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PENTATONEの新譜:グスターボ・ヒメノ&ルクセンブルク・フィルの「ダフニスとクロエ」 [ディスク・レビュー]

ラヴェルの「ダフニスとクロエ」は、「ボレロ」「スペイン狂詩曲」と並んでラヴェルの管弦楽曲の主要なレパートリーとされ、演奏機会も多い。

自分は、この曲がことのほか大好きで、ラヴェル独特の浮遊感や色彩感がもっとも顕著に堪能できる、じつに美しい秀逸な作品だと思っている。

曲の構造的にも、ライトモティーフ(主題)からなる交響曲のような構成を持っていて、それらの主題の展開(5つの主題とその動機の展開)が全曲を通して、全体の統一性を整えている、そんな感じの構成の曲なのだ。

もともとはロンゴスの「ダフニスとクロエ」というバレエ作品(1912年パリ・シャトレ座初演)に対して、ラヴェルに作曲を依頼された作品。

この演目は、実演にも何回も接していて、そして何枚かのディスク音源も保有しているのだが、特に音源のほうは、なかなか自分がこれ!といった感じで、満足させてくれる録音に出会えていなかった。特に、この「ダフニスとクロエ」で”5.0サラウンド”の音源は持っていなくて、ぜひ欲しい、とずっと恋焦がれていた。


そう思っていたところに、PENTATONEからの新譜で、まさにこれ!という録音がでた。 


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「ダフニスとクロエ」全曲、海原の小舟、亡き王女のためのパヴァーヌ 
グスターボ・ヒメノ&ルクセンブルク・フィル

https://goo.gl/S3vqFi



今世界が最も注目する若手指揮者の一人、スペイン、バレンシア生まれのグスターボ・ヒメノ率いるルクセンブルク・フィルによる演奏。

グスターボ・ヒメノは、もともとロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の首席打楽器奏者だったのだが、音楽家として指揮を学び、マリス・ヤンソンスの副指揮者を務め、2014年1月にヤンソンスの代役としてコンセルトヘボウにデビュー。

2015年に、そのRCOを率いて日本にもやってきた。サントリーホールでの公演だったと思うが、自分はその公演に行っていてヒメノの指揮を拝見させてもらっている。

なかなか指揮振りのスタイルも美しく、見事に統率していた印象が強く、キャリアが浅いとはとても思えない流暢な指揮だったように思う。舞台袖に下がるときに、なぜか小走りで急ぐのが、ご愛敬だったのだが。(笑)


最初のじつに聴こえるか、聴こえないかわからないくらいの微小な音、まさにオーディオ装置のS/Nの良さ、この微小音をどこまできちんと再生できるか、という再生能力を試されているような出だしから始まる。

やや録音レベルが小さめなのだが、その分ダイナミックレンジが広くて、なかなかの優秀録音。録音レベルが小さいので、平日の夜分に聴くと、どうもピンと来なかったのだが、きちんと大音量で聴くと、ダイナミックレンジが広いことがわかり、じつに素晴らしい録音だということがわかってきた。

ppのピアニッシモの音までじつにクリアに捉えられていて、ラヴェルらしい色彩感あふれる和声感あるハーモニーなど、部屋中に広がるグラデーション豊かな空間表現はなかなかだと思う。音質の傾向としては、PENTATONEらしい全体的に柔らかい質感は踏襲されている。

空間表現が秀逸=色彩感豊か、そして柔らかい質感、という方程式が成り立つ感じなので、ラヴェルのような浮遊感のあるフランス音楽を表現するには適切な調理の仕方なのだと思える。


サラウンドの効果もまずは水平方向にステージ感がうっすらと広がる感じで、ステレオ2chで聴くよりも定位感がぐっと増す感じでレンジ感も広い。

Auro-3Dなどの高さ方向もあるだろうか。空間感もしっかり感じる。

聴いた瞬間、誰でもわかる超絶にびっくりした録音ではなかった。現に最初はピンとこなかった。
でも聴き込めば聴き込むほど、じつに奥深くよくできた録音だと思えるようになった。


クレジットを見ると、いつものメンバーではなかった。

プロデューサー、エンジニア、編集は、カール・ブルッグッマン。やはり若手エンジニアの育成という面もあるのだろう。

これを見た瞬間、最初聴いたときに、PENTATONEサウンドを聴きなれている耳からすると、ちょっとテイストが違う感じにも感じないこともなかったが、それはあきらかに、クレジットを見た後だから。(笑)

そのトーンポリシーは、着実に若手に引き継がれている、と確信した。

ルクセンブルク・フィルハーモニーでのセッション録音。


ルクセンブルグ・フィルの演奏は、安定して厚みのある弦のハーモニーの美しさ、ビロードのように甘い嫋やかな木管の音色、そして全体のアンサンブルの完成度、と一流のオーケストラ・サウンドの基準を十分満たしている見事な演奏力だと思った。

なによりも、自分が心を寄せる「ダフニスとクロエ」を理想に近い形で表現してくれている。

その他に、海原の小舟、亡き王女のためのパヴァーヌなどの名曲も納められている。

長らくずっと欲しいと思っていたラヴェル「ダフニスとクロエ」の5.0サラウンド音源。心願成就。



じつは、ここ1か月間、ほとんど毎日このディスクばかり、ずっとヘビーローテーションで聴いているお気に入りなのだ。









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小澤征爾さんの新発売のBlu-rayは、なぜEuroArtsなのか? [ディスク・レビュー]

小澤征爾さんの待望の映像作品がリリースされた。


まさに、これから開幕しようとしている松本のセイジ・オザワ松本フェスティバルに合わせてのタイミングだと思われる。


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ベートーヴェン:交響曲第7番、第2番、合唱幻想曲 
小澤征爾&サイトウ・キネン・オーケストラ、マルタ・アルゲリッチ、他(2015、2016)
(日本語解説付)




もともとは、齋藤秀雄氏を偲ぶ音楽祭で冠も「サイトウ・キネン・フェスティバル松本」であったのだが、2年前の2015年から「セイジ・オザワ松本フェスティバル」に冠が変わった。その新しく冠が変わった2015年、2016年の小澤さんが指揮をしたオーケストラ・コンサートであるベートーヴェン交響曲2番&7番のライブ収録を2曲を収め、さらに2015年9月1日の小澤さんの80歳の誕生日におこなわれた「マエストロ・オザワ 80歳バースデー・コンサート」の模様も収録されているのだ。


このバースデー・コンサートでは、ベートーヴェンの『合唱幻想曲』が収録されている。友情出演したマルタ・アルゲリッチ、そしてナタリー・シュトゥッツマンやマティアス・ゲルネといったソリスト陣により演奏され、会場は大いに盛り上がった。


近影の小澤さんの活躍を観るには絶好の素晴らしいソフトだと思う。


ナイス企画!と言いたいところ。

自分は2015年の小澤さんのベト2は、直接キッセイ文化ホールでじかに観ていると思う。



ただ、どうしてもひとつひっかかることころがある。


それは映像ソフトの製作がEuroArtsというところだ。


なぜ、NHKじゃないのだ?


自分は、まずここにピンとひっかかってしまった。


小澤さんの映像ソフトというジャンルは、ゴローさんの聖域ともいえるところ。


過去に、ベルリンフィルとの「悲愴」、そして祝75歳を記念してのサイトウキネンとの歴史的コンサートを集めたアニバーサリーセット、とNHKエンタープライズ(NHKの子会社的存在で、NHKの映像ソフトをパッケージ化する会社)から出ている。


まさにゴローさん渾身の作だ。


EuroArtsは、まさにヨーロッパ最大のクラシック映像ソフト制作会社といってもよく、草創期より、オペラ、オーケストラコンサートのBD/DVDを製作、発売してきている。Blu-rayのフォーマットが世に出たときは、日本語字幕なしのオペラがやたら多くて、オーケストラコンサートは皆無だった。


そんな中で、NHKの小澤さん&ベルリンフィルの悲愴が出た。


BDでオーケストラコンサート!というのは当時では、かなりエポックメイキングな出来事だった。


ゴローさんからの内輪話では、ベルリンフィルは、業界初のBlu-rayを使うから快諾した、という。(笑)つねに技術の最先端をいくのは自分らだというベルリンフィルの伝統のプライドみたいなものが彼らにはあるのだ。アナログLPからCDへの切り替えも、ベルリンフィル(カラヤン)。


そして今度は・・・。(笑)


そこからEuroArtsでもBlu-rayで数多くのオーケストラコンサートを出すようになり、まさにヨーロッパのオーケストラ・コンサート、オペラのパッケージ製作会社としては第1人者といっていい現在のポジションに至る。


ゴローさんは常日頃、このEuroArtsの存在に尊敬の念を払いつつも、彼らの作品の映像の捉え方、カメラーワークがどうも自分のポリシーと違うようで、苦言をボソッと呈していた。


NHK(ゴローさん)のオーケストラを撮るカメラワークの基本は、全体を遠景から撮ること。

不自然なアップなどを多用しないこと。
あくまでコンサートホールで観ているかのように自然のまま、であること。


ここに拘っていた。


ところがEuroArtsの映像の捉え方は、ソフトを観ている者が感動するように、その音楽のフレーズ、リズムなどの節目節目で、格好良く感じるように、その瞬間にパンで、ある奏者を抜いたり、という画像の切り替えが頻繁で、音楽に合わせて、かなり意識的で人工的なカメラワークなのだ。


これがゴローさんにはどうもあざとく感じるらしく、気に入らなかったようだ。
自分のオケの撮り方とは違うみたいな。


これは確かに、自分もあまたのEuroArtsのソフトを所有しているので、間違いないと思うところで、ゴローさんの言っていることは正しい。


でもこれって人の鑑賞基準によるところが大きくて、自分の親友なんかは、NHKのカメラワークは、なんかサラリーマンみたいで平凡でつまらない、という。(笑)EuroArtsのほうがカッコいいカメラワークという。人それぞれの感覚ですから、どちらが正しいとは言えないですね。


あと、これは自分が大きく感じるところだが、EuroArtsが採用しているサラウンド音声のコーディックが、DTS-HD Master Audio 5.1というコーデック。


サラウンド音声という点では、今まで数多のEuroArtsのソフトを観てきたけれど、正直彼らのこのコーデックのサウンドで感心したことは1回もなかった。悪いサウンドではないけれど、いいサウンドとも言えない。


音が薄くて、ペラペラした感じのサラウンドなのだ。(とくにオーケストラ・サウンドにとって重要な低域がややスカスカ) とりあえずサラウンドにしてます的な。。。


ゴローさんはBDのお皿の容量をフルに使って、非圧縮のPCM 96/24に拘っていた。
こちらのほうが音がぶ厚くて、芯のあるいいサラウンドだった。


一度地方オーディオオフ会で、EuroArtsソフトとゴローソフトを比較して視聴したところ、同じような感想をもらい、自分の意を確かなものにした経験があった。


EuroArtsといえば、もういまやヨーロッパを制圧するソフト制作会社であるのだが、自分には、そのカメラワークとサラウンド音声のクオリティから、どうも???というイメージを持っていたのだった。(でも世の中のヨーロッパのコンサート、オペラはほとんどEuroArtsなので、コンテンツ見たさには、さすがにかなわず、かなり大量に持っているのです。(笑))


そこで、今回小澤さんの新ソフト、えっ!なんでEuroArtsなの?


いままでの経緯から小澤さんといえば、NHKから出すのが本筋でしょ?


自分がそう思うのは当然。ここにかなりの違和感があった。


EuroArtsが製作したということは、会場に持ち込んだカメラ、音声収録機器も、全部彼らが外国から持ってきたのだろうか?いや、そこは、やはりNHKとか長野朝日放送とかの機材で賄い、編集だけをEuroArtsがやったのか?


そもそもEuroArtsに小澤さんのソフトを作らせる、という決定は誰がしたの?


もう頭がグルグル回る。(笑)


じつは、その決定は小澤さん本人がしたことなのかも?とか。


小澤さんは、EuroArtsとも多くの仕事をしている。


自分が記憶にあるだけでも、カラヤン生誕100周年記念を祝して、ベルリンフィルで、ソリストにアンネ・ゾフィー・ムターを従えてウィーン楽友協会でやったとき、これもEuroArtsの作品だった。(自分の愛聴盤。擦り切れるくらい観ました。ベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲、この難曲を。ゴローさん曰く、ムター、うますぎなんだよ!(笑))


以前、ゴローさんのNHK内での上司だった方に伺った話。


小澤さんという人は仕事をいっしょにしていくには非常に難しい人らしく、その最たる要因はFinal Approval(最終承認)という作業だった、という。普通の場合、収録した後は編集権はメディア側が持つものなのだが、小澤さんは違った。この最終承認というのは、小澤さんの作品を収録をした場合、それを市場にリリースする前に必ず小澤さん本人に見せて承認を得ないといけない、という取り決めがあったのだそうで、作品が完成したそういうときは、大抵小澤さんは世界中のどこかにいる訳で、そこまで追っかけて行って、本人に見せて承認をもらっていたという。


それをじつに忠実に守ってやっていたのがゴローさんだったのだという。


う~む、この話を思い出したら、きっと今回の新作品についても、このFinal Approvalはやっていたに違いない。 誰が(まさかEuroArtsの人?)、小澤さんのところに行って、それを見せたのか?とか。


世に出た、ということは小澤さんが承認した、ということ。


きっと違和感などないのだろう。自分が心配しているようなことは徒労に終わるに違いないと確信している。


またEuroArtsに販売権を持たせれば、彼らの販売ネットワーク網に乗せることになり、そのほうが、その膨大な顧客層を期待できるという大人の計算もあるのかも?確かにNHKのソフトとしてより、EuroArtsのソフトとして売るほうが、売れるのかも?


SNSのTLに流れるニュースなどで、この新作品のパッケージの表示を見て、左上にある小さなEuroArtsというロゴを発見した途端、いままで書いてきたことが走馬灯のように頭の中をよぎって違和感を感じた自分。


やはりちょっと変わった人間だろうか?(笑)


毎度のことなのだが(笑)



話を明るい方向に持っていって、最近の小澤さんの近況の話でも。


先日8/1、トッパンホールで小澤国際室内楽アカデミー奥志賀2017で、アカデミー生らと見事な弦楽四重奏を披露。


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チャイフスキーの弦楽セレナーデハ長調 op.48 より第1楽章。アカデミー生と小澤さんがひとつになって奏でる圧巻の合奏はまさに感動の一言だったそう。小澤さん、元気そうでなにより。


そして、いよいよ8月13日から開幕するセイジ・オザワ松本フェスティバル。


最近は、オペラは小澤征爾音楽塾に任せる感じで、自分はオーケストラコンサートに専念する感じ。これは年齢、体力的にも適切な判断だと思いますね。


オーケストラコンサートでは、ファビオ・ルイージでマーラー9番。ナタリー・シュトゥッツマン&小澤征爾で、小澤さんはベートーヴェン レオノーレ序曲 第3番を指揮。


そして1番の目玉は、


なんと!内田光子さん登場で、小澤さんとで、ベートーヴェン:ピアノ協奏曲 第3番を披露!これは聴きに行きたいなぁ。でもプラチナで無理。(^^;;


内田光子さんは、その他にリサイタルもやってくれるようです。


自分が、この音楽祭でぜひ行ってみたいのが、松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)での公演。このホールは最近メチャメチャ音響がよいことがわかってお気に入りになってしまったので、ぜひこのホールで開催される松本の音楽祭のコンサートに行ってみたい。


ゴローさんへの義理という面もあって、毎年通っていた松本の音楽祭。


やっぱりこの夏休みの季節になると、不思議と、あの汗ダクダクかきながら松本市内を歩いて、珈琲美学アベでモーニング、信州大前のメイヤウで、4色カレーを食べて、信州蕎麦の「こばやし」でそばをいただき、その向かいにある居酒屋「ゴロー」の写真を収めてのワンパターンを無性にやりたくなります。


今度行ったときは、居酒屋ゴローで一杯やりたいと思います。(笑)


セイジ・オザワ松本フェスティバル、今年も大盛会を祈って!



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 (C) Michiharu Okubo

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PENTATONEの新譜:山田和樹&児玉麻里 スイスロマンドのファリャ作品集 [ディスク・レビュー]

スペインの巨匠ファリャの作品を取り上げるというセンスがいい。スペイン民族音楽のとてもエキゾティックな旋律の数々が素敵すぎる。

クラシック商業主義、いつもベートーヴェンやマーラーじゃつまらない。いい仕事していると思う。マイナーレーベルだからできるチャレンジなのだろう。

ひと通り聴いてみて、普段全く聴かない、そしてあまりに新鮮で卓越した音楽センスに引き込まれ、あっという間にファリャの虜になってしまった。 

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『三角帽子』『スペインの庭の夜』『火祭りの踊り』、他 
山田和樹&スイス・ロマンド管弦楽団、児玉麻里


https://goo.gl/csNW2H


「ファリャを聴かずしてスペイン音楽を語るなかれ」だそうで、マヌエル・デ・ファリャは、スペイン近代音楽を完成させたといわれ、後続の迷えるスペイン人作曲家たちにも大きな指針を与えた重要な作曲家だそうであるから、まさにこの1枚を聴けば、スペイン音楽の本流に到達、そして堪能できるのであろう。

この1枚には、なんとそんなファリャの最高傑作といわれている作品群が、全部集まっているのだからおいしいことこの上ない。いままでのPENTATONEの山田和樹に対するプロデュースの仕方も、このように、あるテーマを設けて、それに纏わる最高作品群を集めるコンセプチャル・アルバムという毛色が多かったので、今回の作品もとても納得できる。

ファリャの最高傑作の呼び声高いバレエ音楽「三角帽子」、そしてピアノと管弦楽のための「スペインの庭と夜」、そしてバレエ音楽「恋の魔術師」の中から単独で演奏されることで有名な「火祭りの踊り」など。

とにかく聴いてみてほしい。あまりに斬新な旋律で格好いい。
スペインの民族主義と印象主義の両方がバランスよく混在している、なんとも形容しがたいエキゾティックな調べの数々なのだ。

これらの作品群を山田和樹とスイスロマンドで演奏し、スイス・ジュネーヴ・ヴィクトリアホールで収録しているのだから、堪らない。

ピアノと管弦楽のための「スペインの庭と夜」では、ピアノに児玉麻里さんも参加している。
まさに夢のような豪華共演。


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(C) Polyhymnia International BV Facebook Page

録音スタッフは、プロデューサー&バランスエンジニアとしてお馴染みエルド・グルード氏。そして録音エンジニア&編集にカーレル・ブルッグマン氏というクレジットがある。ポリヒムニアも若いエンジニア育成の期に差し掛かっているのだろうか?

たぶんAuro-3Dを使っての収録。ダイナミックレンジが広くて、オケが鳴りきるときの沈み込みも深くて、空間感が秀逸。

オーケストラ録音では、音像も大切だが、より広い音場を余すことなく録りきるところに成功のカギがある。ヴィクトリアホールは、ウナギの寝床のような感じで、決して広いホールではないのだが、空間の再現性が素晴らしいのも収録技術&編集の巧みのなせる業なんだろう。

弦の音色も厚くて、濡れたような艶やかな旋律を描いてくれる。

私見であるが、現在のスイスロマンドの弱点は、金管の不安定さかな、という意見を持っていて、現地ヴィクトリアホールで直接聴いたときもそんな印象を持ったし、彼らのPENTATONEの新譜も歴代聴いてきているけれど、その印象を拭えなかった。

でも今回に関しては、そんな綻びも見当たらなく、素晴らしい出来栄えになっている。

素晴らしい。


とにかく今回は、このスペイン民族音楽のゾクゾクするような斬新な旋律にやられた!


 


BISの新譜:魅惑的な歌曲集 [ディスク・レビュー]

昨晩のエリーザベト・クールマンのリサイタルで、リストの歌曲を歌ってくれて、最近発売になったBISの新譜でリスト歌曲集を毎日のようにヘビーローテーションで聴いていることを書いた。それで、遅まきながらこの新譜のことを紹介しようと思った。

またリスト歌曲集以外にも魅惑的な歌曲集がもう1枚、BIS新譜として出ているので、これもまとめて紹介しようと思う。

まずカミラ・ティリングのオペラ・アリア集。 

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オペラ・アリア集~モーツァルト、グルック 
カミラ・ティリング、フィリップ・フォン・シュタインエッカー&ムジカ・セクロルム


https://goo.gl/OU0qnf



カミラ・ティリングは北欧スウェーデンの実力派ソプラノ歌手で、BISレーベルからすでに3枚のアルバムをリリースしている。

サイモン・ラトルがザルツブルク音楽祭でマタイ受難曲をベルリン・フィルと演奏した時、ソプラノ・ソロに招かれて一躍有名になった。

2年前にアンネ=ゾフィー・フォン・オッターといっしょに来日してくれて、デュオで歌曲リサイタルを開いてくれた。もちろん馳せ参じた。素晴らしいコンサートであった。

オーディオで聴くティリングは、ソプラノでも極めて透明で軽い声、いわゆるエンジェル・ヴォイスである。

でもコンサートの実演で聴いた彼女の声質は、どちらかというと声量豊かなダイナミックな感じで、オーディオで聴いていたようなエンジェル・ヴォイスとは少し雰囲気が違う感じがした。オッターとのジョイントで聴くと、どうしてもティリングのほうが、声の表現に少し抑揚や表情がない感じで、1本調子のように感じてしまう。オッターのほうが深みがあるというか、表情が豊かで気品もある、という感想を当時書いていた。

それはキャリアからしてオッターのほうが一日の長があるはずだし、そういう相対的に見るのではなく、絶対的評価に見れば、やはり素晴らしい若手の有望株であることは間違いなく、彼女のアルバムを聴くたびにその将来性の大きさを感じ取れる歌手である。

自分は彼女のファンである。

過去の3枚のアルバムは、どれも秀逸だが、特に歌曲王シューベルトの歌曲集が素晴らしく感銘した。

そんな彼女の今回の新譜は、モーツァルト、グルックのオペラ・アリア集。

オーケストラはドイツの逸材シュタインエッカー率いる南チロルのピリオド・オーケストラ、ムジカ・セクロルム。このオケの情報は、まったく知らなかったのであるが、古楽器を利用する団体でもあるようだ。


モーツァルトらしい明るい調性のオペラ・アリアを中心に編成されていて、誰が聴いても親しみやすい旋律の宝庫、アルバム自体がとても明るいトーンでとても魅力的に仕上がっている。

オペラ・アリア集というコンセプト自体、とても親しみやすいし聴いていて気持ちがいい。
ティリングの声は相変わらず、透明感があって、軽い声質に聴こえる。ややキーが高いようにも思える。

聴いた感じ印象が、清廉で純白な清いイメージを抱く感じの瑞々しさがある。

録音は、まさにBISらしいのひとこと。マイクから程よい距離感がある感じに聴こえて、オケの音など古楽器独特の響きの漂いもあり、全体に軽くて薄味のサウンドに仕上がっている。でもソプラノの声質をメインに主張するには、塩梅のよい主従の関係なのだ、と思う。

お薦めです。



そしてつぎに、昨今自分が嵌りに嵌っているリスト歌曲集。 

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リスト歌曲集 
ティモシー・ファロン、アミエル・ブシャケヴィッチ


https://goo.gl/qrKtz1


このディスクには嵌ってしまった!毎日ヘビーローテーションで聴いていて、頭の中に1日中そのメロディーがループしているのだ。

リストの歌曲ってなんと美しいのだろう!

そして、なによりもテノールのティモシー・ファロンのビロードのように甘くて語り掛けてくるように説得力のある声質!

発声に余裕があって、懐が深いという感じ。

これには完璧に参ってしまった。もうメロメロである。

人の涙腺を緩ませるような惚れ惚れとするような美しい旋律の歌曲の集まりで、そこに、この甘くて切ないファロンの声質と相まって、歌曲大好きの自分にとって最高のプレゼントとなった。

いままで歌曲と言えば、歌曲王のシューベルトをはじめ、シューマン、シュトラウスなどを好んで聴いてきたが、リストの歌曲は、あまり熱心な聴き手ではなかった、というかその存在をよく把握していなかった、というのが正直なところ。情報もあまり持ってない。

Eratoからディアナ・ダムラウがリスト歌曲集を出しているはずだが、持っていたような気がするのだが、死蔵状態になっているかも。

リストの歌曲がこんなに美しいと知って、いろいろ集めてみたい気がしてきた。

ティモシー・ファロンについては、鈴木雅明、リリング、オルソップなど、世界の名だたる指揮者と共演し活躍の幅を拡げていて、マレク・ヤノフスキもその実力を認めている、という情報くらいしかないのだが、これだけエレガントで明るい声の持ち主であれば、将来本当に楽しみなテノールであろう。

自分はどちらかというと、低音より高音歌手のほうが好きで、さらに男性テノールより女性ソプラノのほうが好きなのであるが、テノールで、これだけ自分の興味を引いたのは、あのフォークト以来かもしれない。

録音も意外やBISらしくない。遠くなく、しっかりと実在感のあるサウンドでいて、空間感も両立している素晴らしいサウンドに仕上がっている。

このリスト歌曲を昨日エリーザべト・クールマンのリサイタルで、女声としての表現を聴いて、これまた新しい魅力だなぁ、と感じたのである。





 


PENTATONEの新譜:コジュヒンというピアニスト [ディスク・レビュー]

この新譜は間違いなくAuro-3Dで収録している。ポリヒムニアがそう宣言して投稿していた。

Auro-3Dはベルギー発の3次元立体音響のフォーマット。

基本用途は映画での使用で、従来のX-Y軸の水平方向のサラウンドだけではなく、Z軸の高さ方向のディメンジョンを加えた3次元空間での音表現を目的としていて、高さ方向として天井SPを配置した9.1chなどの3Dサラウンド環境で聴くことを前提としている。

でも、この開発者は、もともとは教会で聴く音楽を、自分の周りを美しい音の響きで包まれたような(彼らの用語でイマーシブ・サウンドという呼び方をしている)、この感覚をぜひ再現したい、というところからスタートしていて、そのルーツにはやはり音楽があった。

その点、Dolby AtmosやDTS-Xなどと比較すると、より音楽的アプローチの色合いが強いフォーマットなのだと思う。

そこにポリヒムニアが着目して、Auro-3Dを、いわゆる収録時でおこなう隠し調味料的な使い方をするようになった。

別に9.1chの天井SP環境で聴かないといけない訳ではなく、従来の5.0chのサラウンド&SACDという物理媒体フォーマットで聴くことが前提で、でも聴いてみると、しっかりと高さ方向の3次元空間が感じ取れる、いわゆる下位互換が成り立つ、そんな隠し調味料的な使い方で我々に、このフォーマットを紹介してくれた。

だからブックレットを見ても、Auro-3Dというロゴもないし、記述も一切ない。

つまりPENTATONEの新譜は、どれがAuro-3Dで録っていて、どれがそれじゃないのか、など普通では知り得ないのだ。

でも大体聴いたら一発でわかります。(笑)

でも、今回のこの新譜は、最初からポリヒムニアが、Auro-3Dで録っていると宣言していたので、だから着目していたのだ。

録音ロケーションは、ポリヒムニアにとってもう専属契約スタジオと言っていい、オランダ、ヒルフェルムス、MCOスタジオ5。

そのときのAuro-3Dでのセッションの様子。(以下に掲載する写真は、FBからお借りしています。)


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そんな楽しみな1枚だったのが、このディスクだ。 


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ブラームス主題と変奏、バラード集、幻想曲集 

デニス・コジュヒン


https://goo.gl/0Epwr6 (HMV)

https://goo.gl/a5i7oh (Amazon)

https://goo.gl/7mTfV3 (Tower Records)



デニス・コジュヒンというロシアの俊英ピアニスト。 


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世界三大ピアノコンクールの一つに数えられるエリザベート王妃国際コンクール。

その2010年の覇者である。

2011年、2013年、2014年と立て続けに日本公演を行ってくれていて、音楽仲間による、その公演評は、ほとんど絶賛の嵐という凄い評判であった。

自分は実演に接することはできていないのだが、そこまで凄いピアニストであるならば、ぜひ聴いてみたい、観てみたいと思うのが心情というもの。

そんな情報を持っていたので、そんな彼が去年の2016年にPENTATONEの専属契約アーティストになったことは驚きだった。

PENTATONEからの第1作目は、チャイコフスキーとグリーグのピアノ協奏曲。これは、まだ聴いていないので、今回の新譜を聴いて、あまりに素晴らしかったので、ぜひこの1作目も聴いてみたいと思い、慌てて注文しているところである。

2作目にあたる今回の新譜は、ブラームスのピアノ独奏作品をとりあげた。
クララ・シューマンに献呈された「主題と変奏」で、弦楽六重奏曲第1番の第2楽章をピアノ独奏にブラームス自身が編曲した作品。そして「バラード集」と「幻想曲集」。

ブラームスのピアノ独奏作品に特有な内省的でありながら叙情的でもあるその調べを、まるで濃淡のくっきりした水墨画を観ているかのように、描き上げる表現力はかなり聴きごたえがあって、さすが評判が高いだけあると自分も認識できた。

とくにピアニッシモの弱音表現が素晴らしく秀逸で、ソフトなピアノタッチが柔らかく安定していて、そして奏でられる音色の柔らかい質感。

これって、かなり難しい。

ピアノって、速射砲のように連打するトリルのような表現が、いかにもピアノが上手いと思われがちだが、じつは弾く側の立場からすると、超弱い打鍵で、優しく、長く安定して弾くことのほうが遥かに難しい技術なのだ。

このコジュヒンというピアニスト、もちろんブラームスの独奏作品ということもあるかもしれないが、この弱音表現が、じつに深みがあって、情感豊かで、こちらに訴えかけてくるような雄弁さがある。

たしかに凄いピアニストの片鱗を垣間見た感じ。

ぜひ実演に接してみたいピアニストだ。

なんでも今年の秋にまた来日してくれるという噂もあるし、ベルリンに今年の3月にオープンする新室内楽ホールである「ピエール・ブーレーズ・ザール」(去年亡くなったフランスの作曲家&指揮者のピエール・ブーレーズを冠にしたホールで、ダニエル・バレンボイムが中心となるバレンボイム・サイード・アカデミーの本拠地。)でも、ベルリン・フィルのエマニュエル・パユとデュオのリサイタルをやるそうで、これは行ってみたい。(ホールもすごく興味があるのだ!)


