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コンサートホールの音響のしくみと評価 その7 ~そして録音哲学 [コンサートホール&オペラハウス]

この一連の日記連載の落とし処は、結局コンサートホールごとに違う音響、ホールトーンを家庭内で再現したいというところにある。

自分が理想とする録音哲学は、コンサートホールごとに違う音響、アンビエンスをありのまま、その空間を捉えられること。そこには、ホールを一見した時点で、どのポイントに、いかようにマイクをセットすれば、その空間を切り取ってこられるか、ということを判断できること。

そしてミキシング、編集を施した後の録音(ワンポイントでミキシング編集なしのライブストリーミングでも構いません。)は、まさにそのディスクの中に、そのホールの空間、響きの情報が全部詰まっていることが条件になる。

そのディスクを再生さえすれば、部屋の中に、そのコンサートホールの空間が現れる。



ベルリンフィルハーモニーで録音したディスクを再生すれば、部屋の中にベルリンフィルハーモニーのホール空間が現れる。

ウィーン楽友協会で録音したディスクを再生すれば、部屋の中にウィーン楽友協会のホール空間が現れる。

そしてアムステルダム・コンセルトヘボウで録音したディスクを再生すれば、部屋の中にアムステルダム・コンセルトヘボウのホール空間が現れる・・・というように。



家庭内でのオーディオ再生は、ディスクに入っている情報を満遍なく出し尽くすことに専念する。
(これが簡単に言うけど、じつはかなりというか永遠のテーマで、思いっきり大変なことでもある。)

そして余計な小細工をしないこと。

だから部屋に居ながらにして世界のコンサートホールのホール空間を堪能できることが、最終的なラウンディング。

家庭内のオーディオ再生哲学は、まさに数多いるオーディオマニアによる無数のマニアックな考え方があって、それはそれで尊重されるべき。たかが趣味、されど趣味という感じで。個人が楽しむ分には、どんなにお金をかけようが、どういう再生哲学であろうが、個人の思うままに楽しまれればいい。

正解などない世界だと思っている。

自分がいままで積んできた経験を活かせるように考えるなら、ディスクに入っている情報、ホール空間の録音されたアンビエンスはそのまま出力して、それを部屋のルームチューニング、もしくは機器によるEQ調整などで、その音色(周波数)自体を変えないようにすることを心掛けることだろうか。

録音製作サイドのなんらかの意思、哲学を汲み取るべし、という考えがどこかベースにある。

たとえばルームチューニングであれば、あくまで吸音などの響き具合の調整、SP背面への回折音の処理をするぐらいにとどめるぐらいにしておく、というのがポリシー。

というか、あまりゴチャゴチャやるのは自分には向いていないと思う。基本最低限のことを抑えておいて、その限られた制限の中で最大限の努力をする感じ。

自分は、じつは、あのスカイラインのような拡散パネルがあまり好きではない。(笑)あれを部屋にベタベタ貼るのは室内デザインとして好みじゃないのだ。(部分部分はありです。)万遍なく拡散という発想は、コンサートホールやオーディオショップなどの大きな部屋には必要かもしれないが、せいぜい広くて18畳から24畳くらいのオーディオルームに、そんなに必須だろうか?基本は部屋をライブに造って吸音系だけにしたい。

かなり乱暴な意見でしょうか?(笑)
自分は部屋のインテリアはすごく重要視するので。

やはりその前提には、ディスクにはホール空間のアンビエンスがたっぷり詰まっていて、それを加工することなく、余すことなく再生できれば、部屋にそのホール空間が現れるはず。またそうあるために、現場で、しっかりと空間を捉えるように、というお約束を果たされるべきで、部屋はニュートラルと思うからである。


なんか思いっきり偉そうに風呂敷を広げているけど、じゃあ自分に何ができるの?と言ったら、それはそれで、だから自己満足の世界だと最初から言ってるでしょ?(笑)

もちろんこれらのコンサートホールの音響のしくみをそのままオーディオルームに落とし込むことを考えるのもオーディオマニアだったら当然の課題なのだけれど、これは、ちょっと自分の将来の課題にさせてください。

やっぱり自分が部屋を造る段階にならないと真剣に考えないと思うし。(笑)

そういう夢を持ち続けて毎日暮らしいく訳だし。


あと、ちらっと考えてみたのは、建築音響と室内音響では、若干考え方が違うのではないか、と思ってみたこと。

オーディオルームの室内音響では、やはり直方体、シューボックスが基本だし、それを前提として、定在波、フラッターエコーを解消できるように、どのように縦×横×高さの寸法比を決めていくか、とか床の作り方(振動対策)、壁の作り方(共振防止)とか、あと天井の作り方、そして防音、なんかそういう基礎体力のところで考えていかないといけないのでは、といまの自分の知識レベルで分かる範囲。

内装は、漆喰塗りで、瀬川冬樹先生のリスニングルーム理論に基づく、というところか!決まっているのは。。。(笑)

そのときにならないと考えられない。

コンサートホールに通い詰めてわかることは、内装空間を見て、どのような音の流れかを推測できることと、あと自分の耳でその音響の空間的印象を捉えられるということだけである。

基礎体力のところまでは、残念ながらわからない。

だからオーディオルームを造るときは、その基礎体力の部分から考えないといけないので、やっぱりそのときにならないと考えないというか、わからないんじゃないかなぁ、たぶん、と思うのです。(笑)

そんなことを指摘があったときに考えました。



長々とご静聴ありがとうございました。 





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Emil Berliner Studiosによるウィーン楽友協会によるエレーヌ・グリモーのコンチェルトのセッション録音。(ブラームス・コンチェルト2番)


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アムステルダム・コンセルトヘボウではセッション録音のとき、空席だとあまりにライブ過ぎる環境のため、少しでも吸音するために、このような吸音用のカーテンをぶら下げることがあるのだそうだ。






コンサートホールの音響のしくみと評価 その6 [コンサートホール&オペラハウス]

コンサートホールの音響に影響がある要素の中で、じつは一番影響あるのは座席だそうだ。ある意味、一番ホール内で占める面積が大きいし(総面積の30~40%らしい)、ここに座り心地を重要視してクッション性の生地をふんだんに使うと、もろに吸音効果の悪影響が出る。

なので、人が座ったところで人体に隠れるところに吸音のクッション性のものを使って、空席時と着席時で音響の差が出ないように工夫しているのだ。

また、そのため座席のクッションの総張替えなどの作業は、ホール全体の音響特性に大きく影響を与える可能性があり、頻繁にはおこなわず長く使うことが肝要。

バイロイトの椅子は、まさに修行僧のようなケツの痛い座席でした。(笑)

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最後にコンサートホールを語る上で、もうひとつ大切な要素を書いてみる。


それはサイトライン(Sight-Line)、つまり視覚線。

観客席からステージを観たときの眺め、その見え方である。

この要素ってホール設計者の立場からすると、とても、とても大切な要素なのではないか、と思う。我々聴衆の立場からすると、ホールのどこの席に座っても、ステージは全景できちんと見えることが、さもあたりまえのように思っているけれど、それを設計する立場になると、そのあたりまえのことを配慮、実現することって大変なことのように思える。

つい先ごろ、日本の地方のホールで、竣工オープンしたホールで、いきなり座席によって、ステージが1/3から半分くらい見えない「見切り席」が存在して問題になったことがあった。

これは日本じゃ大問題かもしれないのだが、じつはヨーロッパの古いホールでは、ごく日常茶飯事であったりすることなのだ。(笑)

ベルリンフィルハーモニーはステージを正面から見据えると、両端の出っ張ったウィングが妙に格好良かったりするのだが、このウィングのところに座ると、意外とステージが見えにくい。

下の写真はヤノフスキのワーグナー公演のときの自分の座席。左ウィングのところに座ったのだが、ステージの手前が全く見えなかった。そこに合唱団がいたりするので、声もよく聴こえなかった。(笑)


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大昔の人の感性がよくわからないのだけれど(笑)、座席の前に大きな柱が立っていて、全然ステージが見えない座席など、結構あるのだ。

この写真は、ザルツブルクのモーツァルテウムのある座席。(笑)

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そして去年体験したバイロイト音楽祭のバイロイト祝祭劇場の一番最上階の格安席。
なんと自分の座席だった。(笑)

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可哀想なのは、自分の左のご婦人。柱でまったくステージが見えない。結局みなさんの好意で、空いている席に移動できたのだが。。。


こういう座席って、いい座席ブロックでありながら、極端に値段が安かったりして、結構デッドエリアだったりする場合が多いのだ。ヨーロッパの古いホールでは、必ずこういう座席ってある。

スイス・ジュネーブのヴィクトリアホールも自分の座席は、ステージが手摺に隠れて全く見えないデッドエリアだったのだが、チケットを余分に2枚保持していたので、もう1枚のほうで事なきを得たのだ。

もうこういういわく付きの座席は、売らないようにしてほしい、そのようにホール側で販売禁止にする、という配慮があってもいいと思うのだが、どうだろうか。




ホワイエ空間のセンスも自分にとっては大切な要素。ホールの内装についで、とても重要視している。ここもセンスある空間にしてほしい。ホールとは必ずペアの存在なのだ。自分が体験したホール日記に必ずホワイエ空間の写真を入れるのもそんな理由から来ている。

このホールのことを全部知ってほしい、という想いがあって、そのときは単純にホールだけでなく、ホワイエも入れないと、と思うのである。日記を読んでいる読者が、自分もそのホールに行っている感覚になるには、ブレークの時のホワイエも必要と思うからである。

いかにお客さんに居心地のいい空間を提供できるか。このポイントは大きい。



あと設計者サイドからすると、女性トイレのあり方だろうか?(笑)いつもブレークのときの女性トイレの長蛇の列は、他人事ながら可哀想と思ってしまう。これを見事にクリアしているホールって、どこも見たことがないと思う。

素人考えでは、単純に女性トイレの数を大幅に増やすとか、考えられそうだけど、どのホールでも長蛇の列でない女性トイレは見たことがない。

せいぜいブルックナーとかの男性ファンの多い公演の時には女性トイレが空いている、というときくらいか。(笑)逆に、バレエの公演の時は、大変です。反対に女性ファンが圧倒的。やはり美男美女のスタイルのいいバレエダンサーや、バレエ演目自体視覚要素が大きいウエイトを占めるからだろう。

せいぜい20分位のブレークで、すべて片付くのか、いつも可哀想に思ってしまう。ひとつの問題提起ですね。




音楽のコンサートホールって、なにも音響だけがすべてじゃないことも勿論である。音楽を聴く場所なのであるから、音響が悪ければ、そのすべての前提条件が崩れてしまうけれど、それ以外にも内装空間の美しさ、居心地のよさ、などその空間デザイン、空間のありようもとても大切な要素だと思う。

いくら音響が素晴らしくても、内装デザインに品格がないと、萎えてしまうというか、コンサートホールとしてなにか一つ足りないような気がしてしまう。

コンサートホールにとって、音響と内装空間のデザインは、お互い欠かすことのできない必須のペアなものなのだと思う。


自分は、サントリーホールの内装空間が、非常に高級感があって、そのブランドイメージをうまく醸し出している、とても優秀な空間デザインだと思う。サントリーホールの内装空間の高級感やカラーリングのセンス(配色のセンス)は、自分の空間&色彩感覚にかなりビビッと来る感じで、これだけ高級感やブランド感を感じるホールは、国内のホール中では他に類をみないと思う。自分の美的感覚に合うというか、好みなのである。日本のホールでは最高だと思っている。

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以上をもって、コンサートホールの音響の仕組みを俯瞰してまとめてみた。

あくまで全体的に俯瞰する形でのまとめ方であったが、いかがであろうか?

みなさんのお役に立てれれば少しでも幸いである。

ここ数年経験してきたことを、まとめてみたかった。自分の経験で学んだことは自分の財産だと思い、連載という形で紹介したかった。まとめると自分の気持ちもすっきりする。

あと思っていたのは、音響学(建築音響学&室内音響学)の世界って、数式の世界で、コンサートホールのことを詳しく知りたいと思って本を買っても、その中は一面、数学&数式の世界でなかなか入っていけない世界でもある。

多くのファンの方が挫折するのは、そこなんだと思う。

なんか世の中に、数式をいっさい使わず、コンサートホールのことを語れれば、最高にいいな、自分の狙っている層ってそこなんだな、とか思っていたりしていたのだ。

それを、特に観客目線(耳線)で語っている文献は世の中には皆無に等しい。それを実現するには、やはり数の経験が必要。いろいろ山あり谷ありで経験してきて、ちょうどいまの時期が一番熟していて潮時かな、とも思った。


やっぱり神秘的、ミステリアスな部分が多く、建築好きの自分は、特にこのコンサートホール&オペラハウスには、底知れない魅力を感じる。

たとえば、人生初体験のホールを体験するとき、開場前のホワイエで待っているときのあのドキドキ感。そしていざ開場したときに、中に入った瞬間に目の前にそのホール空間が現れたときのあの興奮といったら、なににも変え難い興奮するときである。


新たな出会いを求めながら、これからも世界中のコンサートホールを探訪することだろうと思う。

おまけに、最後の締めの日記をもうひとつ投稿する予定である。ある意味、これが自分の1番言いたいこと!  





コンサートホールの音響のしくみと評価 その5 [コンサートホール&オペラハウス]

シューボックスは、まさにコンサートホールの歴史の元祖というか、基本中の基本の形状。 直方体である。

シューボックスで1番有名なホールは、ウィーン楽友協会(ムジークフェライン)であろう。

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ウィーン楽友協会においては、建築音響学(建物内で音の伝搬について取り扱う学問)の中では、長らく世界最高の音響と称されていて、それはレオ・L・ベネラクという音響学者が著した書籍にそのからくり理論が書いてある。

その音響理論は、極めて単純明快。

いわゆる直方体の形状で、ステージ上の発音体が360度無指向に発する音を、まずはステージ左右側方の壁、そしてステージ背面の壁、そして天井、床などですぐに反射して、客席に音を返すようにできている。(初期反射音、1次反射)

さらに直方体なので、両側の壁、天井、床などがそれぞれ平行面で存在するので、反射を何回も繰り返し、響きが非常に豊かに聴こえる。(残響音、2次,3次などの高次反射)


コンサートホールの音響では、ずばり、この直接音と初期反射音、そして残響音の3つのタイプの音で成り立っている、と言えるのだ。

これは別にシューボックスに限らず、すべてのホール形状において、この3タイプの音が生成され、その合成音を観客は聴いていることになる。

さらにこのホールは木部むき出しの椅子もその反射に一役買っていて、まさに響きに囲まれている感覚に陥るのは、そういう構造そのものに理由がある。シューボックスの音響は音が濃い、というのはそういうところが1番の大きな要因。

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コンサートホールの音響というのは、以下の大きく2つのポイントをイメージできれば、そのホールの空間的印象を大体特徴付けすることができると言われている。


●みかけの音源の幅
●音に包まれた感じ


人間の耳って、反射音(初期反射音&残響音)のその耳への入射角に応じて、感じる音の広がりかたが逐次変わっていくそうで、最大の広がりを感じるときが、耳の真横90度で入ってくるときなのだそうだ。だからホールの形状にもろに影響することになる。

シューボックスの場合だと、側方からの反射音(特に残響音のほうかな。)を得やすい形状なので、音の広がりを感じやすく、みかけの音源の幅は、左右に広がる感じになるし、音に包まれた感じは、最高の状態に感じやすいのかもしれない。


ウィーン楽友協会は、その頂点に立つホールなのだろう。

さらには。。。


壁には金色の芸術的な彫刻の数々。裸婦の女性彫刻像、そして華麗な天井画の数々。
これらの凹凸は、音の反射音の拡散に一役買っている。

反射音の拡散のメリットというのは、壁に凹凸がないと、反射音の行き先が音楽に応じて、その方向が偏ったりして、ホールのある偏った部分にしか反射音が行き渡らないことを防ぐためである。

つまり反射音の行き先を拡散させることで、ホール内に均一の密度分布で反射音を行き渡らせることに目的がある。

むかし自分の理解は、凹凸で拡散させることで、高域の煌びやかな音色が得られる、という理解をしていたこともあったが、もちろんそれもあるかもしれないが、やはり反射音をホール内に均一な密度分布にするために行き先を拡散させる、という考え方のほうが正解なのだと思う。

この考え方は、現代のホール設計でも受け継がれている。

さすがに彫刻は彫らないけれど、意識的に壁面に凹凸を造ったり、斜線でのスリットの溝を作ったりして、反射音を拡散させている。目的は同じである。

ただ現代のホールの場合、その凹凸は内装空間の美的センス、感覚を損なうものでもあるので、結構内装デザインとのトレードオフみたいなところがあって、内装空間の美しさを損なわない程度につけることが肝要か、と思われる。

結構露骨だなぁと思ったのは、ライプツィヒのケヴァントハウスのワインヤードのホール。

世界最古のホールとして有名なホールだが(もちろん現在の姿はリニューアル。)、壁面にはかなり露骨な凹凸が設けられていた。でも音響は最高に素晴らしかった。

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日本のホールで、この反射音の拡散という点で印象的だったのが、京都コンサートホール。
なんとホールの天井に張り巡らされているこの強烈な拡散の仕掛け。

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斜めに切断された2000個の立方体がこのように天井の中心全面を覆っているのだ!



