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BISのピアノ録音と、エフゲニー・ズドビンというピアニスト。 [ディスク・レビュー]

DG録音は、ピアノ録音が美しく録れていることが大きな特徴だが、BISの録音も決して負けていないと思う。同じ美しいピアノ録音でも、DG録音とBIS録音では、テイストが違う。

DGサウンドは、いままで何回も書いてきたけれど、芯のある骨格感のあるサウンドが彼らの身上で、硬質で、研ぎ澄まされたようなピアノの音色。鍵盤のタッチの音、弦を叩くハンマーのフェルトの音、弦の響き、響板の響きの音、そしてペダルノイズやブレスなどの演奏ノイズまで聴こえてきそうな漆黒の中のサウンドと言うべきか。

ピアノの音が濃いというか、1音1音に質量感がある、タメの重みの感覚がある、そんな密度感の濃いイメージ。そこに響き&余韻が加わり、じつに美しい。

もちろん盤(録音)によってバラツキもあるが、このピアノを録るセンスは、エミール・ベルリナー・スタジオのエンジニアたちの天性の才能だと思いますね。

いにしえの著名ピアノストから、新鋭ピアニストに至るまで、みんなDGと専属契約を結んでしまうのも、よくわかるような気がする。

BISの録音は、ちょっと趣が違うのだが、これまたピアノの音色がキレイで、自分は大のお気に入り。

BISサウンドは、ワンポイント録音という表現がよく似合う。マイクからの程よい距離感があって聴こえ、ダイナミックレンジが広いこともあって、録音レベルも低め、全体的にクールダウンした温度感低めのサウンド。

でもBISのピアノは、こういう背景のサウンドの中で、これまたじつに美しく鳴る。

クリスタル、透明感がある感じで、こういうBISサウンドの中に妙に溶け込んでいて美しい。

音の質感や濃さという点では、DGほどではないと思うが、でも響きが柔らかくて粒子が細かい上に、音数も豊富なので、聴感上のバランスがとてもいい。

1番の決め手は、やはりピアノをマルチチャンネルで録っているところだと思う。

これが、全体にダイナミックレンジが広くて、サウンドのステージ感も広がって聴こえて、俯瞰している感じ、バランスよく鳴っているように感じる1番の理由だと思う。

これはDG録音にはない魅力ですね。

そんな魅力的なBISのピアノ録音なのだが、BISレーベルが、デビュー以来、ずっと育ててきている若手の男性ピアニストがいる。

私の大のお気に入り。

ノンノンさんは、女性美人ソリストばっかり、追っかけてるんではないの?という言葉も正しいが(笑)、でも意中の男性ソリストも数多いる。彼は、その中の1人。

1980年のロシア・サンクトペテルブルク生まれのピアニスト、エフゲニー・ズドビン。 
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彫の深い端正なマスクで、すらっとしたイケメン。
草食タイプの男性ソリストという感じだろうか。

スカルラッティ・ソナタ集で2005年CDデビューし、ラフマニノフ、メトネル、チャイコフスキー、スクリャービンなどを得意レパートリーとして録音を残してきている。

クラシック界のプロの商業主義的なところに、あまり洗脳されていないように見えるのも、自分にとって魅力なのかもしれない。

2011年に初来日を果たしており、相変わらず、全く気付かずスルー。(笑)
次回はぜひ足を運んでみたいピアニストだ。

実演に接したことがなく、録音でしか彼を知らないが、高度なテクニシャン。高速トリルなど、粒立ちの揃った音色の美しさは絶品だし、見た目のやさ男風に似合わず、たとえばコンチェルトなどで、打鍵もffからppに至るまで、緩急豊かな表現づけ、結構ドラマティックに魅せる。でも、やはり、どことなく端正な弾き方に感じてしまうのは、やはりイメージ通りなのかも。(決してじゃじゃ馬タイプではない。)