そして、お待ちかねのサウンドの評価。

まずすぐに印象に残ったのは、ピアノの音色の質感が、すごく洗練されていること。従来のPENTATONEのピアノの柔らかすぎな音色ではなく、かなり洗練されている。そう!先日の児玉麻里・児玉桃姉妹のチャイコフスキー・ファンタジーの音色と全く同じ毛色の質感に感じる。

PENTATONE(ポリヒムニア)はピアノの録り方がうまくなったよなぁ。(笑)

基本はやや硬質気味で、ほんのり響きがうっすら乗って潤いあるみたいな感じ。キンキンしたキツイ感じはないし、どんより籠っている感じもない。

バランスが取れた洗練された潤いのある音色の響き。

そしてなによりやっぱり立体感だよなぁ。もう何回も口がすっぱくなるほど言っているけれど、そのホール&スタジオでの空間、エアボリュームの気配感を感じるような音の佇まい。

ピアノが鳴っている音と、この空間とのバランスが見事に調和していて、じつに立体的に聴こえて、これぞ優秀録音という感じで、いかにもオーディオマニアが喜びそうな録音に仕上がっている。

高さを含めた3次元の空間で音が鳴っているように感じるのは、やはりAuro-3Dで録っている効果なのだろう。

一度、こういう「音のさま」で聴いてしまうと、もう後戻りはできないと思う。

もう実現しているのかもしれないが、これだけ効果がてきめんで聴こえるなら、今後もずっと全作品ともAuro-3Dで録ってほしい。

今回のトーンマイスターは、バランスエンジニア&ミックス&編集とも、エルド・グロート氏の仕事。さすがの一言!いい仕事をする。

ディスクレビューの日記を書くのは、結構エネルギーがいるので、このところ立て続けに書いていることもあって、今回の新譜は日記を書かないつもりだった。

でも、これだけ素晴らしい録音で、素晴らしいピアニストを聴くと、やはり日記に書いて紹介しないと罪作りだと思えた。(笑)

PENATONEは、本当に素晴らしい希有のピアニストを、自分たちの布陣に加えることができたと心から嬉しく思う。


児玉桃さんのECM録音 第2弾 永遠のパートナー [ディスク・レビュー]

ECMというレーベルは、マンフレート・アイヒャーによって設立されたレーベルで、ミュンヘンに拠点を持つ。まさにアイヒャーのワンマンと言ったら語弊があるが、彼の持っているビジョンが、レーベルのすべてのカラーを決めているような一種独特のセンスを持ったレーベルだ。

厳冬を思わせるシルエットで統一感のあるジャケット、寒色系でリバーブを少しかける鋭利なサウンド、メジャー路線には決して屈しない拘りぬいた所属アーティストのプロデュース、すべてがアイヒャーの持つポリシーのもとで、運営されている。

このようにあらゆる面で、レーベル全体が統一感をもって企画されているため、万人受けではなく、最初から固定ファン層を獲得することに狙いを定めているように思える。

かなり個性のあるレーベルだと思う。

元々ジャズをメインに録音してきたレーベルなのだが、1984年にECM New Seriesと称して、現代音楽、バロック音楽などの録音も始めるようになった。このジャンルが、彼らのECMレコードのクラシック録音ということになる。

こんな強烈に個性のあるレーベルに、日本人としてECMと初めて契約して、CDを出したアーティストがいる。

ピアニストの児玉桃さんだ。

2012年に第1弾が出て、武満さんやラヴェル、メシアンの曲などを収録している。

自分はこのCDの存在を後年に知ったのであるが、ECMから日本人がCDを出せるなんて、ということで、大層驚いたし、素晴らしい優秀録音で、自分の日記にも書いた。

そして、ついに第2弾が出たのだ。 


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『点と線~ドビュッシー:12の練習曲、細川俊夫:エチュードI-VI』 児玉 桃

https://goo.gl/pOBNMq (HMV)

https://goo.gl/QtiZOS (TOWER RECORDS)


作品は、ドビュッシー晩年の名作「エチュード(練習曲)」に、日本の現代音楽作曲家の細川俊夫さんが作曲した「エチュード(練習曲)」を交互に挟みながら構成されているコンセプトアルバムである。

なぜドビュッシーのエチュードと、細川さんのエチュードを交互に挟んだ構成なのか?

これはライナーノーツに児玉桃さんが詳しくそこに至るまでのプロセス、心情の過程を寄稿している。

いままで長い間、リサイタルで、ドビュッシーの曲を弾いたり、細川さんの曲を弾いたりしてきたことで、この2人が、前任者と後継者の関係にあるという立ち位置で、自分の中には、浮かび上がってくるのだそうだ。

そして桃さんが、アイヒャーに、この2人の作品(エチュード)を交互に配列して弾くことを提案。

でもこの試みには、もうひとつ大きな個人的見解があって、フランスと日本の音楽家、アーティストには、お互いの国の文化を交互に尊敬しあう興味深い嗜好があること。ドビュッシーは、日本の文化を深く愛していた。彼の作品の交響詩”海”の初稿の表紙には、葛飾北斎の画が使われていたり、フランスの画家のモネは、日本の木版画をコレクションしてたり、非ヨーロッパ的なものに憧憬の念を抱いてきた。

片や、日本人の作曲家の武満徹さんは、ドビュッシーに代表されるようなフランス音楽に大きな影響を受けてきた。

このようにフランスと日本人の芸術家たちは、お互いの文化を尊重し合ってきた。細川さんの曲を初演含め、委託されて弾くことの多い桃さんにとって、細川さんの曲は、とくにドビュッシーの曲に相通ずるものが多いのだそうだ。

自由な作曲技法、配色の重ね合わせ&表現などなど。特に黙想を思わせる”間”や、音楽表現の中に現れる、詩的表現、叙情的表現などがとてもかなり深い部分で、この両作曲家には共通しているものを感じるとのこと。

そんな想いから、両作曲家の曲を交互に並べるというコンセプチュアルなアルバムをアイヒャーに提案し、実現となったようだ。

以上は、児玉桃さんの寄稿の部分を私の拙い英語読解力で書いているので、かなり曖昧なこと、お許しください。(笑)



実際アルバムを全般に聴いてみての私の印象を述べてみる。

ドビュッシーと細川さんの曲を交互に並べ再生されるのだが、ドビュッシーは薄暗い闇の中の微かに漏れこんでくる採光、そして続く細川さんの曲は、陰影感たっぷりの漆黒の世界というまさに”明・暗”の世界が交互に並んでいるように自分には聴こえた。

でも、そこには、両者とも、現代音楽特有の前衛的な表現が共通していて、隙間の美学、鋭利な音表現の世界は、確かに相通ずるものがある、と自分にも理解できる。


いやぁ、かなり芸術的で抽象的・文学的でさえある精神性の高いアルバムに仕上がっているなぁ、と思いました。


かなり硬派な路線のアルバムです。

こういう硬派路線では、サウンドのクオリティーが高くないと洒落にならない。


そこで・・・サウンドの評価。

2chステレオ録音。

前作のECM録音第1弾は、先入観なしに聴くと、それはそれは素晴らしい録音なのであるが、どちらかというとオンマイク気味の録音で、ECM独特のリバーブを施しているのがはっきりと分かる感じのテイストであった。

ギラギラした感じの結構鮮烈なサウンド。

自分の好みからすると、もうちょっと空間感というか、マイクとの距離感が欲しい感じがして、スタジオもしくはコンサートホールのエアボリュームの存在が分かるようなアンビエンス&気配感があったほうがいいな、と感じた。

ある空間の中で、発音体があって、その空間と、実音&響きの3セットが遠近感含めバランスよく”立体的”に聴こえる。どこからか俯瞰して聴いているような感じの聴こえ方が好きなのだ。

つまり、ダイナミックレンジの広い録音が好きなんですね。

これはあくまで、自分の耳の好みの問題ですから、絶対値評価ではありません。人それぞれですから。

でも今回の第2弾は、まさに自分のそのような気になっていた点を全部払拭してくれたかのような出来栄えだった。

本音だよ。自分は録音評にはお世辞は言いません。

1番気になっていたマイクとの距離感もややオフマイク気味でいい感じ。そしてなにより大切な適度な空間感がある。1発目の出音を聴いたときのホッとしたこと。(笑)

やはりECM録音。

全般の印象からすると、やっぱり全体的にうっすらリバーブかけているような感じはする。でも、そのリバーブをかけているのか、かけていないのか、わからない程度のナチュラルなピアノの音色の質感は好印象。

非常にしっとりと滑らかな質感で、実際の生演奏のピアノの音に近い。クリスタルな透明感も文句ないし、高音域にいくほど煌びやかに聴こえるのも、やはりややリバーブをかけているためにそう聴こえるのか?

とにかく前作と比較すると、文句なしに断然に洗練されている。

素晴らしい!と思う。

やはり技術の日進月歩は本当に素晴らしい。

2chのピアノ録音作品としては、文句ない作品だと思う。自分好み。
DGのピアノ録音と遜色ないどころか、煌びやかさでは優っていると思います。

自分はサラウンド専門なので、オーディオオフ会で、お披露目する2chソフトってなかなか候補が少ないのだが、いいソフトに出会えたという印象である。


とにかく作品がかなり硬派な路線なので、それをきっちりサポートしているサウンドのクオリティの高さは本当に大切なこと。

今回の作品を聴いて感じたことは、やはり演奏家、アーティストにとって、自分のカラーを、きちんと表現、具現化してくれる永遠のパートナーに出会えるかどうか?ということが、その演奏家にとって、自分の演奏家人生の運命を決める大事なことではないか?ということであった。

児玉桃さんは、どちらかというと現代音楽がカラーの演奏家。
そういう意味で、細川俊夫さんとのパートナーはとても、大きな出会いでもある。

今回のECM録音のトーンマイスターは、前作の第1弾と同じステファン・シェールマン氏が担当している。やはり長年にわたって成功してきている演奏家は、自分の音を具現化してくれるトーンマイスターの、これまた永遠のパートナーがいるものなのだ。

自分がすぐ思いつくだけでも、

内田光子さん。

フィリップス時代から現在に至るまで、現ポリヒムニアのエベレット・ポーター氏が彼女の音をずっと録り続けている。


そしてエレーヌ・グリモー。

DGに移籍してから、というものの、ほぼ全作品といっていいほど、シュテファン・フロック氏が彼女の音を担当している。

長らく成功しているアーティストは、このように二人三脚で、自分のカラー、自分の音を知り尽くしてくれている、音職人のパートナーがいる、いや育ててきているものなのだ。

児玉桃さんに至っても、このECMのステファン・シェールマン氏がそのような永遠のパートナーになっていくことを心から願ってやまない。


 


PENTATONEの新譜:児玉麻里・児玉桃によるピアノ・デュオ「チャイコフスキー・ファンタジー」 [ディスク・レビュー]

ピアノ録音で素晴らしいと思うレーベルは、2chなら文句なくDG、そして5.0サラウンドならBISといったところが自分の好みの基準。

特にDGなんかは、歴史・伝統があり、数多のピアニストの作品を残してきた。最近の新鋭ピアニストが、みんなDGとそそくさに契約してしまうのは、そういった過去の積み重ねと、他レーベルを圧倒的に駕倒する、その歴然としたピアノ録音の技術レベルを感じ取っているからではないだろうか?

DGやBISに、どちらにも共通する、そのピアノサウンドの特徴は、硬質でクリスタル系であるということ。

特にBISは、全体的にクールダウンした温度感低めのサウンドで、ワンポイント録音の彼らは、マイクから程よい距離感があって、そういう空間がはっきり認識できて、その中でクリスタルに鳴るので、異様に美しく感じる。どちらかという薄味のサウンド。

それに対し、DGは、かなり音の密度感が濃くて、いわゆる骨格感がしっかりしていて、男らしいサウンド。そういう音の芯がしっかりしていながら、クリスタルに鳴るので、これぞピアノ録音の王道と思えるような境地を感じる。

特に彼らDGが録って造り上げたピアノの音というのは、単にコロコロ転がる美しさではなく、1音1音に質量感があって、タメのある鳴り方をするので、それに打鍵の美しい余韻が加わり、まさに濃い、美しいピアノの音色が聴けて、極上と思うのである。



PENTATONEのサウンドは、基本はとても柔らかい質感で、いわゆる暖色系とよばれるような温度感の高いサウンド。(このようにレーベル、つまり技術者によって音の造り上げ方、音のイメージが全然違うので、じつに面白い。)

なので、じつは自分的には、PENTATONEのサウンドというのは、あまりピアノには向いてないのでは?、と思っていた。もちろん彼らのピアノ作品もそういう先入観なしに聴くと、それはそれで適した素晴らしさがあるのだけれど、自分はやっぱりピアノは硬質でクリスタル系が好きなんだな。(笑)

ところが、今回の児玉麻里・児玉桃姉妹によるピアノ・デュオのPENTATONEの新譜を聴いたときに、その過去にずっと抱いていたイメージが払拭されて、まさに驚愕であった。

彼ら独特の柔らかい質感の気配は残しつつも、かなり硬質寄りのサウンドになっていて、音色もクリスタル。そして適度な空間感もある。とてもPENTATONEのサウンドとは思えなく、自分の耳を疑った。


なんと洗練された音なのだろう!


アラベラさんの新譜のときにも思ったのだけれど、ポリヒムニアの音の録り方、作り方は、本当に年々どんどん進化しているというかすごい洗練されてきているのがよくわかる。もう聴いた1発目の出音のニュアンスで、完璧にわかるのだ。

いやぁ洗練されているよなぁ、という感じで。

先日ユリア・フィッシャー来日公演に合せて、彼女の旧譜を聴いたのだけれど、当時はあれだけ興奮したサウンドだったのだけれど、いまの垢抜けた音作りを聴いてしまうと、どうしても古さを感じるし、やっぱり時代の流れってあるよなぁと感じるのだ。

技術の進歩ってほんとうに早い!

とにかくPENTATONEサウンドらしくない音で、時代の最先端をいくようなピアノサウンドと言ってもよく、自分の判断基準では、おそらくPENTATONEの過去のピアノ作品の中では最高傑作のサウンドだと断言できる。

なんでも編集時に6人のエンジニアの耳(過去最高?)で入念にチェックを重ねた万全の作品だそうであるから、その成果は十分に成し遂げれらたのでは、ないだろうか。 



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『ピアノ連弾による3大バレエ~アレンスキー、ラフマニノフ、ドビュッシー、ランゲリ編曲』 
児玉麻里、児玉桃

https://goo.gl/e7mTTk


児玉麻里・児玉桃姉妹によるデュオ作品というのは、じつは意外や意外、はじめてのことらしい。
麻里さんのほうは、PENTATONEでベートーヴェンのピアノソナタ全録音の偉業を達成しているし、桃さんのほうは、オクタヴィア、ECMで録音を重ねてきて、昨今は、ヨーロッパ、日本でのコンサートなど、その活躍・躍進は本当に目を見張るばかり。

麻里・桃姉妹によるデュオ作品をPENTATONEから出そう、という企画は、輸入元のキングインターナショナルさんのアイデアだったようだ。PENTATONEのリリース計画で、そのことを知ったときは、本当に夢のような気分だった。


今回の扱う作品&テーマは、「チャイコフスキーの三大バレエ作品」を、いろいろな編曲家によって編曲されてきたピアノ・ヴァージョンの曲をデュオで弾こうという試み。


ラフマニノフ編曲の『眠りの森の美女』と、ドビュッシー編曲による『白鳥の湖』など、本当に耳慣れたチャイコらしい親しみやすい旋律が最高に癒される。チャイコの三大バレエ作品は、もうクラシックファンに限らずとも、誰もが聴いたことのあるその優雅な旋律の宝庫ともいえる、本当に美しい作品の集まり。

特に、超お宝がアレンスキー編曲による『くるみ割り人形』。この編曲は楽譜が極めて入手困難なため伝説となっていたそう。それがついに音になった。アレンスキーは『くるみ割り人形』全曲を4手連弾用に編曲しているが、ここでは人気の組曲ナンバーと『パ・ド・ドゥ(グラン・アダージョ)』を披露。ピアノ・デュオ書法を知り尽くしたアレンスキーならではの効果が素晴らしい。(HMV記載の輸入元情報から抜粋)

自分は、チャイコの三大バレエの作品の中では、『花のワルツ』が最高に大好き。なんかお花畑にいるようなメルヘンティックな旋律で、聴いていてとても幸せな気分になれる。この曲は、アルゲリッチのDG盤を昔かなりの頻度で聴いていた。実に久しぶりに聴いて、やはりいい曲だよなぁとしみじみ。

このようなメロディの宝箱のような華やかな作品を、4手連弾のピアノデュオで聴く。

オーケストラ・ヴァージョンと比較しても決して聴き劣らない、聴く者を充分に満足させてくれる、圧倒的な音のボリューム感。

逆にピアノだからこそできる、軽やかさ、軽快感など、その絶妙な2人のやりとりは、たぶんお洒落感覚の極致だと思う。

4手連弾のピアノデュオと聞くと、どうしてもピアノにしては音数が多くてヘビーなイメージが湧いてしまうのだが、このアルバムを聴いたときは、はて?4手連弾?と感じることが多いくらい、ふつうの2手の作品のように聴こえてしまう。

重音ではなくて、うまく時系列的に4手が繋がっているような巧妙さを感じて、とても軽やか。
この作品を、ピアノに編曲した編曲家もすごいのだけれど、やはり児玉姉妹のピアノタッチの奏法の素晴らしさも大きな要因じゃないかな?


今回のこのアルバムは、ポリヒムニアが録音で使うオランダ、ヒルフェルムス、MCOスタジオ5で録られた。もうこのスタジオは、おそらく専属契約していると思われ、ポリヒムニアは、ずっと昔から、このスタジオを使い続けてきた。

以下、その収録の模様を、ポリヒムニアのFB公式ページから拝借してご紹介。


オランダ、ヒルフェルムス、MCOスタジオ5
こんな感じで、スタジオにピアノが2台置かれていました。

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収録中に仲良く記念撮影。(ポリヒムニアのジャン=マリー・ヘーセン氏は、今回録音エンジニア&編集を一気に引き受けた。)

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お仕事中。

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フォト撮影

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自分は、ライブな生演奏も好きだけれど、やはりオーディオファンなので、このように、”いわゆる作り上げた音”の作品が好き。

やっぱり録音って芸術作品だと思う。

生演奏は生演奏の良さ、感動があるけれど、こういう録音の素晴らしさ、「ピアノがこんなに綺麗に録れているなんて!なんて素晴らしい録音なんだろう!」エンジニアの苦労を評価できるのは、なんとも言えないオーディオだけが持っている価値観だし、オーディオファンだけが持ち得る幸せだと、思う。

自分は、録音エンジニアたちが、この空間を切り取ってくる、その芸術作品につねに尊敬の念をやまない。

チャイコの4手連弾は、過去に何枚も作品はあるかもしれないが、今回の児玉姉妹による作品には、過去のその時点では捉えられなかった「音のさま」があって、なんと言ってもうむを言わさぬ説得力がある。

過去最高のチャイコのピアノ4手連弾作品と堂々と胸を張って言えるし、ちょっと早いけれど、クリスマス・プレゼントとして贈るには、あまりにぴったりな軽妙洒脱な作品に仕上がっている、と思う。


PENTATONEの新譜:アラベラ・美歩・シュタインバッハー&モンテカルロ・フィルのヴァイオリン名曲集。 [ディスク・レビュー]

待望のアラベラさんの新譜が届いた。今回もPENTATONEのWEBで購入したので、正式リリース より1か月早く入手してレビューできる。

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いつもであれば、「アラベラさんが新譜のレコーディングに入りました」、というような写真付きの近況報告が、彼女のFB公式ページや、PENTATONE&ポリヒムニアのFB公式ページにアップされるはずなのだが、今回の新作は、それがなかった。

変だなぁ?と思っていたのだが、どうも前作のヴィクトリアホールでの録音(メンデルスゾーン&チャイコフスキーのコンチェルト)とほぼ同時期(2014年9月~10月)に録られたもののようで、録音場所こそ違うが、いわゆる同時期のまとめ録りで、寝かせておいて、時期をずらしてリリースという感じのようだった。

今回のお相手は、ローレンス・フォスター指揮モンテカルロ・フィル。

モナコのこのオケは、自分は、あまり過去に聴いてきたという記憶がなく、どんな演奏をして、どういうオーケストラ・サウンドなのか、イメージがつかめなかった。

でも1853年創立というから、超歴史のあるベテラン・オーケストラで、ヤノフスキ、クライツベルクなどのPENTATONEでもお馴染みの指揮者も芸術監督を務めてきた。今回のローレンス・フォスター氏も1980年から10年間、このオケの芸術監督を務めてきて、今回満を持しての登場だ。

今回は、ヴァイオリン名曲集。 

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ツィゴイネルワイゼン、タイスの瞑想曲、ツィガーヌ~ヴァイオリン名曲集 
アラベラ・美歩・シュタインバッハー、ローレンス・フォスター&モンテカルロ・フィル

http://goo.gl/gCLvBW


アラベラさんは、正直、中堅どころといっていいくらい、キャリアが豊富で、過去に録音してきたライブラリーも、もうほとんどのヴァイオリン作品を録音してきている。

だから、次回は、どんな感じの作品なんだろう?

あと何があるのだろう?という感じだった。

カルメン幻想曲(ワックスマン)、ツィゴイネルワイゼン(サラサーテ)、タイスの瞑想曲(マスネ)、 揚げひばり(ヴォーン・ウィリアムズ)、ツィガーヌ(ラヴェル)といった、もう珠玉の名曲といっていいくらい、ヴァイオリンの堂々たる名曲中の名曲を集めたコンセプチャルなアルバムとなった。

やっぱり、こういうコンセプト・アルバムを出せる、ということ自体、彼女の近年の充実ぶり、ステータスというのがよくうかがい知れる。

アラベラさんは、アルバムの中で、ライナーノーツを寄稿していて、通常ヴァイオリニストのアルバムというと、協奏曲かソナタに重きを置くという選択が多く、このようなヴァイオリンの名曲による小作品というのをターゲットにすることは、なかなか機会がないし、また演奏会で、演奏する機会も少ない。本当に若い頃の研磨の時期に演奏した経験があるだけで、特にカルメン(ワックスマン)のようなサーカス的なテイストの作品を、いまの自分がさらい直すには、自分はあまりに年を取り過ぎている、という葛藤を感じていたそうで、指揮者、ローレンス・フォスター氏から、あのハイフェッツにしても40歳を過ぎてからこの曲をさらったのだよ、という説得にて、彼女は大きく考え直して軌道修正したことは、まさにローレンス・フォスター氏によるところが大きいと謝意を述べている。

こういう奏者の心の葛藤のプロセスを知ると、ますますこの作品の聴き込み、理解度が深いところまで達するように感じる。

まず、録音評から。

1発目の出音から驚いた。カルメンの、例の超有名な「行進曲」の部分なのだが、オケの音の厚み、サウンドの実音に響き、余韻が伴ったみずみずしい潤い、ふっと沈み込む感じのオケの重量感。。。

こりゃいいんじゃないの。(笑)

優秀録音!うれしくなった。1発目の出音が、これだと最高にうれしい。

別に彼女の大ファンだから、ということで、贔屓目に評価している訳でもなく、純粋に素晴らしい録音だと思う。

彼女のヴァイオリンは、どちらかというとマイクから距離感がある感じで捉えられていて、オケとの遠近感が、結構生演奏っぽく、生演奏を観客席で聴いているようなリアルな感じで聴こえる。

ふつうのヴァイオリン協奏曲の録音だと、ヴァイオリンもしっかり前に主張して聴こえ、オケも前に出るような、両方が両立するような感じのオーディオ・ライクに仕立て上げられている録音が多いのだが、今回は、ヴァイオリンが少し引いて遠くに聴こえて、オケが圧倒的にボリュームのあるサウンド、そんな感じに聴こえる。


とにかく魅かれるのが、オケのサウンド。

5.0サラウンド独特の圧倒的なボリューム、重量感があって、ダイナミックレンジが広い、音数が多い、この感覚。

レンジが広く、全体に厚みがあるのは、リアを、補完的な役割ではなくて、全体を鳴らす上で、結構、全体のメイン・サウンドの一部を構築しているように有効に使っているからではないか、と感じた。

録音した時期が、2014年なので、Auro-3Dでの録音ではないと思うのだが、でもそう思っても不思議ではない空間の広さも、さらに感じるのだ。

録音場所は、モンテカルロ、レーニエ3世オーディトリアムで、自分は知らないのだが、録音を聴いている限り、かなり広い空間で録っているようなそんな空間感が確かに感じ取れる。

空間を感じ取れて、それで、オケ・サウンドにボリューム・重量感があるので、かなり自分的にはクル。

マイクセッティングではAuro-3Dは使っていないけど、編集時で、なにやらそういう類(高さ情報を加える)のエンコードをしているんではないだろうか?

音質も従来の温度感高めの質感の柔らかいサウンドと違って、硬質とまではいわないけれど、やや締りがある感じ。

録音スタッフは、編集もミキシング(バランスエンジニア)もエルド・グロート氏。

もうずっと彼女を録ってきている彼女の音を造っている永遠のパートナー。

彼女の作品をずっと聴いてきているが、出すたびに録音がどんどん洗練されてきて、今回が1番洗練されていて、いいんじゃないかな?

そこまで言い切れる。

やっぱり録音・編集技術の日々の進歩が、作品を出す度に、その真価が現れるような気がする。

なによりもヴァイオリン名曲集というコンセプトがとてもいい。誰もが聴いたことのある名曲中の名曲で、聴いていてとても気持ちがいいし、毎日、何回でも飽きなくトレイに乗せたくなる感じ。

彼女のテクも相変わらず素晴らしい。

レガートの効いた美しい旋律の泣かせ方、連続するピツィカートやフラジオレット。聴いていて、ヴァイオリンは「歌う楽器」ということを聴く者に説得させるだけの演奏表現は素晴らしいと思う。

なにか褒めてばかりだが(笑)、あまり気に入らない点が見つからなかった。

今年の9月に来日する予定の彼女だが、この作品を聴いて、尚更、彼女の「ヴィジュアル・クラシック」を堪能できるのが楽しみになった。


BISのピアノ録音と、エフゲニー・ズドビンというピアニスト。 [ディスク・レビュー]

DG録音は、ピアノ録音が美しく録れていることが大きな特徴だが、BISの録音も決して負けていないと思う。同じ美しいピアノ録音でも、DG録音とBIS録音では、テイストが違う。

DGサウンドは、いままで何回も書いてきたけれど、芯のある骨格感のあるサウンドが彼らの身上で、硬質で、研ぎ澄まされたようなピアノの音色。鍵盤のタッチの音、弦を叩くハンマーのフェルトの音、弦の響き、響板の響きの音、そしてペダルノイズやブレスなどの演奏ノイズまで聴こえてきそうな漆黒の中のサウンドと言うべきか。

ピアノの音が濃いというか、1音1音に質量感がある、タメの重みの感覚がある、そんな密度感の濃いイメージ。そこに響き&余韻が加わり、じつに美しい。

もちろん盤(録音)によってバラツキもあるが、このピアノを録るセンスは、エミール・ベルリナー・スタジオのエンジニアたちの天性の才能だと思いますね。

いにしえの著名ピアノストから、新鋭ピアニストに至るまで、みんなDGと専属契約を結んでしまうのも、よくわかるような気がする。

BISの録音は、ちょっと趣が違うのだが、これまたピアノの音色がキレイで、自分は大のお気に入り。

BISサウンドは、ワンポイント録音という表現がよく似合う。マイクからの程よい距離感があって聴こえ、ダイナミックレンジが広いこともあって、録音レベルも低め、全体的にクールダウンした温度感低めのサウンド。

でもBISのピアノは、こういう背景のサウンドの中で、これまたじつに美しく鳴る。

クリスタル、透明感がある感じで、こういうBISサウンドの中に妙に溶け込んでいて美しい。

音の質感や濃さという点では、DGほどではないと思うが、でも響きが柔らかくて粒子が細かい上に、音数も豊富なので、聴感上のバランスがとてもいい。

1番の決め手は、やはりピアノをマルチチャンネルで録っているところだと思う。

これが、全体にダイナミックレンジが広くて、サウンドのステージ感も広がって聴こえて、俯瞰している感じ、バランスよく鳴っているように感じる1番の理由だと思う。

これはDG録音にはない魅力ですね。

そんな魅力的なBISのピアノ録音なのだが、BISレーベルが、デビュー以来、ずっと育ててきている若手の男性ピアニストがいる。

私の大のお気に入り。

ノンノンさんは、女性美人ソリストばっかり、追っかけてるんではないの?という言葉も正しいが(笑)、でも意中の男性ソリストも数多いる。彼は、その中の1人。

1980年のロシア・サンクトペテルブルク生まれのピアニスト、エフゲニー・ズドビン。 
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彫の深い端正なマスクで、すらっとしたイケメン。
草食タイプの男性ソリストという感じだろうか。

スカルラッティ・ソナタ集で2005年CDデビューし、ラフマニノフ、メトネル、チャイコフスキー、スクリャービンなどを得意レパートリーとして録音を残してきている。

クラシック界のプロの商業主義的なところに、あまり洗脳されていないように見えるのも、自分にとって魅力なのかもしれない。

2011年に初来日を果たしており、相変わらず、全く気付かずスルー。(笑)
次回はぜひ足を運んでみたいピアニストだ。

実演に接したことがなく、録音でしか彼を知らないが、高度なテクニシャン。高速トリルなど、粒立ちの揃った音色の美しさは絶品だし、見た目のやさ男風に似合わず、たとえばコンチェルトなどで、打鍵もffからppに至るまで、緩急豊かな表現づけ、結構ドラマティックに魅せる。でも、やはり、どことなく端正な弾き方に感じてしまうのは、やはりイメージ通りなのかも。(決してじゃじゃ馬タイプではない。)

とくに静寂でメロウな旋律を弾かせたら、彼の境地、絶品だと思う。

2010年ころからか、ずっと彼のBIS作品を聴いてきて、いい録音だなぁと好印象をずっと抱いていたところ、ここ最近リリースされた2枚が、決定打になって、これはひとつ彼の日記を書かないとダメだと思った訳だ。 


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ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番、モーツァルト:ピアノ協奏曲第24番 
スドビン、ヴァンスカ&ミネソタ管

http://goo.gl/Y6qKPt


ヴァンスカ&ミネソタ管とのコンビで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集のプロジェクトをやり始め、その一環のアルバム。

これは衝撃だった。じつにピアノの優秀録音そのもの。ズドビンのBISピアノ録音を一言で表現しろ、と言えば、やはりクリスタル、透明感の一言だと思うのだが、その彼のイメージを最初に経験した1枚だった。サウンド全体としては、ソリッド気味で、オケの音ももう少しふくよかな音場感があってもいいかな、とも思ったが、全体的に硬質で締まったサウンドですね。

大変な愛聴盤です。

録音時期:2011年6月 / 2012年5月、6月
録音場所:ミネアポリス、オーケストラ・ホール

音声エンジニア:ジェン・ブラウン(ベートーヴェン)、トーレ・ブリンクマン(モーツァルト)
編集:ジェフリー・ギン
ミキシング:トーレ・ブリンクマン、ロバート・シェフ 



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ピアノ協奏曲第4番、第5番『皇帝』 
スドビン、ヴァンスカ&ミネソタ管弦楽団

http://goo.gl/wJzq2O

これも、ヴァンスカ&ミネソタ管とのコンビで、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全集のプロジェクトの一環。