ウィーン楽友協会には、他のホールでは珍しく上部に採光窓が設置されている。この採光窓の存在が、音のヌケ感に寄与しているという理論も、このベネラク氏の独自理論でもある。

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またウィーン楽友協会では、床下に大きな空洞を設けていて天井も全体が釣り天井で空間があって、コントラバスのように低音がよく響くように作ってあるのだそうだ。この吊り天井には砂が大量に敷き詰められていて、響きを調整してるらしい。

このホールのもうひとつの大きな特徴は、ドカドカなる木の床。ステージも木の床だ。この床のステージの柔らかさでオケがいっせいに鳴るときに、その床振動でドッと音がホール内を振動伝達して音化けする、ホール鳴りする原因なのだろう。

「ホールは楽器です」という名文句はここから来ているのだと思う。床は固すぎてもダメで難しいですね。


このようにシューボックスってその構造&音響理論が極めて単純明快。

そのもうひとつ有名なシューボックスのホールを紹介しておこう。


アムステルダム・コンセルトヘボウ

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ベルリンフィルハーモニーの幾何学的なデザインの美しさ、ウィーンムジークフェラインの黄金で煌びやかな空間、とはまた違ったコンセルトヘボウ独特の美しさがある。ベージュとレッドを貴重としたツートンカラーの内装空間で非常に美しいホールである。落ち着いた大人の空間という感じですね。


ステージの高さが異常に高くて、最前列の人は首が痛くなるぐらい。(笑)

ホールの音の印象は、木造らしい非常にマイルドな暖色系の優しい音がする。弦楽器の音色や木管の音色を聴いているとその優しい柔らかい音がはっきり認識できる。そして響きがとても豊かで滞空時間が長い。空間も広く感じてスケール感のある雄大なサウンドに聴こえる。ライブ録音に向いている音響だと思う。

ご存知、Polyhymnia International BVのホームグラウンドである。




そしてワインヤードのホール。

ワインヤードはステージを観客席が取り巻いているので、ステージ上の音が反射するための壁が遠すぎて、反射音の恩恵を得ることが難しいのである。また観客で取り囲まれているということは、音を人が吸ってしまう(正確には服が吸う。)というデメリットもある。

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音響的に非常にデメリットが多く、直接音主体の音響と言わざるを得ず、その音響設計はかなり工夫が必要で難しいと思う。

1番最初のワインヤードであったベルリンフィルハーモニーも、創設当時は、その音響が思わしくなく、カラヤンはレコーディングには、このホールを使わず、ベルリン郊外のダーレムにあるベルリン・イエスキリスト教会を使い続けたほどだ。

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その後、ステージの高さを変えたり、天井に反響板を設けたりすることで、ようやくカラヤンがその音響に満足できるようになったのは、その10年後だとも言われている。



これは自分が思うことなのだが、ベルリンフィルハーモニーに代表される最初の頃のワインヤードは、まさにステージが観客席のど真ん中近くにある感じなのだが、これが時代が経つにつれて、ステージがホールの端に位置するようになって、いわゆるシューボックスを拡張型にしたようなワインヤードのホールが主流になっていったように思う。

これは自分の推測でしかないけれど、ステージがホールのど真ん中にあると、まさしく反射が得られにくくて、音響的デメリットが大きいので、もっとホールの端に寄せて、シューボックスと同じようにステージからの発音に対して、初期反射音が得やすいようにしたのではないか、と推測する。


つまりシューボックスのいいところを取り入れたワインヤードというような感じ。

東京赤坂のサントリーホールは、まさにベルリンフィルハーモニーを参考にして、カラヤンの指導の下造られたホールである。サントリーホールの場合、ステージの位置がホールの端になって、完璧なワインヤードというよりは、ややシューボックスを拡張型にしたワインヤードみたいになっているところに特徴がある。

現代の新しいワインヤードのホールはみんなステージがホールの端にあるように思える。




ワインヤードでの反射音を得る仕組みというのは、ひとつの工夫がある。

シューボックスと違って、反射する壁がないので、下図(札幌コンサートホールKitara)のように、客席をいくつかのブロック分けにして、各々に段差をつける。 そのときにできる客席のテラス壁を初期反射音に使用するのである。


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大半のワインヤードは、このようにして反射音を造っている。


日本のコンサートのホールの中でも、抜群のアコースティック(音響)を誇るミューザ川崎を例にとって、ワインヤード方式の最新のホールの場合を説明してみよう。

ミューザ川崎は、その内装空間のデザインがかなり斬新で、一見みると左右非対称に見える奇抜なデザインである。でもこのような斬新なデザインにも、やはりワインヤードの音響設計の基本となる施しが確認されるのだ。



ミューザ川崎の場合、音響設計のポイントは、つぎの3つにある。(白いのが反響板)
(あくまで自分の推測です。聞いた訳じゃありません。写真を眺めながら推測しました。)

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①ステージ,1階席平土間を取り囲む反響板。
②上階席の観客席を左右交差しながら挿し込む形の反響板。
③そして 天井の真ん中の反響板をさらに同心円状に取り囲む反響板。

特に②のデザインの考え方とその効果が洒落てますよね。

①は、まずステージおよび1階席平土間をぐるっと取り囲むことで、ステージからの音を確実にこの囲いの中に追いやる役目を果たしている。

②は、一見左右非対象に見える斬新なデザインの核心をつくポイントと見ていて、このように配置することで、その反響パネルの下部に位置する座席に反射音を返しているのである。

標準的な従来のワインヤードの座席をブロック化したときにつける段差のテラス部分に相当するところが、この②の役目なのだと思う。放っておくとそのままホール空間中に漂ってしまう音の流れを、この②の反射板できちんと客席に返す、という原則が成り立っているのだ。

そして③の天井の反響板。ここのホールはかなりゴッツイ造りになっていて、その役割は大きい。これはホール上方に上がってきた音を、下方に返す役割なのだが、真ん中の反響板を中心に、さらにそれを同心円状に反響板が取り巻いているのだ。

こうすることで、ステージの音をホール全体に均一密度で拡散させているという大きな役割を果たしている。

さらに、この白い反響板には、斜めに等間隔でスリットが入っていて、これは、反射音を拡散させるため。目的は、他ホール同様に、反射音の方向を、偏ることなく、ホール全体に万遍なく均一密度に分布させるために、反射音の行先を拡散させるのである。



ミューザのホール内装の上からの全景の写真をみると、この白い反響板が、いわゆるスパイラル状になっているようにみえて、それが原因なのか、ステージからの音が、トルネードのように上に巻き上がるような音の流れがあるんじゃないか、とも推測したことがある。現に4階で聴いたことも何回もあるのだが、恐ろしいまでにステージの音が明瞭に聴こえてきて、うわぁ、こんな高くても音がきちんと上がってくるんだな、と感心したものだった。

あと、ミューザにはじめて足を踏み入れたときに1番最初に目について驚いたのは、そのステージの低さであった。他のホールでステージを見慣れている眼からすると、そのステージの低さはとても驚きで新鮮な感じだった。

真意はわからないけれど、おそらくステージが従来通り高いと、1階席平土間の観客席の頭の上を音が飛んで行ってしまうので、それ対策用に低くしてあるのか?と思ってみたりしている。


ミューザのような天井の仕掛けは、パリの新ホールであるフィルハーモニー・ド・パリでも見かけることができた。

これがその写真。

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天井の真ん中の反響板を中心に、ブーメラン形状の反響板が、同心円状にぐるりと取り巻いているのである。役割は、ミューザのときと同じで、ステージの音をホール全体に均一密度で拡散させるため。

ベルリンフィルハーモニーやサントリーホールなどは草創期時代の古いワインヤードのホールは、反響板は、ステージ上に浮雲という形でぶら下がっているだけ。 ホール全体に、万遍なくというのは、なかなか厳しく、いまの最新鋭ホールと比較すると、どうしても音響ムラというのができてしまう。

最新のホールは、1階席平土間に音響ムラがないのは、これが原因と考えている。


フィルハーモニー・ド・パリは、とてもユニークな内装空間のホールで、いかにもフランス人好みのコンサートホール。

ここもワインヤードのホールである。

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左右非対称のアシンメトリーな空間なのだが、不思議と音響バランスは偏っていない。

ホール形状タイプからするとRAV(reflector in acoustic volume)というジャンルにカテゴライズされ、多数のぶらさがっている反響板をうまく利用して、その音響を整えている方式である。

明瞭性と残響感を両立して達成するために、明瞭性に相当する初期反射音は、たくさんぶさがっているブーメラン型の反響板からの反射で生成し、残響感のほうは、そのブーメラン反響板とさらにその背後、裏側にある空間との間で生成する残響音で造るのだそうだ。

いすれにせよ、ブーメラン反響板がキーポイントということである。

実体験したが、素晴らしい音響であった。ステージの音のエネルギー感がしっかりどこの座席にも届く、という大前提が成り立っているように思えた。



ブラームスの故郷であるドイツのハンブルグにオープンしたばかりの話題の新ホール「エルプルフィルハーモニー・ハンブルグ」もそんな最新鋭のワインヤードのホールだ。

元北ドイツ放送響(NDR)、いまのNDRエルプフィルハーモニーの本拠地である。

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実体験はまだなので、実際どのような音響なのかは語れないが、写真を見る限り、大体いままで説明した考え方に準拠しているように思える。

流線型ではあるけれど、客席がブロック単位に区分けされていて(というか1ラインに連なっている感じだが)、その段差にテラス部分が存在して、それを初期反射音を得るために利用していることは確実であろう。

そして、そのテラス壁の壁面や、ホールの至るところの壁面には、「ホワイトスキン」と呼ばれる貝殻形状をした凹凸が設けられている。これによって反射音の行き先を拡散させて、ホール内に同一密度分布で反射音を行き渡らせようというような仕組みなのだと思う。




ドイツ・ベルリンに一風変わったホールが誕生した。

これはご逝去したフランスの作曲家、指揮者であるピエール・ブーレーズを冠にしたピエール・ブーレーズ・ホールである。

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今年の3月にオープン。ベルリン国立歌劇場の近くらしい。ホールの形状はシューボックスなのだが、客席がワインヤードという特殊なスタイル。

正確には、ステージの回りに客席を楕円形状にレイアウトし、それを四角いホールの中心に配置する、という620席のホール。 新規にホールを建てるのではなく、すでに存在する建物中にホールを新設する、というアイデアである。

バレンボイムが中心となるバレンボイム・サイード・アカデミーの本拠地。 対立するアラブ諸国とイスラエルの両方から才能ある若い音楽学生を集めて運営されてるオケだそうだ。

とてもユニークなホールであるが、写真見た目、直接音主体のホールのように感じるのだが、建物の器は直方体のシューボックスなので、音の反射などは、そのルールに準ずるのであろう。

でもこれもある意味立派なワインヤードである。(笑)ぜひ体験してみたいホールだ。





ワインヤードのホールでは、このようにホールの形状から反射音(響き)を得ることが難しいので、音響設計にノウハウがいる。

でも、その音響特性の最大の魅力は、やはりホールの大容積に応じたダイナミックレンジの広さだと思う。残響時間の長いスケール感の大きい音響で大編成の大曲に向いている。大音量でも飽和しない。

オケの発音能力も試される。パワフル型で、力量のあるオケでないと、このホール形状を征服することは難しいのだろう。ホールは、そこのレジデンス・オーケストラが育てるもの。

また最近の需要から、収容人数のキャパが大きくないといけない、視認性の問題、みんながステージと近くないといけなく、オケとの一体感もこのワインヤードならではのこと。もう時代の流れは、そういう方向なのだと思う。


また現代の最新の音響設計では、ワインヤードとはいえ、十分な響きが得られるように工夫が重ねられ、昔、言われているほどデメリットはないのだと思う。そのため我々素人目では、その仕組み・原理を理解するのは難しいのかも?

最近のホールの内装空間を見ると、自分の理解を超えていて、つくづくそう思うのだ。自分も歳なんだなぁという感じで。(笑)



東京文化会館の扇形のホールは、これまた特徴的な音響設計理論による。
日本が誇る偉大なる建築家、前川國男さんの設計である。

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ホールの形状は六角形。ホールのタイプ別としては、いわゆる扇型のコンサートホール。

この扇形状は他のホールにはないほど両壁面が開いたもので、壁面間での反射音の行き来が少なくなることを意味していて、このこともこのホールの音の響きを特徴づけている。

人間の耳というのは、両サイドの真横から音(響き)が入ってくると、1番音の広がりを感じる特性があるので、シューボックスなどは、まさにそのような特性を生かす側方からの反射音で響きを造る方式なのだが、この扇形はそういう壁が開いているので、側方からの反射音が期待できないのだ。

ここのホールの直接音と初期反射音などの響きは、前方から直接音が来ると同時に、タイミングが遅れて、反射音が、これまた前方からやってくる、というのが、大きな音の流れの特徴なのだ。その役割を担っているのが、ステージ背面から天井のほうに大きく連なっているある大きな反響板。


だから正直響きが豊かなホールというよりは、ある意味デッドな部類なのかもしれない。

ホールのステージ上の音源に対して、座席で聴いていると、その”音源(音像)のみかけの幅”がどれくらいか、というのはひとつのそのホールの音響の特徴を現すパラメータでもある。

シューボックスのように音源に対して、側方からの反射音がつくられるホールであれば、音源(音像)のみかけの幅は左右に広がるし、逆に側方からの反射音が期待できないホールでは、音源の幅はかぎりなく音源(音像)そのものの幅が狭いものになる。


なので、前方から直接音、反射音がやってくるというのは、響きで音像が広がらず、コンパクトにしかし奥行き方向に響きができるので音像が立体的に感じられる、というこのホール独特な音響といえるのだと思う。

ここのホール愛好家間では、最上階席の5階が1番音がいいという噂がある。(自分はまだ未体験)



以上が大きく3つのタイプのホール形状のコンサートホールの音響理論を概念的に書いてみた。

コンサートホールで大切なことは、なにも音響だけではないのだ。他にも、もっともっと大切な要素がある。

次回は、それらについて書いてみたい。






コンサートホールの音響のしくみと評価 その4 [コンサートホール&オペラハウス]

コンサートホールの音響のしくみは、要は、ステージ上での発音体が発する音が、いわゆる”球面波”という形で、360度無指向に広がっていく音を、ホールの形状、容積、壁の材質、反射板などの仕掛けなどによって、いかに客席にその音の流れを持っていくか、ということころに、設計のポイントがあるのではないか、と思う。

大昔の時代のホールに、そういう理解、意志があったかどうかは不明だが、でも現代の最新鋭のホール設計は、そういう考えを基に設計されていると思う。

自分がよく神秘・ミステリーだと思っていることに、ヨーロッパの素晴らしいホールの内装空間は、当時建築音響理論がどこまで理解されていたか、というのは不明なのだけれど、不思議と理に適っているというか、大昔の人が考えた内装空間は、まさに素晴らしい音響を生み出す要因、ノウハウが、知らず知らずに、あちこちに散りばめられていることなのだ。

たとえばウィーン楽友協会の内装空間に代表されるような凹凸の激しい煌びやかな彫刻。

これは結局、その音響効果としては、反射音の方向を拡散させる意味合いがあるのだが、大昔の当時に、そんなことを考えて、この彫刻を彫ったのであろうか?