とくに静寂でメロウな旋律を弾かせたら、彼の境地、絶品だと思う。

2010年ころからか、ずっと彼のBIS作品を聴いてきて、いい録音だなぁと好印象をずっと抱いていたところ、ここ最近リリースされた2枚が、決定打になって、これはひとつ彼の日記を書かないとダメだと思った訳だ。 


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ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番、モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 
スドビン、ヴァンスカ&ミネソタ管

http://goo.gl/Y6qKPt


ヴァンスカ&ミネソタ管とのコンビで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集のプロジェクトをやり始め、その一環のアルバム。

これは衝撃だった。じつにピアノの優秀録音そのもの。ズドビンのBISピアノ録音を一言で表現しろ、と言えば、やはりクリスタル、透明感の一言だと思うのだが、その彼のイメージを最初に経験した1枚だった。サウンド全体としては、ソリッド気味で、オケの音ももう少しふくよかな音場感があってもいいかな、とも思ったが、全体的に硬質で締まったサウンドですね。

大変な愛聴盤です。

録音時期:2011年6月 / 2012年5月、6月
録音場所:ミネアポリス、オーケストラ・ホール

音声エンジニア:ジェン・ブラウン(ベートーヴェン)、トーレ・ブリンクマン(モーツァルト)
編集:ジェフリー・ギン
ミキシング:トーレ・ブリンクマン、ロバート・シェフ 



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ピアノ協奏曲第4番、第5番『皇帝』 
スドビン、ヴァンスカ&ミネソタ管弦楽団

http://goo.gl/wJzq2O

これも、ヴァンスカ&ミネソタ管とのコンビで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集のプロジェクトの一環。

これは、ズドビンのコンチェルトものでは最高傑作。先述の3番より、洗練されていると思う。
コンサートホールの空間がよく録れていて、ホールトーンもふんだんに入っていて、なによりオケが発音したときの音場感がすごく豊富。部屋中に拡がる感じ。音質は、3番に比べて、やや柔らかめという感じだけど、自分はこちらのほうが好みかな。オケのスケール感、広大な感じと、ズドビンのクリスタルなピアノが見事に両立して、最高。超ヘビロテです。

ベートーヴェンのコンチェルトの4,5番と言えば定番中の定番で、数多のピアニストの作品を聴いてきたし、CDもたくさん持っているけれど、自分は、やはり「新しい録音」が好きなので、この盤が自己最高。

過去に何回も言及してきたことだけれど、こういう録音を聴くと、過去の名演、名盤というのが、自分にはすごく色褪せたものに感じてしまう。

彼らの名演をそしるつもりはなく 録音された時制を考えれば、実に素晴らしいクオリティの録音だということに異論はない。

だが しかしだ。。。 しかし そのクオリティは 何十年前にすでに明らかに聴きとれた。
今聴いても、何十年前に思った以上のものが 新たには感じられない。

新しい録音には、何十年前には捉えることの出来なかった「音のさま」があって、デジタル再生の世界や新しい録音技術がその可能性を広げてくれる。そういう価値観のほうが、自分はオーディオをやっていく上で、自分の進むべき道なのだと思う。

もちろん趣味の世界ですから、正論はなくて、個人の嗜好は尊重されるべきだとは思いますが。

そんな想いを強くさせてくれる1枚でもある。


録音時期:2009年1月(第4番)、2010年6月(第5番)
録音場所:ミネアポリス・オーケストラ・ホール

音声エンジニア:ハンス・キプファー
編集:エリザベス・ケンパー、マティアス・スピッツバース
ミキシング:ハンス・キプファー、ロバート・シュフ 


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スクリャービン:ピアノ協奏曲、メトネル:ピアノ協奏曲第3番 
スドビン、リットン&ベルゲン・フィル