これは、ズドビンのコンチェルトものでは最高傑作。先述の3番より、洗練されていると思う。
コンサートホールの空間がよく録れていて、ホールトーンもふんだんに入っていて、なによりオケが発音したときの音場感がすごく豊富。部屋中に拡がる感じ。音質は、3番に比べて、やや柔らかめという感じだけど、自分はこちらのほうが好みかな。オケのスケール感、広大な感じと、ズドビンのクリスタルなピアノが見事に両立して、最高。超ヘビロテです。

ベートーヴェンのコンチェルトの4,5番と言えば定番中の定番で、数多のピアニストの作品を聴いてきたし、CDもたくさん持っているけれど、自分は、やはり「新しい録音」が好きなので、この盤が自己最高。

過去に何回も言及してきたことだけれど、こういう録音を聴くと、過去の名演、名盤というのが、自分にはすごく色褪せたものに感じてしまう。

彼らの名演をそしるつもりはなく 録音された時制を考えれば、実に素晴らしいクオリティの録音だということに異論はない。

だが しかしだ。。。 しかし そのクオリティは 何十年前にすでに明らかに聴きとれた。
今聴いても、何十年前に思った以上のものが 新たには感じられない。

新しい録音には、何十年前には捉えることの出来なかった「音のさま」があって、デジタル再生の世界や新しい録音技術がその可能性を広げてくれる。そういう価値観のほうが、自分はオーディオをやっていく上で、自分の進むべき道なのだと思う。

もちろん趣味の世界ですから、正論はなくて、個人の嗜好は尊重されるべきだとは思いますが。

そんな想いを強くさせてくれる1枚でもある。


録音時期:2009年1月(第4番)、2010年6月(第5番)
録音場所:ミネアポリス・オーケストラ・ホール

音声エンジニア:ハンス・キプファー
編集:エリザベス・ケンパー、マティアス・スピッツバース
ミキシング:ハンス・キプファー、ロバート・シュフ 


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スクリャービン:ピアノ協奏曲、メトネル:ピアノ協奏曲第3番 
スドビン、リットン&ベルゲン・フィル

http://goo.gl/a19IK3

確かスクリャービンの生誕○○周年のセレモニーイヤーに出されたアルバムで、自分の日記でも試聴記を取り上げた。

この作品は、彼のどの作品よりもピアノの音色のクリスタル、透明感が素晴らしくて、なんか編集時に、締めに締め上げたという感じがする音の硬質感で、シビれた作品だった。

ある意味、生演奏よりもオーディオ的快楽に近い作品だと感じた。

スクリャービンを聴くことも普段少ないが、異国情緒たっぷりのちょっとオリエンタルムード漂う感じの旋律が美しく、新鮮だ。

このアルバムは、インターナショナル・クラシック・ミュージック・アワード(ICMA)2016の協奏曲部門を受賞したのだそうだ。

この作品を聴いてからだ。

自分が今まで、単にいい録音だなぁ、と思っていたピアノのBIS録音が、過去分を調べてみると、みんな、このズドビンの作品だということに気づいたのは。

これから、このピアニストを強く意識するようになった。


録音時期:2013年11月
録音場所:ベルゲン、グリーグ・ホール

音声エンジニア:トーレ・ブリンクマン(Take5 Music Production)
編集&ミキシング:マリオン・シュウェーベル


そして、最新作のこの2作。

この2作品を聴いて、あまりに素晴らしく、こうもずっと素晴らしいピアノ録音の作品をずっと世に出し続けてきた彼とBISレーベルの功労は大きいと思った。

ぜひ日記で特集してみたいと思った。 

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メトネル:回想ソナタ、悲劇的ソナタ、『おとぎ話』集、ラフマニノフ:前奏曲集 
スドビン

http://goo.gl/JOiIaM


ズドビンにとってメトネルは得意中の得意の作品で、デビュー以来ずっと事あるごとに自分の作品に取り上げてきている。

静寂でメロウな旋律を弾かせたら。。。と書いたのも、まさにこの作品のことを言っていた。
特に第6トラックの朝の歌、そして第7トラックの悲劇的ソナタにかけての旋律は、まさに垂涎の体験とも言える美しさで圧倒される。

すでに紹介した3枚と比較すると、サウンド的にずいぶん大きな変化がある。

彼のアルバムは、どちらかというと硬質で解像度重視のカチカチともいえるサウンドなのだが、このアルバムからガラ変のイメチェン。

驚いた。

全体にウォームな感じで、音の角がとれているような丸みのあるピアノ・サウンドなのだ。音のディテールなどこだわらない、というか。正直イメージと違って面喰った。

でも空間も広くて、響きもすごい豊富。これは、これでいい録音なのでは、と感じた。

やはりメトネル~ラフマニノフと続くピアノソロの作品集は、その旋律があまりに美しくて、聴いていてとても癒される。

そこが魅力の作品だと思えた。


録音時期:2009年2,6月、2012年4月、2014年7,10,11月
録音場所:イングランド、ブリストル聖ジョージ

音声エンジニア:マリオン・シュウェーベル(Take5 Music Production)
ジェンス・ブラウン (Take5 Music Production)
編集:マリオン・シュウェーベル、ジェンス・ブラウン
ミキシング:マリオン・シュウェーベル 

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スカルラッティ・ソナタ集第2集 
スドビン

http://goo.gl/BvWaud

自分は、スカルラッティ・ソナタがとても好きで、よくホロヴィッツの定番のアルバムを聴いていた。

ホロヴィッツは、このスカルラッティ・ソナタを非常に好んでいて、自分のコンサートのアンコールなどによく弾いていた。

じつは、ズドビンのデビュー作もスカルラッティ・ソナタ。当時はこのデビュー作が大変な話題になったそうだが、今作はその期待の第2集になる。

バロック時代のこの作品を、モダンピアノを使って、そして最新の音響&録音技術を使う、という古楽アプローチのアンチテーゼのような作品作りなのだが、やっぱり自分はこういうアプローチ好きだなぁ。ただでさえ、この曲好きなのに、さらに近代的でハイセンスな雰囲気が漂っているように思ってしまう。

スカルラッティ・ソナタに関しては、「ホロヴィッツの再来」とまで言われているみたいで、ちょっと業界の宣伝入っている文言かな?(笑)とも思うけど、十分その資格ありと思う。




以上、これだけの彼のアルバムを2010年から5年かけて聴いてきたわけだが、BISレーベルにズドビンあり!という存在感が十二分に感じ取れる。

しかしパッケージメディアのSACD、つまりDSD2.822のマルチチャンネルでこれだけのサウンドが堪能できるのだから、自分はハイレゾなんていらないと思うな。(笑)

ゆうあんさんも言っていたが、自分もたぶんハイレゾのDSDマルチチャンネルの音声ファイルなんて、音質的にパッケージメディアには遠く及ばないんじゃないかな、と思う。

パソコン上で動くコンテンツプレイヤーなどが、5chの音声信号をきちんとデコードして位相も合わせて、オーディオに送り込める、そんな精度のいいもんとはとても思えない。現時点ではハードソリューションには遠く及ばないんじゃないかと。

先日の日記で、ストリーミングが主流になりそうだということも書いたが、よく考えると、リアルタイムにデコードしながら構築していくストリーミングだったら、尚更マルチチャンネル伝送・構築は、困難の極みのような気もしてきた・・・。

ここら辺のことは、いま正直あまり深く考えたくないね。


エレーヌ・グリモーのディスコグラフィー [ディスク・レビュー]

エレーヌ・グリモーは、フランス人なのだが、彼女が夢中になった作曲家は、ドイツ・ロマン派の作曲家が圧倒的に多く、ラヴェル、ドビュッシーなどの正統派フランス音楽には、さほど興味がないことを本人も明言している。

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所属のレーベルも、デビュー当時は日本のDENONだったりしたが、その後、フランスのワーナー(Erato)などを経由して、DG(ドイツ・グラモフォン)に定着して現在に至る。彼女のディスコグラフィーも圧倒的にDGレーベルの作品だ。

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この現在に至るまでのDG時代の彼女の録音を全作品担当してきているのが、エミール・ベルリナー・スタジオ。DGだから当然だともいえる。

そして、その録音をずっと支えてきた彼女のパートナーが、プロデューサーにシド・マクラクラン、そしてトーンマイスターがシュテファン・フロック、この2人。まさに彼女を録り続けてきて、彼女の音色を作ってきたスタッフ、そしてグリモーが絶大の信頼を寄せるスタッフと言っていいだろう。

トーンマイスターは、たまに1,2作品、ライナー・マイヤール氏であったり、他のメンバーだったりするのだが、ほぼ全作品といっていいほど、シュテファン・フロックが担当している。

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シュテファン・フロックは、エミール・ベルリナー・スタジオの一員として、DG作品でヒラリー・ハーンやラン・ランの録音を担当してきたトーンマイスターである。

その当時市場マーケットにない機器を、独自の自作で作り上げてしまうというほどの技術屋さんでもあった。録音プロデューサー&音声エンジニアとして働く一方で、自分の会社 Direct Out Technologiesという会社を立ち上げ、そこのスタジオの設備を整えることに多くの時間を費やしている、という情報を入手していた。

今回のグリモーのDG最新作、「ウォーター」ではなぜかエミール・ベルリナー・スタジオというクレジットが見つからなかった。でもエンジニア(ポスプロ担当)は、シュテファン・フロックであった。


密度感があって音色の骨格感がしっかりしているのは、やはりDGの伝統サウンドだと思うが、それにも増して、グリモーの一連の作品は、ピアノの音色が煌びやかで、本当に美しい。クリスタル系とでも言おうか.....DGのピアノ録音は綺麗だなぁ、とつくづく思う。

●ウォーター

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エレーヌ・グリモー/ウォーター

http://goo.gl/jYVrne

つい最近発売になったばかりのグリモーの最新アルバム。「Water(水)」に関連するテーマの曲で構成された、いわゆるコンセプト・アルバム。それぞれの楽曲の「つなぎ」として、インド系イギリス人ミュージシャン、ニティン・ソーニーが作曲・録音したアンビエントな7つの「ウォーター=トランジション」を間に挿入するというスタイル。

全体を通して聴いて感じたのは、これは完璧なアンビエント音楽(環境音楽)ですね。それも水を連想させる。

聴いていて精神が安らぐというか、超微小音量でかければ、ヒーリング施設のBGMとして流すのにも適切ではないか、と思わず感じてしまうほど。(激しい曲もあるので、選曲が必要ですが。)

間に挿入されている「ウォーター=トランジション」が、かなり効果絶大で格好いい。

とくに6トラック目!

あまりの格好よさにゾクっとしてしまう。

この「ウォーター=トランジション」、

各楽曲の間をブツぎらないで、スムーズに移行させる役目はもちろんのこと、グリモーが弾くクラシック曲をうまく引き立て、浮かび上がらせるのと同時に、自分自身も格好いい旋律なので、アルバム全体の流れに緩衝があるというかメリハリが出ていると思う。

じつにいいコンビネーションで全体のフレーム、流れを作っているな、と思う。

これは本当に美しい作品。たしかに水の流れを感じ取れる。せせらぎ、から激流に至るまで....自分はかなり気に入りました。

グリモーのフェザータッチとも言えるような弱音捌き。

ピアノは超高速のトリル全開の強打鍵よりも、鍵盤を弱く、しかも安定して弾き続けて、雰囲気を出すことのほうが遥かに難しい、と聴いたこともある。


また曲の抑揚にあわせたppからffまでの緩急のつけかた、スライドのさせ方もじつに流れるようで、結構エモーショナルな弾き方をするピアニストだと思う。


敢えて言えば、録音かなぁ。(やっぱりそこですか。(笑))

ピアノの音色は硬質のクリスタル系で、空間も感じるし、打鍵の響きも豊富で、余韻も美しい。
ただ、あまりに煌びやかで美しすぎて、作っているんじゃないかな、という不自然をちょっと感じてしまう。

ECMレーベルが好んで使う手法であるリバーブをかけているようなそんな印象も受ける。

自分がコンサートホールで普段聴いているピアノの生音は、こんなに煌びやかではないと思う。曲間に入る「ウォーター=トランジション」は電子音楽なので、それとのバランス、つなぎを考慮の上、そのような処理もあるのかな、とも聴いていて考えたりした。(グリモーのピアノは、ニューヨークのパーク街兵器倉庫(!)でのライブレコーディング、「ウォーター=トランジション」はスタジオ録音。)

でも、これは考え過ぎで勘違いかもしれないので、そうでなければゴメンナサイである。リバーブについては、嫌う方もいらっしゃいますが、自分は、極度にかけない、自然さを損なわないのであれば、なんとも思いません。逆に、これぞ生演奏では体験できないオーディオの完成度の高さ、美しさとも思えて、そのほうがいいと思うことも多い。

今回の新作「ウォーター」は、純粋なクラシックの作品というこだわりを持つなら抵抗感を持つ人もいるかもだが、自分は完全なアンビエント音楽として割り切っているので、オーディオ的に非常に美しい作品として完成度がすこぶる高いと思うし、傑作だと断言できます。


●ブラームス ピアノ協奏曲第1番、第2番

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ブラームス ピアノ協奏曲第1番、第2番 
グリモー、ネルソンス&バイエルン放送響、ウィーン・フィル(2CD)

http://goo.gl/saegQf


ブラームスのピアノ協奏曲というのは、じつは、数多のPコンチェルトの中でも、ずっと昔からやや苦手意識のある曲だった。いろいろな録音を聴いてきて、自分の嗜好に合う盤に巡り会えなかったというのも理由かもしれない。

どうも全体として重い感じがして垢抜けしない感じが苦手だった。


でもそんなイメージを払拭してくれたのが、このディスクだった。
グリモーは過去にこの曲を2回録音していて、これは2013年に出された最新盤のほう。

グリモーというピアニストは、独特の雰囲気というか、捉えどころのないホワっとしたイメージで、理詰めではない”感性”のピアニストだと思う。それは容貌だけでなく、彼女のピアノを聴いているとよくわかる。

結構その曲の中で、フレーズの捉え方が柔軟で、テンポや歌い回しなどを彼女が考えているイメージに合わせて大きく変えてくるピアニストだと思う。それがはっきりわかるのが1番。(だから聴いている側では、自分の好みに合わない解釈だと、彼女の演奏を変だと思われる方もいるのかもしれない。)

第2楽章は、まさに恍惚の美しさで、DG録音のピアノが美しいと感じるのは、まさにこの楽章。
ここでは、彼女は、まさに超スローテンポで、弾き方にタメがあって、情感たっぷりに歌い上げる。
1番のこの録音の魅力は、自分はこの第2楽章にある、と思う。

一転して第3楽章では、信じられないような高速ハイウェイで、なにかに急かされているかのように疾走感あふれた演奏をする。彼女のブラームスの対する想い入れは大きく、思うところがあっての抑揚なのだと思うが、彼女は全体を通して1本調子ということは、まずないピアニストですね。

譜面は同じでも、テンポ、抑揚などの強弱のつけかたなど、どう演奏上の解釈をするかは、指揮者、ソリストの領域だと思いますが、クラシックでは1番奥が深いところ。良し悪しの基準は決められないし、議論は深いです。

サウンド的には、2chソフトとしては稀にみる優秀録音だと思うが、1番はミュンヘンのヘルクレスザールでのライブ録音で石造りのホールにしては、オケの音が、ややウォーム系(暖色系)に感じるのがやや不満。ピアノがこれだけ鮮烈ヴヴィッドに録れているのと対照的で、編集でマージすると、ピアノがすごい鮮烈に浮き出て目立つのに対し、背景のオケがイマイチという印象が自分にはある。

でもこれは、おそらく拙宅の貧弱な2chシステムのせいだと思う。(ふだん、まったく2chを研磨してませんので。(^^;;でも研磨してなくても同音源の中で、これだけピアノが綺麗に鳴るんだからオケも同条件なんですけどね。)


●レゾナンス

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エレーヌ・グリモー

リスト:ロ短調ソナタ、ベルク:ソナタ、モーツァルト:ソナタ第8番、
バルトーク:ルーマニア民俗舞曲

http://goo.gl/7OLgPi


これもピアノの音色が本当に綺麗に録れていますね。ピアノ・ソロとして持っておくなら、この1枚で十分かも?レゾナンス(共鳴)というタイトルのもと、様々なスタイルの音楽をまとめあげる、というコンセプトで、モーツァルト、ベルク、リスト、バルトークという4人の作曲家の作品を集めたもの。どれも美しい旋律で、中には有名な親しみやすい旋律の作品もあって、聴いていてじつに秀逸な1枚だと思う。なぜかグリモーのほんわかムードの雰囲気に、選曲のセンスもあっている感じがする。

とにかくピアノの音色が本当にキレイ。1音1音にタメ、質量感があって芯のある音の濃さ、という表現がイメージに近い表現だろうか。DGのピアノ録音の真骨頂ですね。


●モーツァルト協奏曲第19番、第23番&レチターティーヴォとアリアK.505

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モーツァルト ピアノ協奏曲第19&23番、他 
グリモー&バイエルン放送室内管、エルトマン

http://goo.gl/cU93RD

グリモー初のモーツァルト ピアノ協奏曲のDGへのライブ録音。モーツァルトらしい軽快で優雅な音楽にもグリモーは好感を持っていたようで、待望の録音となった。ここで聴かせる彼女の奏法もモーツァルトのイメージにピッタリ合っていると思うし、いい演奏だと思う。ミュンヘン プリンツレーゲンテン劇場でのライブ録音なのだが、彼女は、独奏だけでなく、なんと弾き振りもやる。ハードカヴァーブック仕様のデラックス盤で、ジャケットもすごくいい。

う~ん、問題は録音なんだなぁ。確かに美録音の部類に入ると思うし、けっして悪くない。でもこの日記を書いている順番で聴いているのだが、前記3枚と比較すると、あきらかに、ピアノの音色の透明感や1音1音のタメ、質量感が劣る。煩い自分には、ちょっとピアノの音色が滲んでいるように聴こえる。オケの音もそう、滲んでいる。そして音の密度感もいまいち。音が薄いのだ。

変だな、と思ってすかさずクレジットを見る。BR Klassikとの共同制作であった。確かにレーベルはDGなのだが、プロデューサーはDGで、録音スタッフは全員BR Klassikメンバー。つまりアルバムのコンセプトはDGがプランニングして、録音、音決めはBR Klassikが担当する。

自分が録音スタッフに煩いのもこういうことがあるから。レーベルごとにサウンドが違うのは、その音作りをしているスタッフが違うからなのだ。個性なんですね。それが今回如実に表れた。

でもこの盤の評価を貶めるは本意ではなく、その差は本当に気づくかどうか、しかも小音量の時はわからなかった。大音量で気づく微差だということ。全体のトータルのバランスではよいセンスのアルバムだと思います。


●ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番「皇帝」

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ベートーヴェン ピアノ協奏曲第5番『皇帝』、ピアノ・ソナタ第28番 
グリモー(ピアノ)ユロフスキ&シュターツカペレ・ドレスデン

http://goo.gl/96SjnO

グリモーはドイツ音楽(ロマン派)を主なレパートリーとしてきたことから、このベートーヴェンの作品を出すことで、ベートーヴェン弾きとしても世界に認めさせ、さらにベートーヴェンのピアノ協奏曲の頂点ともいうべき第5番「皇帝」を採り上げることで、自分のキャリア・レパートリーにベートーヴェンを大きな跡を残していくという意味合いが強かった作品だと思う。

一聴すると、皇帝にしてはややライト級な仕上がりなのだが、演奏の解釈は至極スタンダードで、好感が持てる演奏であった。録音も、DGの録音そのもので、音色に厚みがあってピアノが美しい。

録音場所はドレスデンの聖ルカ教会で録ったもので(クラシック録音では名盤生産基地である有名な教会:シュターツカペレ・ドレスデンの録音本拠地としても有名である。)、この教会はもう非常に響きが豊かなことで有名で、録音を聴いたら一発でこの教会ってわかる感じ。

でもこの録音では、意外やマスキングされているというか、それほど豊潤な響きとまでは感じないから不思議だ。響き過ぎない程よいバランス感覚で仕上げられている。作品の全体の出来としても、品性が漂うクオリティの高い作品で、いい作品だと思う。自分はお気に入りです。


●シューマン ピアノ協奏曲、C.シューマン:歌曲集、ブラームス:チェロ・ソナタ第1番

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シューマン:ピアノ協奏曲、ブラームス:チェロ・ソナタ第1番、
C.シューマン:歌曲集、他 

グリモー、サロネン&ドレスデン国立管、オッター、モルク

http://goo.gl/wdgu7a


これもドレスデンの聖ルカ教会で録ったもの。こちらのほうが遥かにこの教会で録った響きの豊かさにふさわしくて、ディスクを再生した途端、部屋にその響きが広がる、そういうありようがこの教会録音にふさわしい作品だと思う。音質は彼女のディスクではめずらしくウォーム系(暖色系)で質感の柔らかいテイストですね。ピアノの音色もやや骨太な感じの美しい音色である。一言でいえば、音場感がとても豊かな録音で、柔らかい音触ですね。2005年の古い録音なので、それなりの鮮度感でもある。


シューマンのピアノ協奏曲は大好きな曲なので、自分の理想の演奏のイメージというのが頭の中に確固としてある。それに比べると、若干彼女のイメージ、テンポの解釈が入っているかな、という印象があった。でもいい作品であった。

さらにこのディスクのいいろことは、シューマンの妻クララの歌曲集が入っていて、それをアンネ=ゾフィー・フォン・オッターが歌っているところだ。この2人の競演が聴けるなんて夢のようだ。オッターの声も若い頃で、相変わらず瑞々しい。

ブラームスのチェロ・ソナタも秀逸。

このアルバムは、自分的にも結構気に入っている。


●バッハ 平均律クラヴィーア曲集

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バッハ 平均律クラヴィーア曲集より、ピアノ協奏曲第1番、編曲集 
グリモー、ドイツ・カンマーフィル

http://goo.gl/njTEoU

グリモーの初のバッハ録音。
ちょっとコンセプト・アルバムの趣向で、「バッハによるピュア作品」vs 「ピアニストによるバッハに捧げた編曲版」という図式で面白い。彼女の奏法は、至極スタンダードな解釈による作品。バッハの世界を忠実に再現できていた。

「平均律クラヴィーア曲集」は、ピアニストにとっては聖書の中の聖書のような存在で、調性に関するものはそこにすべて含まれていて、作曲法の法則もすべて織り込まれている。そのような本質が反映されているCDを作りたかった、というのがグリモーの1番の動機だったようだ。

●クレド

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グリモー&サロネン 「クレド」~ベートーヴェン:テンペスト、合唱幻想曲、
コリリアーノ:オスティナートによるファンタジア、ペルト:クレド

http://goo.gl/S1V7r5

http://goo.gl/NQgl7U


現在SACDは廃盤になっているのだが、このディスクはぜひSACDで聴いてほしいので、アマゾンの中古マーケットプレイスやHMVの中古センターのリンクを貼っておきます。

この作品は、彼女がDGへ移籍した時のデビュー作品になる。

サロネンとスウェーデン交響楽団、そして世界最高水準の合唱軍団であるスウェーデン放送合唱団とで作られた渾身の作品。2003年の録音なのであるが、とても古さを感じない、そのクリアな音と響きは驚かされる。だからぜひSACDで聴いてほしい。

この作品は、我々オーディオ仲間の中で有名なのは、7トラック目。

まさに恐怖のオフ会道場破りのソフトとして、このソフトの存在を知らない人はいないだろう。この7トラック目のまさにカオスといってもいいほどのごちゃごちゃした音の塊を、きちんと鳴らせる人はどれくらいいるだろう?史上最強に鳴らすのが難しいソフトと言ってもよい。これをオフ会で持参して他人の家で鳴らそうとする人は、なんと根性の悪い人と思われるので注意しましょう。(笑)

拙宅はサラウンドで鳴らしているので、幾分、ごちゃごちゃした音の塊も幾分分離して聴こえるかなぁと思うのだが、これを普通の2ch再生で聴いたら、本当に団子状態でつぶれてグチャグチャに聴こえるだろう。まさに道場破りのソフトで、我々オーディオ仲間では最も恐れられているソフトでもある。これはじつはマイヤール氏の作品なのです!!


グリモーのCDとして、真っ先に思い出すのは、じつはこの恐怖のオフ会道場破りの、このソフトであったりするのだ。(笑)


●ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番

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ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番、『音の絵』から 
エレーヌ・グリモー(p)、アシュケナージ&フィルハーモニア管弦楽団

http://goo.gl/kWW8NU

先日の日記で、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番に対する彼女の想いを知っていただけに、この曲を避けて通ることは絶対できなかった。まさに若い新人の頃の作品なのだが、いま聴いても、とりわけ個性的な解釈という訳でもなくて、極めてふつうの演奏解釈だった。ある意味、他のピアニストの作品と比較しても、そんなに区別がつかないくらい。

綺麗な演奏と言うか、差し障りのない美しい演奏と言うか......
ラフマニノフのロマンティズムは十分香り出ているような美しさは醸し出されていた。

以上、彼女の作品9作品を聴き込んだ。素晴らしい作品の数々。

これらを聴き込んで、エレーヌ・グリモーというピアニストの像は、演奏解釈自体は、そんなに奇をてらうような個性的な解釈をするようなピアニストではないと感じた。

ふつうにスタンダード路線で、聴いていて個性的だとか、違和感とかを感じるものはいっさいなかった。

ただし力任せの力演タイプではなくて、どちらかというと情感的というかエモーショナルな弾き方をするタイプで、冒頭でも書いたように、テンポや歌い回しなどを彼女が考えているイメージに合わせて大きく変えてくる、そういう柔軟性は持っているピアニストだと思う。

また彼女の歴史の変遷を見ると、やはりドイツ・ロマン派の作曲家に傾倒しているのがわかりますね。フランス人なのに、ラヴェル、ドビュッシーなどの正統派フランス音楽には、まったく興味がなさそう。

映像作品でラヴェルのコンチェルトは弾いているようですが、似合うかどうかは別として、そういう浮遊感のあるフランス音楽を弾いている彼女も観てみたい気がします。

今年の5月の来日公演は、大変楽しみである。大阪公演と東京公演のリサイタルのほうにいく予定です。

彼女はデビュー時代のDENONで5枚、そしてワーナー(Erato)時代に6枚、そして現在のDG時代というようにアルバムを出していて、ワーナー時代の6枚は、つい最近2000円くらいの廉価でBOXが出ました。これも若い世代の彼女を知る上では、貴重なアルバムだと思います。

自分の今回の日記では、主にDG時代の作品を取り上げました。

前回の日記、そして今回のディスコグラフィーと、自分で日記にすることで、彼女のことを深く知ることができた、と思います。やっぱりこうやって自分で日記にすることは、そのアーティストを知るうえでは、自分にとってとても大切なプロセスだといつも思う訳です。


DG SACDのシューベルト歌曲集 [ディスク・レビュー]

先日日記にしたDG SACD特集で、その作品の大半が、2人のトーンマイスターによって作られていたことをあらためて発見し、しっかりと書きとめた。

現に取り上げた作品のクレジットを見た場合、トーンマイスターそして、編集、ミキシングとして名を連ねていたのは大半がこの2人だった。

1990~2000年代のドイツ・グラモフォンの技術センターだったハノーヴァーのエミール・ベルリナー・スタジオに 2人のエース、トーンマイスターがいて、 それが、ライナー・マイヤール氏とウルリッヒ・ヴィッテ氏。

まさにDGの黄金期の作品は、この2人によって作られてきたといっていい。

ヴィッテ氏は、サウンド的にはギュンター・ヘルマンスの後継者といった存在で、いかにもDGという王道を行く、密度感があって中間色のグラディエーションが濃厚、それでいて肌触りの自然なオーケストラ録音をものにしていた。

一方でマイヤール氏は、DGに新しい風をもたらした。

彼の代表作は ブーレーズ指揮ウィーンフィルのマーラー3番やガーディナー指揮のホルスト「惑星」(これは先日の日記の後に、ついに最近ようやく入手できました。)などで、とても瑞々しく色彩的に鮮やかで かつダイナミックな録音を身上としていた。

先日の日記で取り上げた作品も大半がこの2人の作品で、特にマイヤール氏の作品が非常に多かった。

その一連を聴いて、マイヤール氏は大編成のオーケストラをさばく仕事人というイメージをこれまで持っていたが、そんな作品の中で、歌曲集というちょっと一風彼らしくないというか、大技というよりも、高貴な品位で漂いながら、熱いパッションもどんどん伝わってくる、そんな作品に出会った。

DG SACDの日記を書いてから、このディスクに知り合って、すごいヘビロテになってしまい、まさに虜になってしまい毎日聴いている。ちょっと嵌っていてうれしい気分なので日記にしてみたくなった。


歌曲王シューベルトの歌曲「魔王」。

シューベルト「魔王」は、高熱にうなされたときにみる悪夢のような内容で お父さんと幼い子供、そして魔王という3人のキャラクターを 一人で歌い演じ分けるという趣向である。激しい嵐が 木々を叩きつけるような短調の激しい曲調で進んでゆく。

でもその中で「魔王」の歌うところだけが長調で夢見るように美しいのが驚きで心惹かれるのだ。

なんか全体のバランス、曲調として、すごく両極端なところがあるのだけれど、すごく面白い。


この「魔王」をオーケストラ伴奏に編曲した録音がある。

幻想交響曲で知られるベルリオーズが編曲したものとドイツ後期ロマン派のマックス・レーガーが編曲したものと2種類ある。 それぞれ個性があって実に面白い。  


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シューベルト歌曲集
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター/トーマス・クアストフ
アバド/ヨーロッパ室内管弦楽団

http://goo.gl/4mUb7w



今回偶然にもDG SACD収集の旅で発見できたこのディスクでは、2枚組になっていて、オーケストラが劇的に鳴って派手なベルリオーズ編曲を メゾ・ソプラノのアンネ・ゾフィー・フォン・オッターが、そして重厚なレーガー編曲を バス・バリトンのトーマス・クアストフが歌っている。

今回発見したDG SACDのこのディスクは、この両ヴァージョンを素晴らしい歌手2人で歌い分けているという、とてつもなく貴重な作品であることがわかったのだ。アバド/ヨーロッパ室内管弦楽団によるオーケストラ伴奏である。


録音も本当に素晴らしい。
オッターの声なんて、彼女らしい瑞々しい気品のあって張りのある歌声(さらに若い頃だし。(笑))が、じつに綺麗に録れていて、素晴らしい録音だと思う。

いま自分が集めてきたDG SACDの中で、このディスク、ヘビロテ・ディスクとして毎日聴いているのだ。

残念ながら現在廃盤なのだが、上記のリンク先では、中古品で10000円、そして新品であれば30000円くらいのプレミアが付いているが、中古マーケットプレイスで売っているようだ。これだけの高値を払っても、この2バージョン編曲の「魔王」をDG SACDで聴けるなら、自分はお安いと思います。(悪魔のささやき)

人生で500曲あまりの歌曲を作曲した歌曲王シューベルトの作品の中でも、この「魔王」は自分が数聴いた作品の中でもとりわけお気に入りであったりする。


最近の録音では、PENTATONEにて、実力派テノール歌手、クリスティアン・エルスナーがシューベルトの歌曲集を録音して、この「魔王」を録音している。彼が歌うのはレーガー編曲。というかこのアルバムに収録してあるシューベルト歌曲集は、ほとんどがレーガー編曲のオーケストラ伴奏である。ヤノフスキ&ベルリン放送響が伴奏をつとめている。 

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シューベルト歌曲集~レーガー、ヴェーベルン編曲による管弦楽伴奏版 
エルスナー、ヤノフスキ&ベルリン放送響

http://goo.gl/xFn9LT

こちらはトーンマイスターはジャン・マリー・ヘーセン氏の作品なのだが、さすが最新のサラウンドだけあって、じつに洗練されていて、柔らかい質感、解像度が高く細やかで、音が濃いというか情報量が豊富で、本当に最新の録音技術という感じですね。

こちらも素晴らしい録音です。

シューベルトの歌曲をこれだけのクオリティの高い録音で聴けるのだから、こちらも絶対持っておくべき1枚だと思います。

いやぁ、やっぱり自分は歌曲というジャンルが本当に好きだなぁ、とつくづく......