やっぱりキリスト教に代表されるような神聖な場所という宗教的な意味合いが強かった、というのが真の理由ではないだろうか?ヨーロッパの大昔のホールは、コンサートホールもオペラハウスもこの内装の彫刻は一種の芸術要素が強いのだと思う。

クラシック文化の浅いアメリカにコンサートホールを新設しようという動きがあったとき、その前調査としてヨーロッパの音響のいい有名なホールを片っ端から、その残響時間を測定していったら、不思議とほとんどのホールが、2.0秒前後の残響時間だったというミステリー。


結局、現代の新しいホールを建設していくにあたっても、この大昔の遺産であるヨーロッパのホールの偶然のミステリーを後付の形で理論付けして、今尚、それを基準にして設計されているのだ。


なんと神秘的で、ミステリーなことだろう!



自分は、ヨーロッパのコンサートホールには、そういう神秘的でミステリアスなところが潜んでいて、単に技術、理論では語れないそういう歴史の創造物であることに、たまらなく魅力を感じるのだ。


コンサートホールの形状のタイプには、ワインヤード(現代の呼称はヴィンヤード)、シューボックス、扇形と様々な形状がある。



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ベルリンフィルハーモニー(ワインヤード)


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ウィーン楽友協会(シューボックス)


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アムステルダム・コンセルトヘボウ(シューボックス)


コンサートホールの歴史を紐解いていくと、その原点にあるのはシューボックスのホールだと思う。

シューボックスは、まさに直方体の形状で、家庭内のオーディオルームも直方体。ある意味音響理論(建築音響&室内音響)を考える上では、基本中の基本の形状なのだ。

これから説明するが、シューボックスの音響理論はとても単純明快で、わかりやすくて、いい音響を簡単に得やすい仕組みでもある。

でも縦長なので、後方の座席になるとステージが見えにくいという視認性の問題もある。そういう問題を解決するためにも後方に行くにつれて傾斜をつけるところも多いが、アムステルダム・コンセルトヘボウになると全くの平坦なので、後方の座席のステージの見えにくさは問題でもある。


またシューボックスは収容人数のキャパが小さく、大観客数を収容できない。


こういう背景が、現代のホール需要に合わなくなってきた。


それに対抗してできたのが、ワインヤードのホールで、カラヤンが造ったベルリンフィルハーモニーがその最初になる。観客席がステージを取り巻くように配置されていて、まるでぶどう畑のようなので、ワインヤードという名称がつけられた。

ワインヤードのホールは、その音響の仕組みは、かなり工夫が必要で、音響的デメリットも多いのだが、なによりもステージと観客の距離感が近いこと、それによってコンサートともに観客との一体感が得られやすい構造であること、そして大人数を収容できること。こういった点から、現在の世界の最新鋭のホールは、ほとんどワインヤードのスタイルのホールではないかと思う。

日本では、意外や存在するホールの数からすると、首都圏をみても圧倒的にシューボックスか扇形が多くて、そもそも昔はクラシックの演奏会もずっと多目的ホールで兼用だったので、クラシック専用というホールというのが少なかった。だから意外やワインヤードは少ないと思う。

日本でクラシック専用ホールで、ワインヤードなのは、サントリーホール、ミューザ川崎、大阪シンフォニーホール、そして札幌コンサートホールKitara、愛知芸術劇場コンサートホールくらいだ、すぐ思いつくのは。


まずそのシューボックスから説明していきたい。 





コンサートホールの音響のしくみと評価 その3 [コンサートホール&オペラハウス]

⑥帯域バランス

このパラメータは自分がコンサートホールでオーケストラを聴くときに、結構重要なポイントとしているところ。もちろんホールの音響特性が、高域に寄っていたり、逆に低域に寄っていたりすると、オケが発している帯域バランスがどう正しいのかわからないので、もちろんその器、ホールの特性はフラットであってほしいのはあたりまえである。

自分はオーケストラサウンドは、やはり低弦楽器などの低音ががっちりと土台を築いているサウンドが好みである。

弦の厚みなどは、この低音が豊かであると、その上の乗る様々な帯域のサウンドが折り重なって、じつに気持ちのいい和声感のあるサウンドになる。


低音の不足しているオーケストラサウンドは、なんか音痩せしてる感じで、気持ちよさ、安定感を感じないのだ。

古来より豊かな低音や低い周波数での揺らぎは生理的快感をもたらすと言われ、安定しているなにか神聖な立派なものを聴いている、という豊かなイメージを象徴する帯域なのである。

低域は和声の根本を成す帯域だと思っている。

器であるホールで、そのように低域寄りにするのは邪道の権化で、真のオケの技量がわからなくなってしまう。その点でもホールの帯域バランスはニュートラルであるべき。


ときどき、ホールによってオケサウンドがハイ上がり(高域寄り)に聴こえたりすることも多く、そういう場合は、「ここのホールの音響は耳にキツイ」とか、すぐホールのせいにせず、まずオケの調子を疑うべし。

自分の座席からすると低弦楽器群が聴こえにくいポジションであったりして、それが原因であったりもする。やはりオーケストラは音響バランス的に真正面から聴くべきなのだ。



⑦再生空間のダイナミックレンジ、スケール感


大編成のオーケストラを聴くときに感動する要因は、いわゆるそのスケール感の大きさによるものだと思う。

再生空間の広さ、ダイナミックレンジの広さ、この要素は、生演奏ならではのメリットで、オーディオルームで実現することが厳しい壁でもある。

特に低域のリアルな再現性は舌を巻く。

いつも生演奏を聴くたびに思うのは、この分厚い低域の音をオーディオで再現するのはとても無理だなぁ、と思うこと。

低域の波形というのは、波長がとても長いので、再生する空間(部屋)の容積が広くないと十分に再生しきれないからである。コンサートホールの広さだから実現可能なパラメータといってもいい。


スケール感の大きさは、どのように達成されるパラメータなのか?

それは、第一に発音体のオケの大音量の発音能力。そして第二に、ホールの容積によるものだと思っている。大編成で発音能力の高いオケに、容積の狭いホールで演奏してもらうと、いわゆるサチルという、つまり音がクリップ、飽和してしまう現象が起こってしまう。発音能力の高い大音量のオケは、やはり容積の広いホールで演奏するべきなのだ。

発音体の規模にあった適切なホールの容積というのは、かならず存在する。

建築音響的には、容積が広いと、残響時間が長くなる、という音響特性がある。

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残響時間が長くなると、当然音量を発したときに、全体的に音量的な容量が増えて聴感上のスケール感が増すような印象を受ける。

代表的な例では、天井の高いホールであろう。
もっと身近な例で言えば、教会。

教会はまさに天井がとめどもなく高くて、音を発すると残響時間がとても長い。

そういう意味で、たとえば天井の高いホールでオケを鳴らしたときは、そのスケール感がとめどもなく大きく感じられ、これもコンサートホールの大切なパラメータなのだと思う。

自分は、よく自分だけの解釈なのだが、シューボックスの音響は、反射する仕組みが容易で、とても響きが濃い、音の密度空間が濃い音響空間であるのに対して、ワインヤードは反射する仕組みの実現は、難しいかもしれないが、その反面、その空間容積の広さ、および直接音主体の音の流れから、大編成などでその空間を漂うスケール感、その空間の広がりを感じるようなサウンド(空間感)が、その音響の真骨頂なのだという理解の仕方をしているのだ。

そういう音響空間の特徴があるので、比較的容積の狭いシューボックスは、中規模から小規模に至るアンサンブルのオーケストラの演奏に適しているし、逆に容積の広いワインヤードは、大編成のオーケストラで大曲を演奏するのに適している、と言えると思う。


このホールの容積とオケの規模の問題は、単にサウンド・クオリティ的な要素だけでなく、そこで奏でられる音楽の歴史とともに歩んできたものと言える。



ここで少し自分が調べてみたことを書いてみる。



音楽最古の時代は、バッハなどのバロック音楽の演奏の場、これはまさに教会。

そして18世紀の古典派ロマン派の時代は一般大衆が音楽を楽しむ時代になってコンサートホールという発想が出てくる。この頃の古典派ロマン派の音楽は、和声や和音が重要視され、特にロマン派の音楽は、情緒的で感情表現で聴く者の心に訴えるものが多かった。

なので、それに合せてコンサートホールも細部の表現よりも響きの美しさを重視するホールが造られたのだ。この時代の代表的なホールがウィーン楽友協会などに代表されるシューボックスのホール。コンサートホール草創期の時代。

そしてその後は、後期ロマン派。19世紀後半から20世紀。ドイツ、オーストリアなどのドイツ圏。ワーグナーやリスト、シューマンそしてマーラーやブルックナー。

彼らの音楽のオーケストラの巨大化や対位法を採用するなどのポリフォニックな音楽手法が演奏会場のあり方にも一石を投じた。

古典派やロマン派の音楽では細部よりも全体の流れや響きを重視した演奏会場が好まれたのだが、後期ロマン派ではオーケストラの大型化で大音量や対位法の細部を聴ける演奏会場の必要性が出てきた。 このときに造られたアムステルダム・コンセルトヘボウはシューボックスなのだが、より大きな容積があり後期ロマン派の音楽に適合していると言えたし、ワインヤードのベルリンフィルハーモニーは、容積が大きいので音の飽和が少なく,シューボックスよりは響きが抑えてあるので演奏の細部がわかりやすく後期ロマン派に適したホールと言えるのだ。

つまりシューボックスとワインヤードで、そのホールで演奏するのに適したクラシック音楽の種類も違ってきて、もとはと言えば時代の流れに沿って、この奏でる音楽の種類が変わってきて、シューボックスやワインヤードというコンサートホールの形状を造ってきたのだということを言いたかった。


でも既述のように、容積が大き過ぎると、ロングパスエコーの問題もあり、逆に広すぎてもダメ。反射音とのバランスも考え、音密度を高くしつつも、それでいてスケール感がでる容積という条件を折衷するのもコンサートホールの大切なファクターなのだと思う。


以上の7項目が、自分がコンサートホールの音響をジャッジする主なポイント。いままでの経験による自分の総決算で、大体ホールの音響を決めるポイントは、ここら辺にあるのではないかな、と感じるところ。

でもこれからもどんどん経験していくので、新たに発見することも多し。

その都度日記にしていきます。

つぎにコンサートホールの音響の仕組みについて、自分の理解の範囲で書いてみます。






コンサートホールの音響のしくみと評価 その2 [コンサートホール&オペラハウス]

④直接音と響き(間接音)の対バランス比


コンサートホールの座席でステージの音を聴く場合、必ずステージからの直接音と、壁、天井、床などからの反射音(間接音:響き)との合成音を聴いていることになる。

この直接音と響きの関係はホールの形状によって、いろいろシチュエーションが違ってくる。

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直接音と響きの対バランス比というと、大きく、その量の対比と、時間遅れの対比の両方が考えられるか、と思う。


まず量の対比。

これは座席選びに大きく起因してくる。

ステージに近く前方の座席であると(我々仲間のオーディオ業界では、これを”かぶりつき”という(笑))、ステージからの直接音は強烈に浴びるかもしれないが、天井、壁からは遠いので、反射音(響き)は聴こえにくい。

かぶりつきの欠点は、ステージ全体の音をバランスよく俯瞰できないことで、自分の座席に近いところの楽器は、強烈に聴こえるかもしれないが、少し遠いステージ位置になると、その楽器は遠く感じて、全体の音響バランスが悪く聴こえることだ。

天井、両側壁、床からの響きを感じるようになるには、やはり中盤から後方の座席がいい。
そのホール固有のホールトーンを感じるには、そのほうがいい。

直接音と響きの程よいバランス比を考えると、前方席より、中ほどの座席がいいだろう。

でもこれにはトレードオフがある。中盤から後方になるにつれて、響きが豊富になるにつれて、ステージからの直接音が不明瞭になること。音像が遠い感じで、甘くなり、音の迫力、臨場感、鮮度感がなくなる。

後ろになればなるほど、響き過多になる反面、直接音が不明瞭で全体のサウンドに迫力がなくなるのだ。ホールトーンをたくさん味わえる半面、そんなデメリットがある。

いわゆる”響きに音像が埋没する”、という表現が妙を得ている。

かつてサントリーホールの2階席右ブロックの上階の後方座席で、ポリーニのピアノリサイタルを聴いたときのこと。

まさに、ここの響きが豊富すぎて、音像が埋没するという感じで、ポリーニが強打の連打を繰り返すと、打鍵の単音の響きがどんどん連なり、まさに響きの混濁状態になって、とても聴いていられない経験をしたことがあった。

もうこれは個人の好みで、座席をカット&トライで試してみて、その直接音と響きの対バランスの好みを探るしかない。

自分も最初の頃は、理想論を突き詰め、直接音と響きを6:4くらいが好みかな、とも思ったが、最近はどうも自分の好みが確立されてきた。


やっぱり直接音が大音量で、明瞭であること。腹にズシンと響いてくるサウンドが好きだということがわかってきた。中段から後方の座席では、全体の音響バランスはいいかもしれないけれど、直接音があまりに不明瞭で、なんといっても迫力がないというか、サウンド自体がこじんまりしていて、聴いていて真に感動できなくて、欲求不満になることがわかってきたのだ。

やや前方寄りの座席で、それでいて響きも感じられる座席というのが自分の好みなのかな、と感じる。

もちろんケースバイケースもある。

自分が贔屓にして応援している女性ヴァイオリニストなどのソリストを間近で観てみたいという視覚優先の場合は、やっぱりかぶりつきの最前列で聴きたい願望がある。

演奏家を観るという視覚の問題も、コンサートにとっては大切な要素だからである。

あとオペラ歌手などの声もののコンサートの場合も、前方かぶりつきがいいと自分は思っている。声ってとても指向性が強いので、やはり正面から聴いたほうがいいと思うし、前方のほうが声の発生エネルギーも大きいし、腹に響いていい。

歌手の表情をしっかり拝めるのもいい。

そうすると、自分の好みは、中段から前方にかけての座席なのかな、と感じる昨今である。

ステージ両サイドの上階席が音響的にいいホールが結構多い。直接音と響きのバランスが非常にいいからである。大音量で、明瞭な直接音。それに対して壁、天井に近いので、反射音などの響きも感じやすいという理由からだと推測する。

でも自分の中には、オーケストラのサウンドの聴感バランス的には、端からではなく、やはりオケの真正面から聴くべし、という鉄則みたいなものを持っていて、ここが音響がいいという噂でも、やはり真正面から聴きたい、という信念がある。


ワインヤードのステージ裏のいわゆるP席と呼ばれる座席シートは、自分からはあまり積極的に取らない座席だ。一度ベルリンフィルハーモニーで座ったときに、聴いたオケのサウンドは、ステージ上の楽器の配置で近い順に聴こえるので、いわゆる真正面から聴いているのとは反対に逆から聴いているように聴こえるのだ。最後尾列の打楽器や金管の音が間近に聴こえて、後から弦楽器が聴こえてくるような感じでかなり違和感があった。

それ以来、あまり自分好みではないな、と感じた。

この座席は、やはり指揮者の表情を真正面から見たい、自分がオケ奏者になった気分で、ホールを見渡したいという動機が優先される人向きなのでは、と感じるところがある。




つぎに時間遅れの対比。

これは、個人の好みに影響される部分もあるが、それ以前に、この項目に関しては、ひとつのルールが音響の世界に存在する。座席選び以上に、そのホールの音響特性に依存するところが大きい。

これは直接音に対して、響きというのは、人が気持ちよく感じる遅れ時間というのが、データ上(というか実測上)決まっていて、いいホールほどその値になっているという神話があるのだ。(神話というより実測経験値)

響きのいいホール、つまり人が音響がいいと感じるホールは、直接音に対して、その初期反射音(直接音に対して、最初に反射する1次の反射音)が20~50msec以内の遅れになっている場合が多いということ。そして残響時間が、2.0~2.2秒。