http://goo.gl/a19IK3

確かスクリャービンの生誕○○周年のセレモニーイヤーに出されたアルバムで、自分の日記でも試聴記を取り上げた。

この作品は、彼のどの作品よりもピアノの音色のクリスタル、透明感が素晴らしくて、なんか編集時に、締めに締め上げたという感じがする音の硬質感で、シビれた作品だった。

ある意味、生演奏よりもオーディオ的快楽に近い作品だと感じた。

スクリャービンを聴くことも普段少ないが、異国情緒たっぷりのちょっとオリエンタルムード漂う感じの旋律が美しく、新鮮だ。

このアルバムは、インターナショナル・クラシック・ミュージック・アワード(ICMA)2016の協奏曲部門を受賞したのだそうだ。

この作品を聴いてからだ。

自分が今まで、単にいい録音だなぁ、と思っていたピアノのBIS録音が、過去分を調べてみると、みんな、このズドビンの作品だということに気づいたのは。

これから、このピアニストを強く意識するようになった。


録音時期:2013年11月
録音場所:ベルゲン、グリーグ・ホール

音声エンジニア:トーレ・ブリンクマン(Take5 Music Production)
編集&ミキシング:マリオン・シュウェーベル


そして、最新作のこの2作。

この2作品を聴いて、あまりに素晴らしく、こうもずっと素晴らしいピアノ録音の作品をずっと世に出し続けてきた彼とBISレーベルの功労は大きいと思った。

ぜひ日記で特集してみたいと思った。 

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メトネル:回想ソナタ、悲劇的ソナタ、『おとぎ話』集、ラフマニノフ:前奏曲集 
スドビン

http://goo.gl/JOiIaM


ズドビンにとってメトネルは得意中の得意の作品で、デビュー以来ずっと事あるごとに自分の作品に取り上げてきている。

静寂でメロウな旋律を弾かせたら。。。と書いたのも、まさにこの作品のことを言っていた。
特に第6トラックの朝の歌、そして第7トラックの悲劇的ソナタにかけての旋律は、まさに垂涎の体験とも言える美しさで圧倒される。

すでに紹介した3枚と比較すると、サウンド的にずいぶん大きな変化がある。

彼のアルバムは、どちらかというと硬質で解像度重視のカチカチともいえるサウンドなのだが、このアルバムからガラ変のイメチェン。

驚いた。

全体にウォームな感じで、音の角がとれているような丸みのあるピアノ・サウンドなのだ。音のディテールなどこだわらない、というか。正直イメージと違って面喰った。

でも空間も広くて、響きもすごい豊富。これは、これでいい録音なのでは、と感じた。

やはりメトネル~ラフマニノフと続くピアノソロの作品集は、その旋律があまりに美しくて、聴いていてとても癒される。

そこが魅力の作品だと思えた。


録音時期:2009年2,6月、2012年4月、2014年7,10,11月
録音場所:イングランド、ブリストル聖ジョージ

音声エンジニア:マリオン・シュウェーベル(Take5 Music Production)
ジェンス・ブラウン (Take5 Music Production)
編集:マリオン・シュウェーベル、ジェンス・ブラウン
ミキシング:マリオン・シュウェーベル 

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スカルラッティ・ソナタ集第2集 
スドビン

http://goo.gl/BvWaud

自分は、スカルラッティ・ソナタがとても好きで、よくホロヴィッツの定番のアルバムを聴いていた。

ホロヴィッツは、このスカルラッティ・ソナタを非常に好んでいて、自分のコンサートのアンコールなどによく弾いていた。

じつは、ズドビンのデビュー作もスカルラッティ・ソナタ。当時はこのデビュー作が大変な話題になったそうだが、今作はその期待の第2集になる。

バロック時代のこの作品を、モダンピアノを使って、そして最新の音響&録音技術を使う、という古楽アプローチのアンチテーゼのような作品作りなのだが、やっぱり自分はこういうアプローチ好きだなぁ。ただでさえ、この曲好きなのに、さらに近代的でハイセンスな雰囲気が漂っているように思ってしまう。

スカルラッティ・ソナタに関しては、「ホロヴィッツの再来」とまで言われているみたいで、ちょっと業界の宣伝入っている文言かな?(笑)とも思うけど、十分その資格ありと思う。