Channel Classicsの新譜:古楽の世界への誘い。 [ディスク・レビュー]

1年のうちで最も忙しいこの時期をなんとか乗り越えられそうだ。その合間を縫っての休日のオーディオタイム。

正月に1度聴いていたが、オランダの高音質レーベル Channel Classicsの新譜を3枚、今日じっくり聴きこんでみた。

正月にも感じていたが、3枚ともじつに素晴らしい優秀録音。いわゆるガツン系ではなくて、癒し系室内楽の様相で、疲れ切った頭と体を十二分に癒してくれた。

ジャレット・サックス率いるこのレーベルも順調のようで、新譜の回転率が速い印象を受ける。
レーベルのサウンドというのは、およそイメージが決まっているものだが、この3枚は、各々でその印象が違っていて、じつに興味深かった。同じレーベル、スタッフの作品とは思えなかった。 

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メンデルスゾーン ピアノ三重奏曲第1番、第2番 
ハムレット・ピアノ・トリオ

http://goo.gl/4ZW6eE

2011年に結成された、ピアノ:パオロ・ジャコメッティ、ヴァイオリン(アムステルダム・シンフォニエッタの音楽監督!):カンディダ・トンプソン、チェロ:クセニア・ヤンコヴィチによるアンサンブル 「ハムレット・ピアノ・トリオ」による演奏。

メンデルスゾーン時代のサウンドを再現するべく、エドウィン・ベウンク・コレクションのエラール・ピアノとガット弦を使用している(東京エムプラス情報 on HMV)とのことで、ピリオド・アプローチ。


オランダは、まさに古楽王国で、Channel Classicsというレーベルも過去からずっとピリオド楽器による古楽演奏の録音を多く取り入れてきている。(レイチェル・ポジャーなんか代表格。彼らのひとつのレーベル・カラーですね。)

またエラール・ピアノを取り入れることは、ピアノの達人でもあったメンデルスゾーンへのオマージュの意味合いもあるのだろうか。

今回の作品もその王道のアプローチの一環なのだと思えた。

メンデルスゾーンは初期ロマン派の作曲家で、明るい旋律の曲が圧倒的に多いイメージがあるが、このピアノ三重奏曲は、短調で書かれていることもあって、明るいながらもどこか影がある、その両面が垣間見えるバランス感覚が絶妙。

ピアノ三重奏曲、四重奏曲、そして五重奏曲と名曲を書き綴った室内楽の王、シューマンを持ってして、「ベートーヴェン以来、もっとも偉大なピアノ三重奏曲」と言わしめた、このメンデルスゾーンのピアノ三重奏曲。

すべての役者がそろった。

聴いてみて、じつに素晴らしい作品、演奏で、そして録音でもあった。
エラール・ピアノの音色は、表現が悪くて申し訳ないが、モダンピアノと比較して、ヌケ感が悪い、”こもり”気味の音色に聴こえたことは確かだが、でもこの音色でないと表現できない世界が、そこにあることが感じ取れた。

逆にこれがモダンピアノであったなら、華やか過ぎて、このディスクに収められている世界の表現、味は出せなかっただろう。

自分は古楽の世界、よさは、あまりよくわかっていない人なのだが、ピリオド楽器を使わないと表現できない当時の演奏形態の醸し出す雰囲気の価値観は間違いなくあると思う。それが古楽を理解できるかどうかの分かれ道ですね。

そのように肯定的に思えたのもChannel Classicsの録音技術の素晴らしさによるところも大きい。

自分が普段思うこのレーベルのサウンドの特徴は、各楽器のエネルギー感が大きくて、前へ前へ主張するような音の出方をすること。

で、空間もはっきり認識できて、この双方を両立するって、結構録る側の人からすると難しいのではないかなぁと思う。

クレジットには、録音も編集もすべてジャレット・サックス1人になっている。本当に1人でやっているのか、はたまた、共同でやっているのだけれど、クレジットは自分1人だけというワンマン体制なのか(笑)不明だが、彼じゃないと作れないサウンドですね。

ヴァイオリンはリアから、ピアノとチェロはフロントから、というチャンネル配分で、心地よい立体感、包まれ感があって素晴らしい。

いい録音ですね。

録音セッションは、2014年にオランダのヒルヴェルサムのMCOスタジオで行われている。このスタジオはオランダでは超有名なスタジオで、自分もこのスタジオでの録音をたくさん持っているが、ぜひ中を見てみたいと思っていたら、冊子の中にその模様があった。

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とてもシンプルですね。


クレジットでもうひとつ興味深かったのは、Channel Classicsのマスタリング・スタジオのスピーカーが、Grimm Audioのものを使っていたこと。

つい最近も、アムステルダム・コンセルトヘボウの屋根裏部屋のポリヒムニアの編集ルームも、B&W N805を使っていたのを、このGrimm Audioに変えている。いまヨーロッパのクラシック・レーベルでは、このブランドがトレンドなのでしょうか? 

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ドヴィエンヌ フルート四重奏曲集、ファゴット四重奏曲集 
ムジカ・レアーレ(ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団員)

http://goo.gl/XEySCB


18世紀フランスで活躍したフルート奏者、作曲家のフランソワ・ドヴィエンヌの木管(フルート、ファゴット)をフィーチャリングした四重奏曲。

このレーベルでは定期的に、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のメンバーによる室内楽作品を録音しており、今回も「ムジカ・レアーレ」というRCOメンバーによる室内楽楽団による作品。

これも素晴らしかった。

ドヴィエンヌという作曲家の作品は、あまり聴いたことがないのだが、数多くの管楽器作品を残しているようで、今回聴いた印象は、誰もが親しみやすい非常に万人受けする優しい旋律を書く人で、これが木管の嫋やかな音色とよく合って、木管好きの自分には、堪らない魅力な作品である。

録音は、さきほどの作品とは違っていて、楽器そのものが遠くに感じる、全体を俯瞰する感じで、なんだか、かなりBISっぽい。(笑)

同じレーベル、スタッフとは思えないテイストで、こんなに違うんだなぁと感じいることが多かった。この作品を録るなら確かにこのような感じがいいですね。

その取り扱う作品に応じて、どのような録音スタイルがいいのか、柔軟に変えられる、そういうところが優秀でいいですね。 

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細川俊夫:ヴェネツィアの歌う庭、ヴィヴァルディ:協奏曲集~海の嵐、夜、ごしきひわ、他 
シュヴァルツァー(リコーダー)、オランダ・バロック

http://goo.gl/gQJPIW


世界での活躍が著しい日本の現代音楽作曲家、細川俊夫さんの作品を、ヴィヴァルディの作品と交互に聴くというコンセプトの作品。細川さんの作品をこのレーベルで聴くとは、夢にも思いませんでした。(笑)

オランダ古楽界の若き精鋭集団オランダ・バロック(元オランダ・バロック協会)による演奏。オランダ・バロックは、このレーベルでは、ソリストと共演する形で、アルバムを作るというのが多いですね。

今回の作品は、世界最高のリコーダー奏者の一人、イェレミアス・シュヴァルツァーとの共演。

このシュヴァルツァーの委嘱により作曲された細川さんの「ヴェネツィアの歌う庭」は、ヴィヴァルディの4つのリコーダー協奏曲と交互に演奏するために作られた5つの小品で、日本でも2014年に演奏されているそうである。(東京エムプラス情報 on HMV)

これが聴いてびっくり!

作品の素晴らしさは、言うまでもないが、特に録音の素晴らしさに驚いてしまった。このレーベルで聴いてきた作品の中ではトップクラスに入る出来で(というか自分好みというまでですが。)、特に細川さんの曲のときでは、静謐な広い空間の中で、平皿に盛った水面に水滴がポタリと落ちるときに感じるような生生しい音表現には鳥肌が立ってしまった。

武満さんのディスクでもよく感じることなのですが、現代音楽というジャンルは、音楽として聴くには難しい面もありますが、オーディオ的に美味しい音の世界というか、隙間、空間を感じる広いキャンパスの中で、スコーンと抜けるような急峻な立上がり、立下りのある音の連続で、鋭利というか、なんかカミソリのような感じがして、ゾクゾクする感じが堪りませんね。

そういう面で、自分にはとても美味しい世界。

とにかくびっくりしました。

古楽には、苦手意識があった自分ではありますが、この3枚を聴いて、より身近なものに感じたことは確かです。

仕事で超多忙な日々を送っていた、つかの間の休日、いい過ごし方ができました。


DG(ドイツ・グラモフォン)のSACD ディスク聴き比べ。 [ディスク・レビュー]

膨大なライブラリーを持つDG(ドイツ・グラモフォン)録音の中でも、とりわけ彼らのSACDを集めてみよう、そして、その5.0サラウンドを聴いてみたい、ということから始まった今回のプロジェクト。

なにせ廃盤もしくは珍盤扱いがほとんであるから中古市場を隈なく探して、ようやく集めてきた。
DGのSACDは、せぜい50枚~100枚あるかどうか、というところで、もうここいらが限界だと思った。

そんな苦労して集めてきたDGのSACDたち。

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前回の日記で、このDG SACDを録音、編集、マスタリングしているのが、EMIL BERLINER STUDIOS(エミール・ベルリナー・スタジオ:EBS)であることの紹介をした。今回いろいろ代表的な名盤と言われているディスクを聴いてみて、素晴らしいと思った盤のクレジットを見てみると、やはり大概のトーンマイスターが当スタジオの看板のライナー・マイヤール氏の作品であることもわかった。

トーンマイスターという称号はドイツ専門の呼び方なのかもしれないが、DGのクレジットでは、”トーンマイスター(バランスエンジニア)”と表記されていることが多かった。ホールのステージ上で(マルチ)マイクセッティングにて、そこで収録した音源をマルチトラックで取り込む。それを、まずはその場(ホール)の特設スタジオで臨時でミックスして、出来栄えを確認したうえで(不満であればマイクアレンジやり直して、何回でもトライするのだろう。)、最終的には彼らの本拠地のスタジオで編集して最終ミックスする。

オーケストラ録音のフローはそんな感じなのだと思う。そのマルチトラックを、2chや5.0/5.1chにミックスするときの音の振り分け方、バランス、最終的な音作り、音決めをするのがバランスエンジニアなのだと想像する。一番”きも”の部分ですね。

DGのクレジットでは、EBS録音スタッフは、プロデューサーの他に、トーンマイスターと録音エンジニアがいて、最終的なサラウンドミックス&ステレオミックス、そして編集をしているのが、大体トーンマイスターが兼ねてやっている盤が大半であった。

トーンマイスターというのは、推測であるが資格制度で、教育機関で専門の教育を受けて得られる資格・称号だと自分は理解している。

自分のディスクレビューは、普通と違って、こういうところに着目して、その彼らの音作りを評価して、その盤の魅力を語ってみたい。

パッケージのSACDは、この録音、オーサリング、編集は、96KHz/24bit(以下96/24)などのPCMのハイレゾでやっている場合が圧倒的。ハイレゾブームの現在では、さらに192/36とか、さらにそれ以上とかあるのかもしれないが、現存のSACDは大半が96/24で録音、編集していて、そこから最後にDSDにアップサンプリングしている場合がほとんど。DSDという1bitのパルス変調の波形は編集ができないのがネックで、だからオーケストラ録音では絶対不可欠な”編集”という作業のために、いったんPCMハイレゾで録っているんだと思う。

1999年のSACDフォーマット発表の時、社内では、次なる目標は、DSDオーサリング機器の開発です。収録のマイクのところからDSD帯域の50KHz~100KHzの解像度にして、そして編集機器もDSD波形での編集ができるようにするのです!と高々に宣伝していたのを今でも思い出す。(笑)

DSDが編集できないと知ったのは、あれから十数年以上経った3~4年前にネットで知って、相当ショックだった。あの頃の宣言はなんだったの?宣言してみたものの実際やってみたら、あの波形での編集は難しいということがわかってギブアップした、ということなのだろうか....

あくまで想像の域を脱しないが、そんな経緯があってPCMハイレゾで録って、編集して、最後にDSDに変換してアップサンプリングする、という過程が一般的になったのだと思う。ちなみに2.822という数字は、192/96/48/44.1とでいずれも割り算(devide)しやすい互換のある数値で決めた数字だと記憶している。DSDはマスター処理のフォーマットとして捉えられていて、そこからPCMのこれらのフォーマットにたやすく変換できることを前提に考えられていたのである。

最初からDSDで録音するのは、ストリーミングみたいな編集しない一発録りするようなメディアで盛んですね。

今回試聴したDGのSACDは、SACD草創期のせいなのか、48/24,もしくは96/24で録っているものがほとんで、その大半は、48/24の比率が多かったような気がする。この録る、編集するところで使うサンプリング周波数や量子化ビット数の違いって、結構聴感上の差が大きいことがわかった。

やはり48/24よりも96/24で録ったやつのほうが、その場(ホール)のアンビエンス(雰囲気)を豊富に綿密に捉えて表現できていて解像度が高いのだ。

今風の表現で言うなら、空気感というやつなのかもしれないが、このDG SACDを聴いていても、それがよくわかる、ことが面白かった。

DGのSACDサウンドの印象、とりわけ、5.0/5.1サラウンドの印象は、今風のサラウンドと違っていて、垢抜けないというか(笑)、ホールの空間の捉え方(直接音と響きの対比バランス)が、あまり上手でないような気がした。ずばり言うと「音場感が乏しい。」いまのPENTATONEやBIS,Channel Classicsの高音質レーベルのほうが、音の広がりがあってずっと洗練されている。

結構ダイレクト感が強く、5本のSPからダイレクトに音がやってきてサラウンドを形成しているような、そんな感じがした。でも直接音のテイストは、スゴイ硬派な厚みのあるサウンドで、これぞ、まさに王道の伝統的なDGサウンドという感じである。だからこそ、これにホール空間を捉える”いま”の収録技術が加わると、本当に硬派なすごいサラウンドができるのになぁ、と思うのだ。

ありえない現実かもしれないけれど、ボクもDGのSACD復活論者なのだ!(笑)

それでは、これから素晴らしいと思ったDG SACDのディスクの紹介をしていこう。(なにせ廃盤、珍盤が多いので、HMVだけではなく、アマゾン、タワレコ総動員でございます。(笑))

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ベートーヴェン交響曲第5番&第7番
カルロス・クライバー&ウィーンフィル

http://goo.gl/zmjdNi

DG録音、つまりEBSメンバーによる独壇場であったのが、ウイーン楽友協会でのウィーンフィルの録音。この盤はその最たるもの、というか最高傑作かもしれない。ウィーン楽友協会の音響の最大の特徴である、ものすごい響きの豊かさ、響きに囲まれている感覚、それが出音1発ですぐにわかる。芳醇な響きが部屋中に充満する感じで、わぁこれはスゴイ録音だなぁという感じ。ウィーン楽友協会のホール空間がそのまま表現されているような録音なのである。ただその反面、S/Nがあまりよくない、というか、特にN,ノイズフロアが高い感じ。

現代における最新ホールの中って、外との遮音性能が抜群に優れていて、ホールの中は、すごい静謐な感じなのだが、楽友協会は、外の雑音がそのままホール内まで聴こえてくる感じで、いわゆる暗騒音が多いホールなのだが、それがよくわかってしまう感じで、あまりS/Nのいい録音ではないな、という印象であった。

カルロス・クライバーは、その録音、出演回数の少なさから神格化されることの多い指揮者であるが、けっしてそうではないんだよ、という論調で日記に書いてみたい指揮者である。(笑)ベト5は、耳タコ名曲であるが、こうやってあらためて聴いてみると、本当に名曲中の名曲でじつに格好いいことがよくわかる。


1974/1975/1976 ウィーン楽友協会での録音。
EBSによる録音、編集、マスタリング。2003年のSACD

トーンマイスター(バランスエンジニア)ハンス・ペーター・シュウェグマン(5番)
                   クラウス・シェイヴェ(7番)
録音エンジニア            ハンス・ロドルフ・ムラー/ヴォルフ・ディーター・カーワートキー(5番)
                   ジェヴ・エバーハード/ジョルゲン・ブルグリン(7番)
リミックス              クラウス・ハイマン/ウェーナー・マイヤー
サラウンド・ステレオ ミックス    アンドリュー・ウェッドマン        

96/24  PCM2.0(SACD)
96/24  PCM5.0(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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バッハ ヴァイオリン協奏曲
ヒラリー・ハーン&ロサンジェルス室内楽管弦楽団

http://goo.gl/JWttFl

DG SACDの中では1番売れているベストセラー、最高傑作の優秀録音。我々のオーディオ仲間のお宅には、必ずあるといっていいオーディオオフ会の定番ソフトでもある。バッハのVn協奏曲のアルバムの近代演奏の録音の中でも1番の優秀録音ではないか。とにかくSPからの出音が、鮮度感が抜群で音圧の高いこと。音に厚みがあって美音(S/Nがいい)でありながら、弦が擦れているという実在感がある。

本当に素晴らしいサウンド。

ヒラリーハーンという奏者は、どうも外見が冷たくクールな感じで食わず嫌いだったのだが、そんな自分の中のイメージを変えたのがシベリウスのコンチェルトの録音だった。そしてこのバッハのコンチェルトも。どうも録音というスタイルで自分に大きな影響を与えてきたアーティストである。

ロスアンジェルス ハーバート・ジッパー・コンサートホール 2002/10の録音。

トーン・マイスター トム・ラザルス
録音エンジニア   マーク・ステーダーマン
          シェリー・ヘンデリクソン

96/24 PCM2.0(SACD)
96/24 PCM5.1(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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マーラー交響曲第3番
ブーレーズ&ウィーンフィル 独唱:アンネ・ゾフィー・フォン・オッター

http://goo.gl/hIyfLK

ライナー・マイヤール氏の代表的な作品。
やはりウィーン楽友協会でのウィーンフィルでの録音。
やや録音レベルが小さい感じがするが、ボリュームを上げ大音量にすると、その空間が広くダイナミックレンジが広いのがよくわかり、残響感、音場感も申し分ない。でも幾分直接音がしっかりしていてダイレクト感が強い感じだろうか。音の芯、骨格感がしっかりしている感じである。さすがマイヤール氏の作品だけある。やっぱりマラ3で独唱がオッターというのがいいなぁ。


ウィーン楽友協会 2001/2002年の録音 2003年にSACD発売。
EBSによる録音、編集、マスタリング。

トーンマイスター(バランスエンジニア)  ライナー・マイヤール
録音エンジニア              ウォルフ・ディエーター・クラワトキー
編集                   ライナー・マイヤール
サラウンド・ミックス&ステレオ・ミックス ライナー・マイヤール

48/24 PCM2.0(SACD)
48/24 PCM5.0(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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アルプス交響曲
ティーレマン&ウィーンフィル

これもウィーン楽友協会でウィーンフィルの録音。

ウィーン楽友協会での録音にもかかわらず、意外や響きが少なく、マッシブな感じで、空間もあまり感じない。結構ダイレクト感が強い。S/Nはいいですね。空間はそんなに感じないけれど、ダイナミックレンジはそれなりに確保されている録音だと思います。アルプス交響曲らしい、スケール感や雄大な感じがよく表現されていて、このソフトも我々のオーディオオフ会では定番ソフトですね。DG録音の中でも今のレーベルのような軟なサウンドではない、いかにもDGらしい硬派サウンドの代表的なソフトで、何回も聴きこんでしまう自分ではお気に入りのソフトでもあります。特に嵐の場面でのグランカッサの鳴り物系の迫力はスゴイものがありますね。

ウィーン楽友協会 2000/10の録音。2003年SACDとして発売。
EBSによる録音、編集、マスタリング。

トーンマイスター(バランスエンジニア)  ウーリッヒ・ヴィッテ
録音エンジニア              ジョルゲン・ブルグリン
                     レナード・ラーグマン
編集                   ダブマー・ビルウェ
サラウンド・ミックス&ステレオ・ミックス ウーリッヒ・ヴィッテ

48/24 PCM2.0(SACD)
48/24 PCM5.1(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲
アンネ・ソフィー・ムター&ニューヨーク フィルハーモニック

http://goo.gl/xHG6A9


これもDGらしい音色が濃くて、骨格感のあるサウンドですね。
音に厚みがあって、S/Nもいい。ベートーヴェンのコンチェルトは、ヴァイオリンとオケとの語らいが特徴なのであるが、特にオケの部分は、すごい音に厚みがあって深さがあって沈み込むような深さというか空間の広さをすごく感じる。(ボクはこういうサウンドの鳴り方が好き。)骨太な感じで、このソフトは1番DGらしい硬派サウンドの代表的なソフトのようにも思える。自分的には1番といってもいいぐらい好きなソフトですね。これは録音、編集時に96/24で録っているもので、それがよくわかるくらい情報量が多く解像度が高いのがよくわかりますね。

リンカーンセンター アベリー・フィッシャーホール 2002/5の録音。2003年SACDとして発売。EBSによる録音、編集、マスタリング。

トーンマイスター(バランスエンジニア) ウーリッヒ・ヴィッテ
録音エンジニア             ウォルフ・ディーター・カーワートキー
                    レインハード・レッグマン
編集                  レインヘルド・シュミッド
                    マーク・ベッカー
サラウンド・ミックス&ステレオ・ミックス ウーリッヒ・ヴィッテ

96/24 PCM2.0(SACD)
96/24 PCM5.0(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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マーラー交響曲第2番「復活」
ギルバート・キャプラン&ウィーンフィル 

ギルバート・キャプランは大好きなマーラーの交響曲第2番「復活」を指揮することを夢見て指揮法を学び、現在では「復活」のみを専門に振る指揮者として有名で、ある意味一風変わった指揮者でもある。

これもウィーン楽友協会でのウィーンフィルでのEBSメンバーによる録音である。やはりこれも響きが豊かで美しい煌びやかな空間が綺麗に録れている。木管の嫋やかな音色がサラリと流れてくる瞬間に、空間の広さが十分感じ取れる。美音、美空間の代表的な録音ですね。ゴローさんは美音という類はオーディオ的にエンタメ性がなくてつまらない、と言っていたが、そのような意見も吹き飛んでしまう優秀録音だと思う。あえて言えば最終章のところで、オルガンが鳴るのがちょっと違和感かなぁ?復活にオルガンというのはいままで経験がありません。

この優秀録音も、ライナー・マイヤール氏の代表作品。最高傑作といってもいいほどの作品だと思う。


ウィーン楽友協会 2002/11,12での録音。
EBSによる録音、編集、マスタリング。

トーンマイスター(バランスエンジニア)ライナー・マイヤール
編集                 ライナー・マイヤール
録音エンジニア            ウォルフ・ディェータ・カーワートキー
                   ジョーゲン・ブルグリン
                   ダグマー・バイウエ
サラウンド・ミックス         ライナー・マイヤール

96/24 PCM2.0(SACD)
96/24 PCM5.0(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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マーラー大地の歌
ブーレーズ&ウィーンフィル

これもウィーン楽友協会でのウィーンフィルでのEBSメンバーによる録音。いかにこの組み合わせがEBSメンバーの独壇場であるのかわかるだろう。テノール、ソプラノがきれいに録れている。ホールというよりスタジオでの録音のように空間をあまり感じないのだが、S/Nがよくて、DGらしい厚みのある音は、やっぱり”らしさ”の感じはする。歌ものの録音としては、とてもクオリティが高くて自分好み。途中で出てくるフルートの浮き上がり方というか、その遠近感の出し方、声ものと伴奏のオケとの間にギャップを感じないその自然なつながりは、作為的なものを感じなくてヴィッテさんの腕の見せ所なんだなぁ。

ウィーン楽友協会 1991/10の録音。2002年SACDとして発売。
EBSによる録音、編集、マスタリング。

トーンマイスター(バランスエンジニア)  ウーリッヒ・ヴィッテ
録音エンジニア              ジャーゲン・ブルグリン
編集                   ダブマー・ビーベ
サラウンド・ミックス&ステレオ・ミックス ウーリッヒ・ヴィッテ

44.1/24 PCM2.0(SACD)
44.1/24 PCM5.1(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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オペラ・アリア集
アンナ・ネトレプコ&ウィーンフィル&ウィーン国立歌劇場合唱団 ノセダ指揮

これもウィーン楽友協会でのウィーンフィルでEBSメンバーによる録音。今回はネトレプコのアリア集。いままで通り、響きの豊かさなどは従来通りよく録れているのだが、ソプラノの捉え方が、ちょっとオフマイク気味というか少し距離感がある感じで、ソプラノ+オケとして全体の捉え方がじつに秀逸。ソプラノにはエコーがかかっていて、歌唱ものの録音のリファレンスのやりかたですね。なんかBISっぽいです。(笑)
残念ながら、この盤は現在廃盤で、ぜひ再販してほしいな、と思うくらい素晴らしい優秀録音ですね。

しかしネトレプコの声の張り、声量には本当に圧倒される。
ソプラノの音域としては、もちろん相応の素晴らしい声質なのだけれど、ストレスフリーに突き抜ける高音というより、いくぶんダーク気味な色を感じる声質で、彼女の唯一無二の魅力な声紋って言ってもいいですね。やはり現代の女王ディーヴァと言っていい資質・貫禄があります。

ウィーンフィルのオケが鳴るときの沈み込むような感じの重量感など、そのはっきりわかる空間が録れているのもさすが。
これもライナー・マイヤール氏の作品なのである。

ウィーン楽友協会 2003/3の録音。
EBSによる録音、編集、マスタリング。

トーンマイスター(バランスエンジニア)ライナー・マイヤール
録音エンジニア            ウォルフ・ディーエーター・カーワートキー
編集                 ダグマー・バィーヴェ
サラウンド・ミックス         ライナー・マイヤール

96/24 PCM2.0(SACD)
96/24 PCM5.0(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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シューベルト歌曲集 
アンネ・ゾフィー・フォン・オッター&クラウディオ・アバド&ヨーロッパ室内管弦楽団

DGにしてはめずらしくパリのシティ・デ・ラ・ムジークの大ホールでのセッション録音。2002年5月。これもじつに素晴らしい録音なのに廃盤なのが本当に残念。再販望みたいです。オッターは、やはりいいなぁ。気品のある瑞々しい声がとても美しく録れている優秀録音です。これもちょっとBISっぽいですね。マイクから程よい距離感があるんだけれど、遠すぎず、声の芯がしっかりしてちゃんと明瞭くっきりに聴こえます。これもマイヤール氏の作品。

トーンマイスター(バランスエンジニア) ライナー・マイヤール
録音エンジニア             ジュルブルリン ブルグリン
                    オリバー・ローガーラフォン・ヘイデン
編集                  アンドリュー・ウェドマン
サラウンドミックス           ハンス・ユーリッヒ・バスティン

EBSメンバーによる録音、編集、マスタリング。

48/24 PCM2.0(SACD)
48/24 PCM5.1(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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ラヴェル ボレロ・マ・メール・ロワ
ブーレーズ&ベルリンフィル

http://goo.gl/2R7AR9


数多のベルリン・イエス・キリスト教会録音の中では、ダントツの超有名盤で優秀録音。オーディオオフ会でも定番中の定番ソフトです。1993年の録音とは思えないS/Nのよさで、まさに美音という類で、全体的に線の細い引き締まった音色。いままで紹介してきたソフトの音色とはちょっと毛色が違う。サラウンド効果も大仰なところがなくて、ほんのりと横方向のステージ感が広がるくらいの上品なサラウンドなのである。名盤生産基地であったベルリン・イエス・キリスト教会の質素な空間で、響き過ぎない上品な感じがよくわかります。

本当に美しい作品。DG SACDであれば、ぜひ持っておきたい1枚!

この教会は、まさにDG録音の原点というか聖地でもある。余談であるが、ポリヒムニアのFBの投稿で、この教会で彼らがセッション録音をやっている写真が投稿されていて、スゴク驚いた。(笑)彼らが、この空間をどのように捉えて作品化するのか、スゴイ楽しみ!それもサラウンドで!


ベルリン・イエス・キリスト教会 1993年セッション録音。
EBSメンバーによる録音、編集、マスタリング。


トーンマイスター(バランスエンジニア) ヘルムヘット・バーク
録音エンジニア             ジョブ エバーハート、ウォルフ・ディーター・カーワートキー
編集                  イングマー・ハース
                    ロジャー・ブッケンホフ
サラウンドミックス           ヘルムヘット・バーク
                    マーク・ブッケアー

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ワーグナー・オペラアリア集
ブリン・ターフェル&クラウディオ・アバド&ベルリンフィル

ベルリンフィルハーモニーでのセッション録音。
いままでEBSが録ってきた録音は、ウィーン楽友教会でのウィーンフィルの録音が独壇場であることを言及したが、もちろんベルリンフィルハーモニーも彼らの大きなテレトリーだった。四方が反射面だらけの響きの豊かなシューボックスと違って、ワインヤードのアリーナ型は、ステージ上の音を反射するための壁が遠く、どちらかというと音が拡散するスタイルで、演奏スタイルもホールの反射による響きに頼ることのできない直接音主体のダイナミックな奏法が求められる。

やっぱり録音のテイストが違うんだなぁ。聴いていてはっきりわかる。容積の大きいアリーナなので、鳴っている音との対比で、捉えている空間の広さが聴いていてよくわかるんですよ。そして容積が広いと残響時間も長くなるので(教会がそうですね。)、ダイレクト音主体で、それに伴う余韻が漂う感じが....