これ以上、反射音が遅れると、逆に、わずらわしいエコー(ロングパスエコー)になって、ホール音響の欠点になってしまう。

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これはホールの容積に起因するところが大きい。ホールの容積が広いと、ステージ上の直接音に対して、反射する壁が遠すぎて、反射音が大幅に遅れてしまいエコーになってしまう。

やっぱり音響上の理由から、発音体の規模に対して、その適切なホール容積というのがある。
オーケストラのための大ホール、そして室内楽のための小ホールというように。

ホールの容積の問題は、響きのエネルギーバランスにも影響を与えると思う。

たとえば同じシューボックスでもウィーン楽友協会とアムステルダム・コンセルトヘボウ。

どちらもシューボックスの音響の優れたホールで世界屈指だが、その違いは幅の狭さ&縦長の違いにある。

ムジークフェラインのほうが縦長である。

これは反射音の響きの到達する時間(響きの長さ)と濃さ(密度)にも影響してくるのではないか、と思う。

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アムステルダム・コンセルトヘボウのように、容積が横に広いと、壁で反射された音が観客席に到達するまでに、到達時間は遅いし、ある程度エネルギーが減衰するはずである。

なので、響きの密度は薄くて、残響時間が長い。それは落ち着いた整然とされた秩序ある響きのように感じる。


ムジークフェラインの場合、縦長でその容積が横に狭いので、逆に、観客席への到達時間は速くて、その反射音が十分に減衰する前に客席に到達するのでエネルギーが高い。容積が狭いので、密度が濃いが、平行面での反射回数も多く、その分、壁で吸音される回数も多いということになるので、減衰も早く残響時間が短い。音がかなり濃くてホール自体が共鳴しているかのようなぶ厚い響き(でも響きの長さは短い)になる原因になっているのだと思う。




容積が小さいと反射音のエネルギーは大きくて、伝播時間(到達時間)も短くて、密度も濃いのだが、何回も反射を繰り返すので、壁での吸音が多くなり、反射音のエネルギーの減衰が早い。(ウィーン楽友協会の音響の場合)


逆に容積が大きいと反射音のエネルギーは小さくて、伝播時間(到達時間)が長くなり、密度も薄くなるけれど、反射の回数は少ないので(吸音少なし)、エネルギーの減衰が遅い。(アムステルダム・コンセルトヘボウの音響の場合)


もっと感覚的な表現で言うと、上図のスペクトラムを見てもらえば、ウィーン楽友協会は響きが濃くてドッと一気にやってくる感じで、アムステルダム・コンセルトヘボウの響きは穏やかな響き具合で、滞空時間が長い感じというのがイメージでわかるだろう。(でもコンセルトヘボウも実際に聴いたときは響きはとても豊かでした。)





普段オケを聴いているときに、直接音に対して、最初から響きが混入している状態というより、直接音に対して、やや響きが遅れてくる感じで、直接音を強化する感じの程よい遅れ具合、分離し過ぎない程度の遅れ具合が、気持ちのいい、音響のいいホールと言えるのだと思う。




⑤音色と響きの質感(硬質&軟質)


これもホールの音響を感じ取る上では、とても大切なファクターである。
もう聴いた感じの印象そのもので、ライブ&デッドに次いで、わかりやすい印象要素だと思う。


音色や響きの質を決めているのは、ホールの壁の材質なのではないか、と思っている。簡単に言えば、石作りのホールと木造ホールでは、その音色と響きの質では、ずいぶんその印象が違う。

ずばり石作りのホールは、とても硬質な音質、響きで、木造のホールはとても暖かい柔らかい音質、響きの音がする。

石のホールは、ピアノの音でも、ピンと張り詰めたような音で、響きもワンワン響く感じでかなり残響感が豊富。

第1に石の空間は、壁での吸音がなくて反射オンリーなので、エネルギーロスもなく、響きの滞空時間がとても長いのだと思う。この音印象は、石造りの教会での音を聴けば容易に想像できるであろう。

それに対して木のホールは、同じピアノの音色でもエッジが取れた感じの柔らかい音がする。でも響きは同じようにとても豊か。

ヨーロッパでは、木造のホールに音響上の失敗はないと言われていて、その原因が木材が低音域をほとんど反射し、高音域を程よく吸収するため、残響時間に高音、低音でばらつきが少なく平坦になりやすいことにあったりする、と言われている。

つまりリスポジの座席での高域と低域での位相遅れがないということだから、これがピタッと揃っているのは、聴いていて心地よい音響が得られるのであろう。音響のクオリティが高いといえる。

昔からの名ホールと呼ばれる壁質は、漆喰塗りを使っているところが多い。先述のウイーン楽友協会やアムステルダム・コンセルトヘボウなんかそうである。

漆喰はどこかの周波数にピークを持つことがなく、どの周波数帯にも平坦な特性を持ち、可聴帯域外ではブロードで減衰するので、耳で聴いている分には音の細やかさというか粒子の細やかさな感じがして秀逸なのだそうである。

(自分もオーディオルーム作るときは漆喰塗りにしたい!(笑))

最近、自分が石作りのホールでその音響に大感動したのは、松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)であった。

音色の芯が濃くて太く(特にフルートの音色)、がっちり安定して聴こえて、音像もキリッと鮮明。響きが豊富なので、ピアノは混濁寸前。(笑) でも響きが豊富なホールにありがちな「響きに音像が埋没する」という現象はなかった。

音像と響きはきちんと分離して聴こえていた。


とにかくピンと張り詰めた感じの硬質な響きに囲まれている感じで、ヨーロッパの石造りの教会で響きに囲まれている感じの印象だった。


ふつうの一般人が直感的に、「これは音響がいい!」と感じるのは、石造りのホールのほうが感じやすいかもしれない。それだけ聴感上分かりやすいし、鮮明でビビッドな音響で、いい音響だと第1感的に感じやすいのではないか、と思う。  







コンサートホールの音響のしくみと評価 その1 [コンサートホール&オペラハウス]

ここ数年の経験をまとめてみようと思った。そのときそのときの経験は、日記に書いてあるのだが、それをひとつにまとめて俯瞰してみるのも大切なことではないか、と。自分なりの総決算!

もちろん独学、我流で、自分のいままでの経験値にもとづいて考えた内容で、それに専門書で学んだ知識を少し補足して形式を整えたものである。

専門家の方からすると、これが正しいかどうか不明だし、間違い、思い込みも多々あることをご容赦願いたい。

一般市民には敷居の高い建築音響の世界を、数式をいっさい使わずして、わかりやすくイメージを伝えることが自分の狙っているところでもある。

自己満足の世界かもしれないが、いままとめておきたかった!
今日から7日かけて連載する。
                                                         
                                                       
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ホールの音響のしくみは、要は、ステージ上での発音体が発する音が360度無指向に広がっていく音を、ホールの形状、容積、壁の材質、反射板などの仕掛けなどによって、いかに客席にその音の流れを持っていくか、ということころに、設計のポイントがあるのではないか、と思う。

ホールの音響のしくみについては、詳しくは、後日の日記にて。



なにをもって、ここのホールの音響がいいのか、を判断する基準。

①ステージ上の発音のエネルギー感が、しっかりと客席に届くこと。
②ホール内の暗騒音 (S/N比)
③ライブ(響き多め)またはデッド(ドライ)(響き少なめ)。
④直接音と響き(間接音)の対バランス比(量と時間遅れ)
⑤音色と響きの質感(硬質&軟質)
⑥帯域バランス
⑦再生空間のダイナミックレンジ、スケール感


まず思いつくのは、これらの項目だ。


①ステージ上の発音のエネルギー感が、しっかりと客席に届くこと。


一聴衆の立場からするともっとも大事なのは、このポイントだと思う。音響がよくないホールは、大体がステージ周辺で音がこじんまりと鳴っている感じで、それが客席まで飛んでこない。そんな印象を受けるときがこれは最悪だな、と感じるときだ。

最近の最新鋭のホールは、ステージ上の音を客席全体に回す仕組みができているので、このような症状はあまりないのだが、古い時代の設計のホールは、よくこういう症状に遭遇する。

この項目は、まず基本中の基本なので、これが成り立たないとホールの音響理論は語れない。

コンサートホールは、ホール設計者の立場からすると、もちろんホール内を均一の音響で、どこに座っても同じ音響になるように設計することは最初の志でもある。

建築の前段階である模型を作って、音響シュミレーションを何回も繰り返して慎重に慎重を重ねる。

でも出来てから、実際はどうしても、実体験を重ねると、座席によって、スィートスポット&デッドスポットなどの音響のムラというのができてしまうのは仕方ないのかもしれない。

自分が難しいと感じるのは、1階席の平土間の中段から後方にかけての座席。
古いホールだと、大体ステージ上の音が飛んでこない、という経験をすることが多い。

音は空気の疎密波なので音の空気中での伝わり方はすべての波の伝わりと同じ性質のものと考える。発音体から出た音は、一様な空気中であれば、発音体を中心として球面となって広がっていくのが基本。この球面に垂直な方向が、音の伝わる方向とよばれるもの。

そういう意味で、球面上に垂直な方向が音の進行方向なのだから、ステージから上はもちろん横にも伝わるはずなのだが、ホールって大抵ステージを端において縦長だ。


そうするとどうしても音のエネルギーの減衰で、平土間縦方向の後方は苦しいものがあるのだ。

それを補うのが間接音(反射音)であるのだが、シューボックスならまだしも、ワインヤード(今の時代ではヴィンヤードという呼称が正しいようだが、自分はワインヤードという呼び方がシックリきていい。)だと、古いホールだと反射板などの仕組みはステージ上方にはあるけれど、ホール全体に音を同一密度分布で拡散させる仕組みにはなっていないので、厳しいのだと推測する。

よく巷で言われている平土間だとステージ上の音が、頭の上を飛び越えていってしまう感覚とか。。。


自分は、このホールの音響がいいかどうか、のファースト・プライオリティは、この項目を第1優先にあげている。

これが成り立たないと、全く楽しめないし、この後の理論に進めないからである。



②ホール内の暗騒音(S/N比)

これはホール外からの遮音性能にもよるが、古いホールだと外部の騒音がそのまま内部に聴こえたりすることもある。

米カーネギーホールは、外のすぐ近くに地下鉄が数本張り巡らされていて、その電車の走る音が中まで聴こえてくるとか。

最近のホールでは、この遮音性能も重要な建築設計条件なので、ひどいことは滅多にないが、自分がホールに入ったときにまず気にするのは、このポイントでもある。


ホール内に入ったときの暗騒音をまず聴いてみる。

いいホールだと、入った瞬間、S/Nがいいというか、空気が澄んでいる感じがするのだ。デッドである無音とはまた違う意味で、ほどよいクリーンな暗騒音を感じ取れる。

古いホールだと、外部の騒音が内部に聴こえてきたり、空気が淀んでいる感じがする。

あと観客の話し声などや、開演前のステージ上での調音などの音でも、大体ライブなのかデッドなのか、そのホールの素性が、この暗騒音を聴いている時点でわかってしまう。だからこの瞬間のプロセスは、自分にとってはとても大切な本番前の儀式でもある。

あと、このホール内の空気が淀んでいなく、澄んでいるS/Nがいいというファクターは、演奏時の楽器の音が鳴りきったときに、ホール内の空気にすぅ~と消え去っていく余韻の美しさにも影響してくる。

音響のいいホールというのは、この消え去っていく余韻の美しさがじつに素晴らしいのだ。

この項目を書いていると思い出すのが、コンサートホールの響きのパラメータである残響時間。この残響時間が長いと響きが豊富でライブということになる。響きの豊富な音響のいいホールは、大体目安で、2.0秒あたりの残響時間が相場のようである。


残響時間の測定は、ホールの外部からの遮音も考慮されて深夜の真夜中に行われるのだそうだ。

基本は、ホワイトノイズのような試験シグナルをホール内にザーッと一斉に流して、それを切った時に消音するまでの時間を測定するのである。それをホールのいろいろな場所で行うのだ。

残響時間というホールの音響空間の評価方法は、音響空間における短い時間発射された音波が時間経過の中でどのように室内に伝わり、絶息していくかをテーマにしたものなのだが、自分的には、単に持続する時間の長さだけではなく、その消えゆくさま、余韻の美しさもいいホールの基準としたいのだ。

自分の音楽鑑賞において、ここはかなり大切な要素でもある。



③ライブ(響き多め)またはデッド(ドライ)(響き少なめ)。


これはホールの音響の印象では誰もが最初に思いつく項目なのではないか、と思う。
もちろんデッドよりライブなほうが、音響がいい、というイメージはやはりある。
自分ももちろんライブな音響のほうが好きである。

でもデッドであることが必須の場合もあるのだ。
それは演奏家が使うスタジオなど。

これは演奏家が、自分の奏でる音色を正確にモニターすることが1番の目的でもあるので、余計な響きで邪魔されることがご法度だからでもある。だから大抵スタジオはデッドである。

自分の奏でる音色の正確なモニターという目的から、響きのあるホールでの演奏のシチュエーションに移れば、演奏家は、自分の奏でる音の他に、どのようにその響きと付き合うか、というもうひとつの課題に向き合うことになる。

あるホールをホームグランドにしているオケはどのように演奏すれば、そのホールの響きと上手につきあえるか、よく熟知しているが、これがアウエイのホールに遠征になると短いリハーサルの中で、その響きとの上手な付き合い方をマスターしないといけない。

コンサートホールって、そのホール自体で、独特の固有のホールトーン(ホールの音&響き)を持っているからである。




 


オペラハウスの音響学 [コンサートホール&オペラハウス]

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オペラハウスの音響は、コンサートホールと比べると複雑である。実際オペラハウスでは、オーケストラと歌手がそれぞれ異なった位置に存在するため、その設計はさらに複雑なのである。

レオ・L・ベラネク著の「コンサートホールとオペラハウス(音楽と空間の響きと建築)」。

ベラネク氏のこの書籍、建築音響学問(建物の中での音の伝わり方や音環境を扱うもの)の礎となったパイオニアの時代のバイブルと言っていい書籍で、永田音響設計の永田穂さん監修。 

コンサートホールの音響の考え方って、まずステージにオケなどの発音源がいて、それが音を出すと、ステージから360度無指向に広がっていく。それをホールの形状や反射板などでいかに客席にその音の流れを持っていくか、というところがベースの考え方なのではないか、と思う。

コンサートホールは、その形状スタイルから、音の流れというのはイメージがしやすい。

問題はオペラハウスのほうである。オケはピットの中に閉じ込められた空間にいるし、もうこの時点で、観客席の方に音が流れる訳がないし、そもそもオペラというのは、演出、舞台芸術、衣装、そして歌手たちの声質、声量、そして演技などいろいろな評価パラメータがあってそれの総合芸術で評価、成り立っているもの。

だから音響だけで突出して良いということはありえず、ピットに入っているその時点で、最初からある程度の犠牲は覚悟しないといけないものだ、と思っていた。

いつしか、オペラハウスの音響の評価方法に苦手意識が出来てしまい、海外旅行に行ったとき、いつも日記を書くときに、オペラハウスはものすごい苦心していたのである。
 

この本の著者であるベネラクさんと日高氏は、まず手始めに欧州、米州、日本の23のオペラハウスを対象に、音響の物理量の測定と、主観評価調査(いわゆるアンケート)をおこなっている。このアンケートは、67名の著名なオペラ指揮者に送付され、22名から回答を得た。

その際、5段階の評価で、1(不可)、2(許容可)、3(良)、4(非常に良)、5(最高の中のひとつ)をつけてもらう訳だ。

指揮者には、なにをもってあるオペラハウスの音響が、ほかのオペラハウスに比べてよいとするか?」という質問をおこなったところ、

(1)歌手に対するホールのサポートの有無
(2)歌手が舞台上のどこにいても、その声が等しく伝わること
(3)オーケストラと歌手の良好なバランス
(4)オーケストラと歌声の明瞭性と豊かさ

に要約されるようだ。

気になる順位は、5段階評価で、大きい順(素晴らしいホール)に並べると、

1位 ブエノスアイレス コロン劇場
2位 ドレスデン・ゼンパー劇場
2位 ミラノ・スカラ座
2位 東京 新国立劇場
5位 ナポリ サンカルロ劇場
6位 ミュンヘン、バイエルン歌劇場
7位 パリ・オペラ座ガルニエ
8位 プラハ国立歌劇場
9位 ウィーン国立歌劇場
10位 ニューヨーク・メトロポリタン劇場
11位 ザルツブルク祝祭劇場

もちろんこの本の監修時期の順位なので、相当古い情報ではあるのだが、ドレスデン・ゼンパー劇場の評価が非常に高い、そして我が新国立劇場も評価がすこぶる高い!2位は同じポイントで3ホールが並んでいるのだ。特にピット(指揮者の位置)の響きについては、ナポリサンカルロ劇場とプラハ国立歌劇場、そしてニューヨーク メトロポリタン歌劇場の3ホールが客席部より良い、という評価になっている。

さらに筆者たちは、32の世界中のオペラハウスに対して1997~1998年のシーズン中のオペラ公演について統計分析している。

その結果、イタリアオペラとモーツァルトのオペラが公演数の約3/4を占めていることが判明した。ドイツオペラの公演数は全体の13%である。ワーグナーのオペラファンからすると、意外な結果だと思うが、統計を取った年代ではそうだったのであろう。

この数字は、ドイツ・バイロイト祝祭劇場のようなオペラハウスのニーズは少ないことを示している。

ワーグナーのオペラの場合、少なくとも彼の晩年の作品については、「見えない」オーケストラによる「神秘的」な音の創造が、作曲者の劇的な構想における重要な要素となっていた。この要件によってワーグナーは、沈み込んだ天蓋に覆われたピットを考案したのである。

そのピットとは、その一部が舞台の下に埋められており、残りの部分は天蓋によって、ほぼ全面が覆われているのだ!