以上、これだけの彼のアルバムを2010年から5年かけて聴いてきたわけだが、BISレーベルにズドビンあり!という存在感が十二分に感じ取れる。

しかしパッケージメディアのSACD、つまりDSD2.822のマルチチャンネルでこれだけのサウンドが堪能できるのだから、自分はハイレゾなんていらないと思うな。(笑)

ゆうあんさんも言っていたが、自分もたぶんハイレゾのDSDマルチチャンネルの音声ファイルなんて、音質的にパッケージメディアには遠く及ばないんじゃないかな、と思う。

パソコン上で動くコンテンツプレイヤーなどが、5chの音声信号をきちんとデコードして位相も合わせて、オーディオに送り込める、そんな精度のいいもんとはとても思えない。現時点ではハードソリューションには遠く及ばないんじゃないかと。

先日の日記で、ストリーミングが主流になりそうだということも書いたが、よく考えると、リアルタイムにデコードしながら構築していくストリーミングだったら、尚更マルチチャンネル伝送・構築は、困難の極みのような気もしてきた・・・。

ここら辺のことは、いま正直あまり深く考えたくないね。


エルムの鐘交響楽団 演奏会 [国内クラシックコンサート・レビュー]

若い学生のときに、十分遊んでおけ、社会人になったらそんな暇なくなるから。と、よく使われる言葉であるが、全く逆だと思う。暇はたくさんあるけれど、知識、人生の経験がない、金がない学生時代にできることなんて、たかが知れている。大人になって、年を取るにつれて、経済的な力がついて、知識、人生経験も増え、価値観というものがわかってきて、このときにやれることのほうが、もう断然面白いに決まっている。

特に経済力があることが、やれることの幅を広げていて、相当大きい要因と思う。

人生年を取るにつれて、若い頃に比べて断然面白いに決まっている。

SNSの友人のつぶやきにあった言葉で、自分はまさにその通り!、自分の人生がそうだ。と偉く感動した一言だった。

そんな中でも、今考えると、自分の学生時代(大学)で悔いが残るとしたら、学生時代にオーケストラに参加するという経験をしなかったことだろうか。。。

小学生から中学生までの間、クラシックピアノを習っていた。当時男の子が習う”習い事”として、とても恥ずかしくて、学校の友人に内緒にしていたし、嫌で嫌でたまらなかった。だから遠い昔だけど、おたまじゃくしは読めるし、音楽の素養はあると思う。(^^;;(笑)

いま、この歳になって、とても悔いが残るのは、音楽の勉強をしてこなかったこと。(というか、する機会がなかったこと。)学生時代より、ずっと理系人間で、社会人でも技術者の人生を歩んできたので(もう引退しましたが。)、きちんと音楽に対峙して勉強した経験がない。

いま考えても、当時に人生に音楽を選択する余地なんて、まったくなかったので、技術の道を選んだのは必然の結果で、今になって悔いることなんてもちろんない。(当時はバブルの時代で、電気・電子関係は、もう引く手あまたの就職事情だったし、正直、音楽の道はちゃんとご飯が食べていける職業なのか???なところもあった。)

クラシック専門になってからも、独学で、自分の感性で聴いてきた。音マニアなので、どちらかというと、音楽・演奏を解析するというより、音を聴いているところがあって、これはオーディオマニアに対して、よく言われる言葉で、「音楽を聴いているんじゃなくて、音を聴いてますよね?」という有名なフレーズがある。

自分はそうだと思うが、別に恥ずかしいこととは思わないし、逆に普通の人にはない「耳の特技」で自慢にさえ思う。

でもここ最近、この特技にプラス、音楽、演奏家側の知識、感性が加わると、鬼に金棒というか、もうすごい人生が豊かになるんではないだろうか?と思うことだ。

本当に、ここ最近ではあるが、音楽を勉強する、ということを、いまからでいいからしてみたいな、と思うことがある。もう人生の晩年ではあるけれど。。。

そんなときに、学生時代にオケに入っていればな~という想いがあったのだ。

ゴローさんは東大にいたときに、学生オケでヴァイオリンをやっていた。そのときに音楽の素養を学んだ。なんの楽器でもいいから、楽器をやれるということは、絶対音楽の素養を養ううえで必要なことと常日頃言っていた。

