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PENTATONEの新譜:コジュヒンというピアニスト [ディスク・レビュー]

この新譜は間違いなくAuro-3Dで収録している。ポリヒムニアがそう宣言して投稿していた。

Auro-3Dはベルギー発の3次元立体音響のフォーマット。

基本用途は映画での使用で、従来のX-Y軸の水平方向のサラウンドだけではなく、Z軸の高さ方向のディメンジョンを加えた3次元空間での音表現を目的としていて、高さ方向として天井SPを配置した9.1chなどの3Dサラウンド環境で聴くことを前提としている。

でも、この開発者は、もともとは教会で聴く音楽を、自分の周りを美しい音の響きで包まれたような(彼らの用語でイマーシブ・サウンドという呼び方をしている)、この感覚をぜひ再現したい、というところからスタートしていて、そのルーツにはやはり音楽があった。

その点、Dolby AtmosやDTS-Xなどと比較すると、より音楽的アプローチの色合いが強いフォーマットなのだと思う。

そこにポリヒムニアが着目して、Auro-3Dを、いわゆる収録時でおこなう隠し調味料的な使い方をするようになった。

別に9.1chの天井SP環境で聴かないといけない訳ではなく、従来の5.0chのサラウンド&SACDという物理媒体フォーマットで聴くことが前提で、でも聴いてみると、しっかりと高さ方向の3次元空間が感じ取れる、いわゆる下位互換が成り立つ、そんな隠し調味料的な使い方で我々に、このフォーマットを紹介してくれた。

だからブックレットを見ても、Auro-3Dというロゴもないし、記述も一切ない。

つまりPENTATONEの新譜は、どれがAuro-3Dで録っていて、どれがそれじゃないのか、など普通では知り得ないのだ。

でも大体聴いたら一発でわかります。(笑)

でも、今回のこの新譜は、最初からポリヒムニアが、Auro-3Dで録っていると宣言していたので、だから着目していたのだ。

録音ロケーションは、ポリヒムニアにとってもう専属契約スタジオと言っていい、オランダ、ヒルフェルムス、MCOスタジオ5。

そのときのAuro-3Dでのセッションの様子。(以下に掲載する写真は、FBからお借りしています。)


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そんな楽しみな1枚だったのが、このディスクだ。 


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ブラームス主題と変奏、バラード集、幻想曲集 

デニス・コジュヒン


https://goo.gl/0Epwr6 (HMV)

https://goo.gl/a5i7oh (Amazon)

https://goo.gl/7mTfV3 (Tower Records)



デニス・コジュヒンというロシアの俊英ピアニスト。 


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世界三大ピアノコンクールの一つに数えられるエリザベート王妃国際コンクール。

その2010年の覇者である。

2011年、2013年、2014年と立て続けに日本公演を行ってくれていて、音楽仲間による、その公演評は、ほとんど絶賛の嵐という凄い評判であった。

自分は実演に接することはできていないのだが、そこまで凄いピアニストであるならば、ぜひ聴いてみたい、観てみたいと思うのが心情というもの。

そんな情報を持っていたので、そんな彼が去年の2016年にPENTATONEの専属契約アーティストになったことは驚きだった。

PENTATONEからの第1作目は、チャイコフスキーとグリーグのピアノ協奏曲。これは、まだ聴いていないので、今回の新譜を聴いて、あまりに素晴らしかったので、ぜひこの1作目も聴いてみたいと思い、慌てて注文しているところである。

2作目にあたる今回の新譜は、ブラームスのピアノ独奏作品をとりあげた。
クララ・シューマンに献呈された「主題と変奏」で、弦楽六重奏曲第1番の第2楽章をピアノ独奏にブラームス自身が編曲した作品。そして「バラード集」と「幻想曲集」。

ブラームスのピアノ独奏作品に特有な内省的でありながら叙情的でもあるその調べを、まるで濃淡のくっきりした水墨画を観ているかのように、描き上げる表現力はかなり聴きごたえがあって、さすが評判が高いだけあると自分も認識できた。

とくにピアニッシモの弱音表現が素晴らしく秀逸で、ソフトなピアノタッチが柔らかく安定していて、そして奏でられる音色の柔らかい質感。

これって、かなり難しい。

ピアノって、速射砲のように連打するトリルのような表現が、いかにもピアノが上手いと思われがちだが、じつは弾く側の立場からすると、超弱い打鍵で、優しく、長く安定して弾くことのほうが遥かに難しい技術なのだ。

このコジュヒンというピアニスト、もちろんブラームスの独奏作品ということもあるかもしれないが、この弱音表現が、じつに深みがあって、情感豊かで、こちらに訴えかけてくるような雄弁さがある。

たしかに凄いピアニストの片鱗を垣間見た感じ。

ぜひ実演に接してみたいピアニストだ。

なんでも今年の秋にまた来日してくれるという噂もあるし、ベルリンに今年の3月にオープンする新室内楽ホールである「ピエール・ブーレーズ・ザール」(去年亡くなったフランスの作曲家&指揮者のピエール・ブーレーズを冠にしたホールで、ダニエル・バレンボイムが中心となるバレンボイム・サイード・アカデミーの本拠地。)でも、ベルリン・フィルのエマニュエル・パユとデュオのリサイタルをやるそうで、これは行ってみたい。(ホールもすごく興味があるのだ!)


そして、お待ちかねのサウンドの評価。

まずすぐに印象に残ったのは、ピアノの音色の質感が、すごく洗練されていること。従来のPENTATONEのピアノの柔らかすぎな音色ではなく、かなり洗練されている。そう!先日の児玉麻里・児玉桃姉妹のチャイコフスキー・ファンタジーの音色と全く同じ毛色の質感に感じる。

PENTATONE(ポリヒムニア)はピアノの録り方がうまくなったよなぁ。(笑)

基本はやや硬質気味で、ほんのり響きがうっすら乗って潤いあるみたいな感じ。キンキンしたキツイ感じはないし、どんより籠っている感じもない。

バランスが取れた洗練された潤いのある音色の響き。

そしてなによりやっぱり立体感だよなぁ。もう何回も口がすっぱくなるほど言っているけれど、そのホール&スタジオでの空間、エアボリュームの気配感を感じるような音の佇まい。

ピアノが鳴っている音と、この空間とのバランスが見事に調和していて、じつに立体的に聴こえて、これぞ優秀録音という感じで、いかにもオーディオマニアが喜びそうな録音に仕上がっている。

高さを含めた3次元の空間で音が鳴っているように感じるのは、やはりAuro-3Dで録っている効果なのだろう。

一度、こういう「音のさま」で聴いてしまうと、もう後戻りはできないと思う。

もう実現しているのかもしれないが、これだけ効果がてきめんで聴こえるなら、今後もずっと全作品ともAuro-3Dで録ってほしい。

今回のトーンマイスターは、バランスエンジニア&ミックス&編集とも、エルド・グロート氏の仕事。さすがの一言!いい仕事をする。

ディスクレビューの日記を書くのは、結構エネルギーがいるので、このところ立て続けに書いていることもあって、今回の新譜は日記を書かないつもりだった。

でも、これだけ素晴らしい録音で、素晴らしいピアニストを聴くと、やはり日記に書いて紹介しないと罪作りだと思えた。(笑)

PENATONEは、本当に素晴らしい希有のピアニストを、自分たちの布陣に加えることができたと心から嬉しく思う。


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