そして天蓋にはスリットが入っており、そこからオーケストラの音が絞って放出されるのである。オーディオマニア的な観点からすると、ちょっとあり得ないと思われるかもしれないが(苦笑)、その音楽は、一種独特な不気味な響きとなる。

声とオーケストラのバランスを保持することよりも、むしろ劇的効果を強調することにあった、と言える、と思う。

一方、イタリアオペラとモーツァルトのオペラに関しては、歌手とオーケストラのいずれについても親密感と明瞭性が不可欠。

これを成立させる要求条件から、開いたオーケストラピットと短めの残響時間を持つコンパクトな馬蹄形劇場がオペラの歴史の大部分で主流になったようだ。

●オーケストラピット

ワーグナーのオペラを除けば、オーケストラピットに求められる音響的条件は、音楽がホールへ明瞭かつ一様に放射され、バランスとブレンドが良好であり、音色の歪が生じないことである。

歌手がオーケストラとうまく調和して歌うためには、透明でバランスの取れたオーケストラの音が歌手に聴こえないといけない。これが実現すれば、歌手は自分の声量を適切に調節することができる。

一方、ピット内のオーケストラ奏者は他のパートの音が聴こえる必要があり、また良好なアンサンブルを保つため、演奏者には歌手の声が聴こえる必要がある。さらに視覚的条件として、歌手と演奏者から指揮者が容易に見えることが当然のことなのである。

オーケストラ奏者と歌手にとってお互いの音が聴こえることは、お互いに見えることよりも重要なのである。

それゆえに、過剰に沈み込んだピットや覆いのついたピットよりも、上部の開いたピットのほうが好ましい。

ここまで理解してくると、オペラハウスがなぜあのようなステージとピットというお互いの形状関係にあるのかわかってくるだろう。

観客席に音を伝える、という前提条件の前に、まず歌手とオーケストラのコンビネーションの問題があり、聴覚、視覚的にお互いがコントロールしやすい関係にあるのが、あのようなスタイルだということなのだ、と思う。オペラというのは歌(芝居)と伴奏との協奏であり、歌手が歌うのとオーケストラの伴奏がぴったりとコンビネーションが合うために至った条件がこのようなスタイルの形状ということなのだろう、と自分は理解した。

歌手の声はピットに、そしてオーケストラの音を舞台に返す、ということ。

オーケストラピットは次の3つに分類できる。

①開放型ピット(ウィーン国立歌劇場など)

完全な開放型のピットの第1の問題点は、指揮者と演奏者用の譜面台が光を反射して、上階リング席の聴衆の視覚に支障をきたすことである。また第2の問題点は、80~110名の大型オーケストラを収容するために、ピット開口部の幅は、舞台の端から客席の手摺り壁まで7~9mとしないといけないことである。したがって舞台と客席の間に大きな隔たりが出来てしまう。なお、ピットの深さは、2.5m~3.5mである。

一部の指揮者は、浅いピットを好むが、これは聴衆から指揮者が容易に見えるからである。

一部の歌手は、舞台の直下30cmあたりにコントラバスの胴(の上端)があるときに、オーケストラが最もよく聴こえ、歌声の邪魔にならないと言っている。

②沈み込んだ閉鎖型ピット(バイロイト祝祭劇場)

ワーグナーがバイロイト祝祭劇場のために設計した閉鎖型ピットは、開放型ピットのアンチテーゼと言える。その一部は舞台の下に埋められており、残りの部分は天蓋によってほぼ全面が覆われている。バイロイトのピットでは、非常に大規模なオーケストラが演奏し、客席は比較的長い残響時間(1.55秒)を持つ空間である。

でも自分が思うに、このようなスタイルでは、歌手とオーケストラのコンビネーションは、お互いどのように取るのだろう?と思ってしまう。ワーグナー以外の音楽に対して、バイロイトのピットが優れている、とはとても思えない。

③沈み込んだ開放型ピット

沈み込んだ深いピットでは、通常その床面積は、ピット開口の面積の2倍以上と言われている。でも舞台下に大部分を埋めたピットで、自然な響きを作り出すことは難しいと思う。


●ボックス席

昔、オペラハウスは、人々、特に女性が宝石や衣装を披露するために設計された場所であって、男性はボックス席の奥の席に座るか、バーに身を隠していた、と言われる。ミラノ・スカラ座では、ボックス席の開口は、馬蹄形の側壁部の面積の約43%だけであるため(要は馬蹄形の側壁全面積に対して、ボックス席の穴が開いている開口部分が43%ということ。)客席空間の中央部へ十分な反射音が返り、ボックス席前方とメインフロアとの聴衆に鮮明な響きを与えている。

視覚的な目的で、一部のオペラハウスのボックス席では、舞台と反対方向に位置する側壁に鏡が取り付けられているらしい。馬蹄形の側面、特にプロセニアム(舞台ステージの外枠の額縁状の枠のこと。)周辺のボックス席では、奥の席に座る聴衆はホームテレビを見るようにオペラを楽しんだのであろう。

●バルコニー

オペラハウスでは、コンサートホールに比べて残響時間の重要性は低い。つまり、聴衆の関心は声の明瞭性に重点が置かれるため、バルコニーの被りはそれほど大きな問題ではないと言われている。

●エコー

オペラハウスでは、舞台上の歌手に弱い「エコー」が返ることが望ましい、と考えられているらしい。そのエコーのレベルがとても大事で大きすぎると聴感上とても煩わしくなる。

オペラハウスでは、ソロの歌手は自分の声で「ホールを満たしている」ように聴こえることを特に望んでおり、弦楽器の場合より適度な音の返りを必要とする。

特に舞台前方で歌う場合には、舞台両側の反射面からサポートを得ることはできない。このとき、唯一の反射音は客席部後壁によるものであり、この「エコー」が強すぎなければ有用なのである。

オペラハウスでは客席部後壁あるいはその周辺からの反射音の強さをある程度、調節できるようにするという考え方が多いようだ。

メインフロアの後壁からの反射音が強すぎる場合には、吸音材を貼与するか後壁を傾けたりして「音」の返りを調整するなどの方法が取られていることが多い。たとえばそのオペラに登場する歌手の声に応じて、こうやってエコー調整をする、という考え方はとても興味深い。

歌手にとって、煩わしいエコーとならない範囲で、望ましいフィードバックが得られるためには、どの程度の大きさの音を舞台に返すべきだろう?

東京の新国立劇場のオペラハウス設計過程で、後壁を傾けてバルコニー下面を吸音材処理する方法が取られている。このとき男女1名づつの歌手が舞台上の様々な位置で歌い、客席空間からのフィードバックが彼らにとって望ましい状態を持って吸音材の量を決定した、ということである。その具体的な数値も測定されている。

新国立劇場の大きな特徴に、プロセニアム(舞台ステージの外枠の額縁状の枠のこと。)周辺の部分に、音響反射面が設置されていて、ステージからの音を客席に向けて流しているという工夫がされている。

新国立劇場だけに限らず、オペラハウス全般に言えることであるが、バルコニー前壁と天井面はすべての客席部へ均一に反射音を返すような形状となるように工夫設計されているのである。

やっぱり、コンサートホール、オペラハウスに関わるハコものの音響の基本は、ステージ上の音を如何に客席部に返すか、というところだと強く認識できた。

オペラは総合芸術なので、ステージの視認性、そして歌手とオーケストラとのコンビネーションを考慮して、ステージとピットという関係が生み出され、その相互関係も理解できた。

本には、オペラハウスの物理的な音響データである両耳品質指数(BQI)、初期時間遅れ(ITDG)、テクスチャーなどの紹介もされている。これはまたの機会にご紹介したい、と思う。

いいオペラハウスというのは、両耳品質指数(BQI)が高い値になること、初期時間遅れ(ITDG)が短いこと、そして舞台の音源からの良好な反射音パターン(テクスチャー)が得られること、この3つが柱のようだ。

どうだろうか?

自分はこのオペラハウスの音響学のこの内容を読んだとき、コンサートホールの音響のときのような爽快感というのは正直感じられなかったが、オペラハウスが持つ特有の事情というのが良く理解できたような気がする。

オペラハウスの音響の仕組みがわかった時点で、今後自分にとってもっと重要なのは、オペラハウスの場合、どこの席で聴くのが1番よいのか、ということに関心が移る。

そのオペラハウスによって違うのだろうし......

人の声というのはピアノと同じでとても指向性が強いと理解しているので、座席によって歌手の声の聴こえ方の明瞭度がずいぶん違うと思う。

そしてピットというスタイルでありながら、オーケストラの音が明瞭に聴こえるのはどこなのか?

歌手の声とオケとのバランス良くブレンド感が優れて聴こえるところはどこなのか?

平土間か、バルコニーか、上階席か、自分にとってこちらの問題のほうが大きい気がする。


オペラというのは、舞台での全体の動きが俯瞰できるほうがいいので、正面の上階席がいいということもある。一方で既述だが、歌手の声、人間の声というのは非常に指向性があるので、声ものを聴くには、平土間前方のかぶりつきがいい。さらにはオケは通常の開放型ピットであれば、ピットの中で周りを壁で囲まれているので、音の流れが、観客席真横に行かない。音の流れ的には、どちらかというとまず上空にあがって、そこから横方向に放射、流れていく感じだろうか?


そうすると、これらを全部満たす条件の座席というのは、なかなか難しく、意外や、ステージ真横の上階席のボックス席なんか比較的その条件を多く満たしているのではないか、と思うのだ。


国内外含めて、もっとオペラハウス通いをして、その辺を情報収集して見極めていきたい、と思う。

ドレスデン・ゼンパー歌劇場
(オペラハウスとしてのアンケート評価は2位と高いです!)


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体験!松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール) [コンサートホール&オペラハウス]

たぶん室内楽ホールとして最高の音響だと思えた。

最近知ったことなのだけれど、人の耳の聴こえ方って、指紋、声紋と同じで、耳の構造、音の捉え方、聴こえ方って、個人、1人1人で全然違う特性・個性なのだそうだ。コンサートホールの音響にしても然りで、その評価基準で、個人差はあると思うので、決めつけたりはしない。

またコンサートホールの優劣や順番つけというのは、音楽界での社会的マナーとして原則やってはいけないものだと最近思っているので、そこも詳らかにはしない。

あくまで自分の鑑賞基準だけれど、この松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)は、室内楽ホールとしては、自分が過去聴いてきた室内楽ホールの中では最高水準のように思えたのだ。

首都圏の室内楽ホールで、自分がお気に入りなのは、上野学園石橋メモリアルホール、東京文化会館小ホール、そして白寿ホールが3本の指に入るホール。

石橋メモリアルホールは、とにかく聴いた第一印象がすごいライブな空間で、なんともいえない残響感が堪らないホールだった。

調べてみると、満席時で、1.5秒~2.0秒の残響時間で、中音域から低音域がやや持ち上がった特性で、豊かさと輝きのある独特の響きの空間が特徴。竣工当時、東京ではもっともライブな空間で、音楽ファンに与えたこのホールの響きのインパクトは、かなり大きかったのだそうだ。

自分がこのホールを最初に聴いた印象は、まさにそんな感じの音響空間だった。

ホールの構造が、側方反射音を意識した設計になっていて、人間の耳というのは左右90度の真横から反射音が入ってきたときが1番音の広がりを感じる構造になっているのだそうだから、この側方反射音が得られるように設計されているという理屈は、その結果として、このライブな空間が得られているという結果、納得いくところであった。

コンクリートなどの石造りのホールで、硬質なサウンドが骨子なので、ひんやりとしたクリスタルなサウンドも堪らなかった。




東京文化会館小ホールは、扇型の形状で、シューボックスが保証する側方反射音はなく、客席への反射音は、舞台正面の折れ壁状の反射板と、ステージ奥から客席後部に傾斜している天井の2ポイントから発生する。つまりステージから縦方向に、直接音と反射音が到来する音像型の音響。

残響時間も1.4秒と少なめ。でも自分は、ここでのピアノリサイタルなどのピアノのクリスタルな音、節度のある響きの中で聴きとれる楽器の細やかなサウンド。最近のホールにない落ちついたシックな空間が、とてもお気に入り。

ここも前川國雄さん設計のコンクリート打ちっぱなしの石造りのホール。硬質なクリスタルなサウンドだ。



白寿ホールは、奇抜な内装空間で、壁と天井を流線型のフォルムで構成されていて、その現代的で斬新なデザインは圧巻。

ここの印象は、とにかく、ステージからの音のエネルギー感がたまらなく大きいというか、要はステージの音が飛んでくるのだ。後方座席に座っていたのだが、まるで、前方座席に座っているのと変わらないくらい、音のエネルギー感が大きい。シューボックス型で、この流線型のフォルムというのが、音が濃い、座席による優劣がない、というところに起因するのかな?とも思える。このファクターは、コンサートを鑑賞する立場からすると堪らない魅力である。




なぜ、松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)を訪問しようと思ったのか?