NHKの音楽プロデューサー、ディレクターになるには、今後、(オーケストラでの)楽器演奏の経験がプロフィールにないとダメ、とまで断言していた。

まぁゴローさんの場合、学生オケに夢中になったあまり、大学時代の成績はみるみるうちに下がり、卒業の時は最下位だった、と自分で言っていましたが。(笑)

そんな話を、ゴローさんから聞いていたので、学生時代にオケに入らなかったことを非常に悔いた訳だ。でも冷静に考えてみると、やはりその当時、そんな発想は微塵もなかったし、たとえあったとしても、楽器を買うお金や、師匠に師事するお金など、ウチは超貧乏な家庭だったので、論外だったと思う。

人生の選択において、いまの自分は必然のなりゆきで、全く後悔などしていない。

前置きが長くなったが、我が母校の北海道大学(通称北大)には、もちろん学生アマチュアオーケストラがあるのだ。そして、その北大を卒業したOBたちが東京都内で集まって、都内でアマチュアオーケストラの活動をしている、という噂を前職時代の同期の友人から聴いていた。



「エルムの鐘交響楽団」


創立は、1994年に初の演奏会ということで、もう22年目に突入で、大体年に2回ペースの演奏会で、今回が33回目になる。

相当昔から活動していたが、これまた自分はつい最近までまったく知らなかった。

約90名の団員のうち、北海道大学交響楽団OBは約3割にすぎず、 大部分はこのオケの「音色にこだわり、アンサンブルを楽しむ」という ポリシーに共感して集まった仲間たち、というのが実情のようだ。

また、読響の元ソロ・コンサートマスターである藤原浜雄氏を招いた「アンサンブル合宿」、金管アンサンブルなど、演奏会以外の活動も活発に行っている。

さらには2013年には、イタリア・ビトント市で特別演奏会を開催した、というから、そういう国際的な活動もやっているとは驚くばかり。

北海道大学には、時を告げるためにエルム(ハルニレのこと)の木に ぶら下げて使っていた「エルムの鐘」というのがある。(確かに私の在学時代にもその存在は知っていた。)

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設立の際、発起人たちの「北のロマンチシズム」を表現したい というこだわりを象徴する名前として、「エルムの鐘交響楽団」とした。

演奏曲目も、北の大地のオーケストラらしく、北欧・ロシアものなどのほか、普段アマチュアが取り上げる事の少ない曲目にも積極的にチャレンジしている。

そんな情報を仕入れていたので、ぜひ我が母校のオケを聴いてみたい、という想いが募って、この日の公演を楽しみにしていた。

アマオケ(アマチュア・オーケストラ)を聴くなんて、いつ以来だろう?

mixiに入会した2009年ころに、オーディオ&クラシックのマイミクの友人と、毎週アマオケの演奏会に通っていたことがある。

懐かしすぎる!それ以来ではないだろうか?

演奏会場は、東京中野にある「なかのZERO」の大ホール。33回の演奏会は、ほとんどここで開催されている。自分は、中野という街は、ほとんど来たことがなくて、縁のない街なのだが、演劇や演芸、マンガ・アニメなどサブカルチャーに至るまで、東京の文化的拠点のひとつといえる街だと思う。

この日、街中を歩いていて、思ったのは、結構商店街や飲食店、居酒屋が多くて、和風な感じの街だなぁ、と思うこと。

彼らの拠点が、この街であり、このホールなのだ。


なかのZERO大ホール

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超驚きだったのは、その集客力!