シューボックスとは、全然違う魅力ですね。先日訪問したパリのフィルハーモニー・ド・パリも、アリーナ型で空間が広くて、この音の余韻の漂う滞空時間の長さが秀逸でした。アリーナ型特有の聴こえ方ですね。

ブリン・ターフェルという歌手は、イギリスのバス・バリトン歌手で、このDG SACDの一連のシリーズの常連スターですね。彼の歌うワーグナーのアリアは、とても魅力的。ワーグナー・ファンとしては堪りません。

ベルリンフィルハーモニー 2000/2001年のセッション録音。
EBSメンバーによる録音、編集、マスタリング。

トーンマイスター(バランスエンジニア) ウーリッヒ・ヴィッテ
録音エンジニア             ウォルフ・ディーター・カーワトキー
                    ジョルゲン・ブルグリン
                    レイナード・レーグマン
編集                  オリバー・クルデ

48/24 PCM2.0(SACD)
48/24 PCM5.1(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

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中国の不思議な役人、春の祭典
サロネン&ロサンジェルス・フィルハーモニック

http://goo.gl/AARBNb


ご存知エム5さん絶賛ソフト!(笑)サラウンドではなくて2chソフトなのだけれど、これがスゴイ!もちろんマイヤール氏の作品だ。これは、やはり大音量、爆音で聴かないとダメですね。1曲目の「はげ山の一夜」からじつはすごかったりする。楽器が特定できないのだけれど、グイグイ掘り下げるように鳴ってくる低音が堪らない快感。そして中国の不思議な役人、まさに目の覚めるような、で、かなりアバンギャルドな旋律がつぎつぎと展開され、そして怒涛の低音、かなりクセになる。グランカッサの迫力ある炸裂が堪りませんね。

これはやっぱり爆音で聴かないとダメだなぁ。

このパントマイムは、内容がかなりグロテスクなので、上演の機会があまりなく、オーケストラ版はそれなりに演奏されるのだが、なかなかお目にかかることのない演目だったりする。

でも自分は、忘れもしない松本のサイトウキネンで金森譲さんの演出でこのパントマイムの実演に接することが出来た。
衝撃だった!!!ちゃんとNHKの録画もしてある。永久保存版です!

ロスアンジェルス CA ウォルトディズニー・コンサートホール 2006/1のセッション録音。
EBSメンバーによる録音、編集、マスタリング。

トーンマイスター(バランスエンジニア) ライナー・マイヤール
録音エンジニア             フレッド・ボグラー
サラウンドミックス           ライナー・マイヤール

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クレド
エレーヌ・グリモー&スウェーデン放送合唱団ほか。


まさに恐怖のオフ会道場破りのソフトとして、このソフトの存在を知らない人はいないだろう。この7トラック目のまさにカオスといってもいいほどのごちゃごちゃした音の塊を、きちんと鳴らせる人はどれくらいいるだろう?史上最強に鳴らすのが難しいソフトと言ってもよい。これをオフ会で持参して他人の家で鳴らそうとする人は、なんと根性の悪い人と思われるので注意しましょう。(笑)

拙宅はサラウンドで鳴らしているので、幾分、ごちゃごちゃした音の塊も幾分分離して聴こえるかなぁと思うのだが、これを普通の2ch再生で聴いたら、本当に団子状態でつぶれてグチャグチャに聴こえるんでしょうね。まさに道場破りのソフトで、我々オーディオファイルでは最も恐れられているソフトであります。これもマイヤール氏の作品なのです!!

それをアンニュイな魅力のグリモーさんが弾いているところがまた.....(笑)

トーンマイスター(バランスエンジニア) ライナー・マイヤール
録音エンジニア             ジョルゲン・ブルグリン
編集                  マーク・ブッカー
サラウンドミックス           ライナー・マイヤール

96/24 PCM2.0(SACD)
96/24 PCM5.0(SACD)

44.1/16 PCM2.0(CD)

以上が、自分がお勧めする幻のDGのSACDです。

こうしてみると、DG録音の全部がEMIL BERLINER STUDIOS(エミール・ベルリナー・スタジオ)で録音、編集、マスタリングされたもので、まさにDG録音は、このEBSとともに歩んだ歴史だということがよくわかった。とくに優秀録音の大半の作品を、ライナー・マイヤール氏とウーリッヒ・ヴィッテ氏が手掛けていたことがわかったのが、改めてこのスタジオをずっと支え続けてきた名トーンマイスターなんだなぁ、という感じでしみじみ。

ベルリンフィルは、彼らの自主制作レーベルであるベルリンフィルレコーディングスで、そしてロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団は、ポリヒムニアによる録音、編集、マスタリングで、自主制作レーベルのRCO Liveから、そしてウィーンフィルは、このEMIL BERLINER STUIDOSという図式なのかな、ということが俯瞰出来て面白かった。

最後に余談であるが、SACDといえば、じつは自分はSACD草創期のソニー(SME)から出たころのシングルレイヤーのSACDを懸命にコレクションしていた時期があった。これはハイブリッドが出来る前の本当に最初の頃のフォーマットで、背表紙が黒のハードケースカバー仕様で、お値段も普通より高い3675円のバージョンであった。この頃のバージョンをコレクションしている人は、いまはほとんどいないと思うので、もうお宝を持っている感じで、スゴイ自慢だったりするのでした。

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もうここまでくると病気ですね。(^^;;


PENTATONEの新譜:ヨハネス・モーザー&フルシャ・フィルハーモニアのチェロ協奏曲 [ディスク・レビュー]

じつに久しぶりにオーディオのディスクレビューの日記を書く。

海外旅行があったので、聴いていない新譜たちが、もうたくさん溜まっているのだが、自分はこのカテゴリーの日記が好きなので苦にならない。大好きなオーディオの趣味に浸れて楽しい。(生演奏もいいけどね)

最近ベルリンフィルに入団したクラリネット奏者のアンドレアス・オッテンザマー。彼のようなタイプの男性に言えるのは、いわゆる「ナイスガイ」という言葉。

底抜けに明るい、屈託のない笑顔、そして細身でハンサム....万人の女性であれば誰もが魅力に感じてしまう男性像、まさに「ナイスガイ」と言えるべき存在。50歳を過ぎた自分にとっては、同性から観た彼らの印象は、正直かなり眩しい。(笑)

今日取り上げるチェリストのヨハネス・モーザーもそんなナイスガイの1人だと思う。

写真から伺い取れるのは、やはり屈託のない底抜けに明るいキャラ、女性受けするんだろうなぁと想像する。

ところが彼のキャリアは、じつにかなり硬派でその骨のある考え方など、かなり驚かされるのだ。まさに実力も兼ねそなえた美形男性ソリストとして向かうところ敵なしというところだろう。

ドイツ系カナダ人のチェリストで、1979年生まれの現在36歳。2002年チャイコフスキー・コンクールで最高位を受賞。使用楽器は、1694年製のアンドレーア・グァルネリ。

モーザーは、いままでベルリン・フィル、シカゴ響、ニューヨーク・フィル、クリーヴランド管、ロサンゼルス・フィル、ロンドン響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管などなど、もう書ききれないほどの世界のオーケストラ&高名な指揮者と競演してきており、英グラモフォン誌からもその絶賛を浴びている。(去年2014年にN響の定期公演にも登場しました。)

室内楽奏者としても熱心に活動しており、五嶋みどり、ベル、アックス、カバコス、プレスラーなどとしばしば共演、ヴェルビエ音楽祭、シュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭など多くの国際音楽祭にも登場している。

モーザーはあまり知られていないレパートリーを取り上げ優れた演奏をするアーティストとしても非常に評価が高いようだ。

(ここに記載したモーザーの紹介文は、Artisit Management M.Hirasa.Ltdさんのサイトから簡易抜粋させていただきました。もっと詳しい内容の原文サイトはこちらになります。ぜひご覧になってください。→
http://www.hirasaoffice06.com/files/strings4moser.htm

そんなモーザーであるが、今年2015年の春に、ついにPENTATONEと専属契約をした。

彼のルックスだけではない、そのその底にある”ホンモノ”の匂いをかぎとれたのは、今回の新譜を聴いてからだった。

契約時のサイン。(左がPENTATONEの名プロデューサー。ジョブ・マルセー)(ポリヒムニアのFBページより)

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PENTATONEには、ヴァイオリンのアラベラ・美歩・シュタインバッハー、ピアノのマーティン・ヘルムヘン、ナレ・アルガマニアン、オーケストラはベルリン放送響、スイス・ロマンド管、ロシア・ナショナル管と、とても若くて有望ないいアーティスト、オケを抱えている。

そのメンバーにチェリストとして、このヨハネス・モーザーが仲間入りするのだ。
なんとエキサイティングなことだろう!

若くて有望なアーティストを、安価なコンサート代で、そして高音質のクオリティの高い優秀録音で市民に提供する、というこのスタンスは、まさにPENTATONEに代表されるような高音質マイナーレーベルのメジャーレーベルに対抗するアイデンティティなのだと思う。

まったくブレていない。

そのPENTATONEからのモーザーの第1段。 
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ドヴォルザーク:チェロ協奏曲、ラロ:チェロ協奏曲 
ヨハネス・モーザー、フルシャ&プラハ・フィルハーモニア

http://goo.gl/8m69Ty


日本でもお馴染みのフルシャの指揮で、フィルハーモニアとのジョイントで、あの名曲のドヴォルザークのチェロ協奏曲を演奏する。そして、意外と通好みなのがラロのチェロ協奏曲。

録音セッションは、プラハのスタジオ(Forum Karlin) で行われたようだ。ポリヒムニアが出張録音した。

ポリヒムニアのスタッフは、バランスエンジニア、そして編集にエルド・グロート氏、録音エンジニアにロジャー・ショット氏。安心できる布陣。最近のポリヒムニアの録音は、エルド・グロート氏中心に動いている感がありますね。

録音会場となったForum Karlin (ポリヒムニアのFBページから)
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セッション録音の様子(ポリヒムニアのFBページから。)
このマイクアレンジがいかにもポリヒムニアらしい。(笑)
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プロデューサー・マルセーと指揮者フルシャ
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さっそく聴いてみる。

非常にソロ(チェロ)とオケの伴奏のバランスがうまくとれている録音(つまり編集)だと感じた。メインマイクで一発で全部拾うワンポイントではなくて、写真の通りマルチマイクらしい、とてもオーディオ的に聴きやすい快感が得られやすいサウンドの組み立て方になっている。(各チャンネルへの配分、ミックスで聴こえたときのバランス感覚などが秀逸。)

ワンポイント1発録りだと確かに自然の演奏の音に近いかもしれないが(巷の評判も良い)、でも自分はそうは思わない。

全体的にマイクから遠すぎてサウンド自体に躍動感がない鮮度のない死んだようなサウンドに感じることが多くて感心しないほうが多い。生演奏では聴こえない音が聴こえる、というけど、いいじゃないですか!それも自分はオーディオの快楽のひとつで魅力だと思っている。

とにかくオケの音は輪郭がくっきりとしていて明瞭で、ちゃんと大音量(この音量は予想以上。ソロのチェロを圧するくらい大音量)。それでいながら深さ&空間情報もきちんと入っている。

マルチマイクであるにもかかわらず、空間表現というか 各楽器の佇まいが自然でバランスが良いのはもちろんだが それでいて 発音のエネルギー感や演奏者の息遣いがしっかり録れていて、エルド・グロート氏の編集の素晴らしさには驚くばかりだ。


聴いていてホントに気持ちがいい作品にできてあがっていると思う。

チェロの音が、予想していた以上に非常に心地よいスマートな音色で(もっと低弦ゾリゾリと思っていたが。)綺麗に録れている。滑らかで優雅な音色というか.......

それにして、モーザーのチェロの音色に表現のあること。酔わせる旋律とそうでないところの区別がはっきりわかる、その緩急のある演奏には舌を巻く。情感たっぷりに奏でるところの”タメ”のある弾き方とか.....

このドヴォルザークのチェロ協奏曲の名録音であるカラヤン&ロストロポーヴィチの名演を聴きなおしてみた。

聴いてげんなりした。

彼らの名演をそしるつもりはなく 録音された時制を考えれば、実に素晴らしいクオリティの録音だということに異論はない。

だが しかしだ。

しかし そのクオリティは 30年前にすでに明らかに聴きとれた。
「チェロ、そしてそれに伴うオケの音が、こんな風に録れてるなんて何と素晴らしい録音なんだろう!」と 30年前に思った以上のものが 新たには感じられなかった。

逆に 演奏がひどく色あせて感じられた。

モーザー&フィルハーモニアの「ドヴォルザークのチェロ協奏曲」には、1970年のカラヤン指揮ベルリンフィル&ロストロポーヴィチのDG録音の時点では捉えることができなかった「音のさま」がある。

このあたりのフレーズの「新しい録音を聴こうよ!」というゴローさんの教えは、永遠に我々の心の中に生きていくんだろうな。

この考え方に反発する方も数多いらっしゃることももちろん承知ですが......まぁたかが趣味、されど趣味の世界で、正しいという答えなどなくて個人の楽しみ方を尊重されるべきことはもちろんだと思っております。


リベンジ [ディスク・レビュー]

ベルリンフィルの自主制作レーベルである「ベルリンフィル・レコーディングズ」からシューマン交響曲全集のSACDの発売が今日公表された。

シューマンの交響曲全集自体は去年この自主制作レーベルの第1弾として出されたもので、それを信号コーデックをSACDにして再発売ということである。

正直これは大変驚いた。

一番DSDレコーディングに熱心でなかったのはDGで、そもそもSACDのタイトル数が50程度くらいで早々に撤退していったレーベルだった。そういう訳で当然ベルリンフィルとも全く無縁のフォーマットだったので、今回の発表はあまりに驚いてしまった。ベルリンフィルとSACD、というのはあまりに似合わないカップリングのようにも思えた。(笑)

彼らとしては、これですべてのフォーマットに対応できている、というのもひとつのアピールポイントのようだ。

このシューマン交響曲全集は去年発売されたときに購入して、聴いたのだが、感心しない録音で、期待していただけに、自分の怒りを抑えることができなくて、かなり感情的な酷評の日記を書いた。

自分にとってベルリンフィルというのは、クラシックの基本軸のオーケストラなので、それがこのような録音がずっと続くのではという危惧からであった。

あれから1~2回聴いたくらいで死蔵状態であったが、今日久しぶりに聴いてみた。最初の印象から比べると少し慣れてきたのか幾分よいようにも思えたが、やはり基本的なところでは、空間(表現力)の不足、音場情報が少ない印象は変わらなかった。

ジャズやポップスのオンマイクな録音と違って、オーケストラ録音というのは、全体のシルエット、音場・空間をいかにうまく捉えるかが必須のアイテム。その基本がなっていないように感じた。

今回のSACDでの発売は、自分にとってのリベンジのように思える。

聴くのが怖い感じがするが、逃げてもいられない。ただ、信号のコーデックがいくら良くなったとしても、収録の時のマイクの設定など、そのテイクはもう録ってしまっていて変わらないわけであるから、大きな変化は望めないようにも思えるが、でもどのように編集しているかは聴いてみないとわからない。

当然2chのマイク設定で録っているので、マルチチャンネルはありえなく、ステレオ2chのようだ。

酷評日記を書いてしまった以上、そのまま言い放しではあまりに無責任。

ぜひリベンジして賛辞したい気持ちでいっぱいである。

でも録音に関してはお世辞は言えないし、ウソは書けない。

自分はベルリンフィルに対しては、厳しくありたいし、それがすべての面において世界一のオケと自分が認めるための条件でもあるわけだから。

今回は慎重に、自分だけではなく、仲間の意見も聴いてみたいと思っている。自分より遥かにスゴ耳で、素晴らしいオーディオ環境(ポリヒムニアのスタジオと同じです。(^^;;)を持っている仲間にも試聴してもらい、慎重に意見合わせをしてみたい。

ラトルにとって最大のヤマであるベートーヴェン交響曲全集がこの自主制作レーベルの次回の作品として待ち構えている。ベルリンフィルで、このベートーヴェンとブラームスの全集を作るというのは、絶対避けて通れないイベントなのだ。

いろいろな最先端のメディア戦略を仕掛けている彼らだが、そもそもの昔からの基本である”録音”という面での今後の行く末・展望が見えるかもしれない。

9/20発売なので、9月下旬はいろいろ立て込んでいるし、10月初旬から海外旅行に出かけてしまうので、聴くのは10月中旬~下旬になってしまいそうであるが、楽しみである、と同時にかなり怖い感じである。


ディエス・イレ [ディスク・レビュー]

今日はじつに久しぶりにラフマニノフのパガニーニの主題による狂詩曲を聴いた。ロシアの巨人ピアニスト、デニス・マツーエフの独奏で、ゲルギエフ&マリインスキーによるまさにロシア勢による録音。 

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ピアノ協奏曲第3番、パガニーニの主題による狂詩曲(ラフマニノフ) 
マツーエフ、ゲルギエフ&マリインスキー劇場管弦楽団

http://goo.gl/Okwb1W

2009年の録音で少し古いのだが、もともとこのディスクには、ラフマニノフ ピアノ協奏曲第3番がカップリングされていて(というかこちらがメイン。)、最初それ目的で購入したのだが、実際聴いてみたらもうダメダメで、カップリングであったパガニーニ・ラプソディーのほうがすごく良かった、という印象のディスクであった。

以前にも日記にしたが、ラフマニノフの3番はどうも録音というスタイルを取ると、自分のイメージにピッタリ合ういい演奏に巡り会ったことがない。どちらかというと映像ソフトのほうがその感動、衝撃が伝わってくる。マツーエフという人は、乱暴な弾き方をする人で、まさにダイナミズムの塊のようなピアニストであるから、彼が弾く3番はさぞかしい感動するだろう、と思ったのだが、なぜか、この録音では全般的にスローテンポで、この曲の魅力である瞬時のアタック感みたいなものが感じられなくて、いわゆるヌルイ演奏、というか、凡演奏だなぁ、と思ったものである。(笑)

(でも同じマツーエフの独奏でも、ゲルギエフ&ベルリンフィルとの演奏で、DCH(デジタルコンサートホール)での演奏はまさに鳥肌が立つくらい素晴らしい演奏でした。まさにこの曲のイメージにぴったりの自分好みの演奏!やはり映像ソフト向きなんだなぁとつくづく。)

で、なぜかパガニーニのほうは、過去に数多の録音があるにもかかわらず、新しい録音として自分がよく聴くリファレンスのような存在になっていた。だから、このディスクを取り出すとき、3番は最初から飛ばして、パガニーニだけを聴いているみたいな感じなのである(笑)

パガニーニの主題による狂詩曲は、もうラフマニノフという作曲家を代表するような作品であることは誰も意義はないだろう。

ご存知パガニーニの主題を、味を変え、品を変え、24種類のいろいろなバリエーションで変奏していく変奏曲。

第18変奏があまりに有名だが、自分はこの部分だけでなく曲全体としてトータルな流れとしてこの第18変奏を捉えるのがこの曲を楽しむコツだと思っている。

大昔にこの曲を聴き始めたときに、夢中になって曲の構成について勉強した。

最初の序奏の後、分解された主題の”ラミ”が骨格で演奏され、その後に主題が変奏の後に登場するという今までの変奏曲にない画期的な手法。

前半の一番の頂点は、自分的には第4変奏で、もうひとつの分解された主題”ラドシラ”をいろんなバリエーションで演奏していくこの部分。ここが最初のところで自分が1番エクスタシーを感じる。

そして第7変奏。ここにはラフマニノフが生涯こだわったディエス・イレの旋律が隠されている。ディエス・イレはロシアの教会の聖歌の旋律のことでラフマニノフは自分のいろいろな曲にこの旋律を入れているのだ。ロシアを亡命するという悲劇の人生の根底に潜む旋律で、革命によって失われたロシアの教会の響きへのラフマニノフのこだわりの部分でもある。

この変奏曲の中で唯一パガニーニの主題とは雰囲気が違ってかけ離れている旋律、メロディで自分的に気になるというかすごい惹かれる旋律であった。

このラフマニノフが生涯にわたってこだわったディエス・イレについて、当時結構深く勉強した記憶があった。

「ディエス・イレ」は、カトリック教会において死者のためのミサ(レクイエム)で歌われてきた聖歌の1つ。語りだすとかなり深い内容なので、簡潔に言うと、古くはグレゴリオ聖歌の旋律で歌われることがほとんどで、後のロマン派の時代になると、、死を表すモチーフとして使われることが多くなって、有名なベルリオーズの「幻想交響曲」とか、リストの「死の舞踏」とか。ムソルグルキーやチャイコフスキーをはじめとするロシアの作曲家がこぞって影響を受けて自分の作品に取り入れている旋律なのだ。

ラフマニノフのディエス・イレへの深い傾倒もその流れの中にある。

ラフマニノフの作品だけに絞って調べてみると、

交響曲第1番
交響曲第2番
交響曲第3番
ピアノソナタ第1番
交響詩「死の島」
「鐘」
練習曲集「音の絵」
パガニーニの主題による狂詩曲
交響的舞曲

じつにこれだけの作品にディエス・イレの旋律が使われているのだ。

その当時調べて自分で書いた日記から抜粋しただけであるが、今読んでもかなり興奮する。

だから自分にとってパガニーニ・ラプソディーはじつに甘美な第18変奏だけのイメージの曲だけではなく、このディエス・イレという旋律の存在を教えてくれた、そしてその旋律の魅力を知ったきっかけとなった曲なのだ。

ついでにこの曲の映像ソフトも観た。

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たぶん2010年ころのN響の定期公演で、ソリストはユジャ・ワン。いまでこそ、セクシーな衣装で物議をかもしたり、中国雑技団と呼ばれたり(笑)、いろいろ揶揄されることも多い人気者だが、この頃はまだメディアに出始めたころで、期待の新人として自分は好感をいだいていた。

この曲をものの見事に演奏していた。

今年の芸術の秋に、ヒメノ/RCO&ユジャ・ワンに行くことに決めた。
初&生ユジャ・ワンである。(笑)

はたして、巷で言うほどなのか、自分の目、耳で確かめてみたいと思っている。


カンタータを制覇する。 [ディスク・レビュー]

予想に反して、鈴木さん&BCJの「教会カンタータ全集」をほぼ毎日聴きこんでいる。

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購入前は、これだけの全集ものは、買ってもほとんど聴かず、百科事典的な使い方しかしないであろう。ひょっとしたら新品未開封のままであったり。(笑)

現に、その前に所有していたトン・コープマン全集と、アーノンクール&レオンハルト全集が、ほとんどそういう状態であったので、そんな気がしていたのである。

ところが、という話になる。

購入したのが4月であるから、2か月経過しているのだが、55枚のSACDを完聴して、それをさらには2~3回くらい反復しているのである。まさか、バッハのカンタータ全集を完聴できるとは思いもよらなかった。

もちろんBWV体系でネーミングされていて、1曲1曲、曲名と合致、理解しながら聴くということは、さすがにできないが、BGM的に流すように聴きこむと、あら不思議、どんどん進むように聴けてしまうのである。

その1番の理由は、やはりSACDサラウンドで収録されていて最新録音である、ということ、聴いていて、とても気持ちがイイの一言に尽きるのだと思う。やっぱり自分はオーディオマニアなんだなぁとつくづく思ってしまう。録音がいいものは、自分から積極的に聴き込もうという気持ちになるし、やっぱり新しい録音で音質の優れた盤は、そのファクターだけでスゴイ魅力的。

カンタータ全集を完聴なんて退屈な作業と思われがちだが、実際聴いてみるとまったくそんなことはない。1曲1曲が新鮮な発見の連続で、あれよ、あれよとご飯が進んでしまうのである。自分でも驚いている。

聴く時間帯は、会社から帰宅して、夕食後から就寝の夜中まで。ほぼ毎日。
音量的に大音量である必要のない音楽なので、その面も助かる。

とにかくBGM的に聴いていて、本当に美しくて、これぞ教会音楽の真髄と思えるような調べに毎日癒されていた。BCJの本拠地である神戸松陰女子学院大学チャペルでの録音なのだが、教会らしい豊富な残響空間がよくわかり、さらにBIS録音であるので、彼ら特有のダイナミックレンジの広い透明感のあるサウンドで、じつに美しい。

みなさんご存知のようにオーディオファンって変わった人種(笑)で、「音楽を聴いているんでなくて、音を聴いている」という有名なフレーズがあったりするのだけれど、よい音楽を聴いてその旋律に感動するのではなく、ここの急峻な立ち上がりの部分が快感であるとか、いわゆる音としてのエンタメ性を感じる個所、そういう部分部分で解析して悦に入ってたりする人種なのである。(笑)

でもこのカンタータ全集を聴いているとそんな細かい、些細なことなどどうでもいい、と忘れさせてくれる。そんな我々を一音楽ファンに戻してくれる、そんな魅力がある。

特に人の声、合唱、これが限りなく魅力的。澄み切った高音域の声が、広い広い教会空間の中を響いてすぅっと消えていく余韻の美しさは、まさにこれぞ教会音楽のサウンドと言える醍醐味。

やはりバッハの音楽って、どこかその背景に宗教(キリスト教)が垣間見えて、教会でのミサなどで、心が清められる、浄化してくれる、そんなイメージが湧いてきて、崇高な雰囲気が漂う。

自分は、この魅力に取りつかれて、あれよあれよ、という間に完聴してしまった。

もうひとつ言えることは、やはり完成されたBOXとして購入したので、完聴が可能だったのだと思う。もしこれが単盤1枚づつ買い揃えていくということになると、飽きてしまい挫折したことだろうと思う。

カンタータは元来礼拝用の音楽。

日本にはキリスト教の信仰の場というのがないので、日本の大半のクラシックファンは、実はヨーロッパ人にとって一番身近な、礼拝音楽に触れたことがない。そのため、バッハの街であるライプツィヒでトーマス教会やニコライ教会などで「カンタータ礼拝(カンタータ上演の本来の形である、礼拝でのカンタータ上演)」を経験すると、その感動は余りあるものだった。自分がまさにそうだった。

まさにバッハの時代の正当な音楽の場であったこのような催しを体験することは、日本では絶対に体験できないことで、バッハゆかりの旅をするなら1番体験すべき「きも」であったりする、ことが、自分が勉強した時に理解できたことで、1番感動したエッセンスでもあった。

トーマス教会&ニコライ教会では、今も礼拝で当時の流れを汲む音楽が演奏されていて、この種の教会音楽は、昔も今も身近なものとしてこのバッハの街に存在しているのだ。

この鈴木さんの全集のカンタータを聴いていると、そんな想いが必然と湧いてきてどうしようもない衝動にかられてくる。(笑)またライプツィヒやドレスデンに行って、そのバッハの世界に浸ってみたいな、と強く思ってしまう。

ライプツィヒは、バッハがその後半人生を過ごした街で、トーマス教会でトーマスカントールとしてカンタータを作曲した時代でもあった。

バッハゆかりの街は、このライプツィヒ以外にもたくさんあるのだが、ケーテンという街にバッハが住んでいた時代では「ブランデンブルク協奏曲」、「平均律クラヴィーア曲集」をはじめとする数多くの協奏曲や室内楽曲、器楽曲を書いていて(自分はこの時代の作品が好きでバッハ・マイフェバリット作品のリファレンスでもある)、隔年開催であるが、この街でケーテンバッハ音楽祭という催しもあって、これもすごく魅力的。いつか訪問してみたいバッハゆかりの街、音楽祭である。

数年後まで予定びっちりの現在、これを実現するのは、いったいいつのことになるだろうなぁ。(笑)


アリーナ・イブラギモヴァを聴く。 [ディスク・レビュー]

かねてより実演に接してみたいと思っている若手の女性ヴァイオリニストにアリーナ イブラギモヴァがいる。

去年の来日でイザイをやったとき時は所用があって、いけなかった。彼女は2005年あたりから日本で演奏するようになってくれて頻繁に来日してくれるので、日本でも高い人気を持っている。

自分にとってイブラギモヴァといえば、やっぱりバッハの無伴奏というイメージがある。
2005年の来日の時もこの曲の演奏で、火がついて、2009年のこの曲のCD発売で、ベストセラーになって一気に著名になった、そんな印象を持っている。

自分も、確か2011年の時に銀座王子ホールではじめて生演奏を体験したのであるが(確かにこのときバッハの無伴奏だったような....)、素晴らしく感動したこと、いまでも忘れられない。

時の人、という感じだったが、でも彼女の一連のCDを買って聴き込むというところまではいかなくて、そのままになっていたのだが、昨今の業界全般での彼女の評価が高くて、非常に気になる存在になってきた。

写真を見てもわかるように、フンイキがある、というか、”持っている”感覚がある。

結構自分のアンテナにビビッと来るものがあって、今年も来日してくれるようで、これを機会にちょっと嵌ってみようかな、とも思ったり。(笑)

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ロシア出身なのだが、幼少時にイギリスに家族とともに移住して、現在もイギリスを中心に活動している。

彼女の演奏会のプログラムというのが、普通の演奏家と違って、かなり特徴があって、それはいわゆる”全曲演奏会”(チクルス)にこだわっているところ。一回のツアーで、その作曲家を徹底的に掘り下げて完全克服していく、その姿勢は、芯がしっかりしているというか、結構骨のあるアーティストのように思える。

これまで、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・バルティータ全曲」、ベートーヴェンの「ヴァイオリン・ソナタ全曲」、イザイの「無伴奏ヴァイオリン全曲」など、これをツアーで完結してしまうのだからスゴイ。

その彼女が、その盟友のセドリック・ティベルギアンと組んで、今年2015年に、モーツァルトの「ヴァイオリン・ソナタ全曲」を開いてくれる。

東京銀座・王子ホールでの公演。2015年の10/1,2,3と、2016年3/24,25の2回に渡って完結する。

この王子ホールでのコンサートを聴くために、王子ホールの会員になったら(相変わらずこの手法(^^;;、会報が来て、今月は彼女とパートナーとのインタビュー特集がありました。作曲家に対する見解、ツィクルスに対する見解、ふくめ普段の考え方が垣間見れて興味深かったです。

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さらには、そのちょっと前の9月27日に自分が定期会員になっているミューザ川崎の東京交響楽団の名曲シリーズにもソリストとして登場する予定で、そこでモーツァルトのヴァイオリン協奏曲を披露する予定なのだ。

まさに今年はモーツァルトづくし。

自分は、このミューザ公演の日と王子ホールの10/1,10/2と3連荘で経験する予定。

10/3からヨーロッパに行くので、10/2はまさに羽田の近辺に前泊予定で、この日に彼女の公演を聴くということは、カートなどを事前に数日前にホテルに送って、裸一貫でコンサートを聴いて、そのままホテルに向かうということである。

まさに音楽三昧の日々。

彼女は、バロック音楽から現代曲までピリオド楽器とモダン楽器の両方で演奏する、そういう器用な面も持ち合わせている。

所属レーベルは、イギリスのハイぺリオン・レコード。

クラシック音楽を専門とするインディーズ・レーベル、つまりマイナーレーベルである。

彼女は、世界のいろいろなオケ、指揮者と数多くの共演をして世界中を回っているが、ディスコグラフィーはイギリスでの録音が圧倒的に多い。このハイぺリオン・レコードからの録音リリースと、あとウィグモア・ホールの自主制作レーベルのライブ録音の2本立てが彼女のアルバムの骨子になっている。