それは、オーディオライフをやってきて、このホールで数々の名録音が生まれていて、それを聴いてきて育ってきているので、ぜひ訪問したいホールだったのだ。


松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)での優秀録音と言えば、この2枚が挙げられる。 

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工藤重典さんと吉野直子さんのフルートとハープのデュオ

https://goo.gl/T2QTNl


これはじつに美しい録音。聴いていて心の底から癒される1枚である。本当に美しい!ダマーズ、フォーレ、クルムフォルツ、ロッシーニなどの珠玉の名曲を、工藤さんのフルートと吉野さんのハープで奏でていく。

せっかく美しい音響空間のホールなのに、やや近接のオンマイク気味の録音なのだが、録音レベル、音圧も大きく、とてもエネルギー感溢れる録音になっている。おススメの1枚です。 

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バッハ ブランデンブルグ協奏曲(全曲)
サイトウ・キネン・チャンバーズプレイヤーズ

https://goo.gl/KzZ6GM


古楽器で奏でるブランデンブルグ協奏曲の素晴らしさ。これも近接オンマイク気味だが、この古楽器の落ち着いた感じの音色が心地よい。とてもいい録音だと思います。この盤は、自分のこの曲のバイブルになっています。



松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)は、じつは松本市内にある訳ではないのだ。松本に着いたら、さらにローカル線の大糸線で、2駅行ったところの島内駅で下車する。

下車したら、すぐその近くに佇んでいる。

美しい自然の公園の中に、佇んでいる感じで、本当に美景観、絵になるショットだ。


松本市音楽文化ホール(ザ・ハーモニーホール)

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エントランス

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メインホール(室内楽ホール)と小ホールの施設がある。
こちらは小ホール入り口

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ホワイエ

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いよいよメインホールに潜入。

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最後尾から前側方を撮ったアングル。

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ステージから最後尾を撮ったアングル。
座席には傾斜がついていて、かなり急勾配。

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ステージから、後側方を撮ったアングル。

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天井

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ステージ(今日は室内楽コンサート)

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パイプオルガン(ベッケラート社(ドイツ)製オルガン設置)

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自分の今回の座席。(前方3列目のかぶりつき。(笑))

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693席の室内楽ホール。
シューボックス型のホールである。
天井が教会のように、三角形の形である。天井の高さはかなり高い。

全体にコンクリートの石造りのホールである。

とにかくすごいライブな空間。残響時間は、2.2秒。(満席時で、2.0秒)石造りのホール独特の硬質でクリスタルなサウンドで、あまりに響きが豊富なので、真っ先に思い浮かんだのは、ヨーロッパの教会の中で演奏を聴いている感じで、自分の周りが響きで囲まれているかのような錯覚に陥る、あのイメージだった。

やっぱりシューボックスなので、ステージからの音が四方面で反射を繰り返し、音が濃くて、響きに囲まれている感じになるのだろう。音の広がりを感じさせる要因の側方反射音も、この構造なら、簡単に実現できる。

前方かぶりつきにも関わらず、ホールの響きがこれだけ豊富に聴こえたら本物。

あと天井が高いので、ホールの容積も室内楽ホールにしては大きいほうの部類に入り、広い空間で音が伝搬するときに感じるような”スケール感”みたいなものが快感だった。

音色の芯が濃くて太く(特にフルートの音色)、がっちり安定して聴こえて、音像もキリッと鮮明。響きが豊富なので、ピアノは混濁寸前。(笑)

でも響きが豊富なホールにありがちな「響きに音像が埋没する」という現象はなかったと思う。音像と響きはきちんと分離して聴こえていた。

もう言うことなし、という感じで、これだけのサウンド・パフィーマンスであれば、どんな方が聴いても、音がいい!とわかるんじゃないかなぁ。(^^)

とにかく脅威の音響だった。そしてなによりも自分好み。

この音響を聴いたとき、1番先にイメージに湧いたのが、石橋メモリアルホールの音響イメージに近いな、と思ったこと。すごいライブな空間といい、なんか自分の耳に聴こえてくるイメージが、石橋メモリアルホールの雰囲気とすごい近いと感じたのだ。

いやぁ、何回も通いたいなぁと思ったが、松本は遠すぎ。(笑)

さて、今回は、ここで室内楽コンサートを堪能した。

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佐藤俊介&小菅優&L.コッポラ トリオ
20世紀の作品群 ヴァイオリン、ピアノ、クラリネット三重奏


ミヨー、ラヴェル、ベルク、ハチャトリアン、ストラヴィンスキーの三重奏を、素晴らしい音響下のもと、思う存分楽しんだ。途中、佐藤俊介さんのMCでのレクチャー入りで、見識深い背景なども拝聴しながらのコンサートだった。

自分は、音響がいいと、本当にうっとりする感じで、演奏も文句なく満点を与えてしまうような傾向にあるのだが(笑)、でもそういう環境抜きにしても、お世辞ではなく、質の高い演奏だったと思う。

前方かぶりつきで聴く室内楽は、フレージングや演奏者の息遣い、お互いのあ・うんの連携感がリアルにわかる妙があって、これがたまらなく生々しかった。



小菅優ちゃんは久しぶり。

ずっと応援してきている演奏家で、しばらくご無沙汰だったのだが、まったく外見、演奏も変わらないイメージで安堵した。昔、小澤さん&水戸室とのメンデルスゾーンのピアノ協奏曲のBlu-rayを、もう擦り切れるほどよく繰り返して観ていたものだった。

これからも機会があれば、演奏会に足を運びたい。

早朝5時に家を出て、帰京したのが23時という強硬日帰り日程だったが、終わってみれば素晴らしい室内楽ホールとの出会い、そして室内楽コンサートを楽しめたこと、まったく疲労はなかった。


ぜひチャンスがあれば、またこのホール、体験してみたいものだ。


東京文化会館バックステージツアー [コンサートホール&オペラハウス]

1986年にサントリーホールができる以前は、首都圏のクラシック文化のメッカは東京文化会館が担っていた。

首都圏のクラシックのコンサートホールの歴史を紐解いてみると、1890年に日本で初めての演奏会場である旧東京音楽学校奏楽堂ができた。

それから、1929年に日比谷公会堂が戦前の主要演奏会場として使われ、カラヤンのベルリンフィルの初来日公演もここでおこなわれた。

そして、1954年に神奈川県立音楽堂が完成した。木造ホールで、「東洋一の響き」と言われた。

1961年に東京文化会館が完成して、初めて内外に高い評価を得ることができ、主要な演奏会場となった。サントリーホールが1986年 にできるまでの25年間,音楽演奏の中心にあり続けた。

そして1986年にサントリーホールが開館して、東京文化会館と人気を二分する形で現在も活躍している。

日本のコンサートホールの設計に関する歴史上の重要人物を上げるなら、前川國男氏と永田穂氏が挙げられる、と思う。

永田穂先生は、もうご存知、永田音響設計の礎を築き、日本の代表的なコンサートホールをほとんど全てと言っていいほど手掛けてきて、更には世界の著名なコンサートホールにもその実績は及び、日本のコンサートホール音響設計のパイオニアといっていい。

神奈川県立音楽堂と東京文化会館を設計したのが、前川國男氏。

専門が建築の彼の音の拠り所は ル・コルビジェのもとで過ごしたパリにあると考えられる。
彼の音のルーツにはフランスの音がある、といえ、彼がフランスで学び,終生建築時の技術の核とした「コンクリート打ちっぱなし」という技術は、建物の建築においてコンクリートの肌がむき出しで、東京文化会館ではホール内壁にも現れていて音響にも大きく影響している。

そんな前川國男氏の最大の建築物の遺産といえる東京文化会館のバックステージツアーに参加してきて、その舞台裏に迫ってきた。


東京文化会館

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国立西洋美術館の基本設計を行ったル・コルビュジェは、美術館のほか周辺一帯の敷地に劇場、企画展示館を含む文化センター構想を提案していた。そこに弟子である前川國男氏が、劇場として東京文化会館を設計した。

東京文化会館は、クラシックコンサート、オペラ、バレエの上演を目的とした公共音楽文化施設で、1961年4月にJR上野駅公園口にオープン。大ホール(2303席、純音楽、オペラ、バレエ)と小ホール(649席、リサイタル、室内楽用)、そしてリハーサル室、練習室、音楽資料室などがある。


今回のバックステージは、大ホールのみである。


前述のように、このホールの特徴は、建築の基本技術が,前川氏がル・コルビジェの元で学んだコンクリート打ちっぱなしの技術であること。そのためホール内でも例えば2階席や3階席の張り出し部や柱などがコンクリートの肌がむき出しになっている。


我々のオーディオ&音楽仲間内では、東京文化会館大ホールの音響はデッドというのが定説。
データによると満席時の中音残響時間は、1.5秒と確かに数字的にもデッドであることが証明されている。そういう大ホールの中でも音響がよくてお勧めなのが、最上階の5階席というのが仲間内でも通説になっている。

でも意外や意外、自分はこの最上階の5階席というのは経験がなかった。今回のバックステージツアーではじめて5階席に昇ってみた。

そうすると、こんなに見晴らしのいい光景が!

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これだけステージの奥行き含め、全体がすっきりと俯瞰できて、しかも音響が一番素晴らしい座席ということなのであれば、次回からはこの5階席を選んでみようと思った。


両サイドにつくった雲形のブナ材で作った拡散体は戦後の抽象彫刻を代表する作家の一人である向井良吉さんのよってつくられているそうだ。

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建築家が設計する幾何学的な面によってではなく芸術によって創造する造形によって成し遂げようとして設計責任者の前川氏は、彫刻家向井氏にその意図を伝えるのに「火山が爆発寸前だ。大地が亀の子状に地割れしてところどころに赤い火が燃え始めたというよいな壁はどうだろう」と持ちかけた、ところからこのようなデザインになったそうだ。左右でデザインが違うのだ。おわかりいなるだろうか・・・



ホールの形状は六角形。ホールのタイプ別としては、いわゆる扇型のコンサートホール。


この扇形状は他のホールにはないほど両壁面が開いたもので、壁面間での反射音の行き来が少なくなることを意味していて、このこともこのホールの音の響きを特徴づけている。

このホールは、シューボックス型のホールの側方からの反射音で響きを作る方式ではなく,ハース効果の理論で音響設計されている。ハース効果とは直接音に対して 50m秒までの反射音は直接音を強化するが、50m秒以上の時間遅れの反射音は分離してエコーになってしまうというもの。

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そのため、50m秒以内の主たる響きを作る反射音を舞台後方から客席深く天井に伸ばした可動式反射板(これは後で説明する)で作っているのだ。50m秒以上の反射音に関わる壁面には拡散体や吸音面を設置している。ステージの両脇につくった雲形のブナ材で作った拡散体はそのためのもの。


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このホールの音の流れというか音響の特徴って、反射音はステージ背後から客席上部の天井にかけて設置された反射板により客席に届けられる。

シューボックス型の場合、反射音は左右の平行な壁面から客席に届く。そのため人体の耳が左右にあるのでどうしても音像が揺れたり膨らんだりする。

その反面、人間の耳の左右サイドから反射音が入ると、音の広がりや響きが豊かに感じるという人の聴覚の特徴から、シューボックスって響きに囲まれていて音が濃くて、いい音響と言うような印象が強い。

しかし,東京文化会館は、どこのホ ールよりも大きく開いた両側壁面は その役目を持っていない。つまりこのホールって、前方から直接音が来ると同時に、タイミングが遅れて、反射音が、これまた前方からやってくる、というのが、大きな音の流れの特徴になっていて、側面からの反射音の影響は少ないという構造になっている。

なので両側面で反射を繰り返す響きの豊富なシューボックスにありがちな音像の響きのよる埋没・混濁という影響も少ない。演奏でも個々の楽器の音像が融合することなく明確な輪郭でしかも小さい音像で存在する、というように理論上ではなっている。

あくまで教科書的な机上の考え方であるけれど、このように側面壁の影響がなく、前方から直接音、反射音がやってくるというのは、響きで音像が広がらず、コンパクトにしかし奥行き方向に響きができるので音像が立体的に感じられる、という表現がぴったりくるのかもしれない。

実際の聴感上でも、ぶっちゃけデッドに感じるのも側面の反射音が期待できず、前方のみの反射音&響きに依存するところが多いのが原因なのでしょうね。

音像が小さく立体的というメリットとのトレードオフなのかも?です。オーディオルームでも同じですが、”音像と音場の両立は難しい”というセオリーがここでも立派に成立すると思いました。


東京文化会館のような響きが多すぎなくややドライで,個々の楽器が明快で曖昧さがなく集中できるホールでは,一つのものに向かって行くベートーヴェンのような古典派のような音楽がこのホールにあっていて、オーケストラが取り上げることが多いようだ。

シューボックス型のホールでは溢れんばかりの響きで情感の高揚感を味わうロマン派の音楽が適しているし、ワインヤード型などのアリーナ形式のホールは、ホールのコンセプトとして演奏者と聴衆の交流とか、音についてもステージと客席の一体感を目指しているので、聴き終わったあとは、みんなで良かったね、と喜びあって聞き終える音楽の演奏に合ったホールだと思う。


東京文化会館の大ホールは、クラシックコンサートとオペラの舞台が共有できるので、どうやっているのか、昔から興味があった。それが今回のバックステージツアーで解決できて、頭がすっきりした。

クラシックコンサート用のステージは、背面から天井に向かっての反射板が、もうステージ固定で取り付けられていて、この反射板がくっついたまま、ステージごと地下の奈落に格納される仕組みになっているのだ。

そしてそのクラシックコンサート用のステージの上空側にはオペラの舞台ステージがある訳。


つまり反射板ごとのクラシックコンサート用のステージを可動で、地下の奈落に格納すると、上からオペラの舞台ステージが下がってくる。逆を言えば、オペラの舞台ステージを上方に可動で上げると、地下からクラシックコンサート用の反射板が取り付けられたままのステージが、上がってくるという仕組みなのだ。ステージにデファクトで取り付けられている可動式の反射板は、天井サイドとガチャンと接合する。

1998 年に13ヶ月をかけて行った大改修があり、その中で大きな工事は、いま言及したオペラ やバレエにも十分対応できる舞台にするため,ホールの舞台反射板をス テージ部の地下の奈落に収納できる ようにしたこと。そのため奈落 の下を8m掘り下げた。


この写真は結合される側のホールの天井。

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へぇー。

さっそくバックステージツアーで舞台裏に潜入して、地下の奈落に格納されている状態のクラシックコンサート用のステージを発見。

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その後、オーケストラ・ピットに潜入。
結構深い。団員70名くらい入るそうだ。

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ステージ直下のところのエリアが納屋みたいになっていて、そこに椅子やプルト譜面だが格納されている。

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ワーグナーのような大編成になると、さすがにこのピットエリアだけでは足りないので、この納屋の部分の扉を全部取っ払って、この納屋エリアにも団員を配置するそうだ。なにせ、納屋に人員を入れ込むため、音が籠ってしまう。その際は、なるべく打楽器など、音色が籠っても大きな影響がないような楽器を優先に、この納屋スペースに入ってもらうのだそうだ。



このピットの床は可動式になっていて、高さを調節できるようになっている。
だからオペラではなく、普通のクラシックのコンサートの場合は、このピットエリアの床は、そのまま上に可動になって、ステージと同じ高さになってステージ本体と結合するわけだ。


ぐんぐん床が上がってくる。

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そしてオペラステージと同じ高さに。。。ステージ本体と結合する。

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へぇー。


ステージ上からホール背面をきちんと撮影してみる。

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ここで観客席が大半は赤いのだけれど、ところどころで、色が違うものが散乱しているのがわかるだろう。これは、なんのためにやっているかというと、客があまり入っていないとき、ステージ上の出演者たちから見たとき、客席の赤いのが目立つといやなので、色をこのようにカモフラージュすることで、空席ということをわからないようにしている工夫なのだそうだ。(笑)


つぎにオペラ用ステージ上の舞台装置などを支える仕組み。
上空からこんなフレームの集合体がぶら下がっている。
これらのフレームは電動で上下に動く訳だ。

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もちろんその中から1組のフレームだけ下がったりして操作できるようになっている。
これらがオペラの舞台装置にいろいろ奮闘する訳ですね。

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ピットの中からステージの両サイドの中の様子が垣間見え、興奮。(笑)

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オペラのステージには、もうひとつ面白い仕掛けがある。
それは写真のようなプロンプターというお仕事。

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オペラステージには、このような四角い穴が開いていて、そこに人が入って、そこからオペラ歌手たちに、オペラ劇の進行に合せて、立ち位置を指導したり(そこの場所じゃないとか。(笑))、つぎはあなたが歌う番なのだよ、とかいうゲキをこの穴から指示をするのだ。

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その声は、絶対観客席には聴こえないそうだ。だってオペラだからオケは鳴りっぱなしだし、オペラ歌手はずっと歌っている訳だから。この穴の中にカメラが設置されているのがわかるだろう。これがステージの状態を映し出している。これを見て、アドバイスのゲキを送っているということのようだ。


実際は地下から階段で上がってこの場所に座るそうだ。この四角いサイズは、もちろん世界中のオペラハウスで、違うだろうし、中に入る人のサイズも考慮されているのかもしれない。外国のオペラハウスは、巨大な外人が入れるように大き目のサイズにしているとか。。。



つぎにホワイエに移動。
じつに美しい個性的なデザイン。

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外側をガラス張りにして、エントランスロビーから大ホールホワイエまでは上野公園の中であることをイメージしたそうである。コンクリート製の柱は木と見立て、木目が写っている。また床のタイルは落ち葉。天井の照明は天の川。一面の星空が、みなさまをお迎えします。(笑)ちなみに、木目が写ったコンクリート製の柱は、国立西洋美術館でも見受けられる。



つぎに客席の最上階5階のほうにあがる。

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ここでは、両サイドにカーテンコールのときに、歌手たちにスポットライトを浴びせる照明室がここにあるのだ。実際、その照明を触わらせてくれて、ステージの歌手たちに見据えたツアー客にスポットライトを浴びせるデモもしたりした。



つぎに、ステージの両サイドのスペースを散策。
観客席から向かって、右側のサイド。

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うっ壁が、もう出演者のサインでびっしり。

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そして反対側の左側のサイド。
もうここは、出演者のサインの巣窟であった。
もうびっしり。圧巻!まさに文化遺産ですね。

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こうやってテーブルに置いたまま保管されているサインもある。カラヤンのもあった!