はっきり申し上げると、「エルムの鐘交響楽団」として、なにか大きなプロモート宣伝を普段しているか?というと全くノーで、自分もほぼ1年前にこの楽団の存在を知って、FBの公式ページを登録したりしていたのでだけれど、広告、プロモートなど全くなし、と言っていい。

自分の事前の予想では、ガラガラの閑古鳥かな~ぐらいに思っていたのだが、ところが、である。
ホール開場前に並ぶ行列が、どんどんみるみるうちにご覧のように長蛇の列。

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結局キャパ1292人の大ホールは、ほぼ満員御礼なのである!(驚)

普段告知、プロモートなどをやらないアマオケで、ここまで集客力があるっというのは、ぶったまげた、と同時に我が母校を誇らしげに思った。

スタッフの人に聞いたら、今回に限らず、数年前から、おかげさまで大盛況なのだそうである。

告知・プロモートなしのアマオケで、ここまで毎回集客力があるということは、やはり北大OB、所縁のある方々が、リピーターになって通っている暖かい支えがあるからなのだろう。

公演チケット代金は1000円。とくに彼らのHPにあるPDFのちらしを持ってきてくれれば、チケットと交換で無料だという。(自分はこれにしました。)

自分の住所などを登録すると、次回の演奏会の案内も定期的に届く。

こういうシステムから、やはりリピーターがきちんとできやすいようになっているのだと思う。
(広告なしで、これだけ満員の大盛況というのも、ここ数年でのこういう地道にリピーターを増やしていったという結果の賜物なのかもしれない。)

でもたったの1000円、もしくはちらしと交換で無料というのは、もうチケット収入での運営なんて、まるで考えていなくて慈善事業のように思えてしまう。(笑)

アマオケは、団員たちは、みんな普段の仕事を持っている人達の集まりで、サブ活動としてオケをやっているに過ぎないのでボランティアのようでもかまわないんだろうな。


ホール開場。

ホワイエ

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そしてホール

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区民ホールという位置づけなので、さほど???と予想していたが、予想以上にしっかりした造りのように思えた。ステージ上空、そしてホール側面などは、音の反射、拡散を思わせる、いわゆる通常の専門クラシックコンサートホールにあるような壁の形状も、らしく存在している。

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面白かったのはデッドニング(吸音)での整音のためと思われるが、こういう布状の垂れ幕があった。(こんなあからさまなのは、初めて見た。(笑)微笑ましく思った。)

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音響も区民ホールとしては、上々で極端な違和感はなかった。

自分は、ほぼ中央列の中央ど真ん中に座った。(オーケストラは、やはり発音のエネルギーバランスを真正面から聴く、というのが持論です。)



開演。

オーケストラの登場の仕方に特徴がある。

「エルムのスタイル」と称していて、ふつうのプロのオケのように、一斉に登場するのではなく、開演前に、事前にステージに奏者が登場するのである。

エルムの鐘交響楽団のこの方法、アメリカのオーケストラにはよくある方法のようで、(「アメリカン・スタイル」と呼ばれている。)各奏者は開演前の好きなタイミングで舞台に上がる。本番の迎え方は人それぞれで、早く出て舞台の空気に馴染んでおきたい、舞台の音を確かめたい人もいれば、ぎりぎりで楽屋でゆるんでいたり、舞台袖で集中力を高める人も・・・・揃っての入場よりも各人、各人が気持ちよく演奏に入るほうを優先する。

このほうが舞台慣れしていないアマチュア奏者にはいいのではないか、ということでこの方式を採用しているのだそうだ。


さて、肝心のオケの印象。

アマチュアとしては水準が非常に高く、気持ちよく聴かせてもらった。

自分の予想以上にレベルが高かった。驚いた。

数年前に、アマオケを聴きまくっていたころに比べると、こんなに上手なオケは当時はいなかった、と思う。

特にこの日のメインディッシュのベルリオーズの「幻想交響曲」なんて、プロに肉薄するくらいのレベル、高揚感で感心した。

でも、そこはアマオケ。。。普段、日頃聴いている演奏と比較すると、どうしても気になってしまう点があって、辛口になってしまい申し訳ないが、それも愛のムチということで、ご容赦願って述べてみたいと思う。