彼女の活動の基盤のひとつとして、イギリス ロンドンのウィグモアホールは欠かせない存在のようだ。

いまの自分にできること、そんな彼女の演奏、録音、そしてハイぺリオン・レコードのサウンドを確認してみたくて、一気に6枚も買い込んでみた。

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ハイぺリオン・レコードは、2chステレオ録音のCDが基本。

6枚全部を今日一日かけて聴いてみた感想は、概ね2chステレオ録音としては、いい録音の部類に入ると思う。

難を言えば、ちょっとバラつきがあるかな、という感じがあって、6枚中、バッハ、シマノフスキ、プロコフィエフの3枚は素晴らしい録音だと思う。2chとは思えないレンジの広さで、Vnの艶、光沢感やピアノの沈み込むような深い音色が美しくて、響きの余韻が伝わるその空間の存在がきちんと感じ取れる。拙宅の貧弱2chシステムでも。(笑)

CDを通して聴く彼女の演奏は、一見、非常にパワフルで男性的に思えるのだが、抑揚や感情の起伏の表現が豊かで、この部分はやはり女性奏者らしいな、と思うところで、しかも情緒的に熱く唄うような演奏スタイル。そんな印象。

彼女の弦の音色は非常に艶がある。使用楽器は、ゲオルク・フォン・オペルから貸与されたアンセルモ・ベローシィオ(c.1775年製)。

オーディオを通しても、その雰囲気の良さが伝わってくるアーティストだ。

では1枚ごとに聴いた順番にレビューしていこう。

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無伴奏ヴァイオリン・ソナタ全曲(イザイ) イブラギモヴァ

http://goo.gl/KweXOn


彼女の最新アルバム。

イザイが、バッハの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」に影響され、一夜にしてスケッチを書き上げたとされる6つの無伴奏ソナタ。

イギリス、モンマス、ワイアストン・コンサート・ホールでのセッション録音。
 
最初聴いたときは、かなりオンマイクな録音で、そんなに心惹かれる録音には思えなかった。
コンサートホールでの録音なのに、その空間の広さの魅力を活かしていないように思えた。(というよりは、これは、もう個人の好みの問題ですね。自分は空間を認識できる録音が好きなので。他の人にとっては問題ないくらい素晴らしい録音だと思います。)

でも12トラックあたりから、グイグイ引き込まれるようになって、後半トラックになるほど魅力的な録音だということがわかる作品だと思います。

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無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全曲(バッハ) イブラギモヴァ(2CD)

http://goo.gl/VHe6C9


イブラギモヴァの「無伴奏」と言えば、2009年のこのJ.S.バッハの無伴奏ヴァイオリン・ソナタ&パルティータの発売。瞬く間に大ヒットとなり、来日公演でもたびたび演奏されてきただけに、彼女を一躍日本で有名にしたアルバムがこの作品。

この6枚だけに限らず、たぶん彼女の作品の中では、この作品が最高傑作だと思う。演奏、録音、双方において抜きんでている。抜群のホール感、空間。さっきのイザイとこんなに違うのはなぜだろう、と思うくらいバラつくというか違う。

2009年にロンドン、ヘンリー・ウッド・ホールでのセッション録音。

Vnの音色が、空間の中を響き、消えゆくさまが余韻があって美しい。ちょっとエコーかけてる?という気もするくらい。でも気持ちイイから許す。(笑)無伴奏だからVn1本の音色だけで、これだけ、美しいと思わせるのは素晴らしいの一言。

ちなみに同じバッハの無伴奏で大ベストセラーになったイザベル・ファウストのシングルレイヤーSACDよりも、ずっと、ずっと、遥かにこちらの録音のほうが素晴らしいです。(ファウスト・ファンには申し訳ない。あくまで自分の好みの見解です。)

シングルレイヤーSACD vs ただのCD なのに、こんなに圧倒的にイブラギモヴァのほうがいいと思うのは、やっぱり優秀録音って信号のフォーマットの優劣でなくて、収録時のその場のアンビエンスをいかにありのまま豊富に捉えるか、そしてその後の編集のテイスト、ここが分かれ目なのかな、とも思うことを確信。

ソースによっては、SACDよりもCDのほうが優秀録音のものが多々あったりするのも、そういうところに起因して、やみくもにスペック至上主義的な考え方は昔からオーディオ業界には根強いが、自分はそういう傾向に警笛を鳴らしたい。(現在のハイレゾのUSB-DACのスペック争いも似たようなことが言えて、1番自然に聴こえるパラメータってある程度わかっている訳であって、生演奏が基準である自分にとって、生演奏とあまりに乖離した音というのは、自分は受け入れられない。)

もちろんフォーマットも大事なファクターではあるけれど、いい録音と思うには、その頭の部分が大事だと思うのです。
自分の考え方ですが.....

彼女のアルバムを1枚というなら、ぜひこれをお勧めします。


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ヴァイオリン協奏曲集、序曲『フィンガルの洞窟』(メンデルスゾーン) 
イブラギモヴァ、V.ユロフスキー&エイジ・オブ・インライトゥメント管

http://goo.gl/dFv5hd


逆にバラつきの反対の作品がこれであった。
2011年、これもロンドン、ヘンリー・ウッド・ホールでのセッション録音。
オケの音が、かなり薄っぺらいというか痩せているというか、鳴っていない感じで、こりゃ録音悪いなーと思ったり。彼女の弦の音色も乾燥質で、いままでの艶がなくてどうしたの?という感じ。

心なしか、演奏自体もテンポ早めで、急いでいるの?という感じのせっかちなフレーズの運びな感じて、どうも違和感がある。なんでこの作品だけこんなに印象が悪いのだろう?とずっと疑問に思いつつ、この日記を書くために、なにげにHMVのページからリンクを貼ろうとしたとき、なにげに解説文を読んで、すべてが判明。

「モダン・アプローチ」と「ピリオド・アプローチ」の両方に精通するイブラギモヴァなのだが、今回のメンデルスゾーンは「ピリオド・アプローチ」だった!

すべてが納得できたような気がする。やっぱり自分はピリオド奏法、そしてピリオド楽器の音色が苦手だなぁ。オーディオ的、サウンド的に魅力を全く感じない。

ピリオド・アプローチっていわゆる当時の楽器、奏法で具現化しようという音楽面での創意工夫であって、自分のようなサウンドにこだわる人種にとってのメリット、受けはどうなのだろうなぁという想いはあります。

もちろんピリオド楽器、奏法の価値観というのは、そういう分野できちんと確立されていて、それを理解することもクラシックを聴いていくうえで、避けては通れないひとつのジャンルであることは疑わないが、もっと単純な観点から考えると、音楽って聴いていて気持ちがよいことが第一なんじゃない?というのがあると、あのノンビブラートな響きというか音痩せする音色は、自分はどうも苦手意識がある。

あと、mixiのマイミクさんから指摘があったのだが、イブラギモヴァ自身が、メンデルスゾーンのようなロマンティック路線の曲を弾くこと自体が、なんかイメージに合っていないというか、そういうところから来る不自然さもあるのではないだろうか。確かに他の5枚のジャンルからするとメンデルスゾーンだけ少し毛色が違う。でもこの問題は彼女がもっとキャリアを踏んでいけば、解決する問題だろうと思う。
 

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ヴァイオリン・ソナタ第2番、第5番『春』、第10番(ベートーヴェン)
イブラギモヴァ、ティベルギアン

http://goo.gl/zZLnSs


この作品は、ウィグモアホールで録音されたもの。イギリス、ロンドンにある席数530余の小規模コンサートホールである。クラシック音楽、中でも器楽・室内楽・声楽リサイタルの場として有名であり、その独特の優れた音響でも知られる。

レーベルも、ウィグモアホール・ライブという自主制作レーベルで出している。

RCO Liveと同じで、このウィグモアホールも自主制作レーベルとして、そのライブ録音を発売している訳である。

イギリスのコンサートホール事情からすると、これっといった魅力的なホールがすぐ思い浮かばないのが現状であるが(でも本番に向けて調べていくと魅力的なホールが必ずいっぱいあるはず。)、その中でもこのウィグモアホールはぜひ訪問してみたいホールのひとつ。

FBの友人が先月の6月にこのホールを訪問して写真をアップしていた。

外観の面構えは、なかなか雰囲気があってオシャレ。内装空間もモダンである。

だが、なんと床が赤い絨毯を敷き詰められているのだ!(^^;;

これはショック!!音楽ホールとして、?であるが、でも昔のホールだとそういう基本概念などなかった時代なのでしょうね。ピアノの音色が素晴らしく綺麗だったそうである。

さっそく聴いてみると、美音、S/Nがいいという類で、確かにピアノの音色がホントに綺麗。録音を通じてもはっきりわかる。

でも、どうも違和感がある。暗騒音というか空間の音がしないというか、観客の咳などはもちろん、そういう空気の音を編集で全くカットして演奏の音だけを抽出しているような違和感があって、なんか自然じゃない。なんか演奏の背景が無音という感じなのである。

なんか、聴いていて窒息する感じ。もうちょっとその背景のノイズを表現してくれないと息ができないというか、自然じゃないと思う。でも最後の拍手はちゃんとある。(笑)

自分はふだんコンサートホールに頻繁に出向いて実演に接することが多いので、そのときは演奏者+背景のノイズというのは込みで実体験として経験する。なので、このように暗騒音をプロの仕事にあるまじき行為ということで、完璧に排除する考え方の録音には違和感を覚える。やっぱり実際の生体験と違うと変なのである。

これはライブ録音としての在り方というか、いずれセッション録音とライブ録音というタイトルで日記を書いてみたいと思っている。自分は録音という作品からするとセッション録音のほうが好きであるが、ライブ録音も作品としては雑かもしれないが、その場の臨場感、ライブならではの迫力が感じられて好きだ。そういうライブ録音の在り方として、このような暗騒音の取り扱いについては、いろいろ自分なりのポリシーがあったりする。

この自主制作レーベルの他のアルバムをまだ聴いたわけではないので、このレーベルの音作りの特徴なのか、はわからないが、この部分が自分的にはいまいちだった。

でも、それを除けば、いい録音のジャンルだと思うし、ホールの音響の良さも十分伝わってくるのが理解できる。

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ヴァイオリンとピアノのための作品全集(シマノフスキ)
イブラギモヴァ、ティベルギアン

http://goo.gl/lxqvWw


また元に戻ってハイぺリオン・レコードの録音。
2008年のイギリスでのポットンホールでのセッション録音。

これは素晴らしい録音ですね。バッハの作品と並ぶ彼女の最高傑作だと思います。やっぱり素晴らしい録音は、Vnの艶と光沢と、ピアノの深い音色、そして広い空間を感じる、自分の好みの場合、これに尽きます。

またポーランドの作曲家シマノフスキの作品は、本当にオリエンタルムード全開という感じで惹かれるものがある。自分の好みの旋律を描く作曲家ですね。


そして最後。

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ヴァイオリン・ソナタ第1番、第2番、5つのメロディ(プロコフィエフ) 
イブラギモヴァ、オズボーン

http://goo.gl/fHMBtR


2013年 ロンドン、ヘンリー・ウッド・ホールでの録音。
これも素晴らしいです。録音の素晴らしさの要因は、だいたい今までと同じ理由です。プロコフィエフのヴァイオリン・ソナタというと、どうしても樫本大進のSMEのデビューSACDを思い出してしまう。(これもじつに素晴らしい録音でした。自分のプロコフィエフ・ソナタのひとつのリファレンスになっている演奏です。)樫本のスピーディーで男性的な演奏と比較すると、そこはやはり女性らしいテンポの緩徐の雰囲気が漂うイメージはあります。

これだけのアルバムを聴きこむと、彼女がどのような演奏スタイルなのか、なんとなくわかってきたような気がします。
いずれにせよ、9月、10月の彼女の演奏会が、ますます楽しみになってきました。

本妻はもちろんアラベラ様ですが、ほんのちょっと浮気してみたい気持ちも出てきました。(笑)

                                      

                                                                                                                                                  

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2016年3月の銀座王子ホールでのリサイタル(モーツァルト・ソナタ)でのサイン会にて。


PENTATONEの新譜:パーヴォ・ヤルヴィ&ロシア・ナショナル管のショスターコヴィチ交響曲第7番「レニングラード」 [ディスク・レビュー]

来年で生誕110年を迎えるソ連の作曲家ショスタコーヴィチの交響曲全集の企画が各レーベルで目白押しだ。

ショスターコヴィチ(通称ショスタコ)は20世紀のソ連時代の作曲家であり、そういう意味では現代音楽作曲家といえるのだろうが、20世紀音楽の代表である「現代音楽」と比較すると、その作品は割と分かりやすく、人々に受け入れられやすい要素が多い。

彼の作品集は、なんといっても15曲の交響曲と15曲の弦楽四重奏曲が有名で、あとは6曲の協奏曲、オペラ、映画音楽やバレエ音楽とその組曲、器楽曲等々、かなりの数にのぼる、いわゆる大作曲家の部類に入る。まさにシベリウス、プロコフィエフと共に、マーラー以降の最大の交響曲作曲家としての評価が確立されていて、特に交響曲の大家というイメージが強いのではないだろうか。

当初、ソ連体制に迎合したプロパガンダ作曲家というイメージで語られていたが、じつは、自らの告白によりショスタコーヴィチは皮肉や反体制といった隠れた強い志の持ち主であることも分かった。

芸術にとって当り前なことが保障されない体制、自由に作品を書くことが許されないソ連という特殊な環境で、作品を書いていかないといけない、そういうところに彼の心の葛藤があったのだと思う。

彼の作品(とりわけ交響曲)の作風は、一言で言えば”暗い”ということになってしまうが、ただその旋律は、社会主義体制に感化された負の雰囲気がある以上に、勇み良さというか、行進曲的な躍動感に満ち溢れていて、それが妙にマッチしていてスゴク格好良く感じる。

ちょっと不思議な謎めいたところがあって、単純ではない魅力がある。いわゆる長調的な明るい曲ではなく、ちょっと斜に構えた格好よさとも言えるところ。

特にそのコード進行は、一般の音楽ファンよりも、オーディオファンの心をほうをぐっとくすぐるような、いわゆるオフ会でかけるソフトとして音冥利に尽きる、そんなセンスの良さを自分は感じる。

自分は、マーラーの交響曲と並んで、このショスタコの交響曲が大好きである。
日本ではマーラーほど人気はないけれど、いつかブレークしてほしいな、と思っている作曲家で、この近年のショスタコのセレブレート・イヤーで盛り上がってほしいな、と思っている。

そんな中で、最近購入したショスタコの交響曲第7番「レニングラード」。PENTATONEの新譜。
 
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交響曲第7番『レニングラード』 パーヴォ・ヤルヴィ&ロシア・ナショナル管弦楽団

http://goo.gl/uplwbC

PENTATONEは、じつは数年前から、「ロシアプロジェクト」と称して、ロシア・ナショナル管弦楽団とともに、このショスタコの交響曲全集の作成に取り組んでいる。ロシア・ナショナル管は、ベルリン放送響、スイス・ロマンド管と並んでPENTATONEの専属の看板オケである。

ポリヒムニアからはエルド・グロード氏がこのロシアプロジェクトの最高責任者として、現地に趣き、収録をおこなっている。

エルド・グロード氏 

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そしてオケのシェフは、いまもっとも人気者で超多忙なパーヴォ・ヤルヴィ氏。

これは期待するな、というほうが無理な(笑)楽しみな作品であった。

収録場所は、モスクワ音楽院大ホール。
(ポリヒムニアのFBページから拝借してまいりました。そのときの録音セッションの収録の様子。)

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そして下の写真がモスクワのDZZスタジオ5というところで、彼らはコントロールルームをセッティングして、そこで収録した音源をミックスして編集、確認している。彼らが自分たちの機材を持ち込んでセッティングしているのだ。N803が5本並んでいる。(こちらもポリヒムニアのFBページから拝借してまいりました。プレトニョフ&ロシア・ナショナル管のチャイコフスキー交響曲全集のときの収録の様子の写真のようです。この全集の大半は、このスタジオで収録されたようです。)

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彼らは、やはり世界中のホールに出向いて収録することが多いので、このように出張キットというシステムをきちんと何種類も持っているのだ。5本のSPをはじめ、マイク、調整卓などこれらのキットを出張用として現地のホールに持ち込んで、スタジオにセッティングする。 その場で簡単なミキシングで確認したりするが、本格なミックスは、アムス郊外のバーンにある彼らのスタジオでおこなう。(以前この日記で、写真を紹介しました。)

そんな期待の作品を聴く。大編成のオケを聴くのは久しぶりだ。
7番「レニングラード」は、ショスタコの交響曲の中では、5番につぐ人気曲。
進撃してくるドイツ軍に対して、それを迎え撃つ国民の英雄的な姿、そして勝利への叫びが表現されている曲。

もっとも旬な人、パーヴォ・ヤルヴィのもと、演奏としての造形の彫の深さというか、完璧なまでに、彼のもとに統率のとれた演奏は見事というしかない。


サウンド的にも、いきなり冒頭の弦のユニゾンの出音を聴いて、思わずにんまり。
抜群の弦セクションの音の厚み、と抜群のホール感というか空間の存在。
やっぱり虜になる録音は、この最初の出音でピンと来てしまう。

アラベラ様の最近の新譜も、このエルド氏の作品なのだが、やはり共通したテイストがあるのがわかる。とにかくホール感が素晴らしいのだ。楽器群の位置関係も団子状態にならず、綺麗に分離してその位置関係が曇りなく見渡せる、そういう空間情報がきちんと立体的に余すことなく収録されているのだ。 


センターにぐっと凝縮感があって そこからエネルギーが炸裂・拡散していくようなストリングス(弦楽器セクション)を録音・再生すること、 そんな課題を持ってオーディオに取り組んでいるといくつかわかることがある。

先ず録音に関しては、センターまで厚みのあるように弦楽セクションを捉えることは別に難しいことではないと思うのだが、そうすると 今度は奥行きも出しにくくなってしまい全体に拡がりの無いモノラルっぽい、いわゆる分離の悪いオーケストラ録音となる。

センター付近で密集する弦楽器のパワーを出そうとすると奥にいる木管楽器が埋もれてしまうというバランスの悪さは いかんともしがたい。

されど補助マイクで 木管楽器をレベルアップすれば 音場がどんどん平面的になってしまうのである。 結局 弦楽器セクションのサウンドは、センターを薄くして 左右に開き、木管楽器を 補助マイクのレベルをあまり上げずして 浮かび上がらせる方が聴いていて気持ちが良いのだ。

メジャー・レーベルの優秀なオーケストラ録音というのはおよそ そういう風に出来ている。

そこには、2chステレオによるオーケストラ録音・再生の約束事というか限界があるのだ。 


自分が 5.0サラウンドの録音・再生に求めている、拘っているのは、その壁を超えたものがあるからだ。上記に書いたような制約をいちいち考える必要はなく、収録マイクの本数の増加、設定次第で滞りなく、その空間情報、位置関係を表現することが容易いのだ。捉える情報量も格段に多いし。マスターからユーザに届け送る部分を高解像度フォーマットにしても限界があるのだ。元の部分が大きなウェイトを占めるように思っている。


だから自分はこのホールの空間とオケの位置関係の構成を十分に表現できている、というのは自分にとってオーケストラの優秀録音としての1番のポイントなのである。

サウンド的には、PENTATONEらしい、少し柔らかい質感で、大音量と音の洪水ともいえる第1楽章も,
ものの見事に表現できている。

普段、室内楽を聴くことが多い自分にとって、久しぶりに聴く大編成もののオケのサウンドで、音の厚みがあって、しかもスケール感が広大でじつに気持ちがイイと思った録音だった。



このショスタコの交響曲の録音で、やっぱり取り上げないといけないのはRCO Liveの作品。
7番で言えば、ヤンソンス&RCOのこの作品。 
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交響曲第7番『レニングラード』 ヤンソンス&コンセルトへボウ管

http://goo.gl/XkV9F0


RCO Liveなので、もちろんポリヒムニアの収録。
誰がやっているのか、クレジットを見ると、エベレット・ポーター氏であった。
ちょっと意地悪テストをやるわけではないけれど、エルド氏の作品と聴き比べをしてみた。

音場の広さ、全体にふわあっと広がる空気感、響きの豊富さでは、RCO Liveのほうがある。はっきりと区別がつく。またRCO Liveのほうが、幾分柔らかい質感である。

これは収録技術によるものではなく、収録しているホールによるものと自分は判断した。
RCO Liveはもちろんアムステルダム・コンセルトヘボウで収録している訳であって、ここで収録してその空間、アンビエンスを捉えるとなると、そこのホールの音響特性からして、モスクワ音楽院大ホールよりも響きが豊富で暖色系の柔らかい音色であることが原因でそういう違いが出るのだと思う。

ポリヒムニアは、きちんとその違いを収録できていている、という証でもある。

ゴローさん&エム5さんがポリヒムニアを訪問した時に、「あなた方のトーンポリシーはなんですか?」と彼らに聞いたときに、「その演奏されているコンサートホールのサウンドをそのまま表現できるようにすること。」と答えた、ということをいまでも覚えている。

そのホール固有の響きは、収録した時に、その情報はディスクの中にオケのサウンドといっしょに入っているのである。作り手側が作成した空間情報として。

だから、我々は、そのディスクの中の情報を万遍なく出し尽くしてやれば、部屋の中にそのホールの空間、響きが再現できるはずなのである。

ベルリンフィルハーモニー、ウィーンムジークフェライン、アムステルダム・コンセルトヘボウで収録されたディスクであれば、それぞれのディスクを再生したら、それぞれのホールの固有の響きが部屋に現れる。

部屋のルームチューニングなどで、その響きの音色を変えたらダメなのである。

このRCO Liveの録音との違いを聴いて、そんなことを思い出してしまった。

ショスタコの交響曲全集と言えば、もうひとつ忘れられない自分にとってのリファレンスなのが、ドミトリー・キタエンコ&ケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団 のSACD全集。

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ショスタコーヴィチ:交響曲全集[SACD-Hybrid]

http://goo.gl/JKM3Z4

CAPRICCIOというちょっと変わったレーベルで、いまはもう存在しないで、全集も廃盤になっているのだが、アマゾンのマーケットプレイスだと、まだ新品を5個位入手できるみたいである。

これは、2004年ころの作品で、まだSACDサラウンドでの収録技術のノウハウなどがあまりなかった時代の録音とは思えないほどよく録れている。ケルンフィルハーモニーでのライブ録音や、スタジオでの録音が大半であるが、暗騒音がまったくしない、というかたぶん編集でカットしているものと思われるが、恐ろしくS/Nがよくてクリアな音にはびっくりする。

高さ、奥行きの深さも十分表現できている。そして何といっても彫が深いというか、エグイ音が堪らない。(笑)

PENTATONEが全集を完成するのも待ち遠しいが、このキタエンコのSACD全集も、入手できなくなる前に、ぜひ、みなさんに手に入れてほしい優秀録音だと思うのである。自分のサウンドを構築する上で音決めに使うヘビロテ(ヘビーローテーション)ソフトとして、リファレンスになる録音だと思います。


木管奏者によるソロ作品集 [ディスク・レビュー]

先日のサントリーホールでおこなわれた新日本フィルの首席オーボエ奏者の古部賢一さんのバッハのオーボエ協奏曲は、非常に心惹かれるものがあり、ぜひ体験したかったのだが、先約の公演とぶつかってしまった。無念の限り。

大分以前に何回か日記にしたことがあるのだが、オーボエ奏者によるソロ作品集というのは、自分にとって非常にツボに嵌るというか、オーディオで聴いていてもリラックスできる、かなりお気に入りのジャンルなのである。

オーボエに限らず、木管楽器全般に言えるのだが、この嫋やかなしっとりとした暖かい音色がとても好き。

オーディオでもコンサートなどの生演奏でも言えることだが、オーケストラを聴いているときに、多種多様の楽器群の鳴る音をどのように聴いているかというのが個人の好みによるところだと思うのだが、自分は、オケのサウンドの大半を占めるのがストリングス(弦楽器セクション)だと理解していて、ベートーヴェンからブラームス・チャイコフスキーに至る交響曲を美しいと思うのは ストリングスがちゃんと鳴っている(音色が厚くてピタッと揃っていること)ということが一番の肝だと考えている。

だから一聴して解像度が高く音色が魅力的な現代の最新スピーカーであってもオーケストラのストリングス・セクションがきっちり描けないスピーカーを自分は受け入れられない。

それでその聴こえ方にも拘りがあって、第1ヴァイオリンが、ステージの左端からセンターまで席を埋め、 第2ヴァイオリンやヴィオラが 音楽を内から高揚させるように内声をきっちり表現していて、かつチェロ・バスの低音弦にも ちゃんと拡がりと音としてのボディー感がある。それでいて奥の木管楽器から金管・打楽器に至るまでの遠近感・立体感が曇りなく見渡せる.......

そういうバランスがきちんと取れているオケが、演奏のうまいオケだと思うし、またオーディオ再生でもそのように定位して聴こえるようにセッティングするのが、スキルなのでは、と思うのである。

さらに突っ込んだことを言うのであれば、そのように聴こえるように収録する録音スタッフ側のスキルが試されるところなのでは、と思う。

なので、このようなオケの聴こえ方を希望するのであれば、コンサートホールでオケを聴くときは、できればステージに対して正面から聴けるような座席が1番理想なのではないか、と考える。

P席やサイド席だと、ステージからの発音のエネルギーバランスを真正面で捉えられなくて、どうしても偏りがあって無理がある。どこの座席でも音響は変わりません、というのが理想なのかもしれないが、実際はそうではない、と思う。

まぁ、ホールの座席の嗜好については、何回も通ってカット&トライですかね。 

それで特に自分が聴いていてゾクっと快感だと思うのが、前方のほうで厚い弦楽器セクションの音色のエネルギーの凝縮があって、その奥のほうから木管が嫋やかな音色で、サラッと流れてくる、その瞬間なのである。

このときはゾクっとするというか堪らない。(笑)オーディオ再生でも、ここは譲れないところで、奥行きを十分に表現できていること、2chステレオでもセッティング次第で、かなり追い込めるが、やはりそこはマイクの本数、設定などによる2chステレオによるオーケストラ録音・再生の約束事というか限界があるのだ。サラウンドだとより高いレベルで実現できる。

そういう遠方からやってくるように聴こえる木管の音色がスキという自分の嗜好もあって、このように断言してしまうのは、いろいろ意見もあると思うが、常日頃、木管楽器というのはオケの顔、というか華というか、そんな華やかなイメージを受けるのである。

要所要所で、その嫋やかな音色がスパイスのように、オケのような大編成の音を引き締めているように思えるのである。

また映像素材などの演奏風景でカメラワークでフルートやオーボエ奏者などをショットで抜くシーンを観るとすごくイケているし、カッコいいと思ってしまう。

そんな訳もあって、木管奏者によるソロの作品集というのが、とても自分の嗜好に合う。

特に、オーボエ奏者にとって、バッハ、モーツァルトのオーボエ作品集を録音するのは、ひとつの登竜門というか、晴れ舞台、一流の証なのだ、と思う。普段は超一流オケの首席オーボエ奏者という立場で演奏し、その一方でソリストとして、このバッハ、モーツァルトを出すというのはオーボエ奏者として、まさにエリートの道まっしぐらとも言え、オーボエ奏者として選ばれし者だけが得られる特権のような感じがする。

そんなことを急に思い出し、狂ったように、木管奏者によるソロ作品集をラックから取り出して聴いてみた。

この分野では、やっぱりオーボエ。

自分にとって、この分野の最初のトリガーであったのは、ベルリンフィルの首席オーボエ奏者であるアルブレヒト・マイヤーのソロ作品集。DG録音。バッハアルバムとモーツァルトアルバムであった。

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右がバッハアルバム、左がモーツァルトアルバム。

HMVさんですが、一応リンクも貼っておきます。

アルブレヒト・マイヤー氏(BPO)のバッハ・オーボエ作品集
http://amzn.to/18w5CW5

アルブレヒト・マイヤー氏(BPO)のモーツァルト・オーボエ作品集
http://bit.ly/11ujNui

特にバッハアルバムは秀逸で、友人から紹介されて知ったのであるが、バッハの美味しいところをつまみ食いしているかのようなオーボエの音色で紡がれるその美しい小品集は、自分を虜にした。

イタリア協奏曲、オルガン・コラール、フルートソナタ、マタイ受難曲、カンタータなどなど。バッハの曲にオーボエの音色というのはホントによく似合う。

マイヤー氏は、その後もシュトラウスの曲もソロで出しているようなので、またこれを機会に集めて聴いてみたい。

そして、たぶん自分の持っているこの分野のソフトの中で1番素晴らしいと思うのが、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団の首席オーボエ奏者であるアルクセイ・オグリンチュク氏のソロ作品。

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右がバッハアルバム、中央がモーツァルトアルバム、左がヒンデミットなどの現代音楽作品。

アレクセイ・オグリンチュク氏(RCO)のバッハ・オーボエ作品集
http://bit.ly/18w5vcZ

アレクセイ・オグリンチュク氏(RCO)のモーツァルト・オーボエ作品集
http://bit.ly/192VEK2

アレクセイ・オグリンチュク氏(RCO)の20世紀オーボエ作品集
http://bit.ly/1rp1uUG


オグリンチュク氏のバッハアルバムは最高傑作。BIS録音なので、特に録音が非常に素晴らしい。オーディオファンにとってこのファクターは演奏力よりも大切。(笑)SACDサラウンドでの収録。

弦が美しくて、残響感たっぷりのテイストで、オーボエの音色が弦に埋まって聴こえるほどのバランス。これをオーボエでやる理由がどこにあるの?全部弦で表現すればいいのに、と仰った拙宅オフ会でのお客さんの声もありました。

音場感もスゴクて、これはかなりいい録音だと思います。バッハのオーボエ協奏曲。オーボエ協奏曲というのは正式なバッハの作品表の中には存在しないのだが、チェンバロやヴァイオリンとの演奏が原典になっているようである。(カンタータのフレーズにも??)

特にこのバッハアルバムでは、ヴァイオリンとの共演では、昨今躍進著しい若手のホープであるアリーナ・イブラギモヴァと共演しているのも魅力的。彼女は、いまもっとも実演に接してみたい有力候補で、10月の王子ホールでのモーツァルト・リサイタルは2連発で行く予定。(笑)(2011年に初めて体験しましたが、素晴らしかった!)