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つぎに細い通路を通りながら、リハーサル室に入る。

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ここで、オケのみなさんや、歌手のみなさんは本番前のリハーサルをやっているんですね。

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さらに楽屋訪問。

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大ホール個室1~6は、指揮者とソリスト&歌手たちが待機するお部屋。

こちらが指揮者の個室。ソファがあるのが特徴。シャワーも浴びれるようになっている。

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こちらがソリスト&歌手の個室。指揮者のお部屋とはちょっと違いますね。

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しっかし、楽屋を通るまでの通路の壁は、ホントにサインでびっしり!スッゴイ!

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つぎにオケメンバーなどの大人数の待機部屋。この日は特別に壁をぶち抜いて、広くしているとのことであった。

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なぜか、洗濯機を設置するところもあった。(笑)

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出演者専用のカフェや軽食時をできるようなところ。
なにかここで食べてみたい。(笑)

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そしてピアノ格納庫。スタインウエイやベーゼンドルファー、ヤマハのCFXなどが格納されていた。
もちろん大ホールだけでなく小ホールで使うピアノもここに格納されている。
普段は、扉を閉めて、厳密に湿度管理などをしているそうだ。

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そしてバックステージツアーも最後の大詰め。

最後は、みんな平土間の観客席に陣取って、オペラ用ステージとクラシックコンサート用ステージの入れ替えを視覚体験。地下から反射板が固定で装着されているコンサート用ステージがあがってきて、それに合わせて、オペラステージが上空にあがっていく様子である。

最後は、コンサート用ステージに装着されている反射板が天井とがガチャンと結合される。

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これで東京文化会館のバックステージツアーは終了。

今後の企画として、ちょっとリクエストしたかったのが小ホールのほうのバックステージツアーも入れてほしいと思ったこと。個人的な感想ではあるが、小ホールの音響は、ソリッド気味でクリスタルな響きが魅力の、じつに素晴らしくて、国内の室内楽ホールとしても指折り本数に入る秀逸なホールだと思っている。ステージ後方にある小ホールの音響反射板は、設計した彫刻家 政之氏がタバコの箱の銀紙をぐしゃっとつぶし、広げたものだとか。


あと、ここには音楽資料室が4Fにあって、音楽関係の書籍、CD等音資料、DVD等映像資料等を無料で閲覧・試聴できるようになっている。

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まさに首都圏のクラシック文化を一手に担ってきて、今現在もトップであり続ける東京文化会館。
そのすべてを拝見させていただいたようで、大変貴重な経験でした。

これからも第一線で貴重なコンテンツ&文化を送り続けるホールであって欲しいと願いつつ、今後も足繁く通い続けさせていただく決心を新たにしたのでした。







 


ウィーン楽友協会の音響の秘密。 [コンサートホール&オペラハウス]

元旦の昨日、ウィーンフィルのニュー・イヤー・コンサートを鑑賞した。
毎年お決まりの儀式で、ややマンネリというか新鮮味がないことも確か。

でも年末年始でマンションに誰もいないという電源事情の良さからなのか、じつに素晴らしいサウンドで鳴って驚いた。自分の経験から、TVの映像機器を通した音は、どうしても本場のホールで聴いたときの音と比べて、信じられないくらい劣化するというか、あの感動を蘇らせることは不可能。

でも、それを差し引いたとしても、じつに素晴らしかった。

今年はサントリーホールが開幕30周年記念ということで、華々しいコンサート、催しごとが計画されている。サントリーと提携関係にあるウィーンも必然と関係してきて、今年は結構ウィーン色が強い年なのでは、と勝手に推測している。秋にはウィーンフィルが来日してくれて、そこで小澤さんが振るという嬉しいサプライズもある。

自分も今年はウィーンに行く予定であったが、いろいろ事情があって、どうするか悩んでいるところである。やっぱり物事にはタイミングというものがあって、旬な時に行くのが鮮度があっていいですね。

日本の楽団さんやソリストの演奏家の方々も今年はウィーン楽友協会で演奏されることも多いようである。そこで、この正月休みのあり余る時間を利用して、このホールについて、いままで自分が文献を読んでいろいろ勉強してきた内容、国内SNSでオーディオ仲間と議論しつくしてきた内容を整理してまとめてみたい、と思い、それを自分からのオマージュ、そして自分としてのふんぎりという形で日記にしてみたいと思ったのである。

まさに理論武装の頭でっかち状態(笑)で、実際自分の耳で聴いたときは、またそれプラスアルファということで印象が追加されるのだろう。

(ウィーンフィルのFB公式ページから拝借しております。)

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ウィーン楽友協会(ムジークフェライン)に関しては、建築音響学(建物内で音の伝搬について取り扱う学問)の中では、長らく世界最高の音響と称されていて、それはレオ・L・ベネラクという音響学者が著した書籍にそのからくり理論が書いてある。ベネラク氏の著書は、コンサートホール&オペラハウスの音響学を学んでいく上では、いわゆるバイブルの本で、そこを志す人であるならば、誰もが知っている、そして読んでいる書籍なのだ。

ウィーン楽友協会は、いわゆるシューボックスという形状スタイルで、直方体の形状で、ステージ上の発音体が360度無指向に発する音を、ステージ左右側方の壁、そしてステージ背面の壁、そして天井、床などですぐに反射して、客席に音を返すようにできている。(初期反射音、1次反射)

さらに直方体なので、両側の壁、天井、床などがそれぞれ平行面で存在するので、反射を何回も繰り返し、響きが非常に豊かに聴こえる。(2次,3次などの高次反射)

さらにこのホールは木部むき出しの椅子もその反射に一役買っていて、まさに響きに囲まれている感覚に陥るのは、そういう構造そのものに理由がある。シューボックスの音響は音が濃い、というのはそういうところが1番の大きな要因ですね。

家庭用のオーディオルーム(専用リスニングルーム)は、やはりこのシューボックスのような直方体が基本。そういった意味で、オーディオルームの室内音響理論の原点にあるのが、このシューボックスのコンサートホールなのだと思う。

でも直方体ならではの問題点、フラッタエコー(泣き竜現象)、定在波の問題などもいろいろあって、一長一短ですね。

ウィーン楽友協会は、サイズ的に縦長(横幅たったの19m)のホールで、容積的には1680人の収容人数で狭い部類に入る。ステージ上からの直接音に対して、壁からの反射音に時間差が小さいことは、このホールの横幅の狭さが要因だと思われる。直接音に対して、反射音の時間差が大きいと(つまり分離しているというか、時間的に十分すぎるくらい音が遅れてくると)、いわゆるエコーという感じで、返って、人の耳には煩わしく聴こえてしまう。あと反射音のエネルギー自体も観客席に届くまでに減衰してしまいますね。

人間の耳に快感で聴こえるのは、直接音と反射音の時間差が小さいほうがいいのである。(でも、これも、そのそれぞれのホールで聴くときの聴感バランス次第で感じることなので一義的にそうだ!とは言えないと自分は思いますが....)

シューボックスの欠点は、観客収容人数の少なさですね。縦長の直方体ですから、大人数を収容できないし、特に昔のホールでは、後方に行くにつれて傾斜をつけていないので、後方席の人は前の人がじゃまで、ステージが見えにくいと思います。

現在のホール事情で、大ホールとしてシューボックス型というのは、もうあり得ないのではないでしょうか?(室内楽ホールとしてなら、シューボックスはありです。)

いまの時代は大人数を収容出来て、ステージと観客全員が一体感を得られるワインヤード/アリーナ型が主流だと思います。(観客と一体感を得れらるのが、ワインヤードの一番のメリットですね。)

反面、ワインヤードは反射面の壁が遠いので、反射という恩恵を得るのが難しくて(あと観客が音を吸ってしまう。)、直接音主体で、音が薄くなる傾向で、音響的にデメリットがあります。それを「反響板」という存在、そしてホールの形状の工夫で補っているのだと思います。

ベルリンフィルハーモニーやサントリーホールのような昔のワインヤードのホールは、反響板は、ステージの上空にしか存在しません。でも最近のアリーナ型のホールは(最近行ったパリのフィルハーモニー)、ホールの観客席全体の上空を円周上にぐるっと反響板が取り巻いています。なので、ステージ近辺だけでなく、観客席全体に音が行くように工夫されているのです。

日本のミューザ川崎もそうですね。

天井の中心にある反響板を、やはりドーナッツ状に同様の反響板が円周上に取り巻いている。(ステージ前方だけではなく、ホールの客席全体をカバーするように。)そしてらせん状に見えた客席下部にある白い反響板もよく見ると、その下に位置する客席に音を返すようになっているのだと思う。

ステージを取り巻いている反響板も同様。とにかく、あの広いキャンパスの中で、つねにステージ上の音、そしてそれがホール空間を漂うときに、それをいかに客席にその音を返すか、という工夫が随所にされているのが、あのホールの音響の特徴なのだと、思います。(あくまで自分の想像の域です。)

アリーナ型は、ロックのコンサートのように観客との一体感を大切にしつつ、音響面でのデメリットをこのように補っていって、素晴らしい音響を作り出す、というソリューションなのだと思います。

大昔のホール形式であるシューボックスとは、なにからなにまで考え方が違いますね。

ウィーン楽友協会に話を戻しましょう。

このホールのもうひとつの大きな特徴は、平行面の壁、および天井に施されている音の拡散を狙った凹凸。側方の壁であれば、女性像の彫刻。天井であれば、優麗壮美な天井画の数々。

これらは音の拡散、滑らかさを作り出しています。

ヨーロッパのホールの特徴は、この華麗な彫刻が一番の特徴だと思う。
大昔の建設当時に、音の拡散なんて発想があったかどうかはわからないが、このような神秘的な彫刻はヨーロッパならではで、ヨーロッパであれば、どこの国のホールでも共通に見受けることが出来る。(キリスト教などの宗教に関連するところがありますかね。)これがじつは結果として煌びやかな音響を生み出しているなんて偶然は、やはり奇跡的なミステリーというか、自分がヨーロッパのホールに憧れている一番のミステリーだったりする。

現在のホールでは、さすがにこのようなヨーロッパ調の彫刻を施すことはできないので、武骨な形デザインではあるけれど、意識的に壁面に凹凸を作っているホールを結構見受ける。こういう凹凸を意識的に作ることは、ホールの内装美デザインとのトレードオフになるので、難しい選択ですね。

そして響きの質。

これは反射させる壁質によるところが大きいと思います。
楽友協会の壁は漆喰。(家庭用オーディオルームの室内音響理論もピンキリでいろいろありますが、自分がこれっ!と思っているものは、壁の材質に漆喰を使っています。)響きが広帯域に均一で、どこかでピークを持つなどの強調される帯域がないことが特徴。高域は、その可聴帯域外の高域に向かって、ブロードに自然に減衰していく。これがオーディオ的には音の粒子が細かく、滑らかな印象を与えるのだと思います。漆喰のザラッとした風合いが,抑え気味に音の艶を調節して滑らかさを出すと言われているようです。

あと、これはレオ・L・ベネラク氏の文献に書かれていて、なるほどと思ったのは、この楽友協会のホールのみに存在すると思われるホール上部に装着されている採光窓の存在。

「低音が豊かで,ヌケ感が良く,空気の塊がホールの中を弾むようである。」

低音に関しては,上部の採光窓がヌケ感に寄与している、という見解を示している研究者は他におらず、このベネラク氏特有の理論だそうです。 低音は堅固な壁面で覆われているとこもり気味になるのだが,窓などで弱い面があるとそこから低音の圧力が逃げて行きヌケ感が改善される。 楽友協会で、低音に関し量感とヌケ感を両立させているところも大きな特徴であると言えます。

(よく防音でガチガチに固めてしまうオーディオルームより、和室などのある程度音が外に抜ける構造のほうが音が抜群にいい、と言われているのにも共通していると思います。)

あと、エージング(経年変化)も絶対に避けては通れないファクターですね。
ヴァイオリンのストラド(ストラディバリウス)などの名楽器の音色が、現在、懸命になってCG CADを使ったりしてまるっきり同じく模倣して作ったとしても、決して同じ音色を出せないのが、このエージングによるものです。ヴァイオリンの中の胴体の部分でこの音色を決めているところのパーツがあって、そこも含めて、いわゆる17〇〇年製とかいう何百年という経年を辿っている訳で、そうすることで熟するというか、発酵するというか、それが原因で信じられない恍惚な音色が出るのだと思います。

これはコンサートホールにも同じことが言えて、ホールを作っている材質などが何百年という経年変化で、熟していき、そこで発する、反射される音は、絶対近代建設で発せられる音では永遠にマネのできない異次元の世界なのだと思います。

これは楽友協会の音響の秘密の中で一番大きな要素かもしれません。

そして、これはオーディオ仲間が実際ムジークフェラインを体験した時に、言っていた感想で、大変参考になった意見があります。

「じつは1番の”きも”は体育館のようにドカドカ鳴る木の床だったりする!」

観客席の床から階段、さらにステージの上までも全部木の床。つまり床振動で全体を鳴らすようにするため、ステージ上でオケが音を出した瞬間、音圧が上がった時に、床が木でホール全体を通して連なっているのでどっと盛大に鳴り、つまり音が化けるように出来ている。(床振動って大切で固い床ではダメなんですね。オーディオルームの床造りと同じです。)
いわゆる”ハコ鳴り”というやつでハコ(ホール)全体が鳴っているように感じる。

「ホールは楽器です。」という名文句はここから来ているのだと思う。

このホール全体が楽器のようにいっせいに共鳴して鳴るように聴こえる現象はムジークフェライン特有なのかもしれません。

この意見が一番自分には的を得た、このホールの魅力をグサッと刺した感想だったように思える。


レオ・L・ベネラク氏によるウィーン楽友協会の音響の秘訣として、つぎの

・比較的小さな寸法であること。
・不規則な内部の表面。

であることを挙げている。

反面、このホールの欠点と言えるところは、

・響きが豊か過ぎて、直接音の音像が埋没気味というか、細かい楽器のテクニックや音色が、その響きの中に埋没して聴こえないこと。音符の数や楽器の数が多くなっていくと、美しいハーモニーの中に個々の音は埋没してしまう、ということ。

・そしてホールの容積が小さいので、トゥッティなどのいっせいの大音量のときに、音が飽和してしまう、ということ。


コンサートホールの音響特性、響きは、そこのレジデンスオーケストラが1番良く分かっていて、自分たちが実際弾いてみたときに、どのように響いて聴こえるか、などを自分が演奏しながら直に感じ取れる。

そういう意味演奏者が一番そのホールの響きを理解できていて(いくら理論づめで能書きを垂れてもダメな訳であって、直に耳で聴いた印象が1番ということです!)、遠征で行ったオケは、そのホールに合わせて、急いでベストな演奏方法を模索するし、レジデンスオーケストラであれば自分のホームの音響を知り尽くしているので、どう弾けば最高のオーケストラ・サウンドが醸し出されるのか、わかっていて、それに応じた演奏方法などを身に着けていると思うのである。

ここまで頭でっかちで理論武装しているより、実際行って聴けよ!(笑)ということでもありますが、昨晩のウィーンフィルのニューイヤーコンサートのTVから出てくる音があまりに素晴らしかったので、この日記を初年度1発目の日記として取り上げようと思ったのです。