1番気になったのは、管楽器のレベルがいまいち不満。

金管、木管ともに不満が大きかった。

特に金管の音色は厳しいものがあった。プロでさえ、金管が安定しているなんて難しいことなんだから、アマではしかたないかな、と思う。自分はある意味、オーケストラの楽器の中で1番難しいのは、金管楽器だと思っている。プロとの差を1番感じるのもここですよね。ホルン、トロンボーン、トランペットこのあたりの音色だろうか・・・音が外れるということもあるし、やはり肺活量的にというか、音色がプアでつらいものがある。これは全編を通じてそう感じた。

木管に関しては、もちろん吹き損じとかあった訳ではないのだけれど、やはり音色がプア。金管ははっきり上手下手がわかってしまうが、木管はそんなにわかりにくいかな、と普段思っていたのだが、やはり木管の音色もはっきり差が分かった。

色彩豊かな、嫋やかな洗練された音色ではなく、どうしても音色自体に表現、艶がない。
木管好きなので、余計採点が厳しくなって申し訳ない限りだが、気になるのは仕方がない。

でも感心した点は、木管はオケ後部のあの位置にあるにも関わらず、自分の座席にすっ~と通りが良くて、よく見通しく聴こえたことだった。これは驚き。どうしても弦楽器に隠れがちなのだが、かなり見通しが良かったので驚いた。

1番プロに近いと思ったのは、弦楽器群。

オケの大半は、このストリングス・セクションが占めているので、これがダメだと救いようがないのだが、これはじつに素晴らしいと思った。

特に弦の一斉のユニゾンは聴いていて、音の厚み、同時性ともにプロのようだった。敢えて不満を言えば、弦5部は第1,2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、後部にコントラバスという布陣だったが、ヴァイオリンのユニゾンが、もうちょっと音量が欲しいな、と思った。もっと大河のように、うねるように聴こえるものだが、やや音量不足気味に。

反面低弦群は素晴らしかった。弦の音色が立っていて、解像度も高い。(ゾリゾリ来る感じ。)

「第1ヴァイオリンが、ステージの左端からセンターまで席を埋め、主旋律を歌い、第2ヴァイオリンやヴィオラが 音楽を内から高揚させるように内声をきっちり表現していて、かつチェロ・バスの低音弦にはちゃんと拡がりと音としてのボディー感がある。」

自分がオーケストラに要求するこの弦楽器の基本がきちんと出来ているように思えた。

あとは、オーケストラ・サウンドの全体の聴こえ方、バランスですね。

管楽器類が落ちるので、全体のオケ・サウンドのバランスが崩れていて、統一感、締まりがない、散漫に聴こえてしまう。

これは仕方がないですね。やっぱりあれだけの大所帯のオケでも、どこかにウィークポイントがあると、全体的にピシっと締まらない。

プロでも、サウンドバランス的に、きちんと統一感あってピシッと聴かせてくれるオケなんて、日によって出来が違うのですから。

でも、もう一回言わせていただくと、アマオケとしては、素晴らしいレベルで、自分が聴いてきた中では最高のレベルと言っても過言ではない。特にメインの幻想交響曲は素晴らしかった!

我が母校OBのオケが、こんなに素晴らしいとは、本当に誇りである。

みんな普段の仕事を別に持っていて、練習時間もそんなに多くは取れないと思われる中、これだけの高水準の演奏を披露してくれるのだから、本当にスゴイとしか言いようがない。

この日誓ったことは、これからこの母校OBオケの演奏会を、今後通い続けていこうと思ったことだ。なんか自分の母校を想う気持ちが、趣味のクラシックを通じてできるなら、幸せなことだと思ったから。

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エルムの鐘交響楽団 第33回演奏会
2016/6/11(土)18:30~21:30
なかのZERO大ホール

指揮:佐々木 新平
管弦楽:エルムの鐘交響楽団


交響詩「レ・プレリュード」フランツ・リスト
小組曲「子供の遊び」ジョルジュ・ビゼー

休憩

幻想交響曲 エクトル・ベルリオーズ

アンコール
グノー「操り人形の葬送行進曲」


「エルムの鐘交響楽団」 
http://boeso.web.fc2.com/