり、ダイナミックレンジの広い録音が好きなんですね。

これはあくまで、自分の耳の好みの問題ですから、絶対値評価ではありません。人それぞれですから。

でも今回の第2弾は、まさに自分のそのような気になっていた点を全部払拭してくれたかのような出来栄えだった。

本音だよ。自分は録音評にはお世辞は言いません。

1番気になっていたマイクとの距離感もややオフマイク気味でいい感じ。そしてなにより大切な適度な空間感がある。1発目の出音を聴いたときのホッとしたこと。(笑)

やはりECM録音。

全般の印象からすると、やっぱり全体的にうっすらリバーブかけているような感じはする。でも、そのリバーブをかけているのか、かけていないのか、わからない程度のナチュラルなピアノの音色の質感は好印象。

非常にしっとりと滑らかな質感で、実際の生演奏のピアノの音に近い。クリスタルな透明感も文句ないし、高音域にいくほど煌びやかに聴こえるのも、やはりややリバーブをかけているためにそう聴こえるのか?

とにかく前作と比較すると、文句なしに断然に洗練されている。

素晴らしい!と思う。

やはり技術の日進月歩は本当に素晴らしい。

2chのピアノ録音作品としては、文句ない作品だと思う。自分好み。
DGのピアノ録音と遜色ないどころか、煌びやかさでは優っていると思います。

自分はサラウンド専門なので、オーディオオフ会で、お披露目する2chソフトってなかなか候補が少ないのだが、いいソフトに出会えたという印象である。


とにかく作品がかなり硬派な路線なので、それをきっちりサポートしているサウンドのクオリティの高さは本当に大切なこと。

今回の作品を聴いて感じたことは、やはり演奏家、アーティストにとって、自分のカラーを、きちんと表現、具現化してくれる永遠のパートナーに出会えるかどうか?ということが、その演奏家にとって、自分の演奏家人生の運命を決める大事なことではないか?ということであった。

児玉桃さんは、どちらかというと現代音楽がカラーの演奏家。
そういう意味で、細川俊夫さんとのパートナーはとても、大きな出会いでもある。

今回のECM録音のトーンマイスターは、前作の第1弾と同じステファン・シェールマン氏が担当している。やはり長年にわたって成功してきている演奏家は、自分の音を具現化してくれるトーンマイスターの、これまた永遠のパートナーがいるものなのだ。

自分がすぐ思いつくだけでも、

内田光子さん。

フィリップス時代から現在に至るまで、現ポリヒムニアのエベレット・ポーター氏が彼女の音をずっと録り続けている。


そしてエレーヌ・グリモー。

DGに移籍してから、というものの、ほぼ全作品といっていいほど、シュテファン・フロック氏が彼女の音を担当している。

長らく成功しているアーティストは、このように二人三脚で、自分のカラー、自分の音を知り尽くしてくれている、音職人のパートナーがいる、いや育ててきているものなのだ。

児玉桃さんに至っても、このECMのステファン・シェールマン氏がそのような永遠のパートナーになっていくことを心から願ってやまない。


 


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