そしてバッハのオーボエ作品集として有名なのが、アルクセイ・ウトキンの作品集。SACDサラウンドでの収録。

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ウトキンはロシア人のオーボエ奏者で、この人の作品を聴くと基本的に古楽アプローチ、と思えるテイストですね。CARO MITISというちょっと聞いたことがないレーベルで、現在入手も困難なのであるが、この人の作品はかなり買い込んでいた。録音は素晴らしいと思います。



こうしてみると、バッハのオーボエ作品というジャンルは、オーボエ奏者にとって、ひとつの定番なのかな、と常々感じていた。ホリガー、ウトキン、ボイド、マイヤーなど 名だたる名手が同じような選曲のアルバムを作っている。


そしてクラリネット。この木管楽器も非常に丸みを帯びた柔らかい質感で、耳に優しい。聴いていて、非常に癒される音色。ソロ作品となるとその良さが浮き彫りになる。

自分が好んで聴いているのは、BISの専属アーティストのクラリネット奏者のマルティン・フレストのソロアルバム。オケに在籍という訳でなくて、クロスオーバーから弾き振りまで多才なタレントの持ち主で、非常にユニークな存在である。

この人の作品もじつに素晴らしい。録音もBISなので、もちろん素晴らしい。

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新日本フィルのコンサートに行きそびれて、悔しさいっぱいでしたが、これだけ聴きまくって、日記に書いたら、少し気がスッと晴れました。(笑)

願わくば、日本のオケの首席オーボエ奏者の方々もどんどんソロ作品集を録音という形で出していただいて、我々を魅了してほしいと想うばかりなのです。


myrios classicsの新譜:タベア・ツィンマーマンのヴィオラ小品集 [ディスク・レビュー]

自分が敬愛してやまないタベア・ツィンマーマンの新譜が届いた。

以前の日記でもずっと綴ってきたように、myrios classicsという室内楽専門のドイツの高音質レーベルに所属して、その一連の素晴らしい作品は自分をずっと魅了し続けてきた。

ずっと縁がなく、なかなか実演に接することができなかったのであるが、去年、リサイタルと、彼女が所属するアルカント・カルテットの公演を経験することができた。

彼女の映像作品はないので、CDのジャケット写真を見て、その妖艶な音色を聴きながら、ずっと自分の頭の中で空想してきた奏者であったので、いざ目の前で演奏している姿を拝見するに至り、まさに万感の想い、といったところだった。

マイナーな高音質レーベルなので、プロモート、広告戦略というのもつつましやかなもので、それが玄人向け音楽家と言われる所以というか、神秘性のベールに包まれているという感があって、自分にとってそれがすごく魅力的であった。

ゴローさんも一押しのヴィオリストであった。

彼女の取り上げる作品は、玄人受けするというか、渋めの曲が多くて、聴いていてマニア心をくすぐるというか、じつに格好いい。特に最近のヒンデミットの作品は圧巻で、ヴィオラにこだわる作品としては、ヴィオラ奏者にとって避けて通れない作曲家、作品なのだと思うようになった。

元ベルリンフィルのヴィオラ奏者であった土屋邦雄さんがヨーロッパに留学するきっかけになったのも、東京藝術大学での旧奏楽堂で、作曲家ヒンデミットを前に彼の無伴奏を演奏したことだったという話を聞いていただけに、その思いはより一層強いものになった。

そんな彼女の最新作。 

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『忘れられたロマンス~リスト、グラズノフ、ヴィエニャフスキ、ヴュータン、コダーイ、他』 タベア・ツィンマーマン、トーマス・ホッペ 

http://goo.gl/yM52LU


いままでの彼女の作品とは、まったく方向性の違う新しい試み、と言おうか。

ヴィオラの小品集。

本当に珠玉のような美しい旋律が散りばめられた小作品を、たくさん詰め込んだ、という感じで、出てくる音の雰囲気が、華やいでいるというか明るい、ほんのりとしたイメージで、いい意味でかなり期待を裏切られた。

いままでの彼女の作品は、ずっとどこか少し陰影感の漂うようなモノトーン調の調べが多かったので、今回もと思ったら全く想いもよらなかった美しい調べの数々、至極正当法という感じ。

フランツ・リスト、グラズノフやヴュータン、ヴィエニャフスキの人気曲が収められ、まさにヴィオラの小さな作品の名曲集という仕上がり。

サウンドのテイストは、やっぱりこれもいままでとはちょっと趣が違った。

いままではヴィオラの録音レベルがすごく高くて、前に出てくるというか、朗々と鳴るというか、妖艶というか、そんないわゆる主張する色気を感じたのだが、今回は結構ヴィオラの録音レベルがすごく低くて、ちょっと全体としておとなしめのイメージであった。

ピアノとのバランス、空間の出し方など、全体のバランスを考えてのことなのかな、とも思った。このレーベルのサウンド作りは、本当に裏切られたことがなくて、まさに自分好み。

彼女の作品は、ずっとベルリン郊外にあるダーレムのベルリン イエス・キリスト教会で録音されている。

教会特有の残響感たっぷり、という感じでなくて、もっとつつましやかな程よい響きが、録音場所として適しているのではないのかな、と常日頃感じている。

室内楽の魅力は、演奏者のブレス、各楽器のこまやかなフレージングやニュアンスが手にとるように感じられるところで、そして音数が少ないことで、そのほぐれ感というか、隙間のある音空間を感じることができて、立体的でふくよかな感覚になれるところ。

ちょっといままでの彼女の音色のイメージとは違ったけれど、いわゆるヴィオラ特有の”深い”音色は見事に表現されているし、音程の安定感と音の柔らかい伸びが素晴らしくて、繊細な心の動きやふるえが感じられる表現は、彼女ならでは、と思うところがあった。


Channel Classicsの新鋭ヴァオリニスト [ディスク・レビュー]

新しい演奏家を発掘して応援していくことは、とても先行きが明るい感じがして、自分の嗜好にあうと常々感じる。

クラシックを聴いてきて想うことは、過去の歴史的音源の素晴らしさを尊重することはもちろんのことで、ある時期、そういう名盤、名演奏を知る楽しみ、コレクターする楽しみ、に夢中になる時期というのが必ずあって、そうすることで知識欲を満たされるというか、征服感みたいなものがある。自分もそこにかなりの投資をしてきたが、最近思うのは、結局行き着いたところは、新しい音源で、新しい演奏家を聴くことかなぁと漠然と思ったりする。

まぁ、でもこれは人それぞれです。正解なんてない世界です。個人の嗜好はそれぞれに尊重されるべきですね。

Channel Classicsはオランダの高音質レーベルで、鮮度感というかエネルギー感溢れるサウンドで、聴いたら一発でわかる、という特徴的なサウンド。カバーする作曲家のテリトリーも広くて、自分的にはPENTATONE,BISに次いで、お気に入りのレーベルでもある。

結構新譜の回転率が良くて、頼もしい印象。看板アーティストにイヴァン・フィッシャー&ブタペスト祝祭管弦楽団と、女性ヴァイオリン奏者のレイチェル・ポジャーがいる。

そんな彼らの音源だが、つい最近思わずジャケ買いしてしまった新譜がある。 
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ヴァイオリン協奏曲第1番、『神話』、ロクサーナの歌、他 フィリッペンス、
シエン・チャン&オランダ・ナショナル・ユース管、クエンティン

http://goo.gl/kMt2GK


ロザンヌ・フィリッペンスというオランダ人の新鋭ヴァイオリニストで、ご覧のように、ふくよかな感じのいかにも女性らしい美人である。

HMVのページによると、オランダのハーグ王立音楽院、ドイツのハンス・アイスラー音楽大学でヴァイオリンを学び、2009年のオランダ国際ヴァイオリン・コンクールで第1位、また2014年のフライブルク国際ヴァイオリン・コンクールでも見事第1位に輝いた、というオランダの華麗なる才女だそうである。

こういう地元の優秀なオランダ人アーティストを、しっかりキープするのは、オランダのレーベルとしては、至極当然のことなのだろうか。(笑)

Channel Classicsからは2013年にデビューしている。本当にデビューしたてのほやほやという感じで、まだ知名度もないのだろう。ネットで検索してみたが、ほとんど情報はなかった。

デビュー盤のページも、ふつうはライナーがあるものだが、まったくなにも書いていない状況で、たぶん情報がなかったんだろうと思う。本アルバムは、2作目にあたり、そこでようやく上記の情報がある程度。

将来が非常に楽しみなアーティストである。
こういう発見がとても楽しい。

さっそく聴いてみた。

ポーランドの作曲家であるシマノフスキをメインに取り上げていて、結構オリエンタルムードな独特の旋律は心惹かれるものがある。

初期の頃の作品であるヴァイオリン協奏曲第1番と、ギリシャ神話を題材にした、ヴァイオリンとピアノで、演奏される「神話」。

このシマノフスキ独特の旋律は聴いていて、じつに自分のツボに嵌る。

録音も、素晴らしい。
ダイナミックレンジが広い録音ですね。

思ったよりヴァイオリンの音色の線が細い感じがするが、協奏曲では、このヴァイオリンの音色と好対照のオケの迫力のある演奏、スケール感のあるサウンドには驚いてしまった。 「音の洪水」という感じですね。(笑)

でもそれ以上に自分が心惹かれたのは、ヴァイオリンとピアノの作品群。メインは彼女のヴァイオリンであることはもちろんなのだが、じつは、それ以上にピアノの音色が美しいことに感動してしまった。

音色が深いというか、沈み込むというか、消え行く余韻がじつに美しい。 ピアノ独特のボディ感がよく出ている。

単純ではないこの作品群を弾く彼女のテクニックもよく堪能できる。

ジャケ買いは意外と失敗しない、というか中身が伴っている場合が多くて、今回の作品もとてもいいアルバムだと思います。

これに気を良くして、同じChannel Classicsから出ている彼女のデビューアルバムも聴いてみた。 
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ラプソディ~ラヴェル:ツィガーヌ、バルトーク:ルーマニア民俗舞曲、フバイ:ヘイレ・カティ、他 フィリッペンス、ニーウカーク

http://goo.gl/1H1i1O


こちらのほうが、このレーベルの音らしい感じがする。ヴァイオリンの音色が鮮度感が高くて、前に出てくるような感じ。この頃からピアノの音色はやはり美しいんですね。(笑)

まだデビューして、2作品しかリリースしていなくて、アーティスト情報も少ない彼女だが、将来このレーベルの看板スターになるべく、本当に楽しみな逸材である。  


PENTATONEの新譜:アラベラ・美歩・シュタインバッハー&スイス・ロマンド管のコンチェルト [ディスク・レビュー]

来日コンサートの前にどうしても入手したく、PENTATONEのWEBショップで購入した。そうすると5日も経たないうちに到着。スゴイ誠意ある対応。彼らのHPで直接購入すると、日本の代理店の正式リリースよりも圧倒的に早く入手できる。

いざ届いてみると身震いした!

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輸入盤であるが、国内盤のほうも、日本語解説が読みたいので、別途購入。(笑)こちらは正式リリースを待つことにする。

メンデルスゾーン&チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。

まさに定番中の定番の名曲で、ヴァイオリン奏者にとっては、勝負曲とも言える。

表現は下品であるが、いわゆる耳タコ名曲であるこの2曲に対しては、名演と呼ばれるものはどうしても肉食系サウンドというイメージが強い。でもアラベラ嬢のこのアルバムの印象は、真逆のゆったりした草食系サウンドというイメージ....が自分の第1印象であった。全体としてゆっくりめのテンポで女性らしいしなやかな雰囲気が匂い立つような感じで弾ききっている。録音レベルは幾分低めで、マイクが比較的遠くに感じる。ホール感は抜群にある。

結論から言うと、素晴らしい録音、いかにも彼女のイメージに合った素晴らしい作品に出来上がっていて、自分としては本当に安堵で胸をなでおろした。(本当に心臓に悪い。(笑)これで凡録音だったらどうしよう~とか心配だったりしたわけです。)

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女性ヴァイオリニストは、本当にいろいろなタイプがいて、ムターやキョンファに代表されるような、いわゆる女王と呼ばれるタイプは、演奏も力感溢れるダイナミックなもので、その弦の音色もいわゆる色気、エロさなどの妖艶な香りが漂う。

でもアラベラ嬢はそういうタイプとは全く違う、と思う。

体格もかなりきゃしゃな感じで、女性というよりは女の子という感じに近い。”高音質マイナーレーベルのマドンナ”、というイメージにぴったり合うような、いわゆるコンパクトな感じで、レーベルの彼女のイメージ戦略はすごく上手、と感じるところがある。日本人の血が半分入っていて、ちょっとエキゾティックな風貌で、それでいてコンパクトでクールな絵柄で通す格好よさがある、そういうイメージ戦略がレーベルのイメージとすごくマッチしていて、じつに上手なプロデュースだなぁと思うのである。

なので、いわゆる、そういう”コンパクト”な格好よさに相応なサイズの演奏、いかにも彼女らしい演奏という感じがしたのである。

腕の力やボーイングなどのダイナミックさでは強いとは言えないかもしれないけれど、彼女のサイズに合った相応の力感、迫力というのは、感じれとれたのである。

彼女は新人ではなく、じつはORFEO時代からPENTATONEに至るまで、多数のアルバムをリリースしているのだが、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲を出したあたり(PENTATONEのジャケットが新しくなったタイミング)からの彼女の急な躍進ぶりは本当に驚くばかり。本当に昔と比べて驚くほど垢抜けた。レーベルも全面的にプッシュしている。

今回のパッケージの作りは、おそらく過去最高と呼べるくらい丁寧で豪華な仕上げになっている。彼女の今回のこの2曲を録音することに対する決意の言葉が記載されていたりする。こういう丁寧な真心のこもった仕上げが、また購入者であるファンの心を掴む。決してハイレゾのようなストリーミングやファイル形式の音楽スタイルでは、その誠意は伝わらないだろうと思う。

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ドイツ・ロマン派音楽を代表する名作である、いわゆる「メン・コン」。その哀愁漂う第1楽章の主題での彼女の音色は、かなり泣きの旋律というか、本当に泣いているような哀愁感が漂っていた。

いままでオーディオで聴く彼女の弦の音色というのは、どちらかというとドライというか乾燥質な感じで、もう少し潤いが欲しいなぁ、と感じていたことも事実。でも去年のトッパンホールはじめリサイタルで生演奏を聴いたとき、発音の瞬間、ふっと浮かび上がるような感じがして潤いがあってとても美しいと感じた。だから自分のオーディオ再生能力のせいだと思っていた。

でも今回はホールでのセッション録音という録音の綾もあるのかもしれないが、弦の色艶、光沢感が以前と比べてずいぶん際立つように感じて正直嬉しかった。

全体を通して、テンポは幾分ゆったりめに感じて、情感たっぷりに弾いているのがとても印象的。そうかと思えば第3楽章で聴けるような軽やかに弾むようなスタッカートのような旋律を見事に弾いて、これがまた彼女の持っている華やかな雰囲気にぴったりで、この曲での最高潮の盛り上がりの聴きどころとも思えて、この1曲だけでもいろいろな表情を見せてくれる。

そして2曲目のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。こちらは第3楽章に代表されるように、聴いていてドキドキするくらいの疾走感が大切。彼女の持てる技術すべてを惜しみなく披露するかのように、この疾走感はものの見事に実現されていて爽快そのものだ。

この曲となると、どうしてもこのPENTATONEでの先輩のマドンナであるユリア・フィッシャー盤を取り上げないわけにはいくまい。

アラベラ嬢が目立つようになってきたモーツァルトのヴァイオリン協奏曲の頃から、どうしてもこの初代マドンナのユリアの録音と比較することが多い。

ユリア盤とアラベラ盤を比較すると、録音スタッフは同じであるが、録音のテイストがかなり違う。

ユリア盤は、どちらかというとかなりオーディオ的快楽を強調したような過度な味付けの録音で、部屋中に音が回って、聴いていてかなり快感がある。録音レベルもすごい高い。いわゆるオーディオオフ会向きの録音。でもアラベラ盤は、もう少し落ち着いたテイストで、いわゆる化粧を施していない素録りのようなシンプルさがある。

悪い表現で言うと、ユリア盤と比較して、ちょっと地味に感じてしまう。

今回のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲でもまったく同じような印象で、ユリア盤は録音レベルがかなり高くて、音場感がスゴクて部屋中に音が回る感覚がある。クレジットを見るとモスクワでのスタジオ録音のようなので、やはり意図的な編集段階で調理をしているのかもしれない。

それに対して、今回のアラベラ盤は比較すると録音レベルがかなり低くて、オフマイク気味に聴こえる。(ちょっとワンポイント気味?)音の躍動感からすると圧倒的にユリア盤のほうがスゴイ。たぶんオーディオファンの方々からするとユリア盤のほうがいい、という人が多いんじゃないかなぁ、と思う。

でもアラベラ盤は、もっとホールでの素録りの感覚があって、ホール感、つまり聴いていてホールの空間がはっきりわかるので、いわゆる生演奏を聴いている感じに近くて、自分はこちらのほうがナチュラルな自然な録音のように思える。

知ったようなことを書くな、と言われそうだが(笑)、PENTATONEの中で、ユリア・サウンドとアラベラ・サウンドは意図的に違う音作りをしている方針なのでは?と思ったりする。(同じ路線じゃ2番煎じで面白くない)

今回のアラベラ盤は、特にアラベラ嬢がずっとヴァイオリンの独奏をしていて、そこからオケの合奏が入ると、その瞬間ぐっと沈み込みを感じるくらい奥行き、深さなどの空間を感じる。さらに目の前にオケの楽器群の配置通りに定位している感じがしてすごく素晴らしい。自分はこのアラベラ盤を聴いて、ここの部分がかなり快感ですごく気持ちがイイです。(笑)(あくまでマルチチャンネルで聴いている感想です。)

そしてオケの合奏のときの定位感抜群の重厚なサウンド。スイス・ロマンド管の卓越した演奏能力が垣間見れるようだ(結構揃った感覚で厚みのある弦サウンドですね)。

ホールの空間がはっきり認識できるので、このヴィクトリア・ホールのホールトーン(ホール固有の響き)もなんとなく想像できる。結構ライブな空間だったりする、と思う。

こういう空間表現力をしっかり収録できているポリヒムニア・スタッフの優秀さも相変わらず敬意を表明する。

まぁ、聴く人によって好みはいろいろ違うと思うが、自分は、今回のこのアラベラ録音は、とてもコンパクトな彼女らしい相応の演奏で素晴らしいと思ったし、なによりもホールで実際聴いているようなナチュラルな自然感が優れていて、大変素晴らしい録音であると感じた。最初1発目に聴いて心ときめくというより何回も聴きこんでいくことでその良さが十二分にわかってくるという、そんな録音ではないだろうか。

パッケージの作りも丁寧で手が込んでいて、おそらくPENTATONEが今年リリースするアルバムの中で最高作品で、最高のセールスアピールになる作品なのだと思う。

6/3からスタートするアラベラ様狂騒曲のはじまりのような予感がする。



逝ってしまった!鈴木雅明&バッハ・コレギウム・ジャパンの教会カンタータ全集。 [ディスク・レビュー]

じゅう~まんえん!ファーストプレスのときは、正直購入しても、頻繁には聴かないだろう、という想いがあって、見逃した。それで冬のボーナスも入り、セカンドプレス(おそらくこれが最後?)のお知らせがあったとき、相当心が揺れた。

バッハの教会カンタータ全集は、じつはトン・コープマンの全集と、アーノンクール&レオンハルトの全集をすでに持っているのだ。

いずれもいまだに新品未開封。(笑)

ライプツィヒ時代に作曲されたバッハのカンタータは、あまりに曲数が膨大すぎて、普段なにげなく取り出して聴くという対象にならづらい。これは全集もの一般に言えることだけれど、やっぱり普段ラックから気軽に取り出して聴く、というものは単盤なのである。

全集の魅力とは何なのか? 

それはやはりその演奏家、音楽家の全ての作品が網羅されている、それを購入することで、達成感を得る一種の音楽ソフトマニアのコレクター癖をくすぐるような感覚なのかな?と思う。私も何を隠そう一時期は全集ものやBOX-CDを買い揃えて夢中になっていた時期があった。

逆に演奏家側や製作者側からしても、たとえばベートーヴェンの交響曲全集など、全集を録音して発売することは、ひとつの大きなイベントで、その演奏家がその作曲家に対する克服感、達成感などがあるんだと思う。コンサートならいわゆるチクルス(全曲演奏会)というやつですね。

ところが数年前から思うのは、全集を買っても普段聴かない、とうこと。(笑)
全集を取り出して聴く、というのはなぜか気が重い。

やっぱり普段聴きやすいのは単盤のもの。単盤のほうが、その盤に対する印象度や思い入れが深く印象に残りやすいからである。だから棚の膨大なソフトからアクセスする頻度が多いのは、やはり単盤のものが圧倒的に多い。

全集はいわゆる百科事典的な使い方で、この演奏家のこの年代の録音が聴きたいなどのときにとても重宝するのではないか、と思う。でも全集やBOX-CDの場合、その目的の盤を探し出すのが大変。必ず冊子として入っている目次を見ないとどのCDなのかアクセスできない。

そういう点で、自分が普段からアクセスしやすく、頻繁に再生するのも単盤が主流で全集は普段は聴かない場合が多い。

でも全集が発売されるとやはりつい買っちゃうんですよね。

私は、普通の音楽マニア以上に、音楽ソフトのコレクター癖が強い方だと思っているので余計そうなのだと思う。演奏家にとって全集はひとつの集大成といえるからである。

だから全集は販売されたら購入するけど普段は百科事典的な使い方で、普段は単盤を購入してそちらが主流というのが私の今のスタイルでしょうか?

数年前にカラヤン生誕100周年というのがあって、いろいろ貴重な音源の発売など大きなイベントがあった。

カラヤン/BPOは昔から自分のクラシックの基本であったので、昔から集めていた膨大な単盤がたくさんあるのにも関わらず、このイベントに乗って買っちゃいました。(笑)


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一番下がカラヤンのDG全集(240枚組)
真ん中がSONYから出ているカラヤンの遺産DVD全集
一番上がカラヤンのEMI全集

です。DG全集なんて数十万する凄い買い物です。
これで普段これを聴いているかというと全く.....(笑)

やっぱりカラヤンの作品はすべて揃えておきたい、コレクターしておきたい、という気持ちから揃えただけとも言える。

そういう意味で全集というのはファン心理をうまくついている、と常日頃思うのである。

全集ものにたいしてそういうイメージがあったので、最近はほとんど買ってない。

でも鈴木さん&BCJのこれは、やはり買わないといかんかなぁ、とつくづく思い、やはり思い切った。

先述のように、バッハのカンタータ全集は、すでに2セット購入している。

自分にとって、バッハのカンタータ全集といえば、絶対的にトン・コープマンだった。ベルギーに住んでいたころ、友人が住んでいたアムステルダムによく遊びに行っていたとき、このトン・コープマンであるとか、去年亡くなった18世紀オーケストラのブリュッヘンなどがそのオランダで活動していた訳で、現地で実演に接するとか、そういう古楽の世界を生体験するチャンスがいくらでもあったのに、本当に勿体ないことをした、といまだに後悔している。

やはり人生うまいようにはいかず、若いころは貴重なことである、という価値観がいまいちわかっていなくて、そういう感覚は晩年の歳を取ってきてからわかるようになる、ということだ。

バッハのカンタータ全集録音は、そう簡単に達成できる代物ではないのだ。録音年数10年以上は、軽く要し、教会録音が前提になって、その教会の確保、そしてこのような何年もかけてこういうツィクルスの録音を達成するということ自体、レーベルの理解が必要になる。

鈴木さんもステサン(季刊誌ステレオサウンド誌)のインタビュー記事で告白していたが、当初この録音をスタートさせたい旨、相談したところ、日本のレーベルはどこもノーだったという。「今はそんな時代ではありません。」と言われたという。その中で、スウェーデンのBISが興味を示した、ということらしい。即座に採算性を求めるレーベルと、先を見据えた遠い視線でものごとを考えられるレーベルとの違いなのだろう。

このようにバッハのカンタータ全集録音という作業は、大変困難な垣根の高い作業なので、過去にこの偉業を達成したのは、ほんのわずかな団体しか達成していない。トン・コープマン、ガーディナー、アーノンクール&レオンハルト、リリンク、ヤン・ペーター・リューシンクぐらいしかいない。バッハへの造詣が深い音楽家は数多いるとはいえ、全曲録音の完遂というチャンスは滅多に巡ってくるものではない。ある意味、運も必要なのだと思う。

そんな自分の中で、カンタータ全集のリファレンスになっているトン・コープマンの全集(アムステルダム・バロック・オーケストラ)。

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このトン・コープマン全集のジャケット写真が結構心惹かれるものがあって、トーマス教会の外装、内装空間の絵画が施されているのだが、これがじつに昔のトーマス教会ってこうなっているんだなぁ、と思わせるような風情である。

去年ライプツィヒに行くことができて、トーマス教会を経験できたが、その時の印象とこのジャケット写真では、かなり違和感があるというか、違う。

当時、このトン・コープマン全集、10万円以上して、本当に清水の舞台から飛び降りる思いで、思い切った。

そしてアーノンクール&レオンハルトの全集。

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こちらはトン・コープマン全集より、紙ジャケという感じでCPをあげた感じの装いで値段もずっと手ごろになった。5~6万円ぐらいだったと思う。

そして鈴木さん&BCJの全集。

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なによりも買おうと思ったその1番の大きな要因は、SACDというフォーマットで仕上げられている、ということだ。長年、運も必要なカンタータ全集で、SACDフォーマットで仕上げられている、という事実は、当然過去にはなく、バッハのカンタータを最新録音で聴けるファクターは、オーディオファイルにとって相当魅力的。

バッハのカンタータをSACDのサラウンドで聴ける!

レーベルがBISなので、当然かもしれないが、言うは簡単、これって歴史的にもかなり画期的で、それを日本の団体が達成した、という事実に限りなく誉に感じるのである。

このことが今回、大金はたいて買おうと決断した最大の要因、と言ってよい。

限定生産なので、シーズンが過ぎたら廃盤になり、あとは欲しい人は単盤で買ってください、というアプローチになる。やはり買うしかない、と思った。

じつは、この全集が発売になる前に、ステサン誌で付録のサンプラーという形でついていたディスクがあって、そのディスク1枚の中に、この全集の膨大なカンタータの中から有名な旋律の曲だけを抜粋したものが収められているのだ。

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これは非常に重宝した。拙宅オーディオオフ会でも率先しておかけした。

本当に珠玉のような作品集に仕上がっていて、ある意味、これ1枚あればいい、という感じなのだが、でも誘惑に負けて、今回全集お買い上げ、となった訳だ。

ほかにも、いまある全集を全部聴いてから買えよ~、というお言葉をたくさんいただいたが、放っておいてくださいますか?(笑)

このBOX-SET、今日届いて、さっそく聴いているが、あいにくいまマルチチャンネル用のトランスポートがドッグ入りして、サラウンドで聴けない。2chで聴いているのだが、それでもすばらしい録音であることがよくわかる。

全ディスクともBCJの本拠地である神戸松陰女子学院大学チャペルでの録音。


ここでちょっと一言おこごと言っていいですか?(笑)

すごい質感が優れているというか高級感があって素晴らしいのだけれど、ディスクに振られている番号と、パッケージの裏に書かれているナンバリングが一致していなくて、CDの検索が難しいっす。(笑)

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全集の「きも」は、百科事典的にアクセスすることなのであるから、この検索能率が劣ると命取りです。(笑)

トン・コープマン全集の購入からこういう経緯があったので、去年、鈴木さん全集が出るとわかって、ライプツィヒに行くなら、いましかない!と思ったのである。ものごとにはタイミングというのがあって、それを逸したら鮮度をかなり失う。

バッハのカンタータ作曲時代のライプツィヒに行くなら、いま(去年)しかないと思ったのが真相である。



シューマンの「女の愛と生涯」 [ディスク・レビュー]

BISの4月の新譜に、スウェーデンの歌姫のミア・パーションのオペラ・アリア集が出るそうだ。とても楽しみ。HMVのキング・インターナショナルさんの解説文によると、なんとパーションはバッハ・コレギウム・ジャパンの教会カンタータに独唱としても、参加しているそうだ。(もともとBCJのソリストとして活躍していた。)

まぁ同じBIS所属なので別に不思議ではないのだが、なんか自分がずっと聴いてきたアーティスト達が必然とつながっているような感覚がして、嬉しいような気分。

自分がミア・パーションに惹かれるようになって、本格的に聴き始めるようになったのは、じつはつい最近のことで、4年前のBISからのショーマンの歌曲集である「女の愛と生涯」を聴いてからだった。

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シューマン:女の愛と生涯、メアリー・スチュアート女王の詩、クララ・シューマン:ローレライ、他 パーション、ブラインル .

http://goo.gl/U0kKuP

シューマンの歌曲集「ミルテの花」作品25の「献呈」「くるみの木」からスタートして「女の愛と生涯」で終結する流れに妻のクララ・シューマンが作曲した歌曲を織り込んだ考え抜かれたプログラム。

録音もいかにもBISらしいテイストで、室内楽のように距離をとったワンポイント・マイクで歌唱を捉えようとしているからだと思える。パーションの声が、あたかも背筋をピンと伸ばした一途な女の生き方を感じさせるような「凛とした」響きとして再生されているように思えてとても魅力的なソフトであった。

シューマンは、あたかもペアを構成するように男と女をそれぞれ主人公にした連作歌曲集を作曲している。

「女の愛と生涯」
「詩人の恋」

「女の愛と生涯」の魅力的は、「詩人の恋」に決してひけをとらない。最後に第1曲が回想される長い後奏のところまで聴くとどんな演奏であっても 深い感慨に誘われると思う。

ただ、この曲、特に男性には出会い・恋心・異性と結ばれる不安・結婚・出産・死別・・・と順当に進行する内容なので、「詩人の恋」のようなドラマティックな展開がない。しかし一方で童話作家の故佐野洋子さん風に言えば「ふつうがえらい」的なストーリーであって、平凡な中にあるささいなときめきやドラマを描いているのだ。

そういう魅力が、自分にとって、詩人の恋には負けていない、シューマンの連作歌曲集の中でもとても気になる歌曲のひとつになっている。特に4トラック目の「わたしの指の指輪よ」。この旋律の美しさには涙する。最も有名な旋律で、この美しさに心揺さぶられない人などいないだろう。

じつは、この「女の愛と生涯」の録音で、いままで、これはと思うような録音になかなか巡り会えなかった。そんな中で、mixiのマイミクさんの中で、この歌曲集で、とても話題になったディスクがあった。

それはエディット・マティスのDG録音。

エディット・マティスはもうご存知、自分が産まれる前の世代から活躍しているスイス生まれの往年の名ソプラノ歌手。この世代のドイツ圏のソプラノとしてはトップクラスの美貌、それもどちらかといえば愛嬌のあるルックスが大きな魅力。現在もお元気だ。

