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東京・春・音楽祭「神々の黄昏」 演奏会形式 [国内クラシックコンサート・レビュー]

4年間、本当にありがとう。マエストロ ヤノフスキ、そしてN響の勇士たち!

心から感謝してやまない。

毎年思うことだが、この舞台になるとN響が、全く別人に見える。普段のN響定期で感じる印象と違って、まさに世界一流のトップオーケストラの風格を感じ、実際彼らが出しているサウンドも、弦の揃った分厚い音、嫋やかな木管の音色、安定した金管の咆哮など王者の風格、そして長大なワーグナーの旋律のうねりを表現してくれ、きっとこの舞台だからこそ生まれる奇跡にいつも驚かされ続けてきた。

東京春祭が4年かけて上演してきた「ニーベルングの指環」最終章「神々の黄昏」、無事終わった。
終演後のマエストロ ヤノフスキのカーテンコールを観ていたら、ずっと4年間観てきた想いが走馬燈のように思い巡り、涙が溢れ出てきた。

このワーグナーシリーズ、もちろん来年も続くが、自分にとってこのヤノフスキ リングがひとつの大きな括りになった、と思う。

この日の上野恩腸公園の桜。

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”花冷え”という言葉が似合う風情で、満開はもうあと1週間後かな、という感じだったが、じゅうぶんに美しく、花見でたくさんの人で賑わっていた。

いよいよ東京・春・音楽祭のN響ワーグナーシリーズ、リング最終章「神々の黄昏」 。
じつに5時間の大舞台だ。

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この日のために、もちろんヤノフスキ&PENTATONE盤でしっかりと毎日予習していたのであるが、ジークフリートのライトモティーフが、ずっと頭の中をループしていた。(笑)頭の中をあのメロディがずっと1日中鳴りっぱなしなのだ。ワーグナーのライトモティーフは、じつに巧妙で、その旋律も心の中に深く浸透するというか、ワーグナーのオペラは本当に強烈だと感じたものだ。


今回の座席も前方かぶりつき。歌手ものは、声の指向性、歌手の歌っている表情を堪能するにもぜったい前方がいい。

なんと、開演前に、マエストロが譜面台の高さの調整に現れた。

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今回は大変なアクシデントがあった。

開演直前に主役の2人、ジークフリートのロバート・ディーン・スミスと、ブリュンヒルデのクリスティアーネ・リボールが突然の体調不良で降板。すでに来日していて、リハーサルも参加して順調そうに見えたのだが、突然の体調不良で音声障害になってしまい、降板となってしまった。

東京春祭スタッフ陣営の大変な狼狽ぶりは想像できる。急遽、ピンチヒッターを立てる。4/1本番の公演に対して、3/29に急きょ来日という慌ただしさ。練習も十分にできないまま、本番に突入したと思われる。

それにしても東京春祭スタッフ陣営の、このピンチヒッターを急遽探し出さないといけない、スケジュールが空いていて、しかもジークフリート、ブリュンヒルデを歌ったことのあるワーグナー歌手ということで、きっと徹夜で世界中をコンタクトし続けて探し回ったに違いない、その緊迫した数日間は十分に想像できる。

公演中止という最悪の事態はどうしても避けないといけない。

体調不良で降板した2人のプロとしての体調管理の甘さもあろうが、これに関しては、彼らを責めるのではなく、じつは自分の責任だと思っている。(意味不明な表現で申し訳ない。)

ピンチヒッターは、ジークフリートにアーノルド・ベズイエン、ブリュンヒルデにレベッカ・ティーム。ベスイエンは、本職ではないにしてもジークフリートを歌ったことはあるし、ティームにおいては、ブリュンヒルデをかなりの回数歌ってきており、得意な役柄のようであった。

そんなハンディの中、公演はスタートした。


公演の全体の印象。

やっぱり歌手陣が例年に比べ小ぶりというか、どうしても見劣りがした。主役の2人がピンチヒッターというのがどうしても厳しい。

でもブリュンヒルデのティームのほうは、かなり健闘していたのではないか、と思う。最初こそエンジンがかかりが遅いように感じたが、徐々にその本領を発揮し、見事にブリュンヒルデという大役を果たし、今回の公演が十分に成立した、感動できるレベルになったのは、ひとえに彼女の奮闘のおかげではないか、と自分は感じている。