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そんなマティスが歌う「女の愛と生涯」。

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シューマン
「女と愛と生涯」
「ミルテの花」(抜粋)
「ヴィルヘルム・マイスター」からの歌曲集(抜粋)
「子供のための歌のアルバム」

 <演奏>
エディット・マティス(s)
エッシェンバッハ(p)


このマティス盤 シューマン歌曲全集の中にはいっていてなかなか単売されず、入手にはかなり時間がかかった。というか、現在ではほとんど幻の名盤と言っていいほどで、中古市場にもほとんど出ない。自分が存在を知って、探し始めてから半年から1年はかかっただろうか。

毎日、お茶の水や新宿のディスクユニオンなどで探しまくり、ネットではUSA,カナダ,ドイツはじめ、ほとんどの海外アマゾンを物色。そしてある日、お茶の水のディスクユニオンの棚の中に偶然あったのを見つけたときは、震えた、というか、もう心臓が止まるほど、あのときのドキドキは一生忘れられないだろう。

そして立て続けに、カナダの海外アマゾンでも発見。すぐにポチッてしまった。2枚も買ってどうするんだ、という感じだが、それほど貴重で、自分にとって捜し求めていた超お宝だった。

そしてマティスが歌うこの「女の愛と生涯」を聴いたときに、ときめいた感動。やはりパーションが歌う最新録音とは違う、女の色気、けれんみ、というか、深みのある味というか重みがある。マティスの声には少し控えめで聡明な女性像を感じることがある。声の美しさはもとより発音も見事で、装飾音符の扱いもきわめて上手い。さすがマティス。このマティス盤を聴くと、パーション盤はすごくさっぱりしたテイストに聴こえてしまう。

マティス盤は、自分にとってこの「女の愛と生涯」の最高傑作と言ってもいい。滅多に手に入らない貴重盤だから尚更そう感じてしまうのかもしれない。
 
話を戻して、ミア・パーション。
彼女は、Blu-rayのコヴェントガーデン歌劇場の「コジ・ファン・トゥッテ」での好演が強く印象に残っている。ディスクでは BISからモーツアルトのアリア集(SACD)、CHANNEL CLASSICSからイヴァン・フィッシャー指揮 マーラー 交響曲第4番(ソプラノ・ソロ)などがすぐに思い浮かぶ。容姿端麗な北欧美人である。

新国立劇場でも、コジの実演にも接した。

そんな彼女のディスクで、もうひとつ魅力的なアルバムがある。
イギリスのウィグモア・ホールでのリサイタル。レーベルもこのホールの自主制作。

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歌曲リサイタル~シューベルト、グリーグ、シベリウス パーション、ヴィニョールズ .

http://goo.gl/zfEs1g

シューベルト、グリーグ、シベリウス というプログラムで 特に最後のコーナー、シベリウスのスウェーデン語の歌曲コーナーが素敵だ。

・春は過ぎてゆく
・初めてのキス
・あれは夢だったのだろうか?
・葦よそよげ
・逢引きから帰った少女

という選曲は シベリウスの歌曲の中から最もメロディが親しみやすい曲を 上手く選んでいる。録音は シンプルなライブ録音らしい素直な仕上がりだった。

イギリスのコンサートホール事情は、なかなか自分的に惹かれるホールは少ないのだが、このウィグモア・ホールは、その中で1番訪問したいホールでもある。近いうち必ず実現したい。

そんな魅力的な歌姫であるパーションの4月の新譜は、いまから本当に楽しみだ。特にアルバムコンセプトが、オペラ・アリア集というのが、また自分の嗜好にあっていて(笑)、本当に楽しめそうだ。


ナレ・アルガマニアン [ディスク・レビュー]

PENTATONEレーベルを支えるアーティスト達は、それこそ俊英たちがたくさん揃っている訳で,アラベラ・美歩・シュタインバッハーばかりプッシュしていては申し訳ないというもの。すべてのアーティスト達各人について、きちんと応援アピールする日記を書いていきたいとはいつも思っているのだが、なかなか遅筆で申し訳ないと思っている。

その中でも、ヴァイオリン部門でアラベラ様とこれば、ピアニスト部門、やはりPENTATONEの期待の新鋭ピアニストといえば、このナレ・アルガマニアンを取り上げないといけまい。

なんでも内田光子さんも絶賛らしい(驚)、アルメニア出身の美人のピアニストだ。
輝かしい経歴、コンクール歴を誇り、若干26歳という期待の俊英。
こういう将来性のある有望株の若い演奏家を応援していくのは先行きが明るい感じで本当に楽しい。

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じつは彼女のデビューは、2年前のこのPENTATONEでのアルバムで、ラフマニノフの作品集を取り上げていた。その当時私はこのデビュー盤を購入していた。 

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音の絵、幻想的小品集、コレッリ変奏曲 アルガマニヤン

http://goo.gl/uQj00W

当時は22歳という若さで、そのデビュー盤についているボーナスDVDで演奏姿を拝見すると、とてもエキゾティックな美貌の持ち主という印象できっと人気が出るだろう、と思っていた。

アルバムの選曲、曲の並びというのは結構アーティストに対するイメージに影響するもので、このラフマニノフ作品集の選曲のセンスが、これまた素晴らしくて、驚いてしまった。

かつてのホロヴィッツのアルバムみたいにメイン・ディッシュで ソナタ第2番がドンと据えられていて後はアラカルトで小品集・・・といった選曲ではない。

初期の幻想的小品集Op.3(有名な「鐘の前奏曲」を含む)を5曲 作品番号順に弾いて、その後に中期の油の乗り切った練習曲「音の絵」Op.33の8曲を大きなかたまりとして置き、最後に後期の「コレルリの主題による変奏曲」Op.42で締めくくる。

誰か仕掛け人がいるのではないか、と思うようなインテリジェンスを感じてしまう。

録音もまさに、これぞPENTATONEサウンドという感じで、あざといと思うくらいの残響の豊かさと、自然な綾というか、柔らかい質感でとても美しいサウンド。

彼女は現在に至るまで3作品出しているのだが、途中の2作目は不覚にもまだ聴いていないのだが、つい最近出たばかりの新譜がハチャトゥリアン、プロコフィエフのピアノ協奏曲。 

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ハチャトゥリアン:ピアノ協奏曲、プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第3番 アルガマニヤン、アルティノグル&ベルリン放送響

http://goo.gl/1X4vhW

ジャケットデザインもすごく洗練されていて、美しい。彼女自身の風貌、スタイルもデビュー時に比べて、ずいぶんと垢抜けたというか美しくなった。やはり女性アーティストは経年とともにどんどん美しくなるもの、という持論は正しいと思った次第。

ところが最初この新譜の録音のテイストを聴いたときに、ピアノの音色がどうもプラスティックというかカチカチな音色に聴こえて、どうも違和感があった。どうも加工しすぎているというか、人工的で、自然のピアノの音色とは思えない抵抗感があった。

PENTATONEっぽくない感じで、思わずクレジットを見てみた。

そうすると制作スタッフ陣がPENTATONEとドイツの公共放送ドイチュラントラディオ•クルトゥアー (Deutschlandradio Kultur 以下DLR)との共同制作のようであった。録音はポリヒムニア(Polyhymnia International BV)。


PENTATONEというのは、いわゆるレーベル、レコード会社のこと。
ポリヒムニアというのは現場での録音、ポストプロダクションなどを担当する会社のこと。ポリヒムニアが現場で録音・収録したものを、PENTATONEがSACDとして世の中に出すというパートナー関係なのだ。

PENTATONEもポリヒムニアも、もともとはフィリップスからの流派。やっぱりオランダなんだねぇ。
アムステルダム・コンセルトヘボウの屋根裏部屋にあるのもポリヒムニアの編集ルームだ。

ポリヒムニアは、ジャン・マリー・ゲーセン氏、エレベット・ポーター氏が中心になっている。ジャン・マリさんは同時にPENTATONEとしてもバランスエンジニア・編集などとしてクレジットされていることが多い。プロデューサーはジョブ・マルセ氏、編集にエルド・グロード氏。まさにPENTATONEサウンドを作り上げているキーマン、黄金スタッフだ。

ドイツの公共放送のDLRとこのポリヒムニア、PENTATONEとの三つ巴のタッグは、今に始まったことでなく、あのヤノフスキ&ベルリン放送響のワーグナー・ツィクルスもこの三つ巴タッグによる作品なのだ。

今回の彼女の作品もベルリン放送響がオケとして参加していることから、やっぱりビジネスってつながっているもんなんだなぁ、と再認識。

やっぱり少しテイストが違うというか、今回の新譜は、いわゆるダイレクト感が強くて、きびきびしたサウンドに仕上がっている。いつもの残響たっぷりで柔らかいサウンドとは正反対という感じ。ピアノの音色がカチカチなのも、なんかこのテイストに沿った感じだ。

でも予想外というか、意表をつかれた録音のテイストではあったけれど、作品自体の素晴らしさ、完成度の高さは間違いないところ。

やはりかなり聴きごたえがある。

なによりも彼女のピアノのテクニック、そして安心して聴いていられるその安定感は、卓越したものがあると思う。対オケとのバランス感覚も決して負けていない。十分主張している。

PENTATONE一押しのピアニストとして、今後とも注目していきたい若手演奏家だ。 

PENTATONEレーベルは、小さい会社ながら ちゃんと独立のレーベルとして世界的にみとめられ 着実にレパートリーを拡充しているしてことは、実に立派なこと。

こういう若手演奏家を育てていき、前に据えていく姿勢、ツィクルスを何年もかけて制作していく,何年も先を見据えた指針、そして アーティストの特性や営業めども考えながら、徐々にクラシック音楽の名曲を網羅する整然としたカタログがジグゾー・パズルのように完成してゆく。

こういう着実で10年後を見据えたリリース計画についヨーロッパの整然とした街並みを連想してしまう。


BISの新譜:キャロリン・サンプソンの「花々~植物にまつわる歌曲集」 [ディスク・レビュー]

クラシック演奏のワンポイント録音で名を馳せたレーベルであるBISレーベル。

昔からこのレーベルのサウンドを聴くとき、録音レベルが小さいことや、ダイナミックレンジが広くて立体的に音が聴こえてくるのも、そういう背景があることを思うと実に納得のいくところだ。

ワンポイント録音は、ホール全体の空間、立体感、臨場感あふれる空気感などを広く繊細に録れるメリットがあるが、天吊りメインマイクのみだと、オケなどの各楽器のパートなどどうしてもマイクから遠いためにディテールが潰れるというか解像度が犠牲になってしまい、全体として音に躍動感がない、という印象を抱いてしまうことも多い。

先日某レーベルのワンポイント録音を聴いたが、そんな印象だった。

でもワンポイントにピックアップマイクの併用もかなりスキルの要するスタイル。

空間+明晰性・解像度を両立させながら、うまくリミックスするのも、やっぱり普段オーケストラの生演奏をよく聴いている人、またオーディオでオケの再生はこうあるべき、というビジョンを持っている人でないと、なかなかうまくこのふたつのパラメータを両立できる作品に仕上げるのは難しいのではないだろうか?

そんなイメージを抱いているワンポイント録音なのだが、BISは本当に綺麗に録れているというか、決して明晰性や解像度を犠牲にすることなく、そして広い空間をうまく造りながら、うまく両立させているなぁとつくづく思う。

BISの録音の特徴は、その空間表現の美しさ。

そんなところに彼らのオリジナルの音作りというか優秀な録音スタッフの賜物なのだなぁということがよくわかる。

今回の新譜の中に、そんな美しい空間表現を見事に披露している作品に出会えた。 
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『花々~植物にまつわる歌曲集』 キャロリン・サンプソン、ジョセフ・ミドルトン 

自分の大好きな歌曲集。

ピアノとソプラノだけで紡がれる空間、隙間の多い音空間。

空間がおそろしく広く録れていて、どこか遠くで鳴っているような感覚もある。
ピアノの音色が柔らかい質感なのだが、響きがとても豊かだ。
そしてソプラノの声がじつに透明感があって、声ものにありがちなエコーの化粧がかかっているように思われる。

出音を聴いたときに、これはいい録音だなぁ、と思わず思ったほどで、広い、広い洞窟の中で、エコーたっぷりに響く感じで、でも混濁することはなくて、豊かな響きに、原音が埋没せず、きちんと分離していて、隈取がしっかりしているというか、非常に響き豊潤でありながら明晰な音。ある意味理想ではないか!


2014年2月の最新録音で、イギリス、サフォーク州、ポットン・ホールでのセッション録音。

このホールの空間の響きは、音調表現の幅が大きく、非常にナチュラルな響きから、光沢のある質感まで広範囲に分布している、というか響きのボキャブラリーが多い感じがする。

自分の大好きな歌曲集で、思わず心奪われる作品にできている。

BISの歌曲集では、アンネ・ゾフィー・フォン・オッターのスウェーデン歌曲集がじつに秀逸であったのだが、決してそれに負けないくらいの作品に出来上がっていると思う。

ソプラノは、バッハ・コレギウム・ジャパンのソリストとしてもお馴染みのキャロリン・サンプソン。

声の芯が太くてしっかりしているのだが、透明感、色艶があって「澄み切った高音域」という表現がぴったりのまさに美声だ。

素晴らしいと思うのは、高域歌手にありがちな強唱のときに耳に突き刺さるようなキツさというのがなく、非常に声帯のレンジが広い歌手だと思うことだ。発声のレンジに余裕があるのだ。

そんなサンプソンが歌い上げる歌曲は、バラ、花、植物にまつわる美しき歌曲を集めたもの。いわゆる企画ものだ。著名な作曲家の多くはこれらの作品を残しているが、本作品では「バラ」にまつわる作品を筆頭に「植物」にまつわる作品、そして、フランス人作曲家による「花」にまつわる作品で構成した、とのこと。

聴いていて、本当に珠玉の作品の集まりのような素晴らしい歌曲集の作品に出来上がっていると思う。

自分は歌手の歌声を堪能するのが大好きで、大がかりなオペラものより、歌曲集が好き。
録音も素晴らしいし、本当に宝物のようなディスクに巡り会えたと思う。 

児玉桃さんのECM録音 [ディスク・レビュー]

児玉桃さんは幼少の時に渡欧して、そのまま13歳の若さでパリ音楽院に入学。
そして16歳で卒業とともにセニガリア国際コンクール、エピナール国際ピアノコンクールなど数々のコンクールで優勝し、現在もパリに在住して、パリを中心活動している。取り上げる作品ももちろんフランスものが多く、いままで録音ではドビュッシーや特にメシアンが大の得意作品。

現在はKAJIMOTO(梶本音楽事務所)に所属して、その多様な活動は素晴らしいの一言に尽きる。

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CDデビューは2003年にオクタヴィア・レコードからドビュッシーの作品集。
2008年ころには、このデビューからの3作品を再度SACDにして再リリースしている。 

桃さんは、小澤水戸室とも2006年頃からの深い関係で、水戸芸術館で数々のコンサートを共にしている。つい2~3年前にレクチャー付コンサートという形で、フランス音楽を取り上げて、水戸で公演をしていたのを覚えている。その公演にも行かせてもらったし、あと準・メルクル氏指揮の水戸室公演でサン=サーンスのピアノ協奏曲第2番の実演に接したこともあり、サン=サーンス好きの自分としては(笑)、そのフランス色の強いメッセージをしっかりと感じ取れた素晴らしい公演であった。

最近では細川俊夫さんとのコラボも大きな注目を浴びている。

そしてお姉さんが同じピアニストの児玉麻里さん。
もう私の日記で何回も取り上げていて、すっかりお馴染みだと思うが、PENTATONEでつい最近ベートーヴェンのピアノソナタ全集のBOXを完成させたばかりだ。 

じつは桃さんとはFBで友人になっていただいているのだが、非常にまめに情報発信上手というか、うまくメディアを使っているな、という印象がある。その写真には、必ずお姉さんの麻里さんも一緒に写っているのだ。

邪推であるが、姉妹の中でスポークスマン・メディア担当なのが、桃さんなのかな、とも思ったりする。

FBの公式ページで、偶然知ったのであるが、2013年にECMで録音してたCDが紹介されていて驚いた。

あの独特のカラーを持ち、アーティストの採用基準も非常に高いECMで、日本人を採用するということ自体希有なことだし、正直驚いた。

この児玉桃さんのECM録音は、フランスの高級文化誌「テレラマ」が最高位の評価を与える絶賛であったようだ。

そんな桃さんのECM録音をぜひ聴いてみたくさっそく購入した。 

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ラヴェル:鏡、武満徹:雨の樹素描、メシアン:ニワムシクイ 児玉 桃 


ECM録音の特徴は、2ch再生とは思えないダイナミックレンジ、空間の広さで、静謐な空間の中での寒色系なソリッド気味な響く音色という感じ。

最初の出音を聴いた時の第1印象は、思ったよりオンマイクな録音のような感じで、自分が抱いていたECMサウンドは、もう少しオフマイク気味で立体的に聴こえてくると思っていた。ピアノもイメージよりも幾分質感が柔らかくて、音の角がとれている感じがする。でも音色の響きは非常に美しく、ECM独自路線のリバーブをかけているような気もするのだがどうだろうか......

そういう自分のイメージとは少し違っていたが、でもやはりトータルな作品出来栄え、録音の素晴らしさは間違いないところでこれでまたひとつ2chソフトでいいソフトに巡り会えたという感じ。

そして、なによりその録音事情よりも感動するのは、その演奏力、作品の素晴らしさ。

ラヴェルの音楽に代表されるような色彩感、グラデーション豊かな特徴が持ちながら、結構ストイックで求道的な雰囲気に思わず心を奪われてしまう。

そして武満さん、メシアンの現代音楽でも独特の鋭利感と隙間のコラボが見事に調和していて、素晴らしい出来栄えとなっている。技巧派としての彼女のテクニックが十二分に感じられる。

選曲や曲の並びというのは、そのアーティストのイメージやそのディスクのセンスを決めるものなので、このアルバムを聴いたときはイメージにぴったりだと感じた。特にメシアン最高にして最大のピアノ作品といわれる「ニワムシクイ」が収録されていて、メシアンは彼女にとって最重要レパートリーだけに、このECM録音の大きな売りなのだと思う。

デビューから一連の作品は、オクタヴィアレコードが担当し、細川俊夫さんとの作品では、ナクソス・クラシックスから出ているようで、彼女の次回の作品はどうなのか、わからないが、ぜひECMからの第2弾を期待したいものだ。


LINNレコードのSACD [ディスク・レビュー]

LINNレコードのSACDを聴いてみた。英国の老舗オーディオブランドのLINNがレコード会社部門を持っているなどとは、全く知らず、しかもHMVで覗いてみたら、かなりSACD主体路線なのには驚いた。


マイミクさんの日記であまり芳しくなさそうな風評だったので(笑)、期待はしていなかったが、とりあえず一通りのジャンルを聴いてレーベルの素性を確かめてみたいと思った。全部で5タイトルくらい購入したのだが、まぁとりあえず当たりというか、聴けるのはこの3枚かな、という感じ。


LINNレコードは、ジャズ/クラシックやスコットランド/ケルト系の音楽に強いところがミソのようだが、LINNはオーディオだけではなく、トータル的に音楽を見ている広い視野を持っていると言えるのだと思う。


またネット経由でのハイレゾ配信も盛んのようで、それもCD次元からのアップサンプリングでの補完ではなくて、マスターから直接96/24もしくはそれ以上などに落とすリアルなハイレゾで、「スタジオクオリティ配信」と銘打ってアピールしているみたいだ。

マスタークオリティの配信についてはLINNレコードはいわばコンテンツホルダーなので、自分でマスターを保持しているわけで著作権絡みも含めてある程度、上流から下流まで、トータルにシステムを作れるというかビジネスを作りやすいのだと思う。


そういえばLINNといえば、LINN DSを思い出す。PCオーディオの草分け的存在で、そういう開発背景も、やはり自分でレーベルを持っていて、それでいてネット配信、ハイレゾなどのバックグラウンドがあって必然と生まれてきた商品なのかな、とも思ったりした。

そんなLINNレコードがつくるSACDとはどんな感じなのか?


たった5枚での印象だけれど、一言でいうとS/Nがいい、というか美音、クリアという印象。


ただし、マルチチャンネルの造り方に違和感というか、普段聴いているレーベルとはちょっと違った印象で、リア効果をあまり使わないところに特徴があるように思う。


あくまでフロント3本主体で、前方のほうで奥行感が出るようにステージ感が広がる感じに聴こえる。


全体に包囲感というにはちょっと乏しい感じ。

これはこれで、クラシックのサラウンドの王道なのかもしれない。映画じゃあるまいし、部屋中の四方から効果音がビュンビュン飛んでくるような感じではなくて、前方のホールのステージから音が真っ当に聴こえて、後方からは壁からの微かな反射音を聴いているお淑やかな感じ....そんな正攻法なサウンドつくりのように思える。


ただジャンルによって良し悪しが出るような印象を受ける。

とにかく美音な音造りなので、音数の少ない隙間があるような室内楽などは透明感があって非常によろしい。

でもオケものなどの大編成で音数が多いものになると、うねりというか重厚感がないというか腰高なサウンドなので、来るものがないというか、この軽さでは正直酔えない。(笑)


また既述のような共通のトーンポリシーはあるみたいなのだが、結構ディスクによって録音の出来のバラつきがあって、5枚購入したら結構がっかりする作品も多かったので、難しいレーベルのように感じる。


全体の印象は、やはり英国紳士のような上品なクリアな音造りで、ガッツリ系とは程遠いという感じで、やはりクラシックの中でも室内楽、歌曲集、交響曲などのジャンルによって得手不得手が出てしまう、という印象だろうか。



でもジャケットのデザインなど、かなり洗練されていて、上品な感じでいい感じ。なんかクリアなサウンド造り、そして洗練されたジャケットデザインなど、全体的なブランドイメージ造りに統一感があって、ブリティッシュ・ライクな感じがよく出ていると思う。

いかにもLINNって感じ。 

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24の前奏曲、マズルカ集、夜想曲第3番、第8番 イングリット・フリッター.



2014年の最新録音で、イギリス、サフォーク、ポットン・ホールで録音された作品。


2000年の第14回ショパン国際ピアノ・コンクールで第2位に輝き、一流のショパン弾きとして目下活躍中のイングリット・フリッターによるまさにお得意のショパンの作品。


これは今回購入した5枚の中で1番当たりだった録音。LINNにはこういうピアノソロなどが良く似合う。透明感があって、どちらかというと柔らかい質感の音色で、響きも豊かで、暖色系の温もりのある音色。空間も広く録れていて、聴いていて気持ちがイイ。LINNのサラウンドの中では唯一リアが比較的豊かに聴こえた作品。



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シューマン:歌曲集、ブラームス:歌曲集 アン・マレイ、マルコム・マルティヌー



アイルランドのダブリン生まれで、ロイヤル・オペラ・ハウス、コヴェント・ガーデンなど主要な英国オペラ・シーンで活躍してきたメゾ・ソプラノ、デイム・アン・マレイの歌曲集。

2013年の録音で、スコットランド、アーガイル、クレアー・スタジオでのセッション録音。


これも恐ろしくS/Nがいい美音タイプの録音。自分の大好きな歌曲集のジャンルなので、かなり期待していたが、声質の透明感、明晰な感じは非常によく録れていて印象がいいのだが、リア成分がまったく聴こえてこなくて、マルチチャンネル録音としてはかなり違和感。

やはりサラウンドは、自分の周りを包み込むように音が埋まってほしい願望があって、この録音を聴いたとき、ちょっと物足りないというかさびしい感覚であった。2ch+αの高さと奥行感が増した感じというイメージだろうか。


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交響曲第2番、第7番 セナゴー&BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団



2014年の最新録音で、イギリス、カーディフ、BBCホディノット・ホールでのセッション録音。


う~ん、これは演奏のせいなのか、録音のせいなのか、判別つかないのだが(たぶん両方(^^;;)
どうもこういうジャンルは苦手のような感じを受ける。ピンと来なかった。大編成のオケを聴く上で大切な聴き手側の感情の抑揚感、ここでぐぁ~と盛り上がってほしい、というようなドラマティックな展開に聴こえない。(笑)


腰高なサウンドなのだ。やっぱりオケものは低域の量感含め、重心の低いサウンド造りがきもと言えると思うのだ。


LINNサウンドはどちらかというと中高域の透明感を売りにしているようなサウンド造りのよう思えるので、こういうジャンルはいまいち聴き手側に訴えるものが乏しいような気がする。

ちょっとお耳汚しのご意見をさせていただくならば、LINNサウンドを聴いて納得いかないところは、オーディオで私的に1番大事な痛い音が出てこないこと。綺麗で滑らかなだけの表面を見繕った感じに造られている。だからリアリティがなくて、そこで実際に演奏しているという実体感が感じないのだ。なんか、どのディスクも綺麗なBGMを聴いているみたいな感じ。
弦楽器などもきちんと弦の擦れた音でない。それがLINNサウンドのトーンポリシーと言ってしまえばそれで終わってしまうのかもしれないけれど、そこにいまひとつ自分の心をがっちり掴んでくれるサウンドのようには思えない。 


う~ん、今後も聴き続けていくレーベルかとなると難しい選択だ。(笑)

宮田大「チェロ一會集」 [ディスク・レビュー]

宮田大くんの2'ndアルバムを聴いた。大くんがCDを出していることすら、全く知らなかったくらいだから(笑)、大変楽しませてもらった。


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宮田大「チェロ一會集」


デビューアルバムは、まだ聴いていないのだが、この2'ndアルバムを聴く限り、誰か仕掛け人がいるのかもしれないが、演奏曲目の選び方が知的というか折り目正しい印象を受ける。

フランク・ソナタ、そしてラヴェル、フォーレ、黛敏郎、そして尾高尚忠という選曲。チェロという人の耳にやさしい音域で紡がれる音楽作品集としては、とても珠玉の作品集のように思えるほど、よく出来ている組み合わせだと思う。

大くんの売り出し方にもよると思うが、要はヘビーなスタンダードな大曲で構成する一般的な方法ではなくて、もっと小作品、あるいは有名な楽曲の一番いい楽章部分の旋律だけを取り上げるなど、アルバム全体が誰でも入りやすい親しみやすい旋律の小作品の集まりで構成されるシンプルさがある。こういう構成って、いかにも大くんのイメージにぴったりだと思う。

国際コンクールで名を馳せた演奏者の売り出し方としては、自分の記憶に間違いがなければ、神尾真由子さんもそういう感じだったような記憶がある。

とにかくアルバム全体が、とても癒し系で美しい小作品の集まりで、聴いていてとてもうっとりする。

そして、そのチェロの音色のなんと美しいことか!チェロの音域、音色って、人の脳のアルファ波をふんだんに出し尽くすような癒しの帯域なのだとつくづく思う。緑の中の自然の中のイメージが良く似合う。

特に最初のフランクのチェロソナタ。このヴァイオリン・バージョンのほうは、アラベラ嬢のアルバムで、もう散々聴き尽くした感のある曲なのだが、これのチェロ・ヴァージョンというのも、いやはやこれまたじつにいい。

元々この曲はチェロで書かれたのが最初らしいのだが、本当にため息が出るほど美しい。そして5トラック目のラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」。この曲が、私はこのアルバムの中で1番好き。

涙腺を刺激するような甘い旋律だ。

録音のテイストもじつに素晴らしい。空気感たっぷりの広い空間がはっきり分かる素晴らしさで、教会ばりの豊潤な響き。チェロの音色が青天井でストレスフリーな感覚で上下に伸びきるさまはオーディオマニア心をかなりくすぐる。録音レベルはかなり高い。

私は聴いたことがなかったのだが、N&Fレーベルの作品で、元フィリップス系の録音エンジニアの福井氏とプロデューサーの西脇氏が立ち上げた会社(NとFはお二人の頭文字)のようで、ガラスCDを世界で最初にリリースしたレーベルだそうである。

この録音を聴いた限りでは、かなり優秀な録音スタッフであることも納得できる。

またSACDにも対応していて、サラウンド5.0chにも対応しているから嬉しい限りだ。

三鷹市芸術文化センター「風のホール」での収録のようで、空席でのセッション録音と思われるような豊潤な響きと空間の広さは圧巻だ。

宮田大くんといえば、もちろんロストロポーヴィチ国際コンクールで優勝して一躍時の人だった頃から知っている。

そのときのパリのサル・プレイエルでの演奏姿も拝見したし、NHKでもドキュメンタリー番組を組まれたりしてしっかりと録画して観ていた。いまは水戸室のメンバー(サイトウキネンもかな?)で演奏で接する機会も多く、ずっと応援してきている人だ。

そんな中でも忘れられない公演がある。

小澤さんが癌療養から復帰間もないころ、公演のスケジュールはどんどん組まれるのだけれど、体調不良でドタキャンが多く、いくら小澤さんとはいえ、ファンからのバッシングも多かった時期だった。

水戸室のサントリーホールでの東京公演に行った。この公演で大くんはソリスト独奏で登場していた。

このとき、2階席中央の前方で観ていたのだが、左隣の席にゴローさんがいた。他にも右横に、omiさんとgfyさんがいた記憶がある。そのとき、ゴローさんは、「今年の6月にエム5さんを連れて、ヨーロッパの三大ホールに行くんだよ」と嬉しそうにネタバレしていたのを思いだす。(笑)

その公演は、モーツァルトのディヴェルティメント、ハイドンのチェロ協奏曲第1番、そしてメインが、モーツァルト交響曲第35番「ハフナー」 だった。

普通は休憩後にメインにハフナーを持ってくるのが普通のメニュー。現に水戸芸術館では、小澤さんはこのハフナーをメインで振っている。

ところがこの日の東京公演は、天皇皇后両陛下の天覧コンサートであった。この大切な日に小澤さんは、ハフナーではなくて、当時若干20歳の宮田大くん独奏のハイドンのチェロ協奏曲第1番をトリに持ってくる変更で、皇族観覧の晴れ舞台に、あえて大くんとの演奏を選んだことに、親心というか心意気を感じたものだった。

演奏はもちろん素晴らしかった。

最終楽章のエンディング、全体的に一気にテンポアップして盛り上がっていくところで、小澤さん、床面をドンと踏みつける、まさしく広上淳一ばりのアクションで怒涛のフィナーレ。

思わず背筋がゾクっとしてしまうほどの感動。

そして大歓声と大拍手。

驚いたのは、ご覧になっていた天皇皇后両陛下がその直後に誰よりも率先して立ち上がりになられ、スタンディングオーベーションで拍手。

それを見て誘われるかのように次々と観客が立ち上がり、ついにはホール全体の観客が全員スタンディングオーベーションで讃えたことだった。

この瞬間、私は感動のあまり胸にぐっと来るものがあって、目頭が熱くなってしまったのを覚えている。

小澤さんは全方位に挨拶して、特に天皇皇后両陛下の方には何回も会釈をなされていた。
まさに演奏家と会場の観客がひとつになった瞬間だと思った。

大くんと言えば、そんな熱い想いがいまでも忘れられない。

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