声質的には、基本はディリケートな細い印象を受けたが、ワーグナー歌いには必須の軍艦のような圧倒的な声量はしっかり持っている、というアンバランスな声の持ち主だと感じた。

この神々の黄昏では、第3幕に「ブリュンヒルデの自己犠牲」という長いアリアがあって、そこをブリュンヒルデ1人で歌い続けないといけない、ある意味ここが最高潮の山場というところがあって、そこをティームは見事に歌い切った。

感動的でもあった。自分はこの最後の最後で彼女への信頼が確信なものになり、かなり感銘した。

去年の夏のバイロイト音楽祭でも、この「ブリュンヒルデの自己犠牲」のアリアはまさに圧倒的な絶唱で、その後のカーテンコールではブリュンヒルデが圧倒的なブラヴォーを独り占めしていた。終演に近い一番の最高の見せ場なので、ある意味ブリュンヒルデが一番スターになりやすい構成なのだ。

今回のカーテンコールでもティームは、圧倒的なブラヴォーを浴びていた。まさにピンチヒッターの大役を果たしていた。


可哀想だったのが、ジークフリートのベズイエンだったと思う。声質は甘く(ロバート・ディーン・スミスの声に比較的似ていると自分は感じる。)、とても丁寧な歌いまわしでいいと思うのだが、声量というか、発声のエネルギー感がどうも不足しているような感じで、聴衆に響いてこない。もっと感情的に聴衆に訴えかけてくるような大きい波が欲しかった。
終始棒読み的な歌い方で、エモーションを感じなかった。

でも、彼を責めるのは酷だと思う。ジークフリートを歌ったことはあるにしても、やはり経験不足、練習不足。こんな急なシチュエーションを引き受けてくれて、ある意味そつなくこなしたのであるから、ご苦労様とねぎらいたいくらいだ。

そういう意味で、カーテンコールではブラヴォーがなかったのは聴衆は正直とはいえ、自分には本当に可哀想に感じた。

他の歌手で素晴らしいと感じたのを数人挙げてみると、


ハーゲンを演じたアイン・アンガー。恐るべし超低音のバスの迫力を持った声質で、独特の雰囲気があった。この演目の中でも独特なキャラクターで自分にはかなり印象的であった。

そしてアルベリヒを演じたトマス・コニエチュニー。彼も非常に魅力的なバス歌手に感じた。声質がとてもスマートな低音の持ち主で、声帯が広いのか、発声に余裕がある感じで、さらに安定感が抜群なので、かなり素晴らしいバス歌手のように思えた。

エリザベート・クールマンは、ワルキューレのとき、とても圧倒的な歌唱で素晴らしかったのであるが、今回も出番は少なかったが、素晴らしい歌唱を聴かせてくれた。特に彼女の場合は、歌っているときの表情がとても感情豊かで、まさに演技をしているかのよう。じつに素晴らしいと感じた。


今回残念ながら降板したロバート・ディーン・スミスは、最後はやはり聴いて、観ておきたかった。自分にとって、ヤノフスキ&ベルリン放送響で現地ベルリンフィルハーモニーにて、ワーグナーの演奏会形式を2回実演に接した幸運に恵まれて、そのとき2公演とも主役がロバート・ディーン・スミスだった。自分にとって忘れようにも忘れられないワーグナーのヘルデン・テノールなのだ。


マエストロ ヤノフスキは、もう本当に素晴らしい。最近の若い世代の指揮者にありがちなパフォーマンスありきの派手な指揮振りとはまったく極致にあるような指揮。無駄な贅肉をいっさい排したような筋肉質で、禁欲的でもある、ものごとの真髄を追及したような洗礼された指揮だと思う。

5時間にわたって、この大曲で、N響から素晴らしいサウンドを引き出し、そのお互いのコンビネーションは本当に見事としかいいようがなかった。

ゲストコンサートマスターのライナーキュッヒルも相変わらず素晴らしい。自分の座席からキュッヒルの演奏姿はよく見えるのだが、彼の奏でる音が周りからすごい独立して聴こえてくる感じで、オケをグイグイ引っ張っているのがよくわかるのだ。

まさにこれぞ、ザ・コンサートマスターという感じ。

もう彼のこんな牽引具合を観たのは、6回以上にはなるだろうか?今回のリングと、サントリーでのウィーンフィル来日公演で。

本当にコンサートマスターとはこうあるべき、という見本のような奏者のように感じる。
4/1よりN響のゲストコンサートマスターに就任。日本での活躍が楽しみでもある。

2014年からスタートした東京・春・音楽祭による「ニーンベルグの指環」の演奏会形式。日本の独自企画で、ここまで素晴らしい公演を堪能できるなんて、本当に日本人として誉に感じる、いま想うのはただそれだけ。


東京春祭のワーグナーシリーズは、来年以降ももちろん続くが、いまの自分にはなんか喪失感が大きい。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                           

 東京・春・音楽祭 N響ワーグナーシリーズ 「ニーンベルグの指環」 神々の黄昏
2017/4/1 15:00~20:00 東京文化会館大ホール

指揮:マレク・ヤノフスキ
ジークフリード:アーノルド・ベズイエン(ロバート・ディーン・スミスの代役)
グンター:マルクス・アイヒェ
ハーゲン:アイン・アンガー
アルベルヒ:トマス・コニエュニー
ブリュンヒルデ:レベッカ・ティーム(クリスティアーネ・リボールの代役)
グートルーネ:レジーネ・ハングラー
ヴァルトラウテ:エリーザベト・クールマン
第1のノルン:金子美香
第2のノルン:秋本悠希
第3のノルン:藤谷佳奈枝
ヴォークリンデ:小川里美
ヴェルグンデ:秋本悠希
フロースヒルデ:金子美香

管弦楽:NHK交響楽団
     (ゲストコンサートマスター:ライナー・キュッヒル)
合唱:オペラシンガーズ
合唱指揮:トーマスラング、宮松重紀
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン
映像:田尾下 哲
字幕:広瀬大介






 


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michelangelo

ノンノン様

ヤノフスキ氏との4年間、涙の結晶が目に見えるかのようです。昨年でしょうか、本番前にも拘らず、心待ちにしていたファンに対しても真摯な対応をお一人ずつされた様子、写真からも伺えましたがファッションも御洒落ジェントルマンそのものだと感じました。

不思議なもので、私もドイツ人作曲家(ベートーヴェン)公演を通じ、ノンノン様と同じ言葉を拙ブログに書いたことが1度だけあります。その単語は「洗礼」でした。恐らく、国籍や性別や年齢の問題ではなく、音楽家対自分の相性なのかもしれません。

ロバート・ディーン・スミス氏と言えば、私はワーグナー協会の特別例会を楽しみにしていました。声楽家は身体が楽器なので、代役を急遽務められたアーノルド・ベズイエン氏の御決断(自分の声量やスタイルを崩さない勇気)には感動してしまいます。ブーイングが出なかった=日本の御客様は、有り難く思っていたのではないでしょうか?

エリーザベト・クールマンさん御出演、豪華ですね。私は昨年に目の前で拝聴しましたが、オペラ歌手の中でも別格だと感じます。オペラ歌手の待遇改善運動を現在もされているのでしょうか、来日して下さり本当に嬉しく思います。ちなみに、聴衆の男女比は如何でしたか?ブルックナー公演のように、男性が多いのでしょうか?
by michelangelo (2017-04-07 22:31) 

ノンノン

michelangeloさん

ヤノフスキは、自分のワーグナー人生で、必然の赤い糸で結ばれて目の前に現れてきた指揮者なんだと、今思えば推測できます。自分の鑑賞歴の中で、ベルリン、バイロイトで観れて、そして今回の春祭の東京で観れて、ということで言うことないですね。こういうのを運命というんだと思います。

昨晩、エリーザベト・クールマンのリサイタルに行ってきました。本当に素晴らしい歌手で、超一流と言ってもいいのではないでしょうか?発声の安定感、歌うときの表情豊か、多彩な表現力といい、文句なしの歌手だと思います。残念ながらクールマンはオペラを引退宣言していて、今後は演奏会形式やリサイタルのみに、集中していくようです。そこにはオペラ歌手の待遇改善運動が絡んでいるのかもしれませんね。待遇改善されたら、またオペラ復帰するかも、です。

今回のワーグナー公演は、みなさん男性が多い、と仰っていましたが、私が見るに、そうかな?という感じで、私の座席の周りでは結構女性の方も多かったように見受けます。(女性トイレも長蛇の列、ホワイエも女性多し。)ブルックナー、ワーグナーは男性のもの、という先入観が大きいかもですが、実際は女性の愛好家も多いように思います。

しばらくは、ワーグナーリングロスという感じでしょうか?(笑)
by ノンノン (2017-04-08 12:20) 

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