放映もサラウンドで放映されているのがいいですね。(というか当然です。)

我々が左右ふたつの耳で聴いている日常の現実音はサラウンドなのです。2CHじゃない、様々な方向、距離から音が聞こえてくる。ところが、その気になって注意して耳をすまさなければサラウンドしてるという感覚がない。ものすごく自然。それが理想なのだと思います。


お持ち帰りできない「音」 [コンサートホール&オペラハウス]

1番最後に残されていたスイス・ジュネーヴ・ヴィクトリアホールでのスイス・ロマンド管弦楽団のコンサートのチケットをどうにか確保することができた。

まったく予想だにしていなかった争奪戦で、今回1番苦労した公演であった。第1希望から第4希望まで考えていた座席は全敗。もう最後は取れれば御の字という有様であった。

なぜそんなに苦労したかというと、スイス・ロマンド管のチケット販売方法に問題があり、いわゆる年間会員になって年間シートを購入するのであれば、それこそ5~6月くらいから販売しているのだが、私のように、その1公演のみの単券となると、発売日が9月1日になる。なのでいい座席は、もう年間会員によって買い占められているのである。

さらに困ったことは、この9月1日は、私の10/7の1公演だけでなく、このホール、このオケでの年間全公演の一斉発売日なのである。これはつながるはずがない。(笑)

このホールでのこのオケを聴けないとなると、今回のツアーの目的が台無しで何のために行くのかわからなくなってしまう。相当焦った。こんな争奪戦になるとは思ってもいなかった。

いままで順調であったが、やはり神様は試練を与えるものだ。(笑)

そのスイス・ジュネーヴのヴィクトリアホール。(スイス・ロマンド管のFB公式ページから拝借しております。)

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アンセルメ&スイス・ロマンド管時代のあの膨大なDECCA録音を収録したことで有名なホールである。最近では、PENTATONEと契約して、このホールで定期的に録音を残している。ヤノフスキをはじめ、客演指揮者では日本の若手のエースの山田和樹、そして将来的には東響のジョナサン・ノットが音楽監督就任など話題に事欠かない。

またこのホールは、小澤さんのスイス国際アカデミーでの会場に必ず使われる。

そういう経緯もあって、自分の訪問すべきホールとしてどうしても超えないといけない壁というか目標であった。

ジュネーブのヴィクトリア・ホールといえば アンセルメ&スイス・ロマンド管のDECCA録音でレコード・ファン、オーディオ・ファンに知られている。 1960年代のステレオ録音は、目の覚めるように鮮やかな管楽器、濡れたように艶やかな弦楽器といったいかにもハイファイ・高解像度を感じさせる録音マジックと言って過言でないものだった。

1960年代の半ばに、そういったレコード人気を背景に来日公演を行っていて、東京文化会館でその演奏に接した高城さんは、レコードで耳にするのとは全く異なって 普通のオーケストラのサウンドだったと記され(笑)、DECCAのレコーディング・マジックによって「創られたサウンド」だと解説された。

つまり「レコードは、生演奏とは音色・バランスが違う」 、「これぞマルチ・マイク録音だ」という例にされたわけだ。

いくらDECCAマジックとか言っても およそクラシックの録音ではそんなに非現実的なサウンドを創り出せるものではない。最近ではヤノフスキの指揮でスイス・ロマンド管弦楽団での録音で聴くブルックナーは、非常に優秀な録音であることは間違いないがかつてのDECCA録音のような個性的な空間バランスや音色ではないように感じる。

そのミステリーというかナゾは何なのか?自分が実際訪問してみてじかに聴いてみたいのである。

写真を見てもわかるように、このホールは、日本では見たことがないほど縦長で、あたかもうなぎの寝床のように 幅が狭く1階席後方や正面2階席からはステージがはるか遠くにある印象に思える。

じっさいこのホールで、スイスロマンド管の演奏を聴くとどう感じるのか、自分の耳で確認したいのである。

自分が無類のハコ好きというところもあるのだが、なぜわざわざ海外までコンサートホールを経験しに行くのか?

来日公演してくれて聴けるのであるから、それでいいではないか、という話もあるが、そういうものではないのである。

欧米のオーケストラは、自分のホームであるコンサートホールで、たっぷりと時間をかけてリハーサルを行い、同じステージで本番を迎える。 欧米の優れたオーケストラの秘密は そういうところにある。

今回訪問するコンセルトヘボウの場合 RCOだけが例外に贅沢なので他のオーケストラ 例えばオランダ放送フィルとかハーグ・レジデンツ管弦楽団などがコンサートを開く場合は 長くて当日1日、場合によっては半日ぐらいしかホールを使えないらしい。とにかくコンセルトヘボウは コンサートが数多く開かれる世界でも有数の忙しいホールなのである。しかし それなのにRCOは、このステージでたっぷりと練習できるのだ。

ベルリンのフィルハーモニーも同様。ベルリン・フィルハ-モニー管弦楽団は、フィルハーモニーの大ホールで定期演奏会の前には、3日間リハーサルするらしい。同じベルリンでも ベルリン・ドイツ響やベルリン放送響などは、放送局の大きなスタジオでリハーサルを重ね、本番の日にフィルハーモニーに入ってくるのだ。

つまり ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団やベルリン・フィルの場合は自らの本拠地のホールで 一からリハーサルしてサウンドをつくりあげているのだ。

その「音」は お持ち帰り出来ない。

他では聴けない。

RCOやベルリン・フィルの団員は楽器を携えて 日本にやってくることができるもののあのサウンドは、持ち出せないと思う。

「コンサートホールは、そこのレジデンスオーケストラが育てる。」とよく昔から言われているもので、そこのホールの響きをよく知っているのはそのホームのオケである訳で、彼らはどのように演奏すれば、そのホールで最高のサウンドを生み出すことができるのか経験上一番よく知っているはずなのである。

ウィーン楽友協会でのあの恐ろしいほどまでに豊かな響きの中では、ガシガシ弾くんではなく、繊細に弾くことで、そのホールの強い響きを上手に利用する演奏法をウィーンフィルは自然に習得しているのである。

逆にベルリンフィルハーモニーのように拡散型に音が拡がっていくような広大なキャンパスでは、ガシガシ弾いたほうがいいとか....

だから、そのオケの最高のサウンドを聴きたいのであれば、そのホームで絶対聴くべきなのである。これはもちろん日本の在京楽団のホームでも同じこと。


来日公演というのも、本拠地で作り上げてきたサウンドを とりあえず現地のホールというお皿に盛り付けました・・・というのが実体なのかもしれないのだ。(冷や水をかけるようで申し訳ない。理想論を言っているまでです。)

自分がわざわざ海外の本拠地ホールで、彼らを聴きたい、と拘るのはそこにある。

昨日、英グラモフォン誌で見事年間大賞を受賞したパーヴォ・ヤルヴィ氏。タイミング(音楽監督就任)といい、N響がますます熱くなるようなそんな勢いを感じる。

そこで、ますます思うのは、NHKホールの音響をなんとかしてほしい、という想い。(移転とか建て替えの話が出たときはすごく喜びました。結局やめる、とか、あれからどうなったのでしょう?)多目的で、歌謡曲のようなPAサウンドも併用しないといけないので、難しい立場はよくわかるが、オケとホールは一対ペアなもの。そこで観客(特に自分ようなタイプ)への印象が決まってしまう。

そんな昨日の出来事がきっかけで、ますますそんな想いが強くなってしまったのである。


サントリーホール バックステージツアー [コンサートホール&オペラハウス]

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サントリーホールは、1986年に開館以来ずっと首都圏のクラシックのコンサートホールの中心的存在として君臨してきた。サントリーホール以前は、東京文化会館がその役割を果たしていた、と思うが、自分が上京したのが、1987年なので、物心ついた頃からサントリーホールが常に首都圏のメッカのホールだった訳で、サントリーで育ってきた世代と言える。

とりわけ、カラヤン、佐治敬三氏、眞鍋圭子さん、とのコンビネーションで、その建設に至るまでの逸話は有名で自分もこの経緯の本はじつにたくさん読んだことがある。

最近、内装空間や音響のいい近代ホールがたくさん出来ているが、やはり都心での集客力、コンテンツの招聘力といい、やはりサントリーはいまだに常にトップに君臨しているコンサートホールだと思う。

柿落としの公演は、本来であれば、カラヤン&ベルリンフィルの予定であったが、カラヤンが体調不良で、小澤征爾さんが代行でベルリンフィルを振ったと記憶しています。シュトラウスの英雄の生涯でした。

それ以来、もう数えきれない位このホールでクラシックを聴いてきた。

そんなサントリーホールのバックステージツアーというなるものを体験してきた。
応募抽選方式で、結構競争率激しいらしいのだが、見事に当選。

普段一般人が入れない舞台裏やステージの上に乗れること、など、コンサート鑑賞のときでは得られない貴重な体験ができる。 なんと写真撮影可なのである。

当日、さっそくブルーローズ(小ホール)のほうで、まずサントリーホールの歴史などの映画を上映。

建設に至るまでのいろいろなドキュメント。建築の世界では当たり前ですが、やはり本物を作る前に、模型を作ってシュミレーションをやるところなど興味深かった。特にステージからの音がどのようにホール内に反射して反射音が形成されるかを見えるような形で、赤いレーザでやるんですね。

模型のステージの上から赤いレーザを発して、各壁でどのように反射するかを視覚的にチェックする訳です。面白いと思いました。

映画ではウィーンフィル&アバドで、このホールがいかに理想の響きが得られるかどうかの検証をしている、という映像が流れていました。若き頃のアバド。やっぱりサントリーホールはウィーンフィルと長年友好な関係にあって(眞鍋さんの影響が大きいのかな)、ずっとウィーンフィルは毎年のようにサントリーホールで来日公演をやってくれる。そんなところからも上映にはウィーンフィルが使われたのかな、と邪推したり。

2006年10月、サントリーホールがウィーン・フィルの本拠ウィーン楽友協会ホールとの提携記念プレートが1階席入口の壁面にあります。ウィーンにも同じものがあるそうです。

映画上映のあとは、いよいよバックステージツアー開始。

ホールの外の前にあるこのオブジェ。モニュメント「響」 。

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なんだろう?と思っていたが、 このオブジェの断面図の底面がじつは「響」という字になっている、ということであった。説明員の方が持っている模型でそのからくりが分かった感じである。

そしてホワイエから。

ホール内部にはシャンパンの泡や麦の穂、ぶどうのデザインなどお酒にちなんだものがいくつもあります。ホワイエの絨毯は1枚物の海外からの特注品だそうです。なんでも絨毯ですから、人が歩いたりすると毛並みの方向がまばらになって、模様ができてしまいますが、これを開演前に全部一定方向に毛並みを揃えるように、ホールの係員の方が総動員で整えているのだそうです。驚くと同時にその細やかな心遣いには頭が下がります。


まず正面上部に見える壁画も模様。「響」をテーマにしたモザイク壁画なのである。日本を代表する抽象画の巨匠、故 宇治山哲平 画伯の最晩年の作品。

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「世界一美しい響き」をテーマに設計されているので、ところどころにこの「響」というのがひとつのモチーフになっているのである。

壁画の両端や、大ホール2階廊下には、ガラス芸術家、三浦啓子氏による「律」と題されたステンドグラス。

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ホワイエ(ロビー)の天井には、照明デザイナー・石井幹子さんデザインの光のシンフォニー「響」と題されたシャンデリアがある。

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幅3,3m、奥行3,3m、高さ2,4mの30面体を覆っているのは、6630個のスワロフスキーのクリスタルガラス。このクルスタルガラスは、サントリーの蒸留されたアルコールの一滴一滴を表しているそうです。


2階のこの手すりにある模様もじつはビールの麦をイメージしたものなのです。

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そして一階客席の入り口前の記念プレート

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1番右端が、初代館長の佐治敬三さんのプレート。そして真ん中がカラヤンのプレート。このプレートには、カラヤンがこのホールではじめて指揮をした時の感想、佐治へのメッセージが刻まれているのだという。

どういうメッセージか、というと、

1988年5月、私は大いなる喜びをもって、この美しいサントリーホールで演奏いたしました。このホールは、多くの点で私の愛するベルリンフィルハーモニー・ホールを思い起こさせました。ぜひ再び、この水準の高いホールに来たいものだ、と思っております。わが友、佐治氏に心より深く感謝いたします。氏は、この建物によって日本の、そして世界の音楽生活に大きな経験をしました。

心をこめて。

1988年10月22日

       ヘルベルト・フォン・カラヤン

このメッセージの内容が、このプレートに刻まれているのである。


つぎにいよいよ舞台裏のバックステージツアー。
舞台上手(つまりステージから観て右側)の奥から入って、そのままずっとステージ背後の通路を通って、舞台左手(ステージから観て左側)に向かうというツアー。

まず舞台上手(右側)に入る。

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そこはすごいデッドな空間であった。入った瞬間すぐにわかる、という感じで、まったく響かない感じ。

言われてみればようやくわかったが、楽団員の椅子とか譜面台とか、そういえば上手(右側)の入り口から出していたよなーと思った。この上手の入り口の裏は、まさにこのように椅子、譜面台などがたくさん置かれているのだ。

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ここからの入り口の奥に見える部屋は、楽団員の控室なのかな、とも思いました。(説明はなかった。)

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この舞台上手の入り口からは、低弦演奏者などがステージへ出てくる入口なんですね。

つぎにステージ裏側の通路を歩く。

そこには、ラウンジがあって、このホールを訪れた指揮者のサインなどがびっしり貼られていた。(なぜか、そこにはさかなくんのサインやSMAP×SMAPの収録で訪れたSMAPのサインもあったりした。)

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のどを潤すためのカウンター。

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ドリンク自動販売機。

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そしてロッカーやボードには公演の記念にと,みなさんがステッカーを貼ってあるのも発見。
ここを訪れたオケなどのステッカーが記念に貼られています。

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最近で言えばNDRのステッカーが見えますね。

ここには、オケのみなさんの楽器を置くラック棚があったりします。
ヴァイオリンだとケースごと入れることができて、ふたを開けるくらいのスペースがあります。

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そして舞台下手(左側)にやってきます。


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ここが指揮者やソリストがステージに出ていく下手(左側)の出口。

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そして、そのすぐ目の前に指揮者の控室(部屋A)とソリスト(またはコンサートマスター)の控室(部屋B)がある。

(手前は部屋Aで、その奥のほうが部屋B) 

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これはこのホールのアドバイザーのカラヤンのアドバイスだそうで、緊張&気を引き締めて控室から出るときにステージまでが長いと、緊張の糸が切れるので最短の距離(11歩程度)にする、ということにならってこういう設計になっているのだそう。


中も拝見しました。

指揮者の控室(部屋A)。

床が赤い絨毯が敷き詰められているデッドな空間。
これはソリストの部屋にも言えますが、必ず自分の全体のシルエットが見れるような大鏡があります。

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ソリストの控室(部屋B)

床がつるつる板材の反射系でできていて、アップライトピアノが置いてあって、ヴァイオリンでもいえるが、この控室でチューニング、ウォーミングアップすることもあって、やはりある程度音響が考えられているんですね。

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トイレやユニットバスもあります。(もちろん指揮者の部屋も同じようなものがあります。)

次に地下に降りていきます。


このシャッターの奥には、いわゆるトラックで運ばれたオケの楽器群を運搬してホールに入れ込む玄関口のところ。

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そしてピアノ格納部屋に到着。3台くらいのピアノがありました。

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このホールで使うのは、メインでスタンウエイのハンブルク製。スタインウエイはハンブルクとニューヨークと2つの工場があるそうですが、ここはハンブルク製を使っているとのこと。

ピアノの上響板がテカテカだとP席の人や、オケ演奏者にとって照明が反射して眩しいので艶消しの仕様にしているのだそうです。

このピアノ格納庫は、湿度50%,温度23.5度を保ち,ピアノがベストな状態にキープしているとのこと。(ピアノはとてもセンスティヴですからね。)

エレベーターでステージ上に移動するようになっている。
ちょうどベルリンフィルハーモニーのように、ステージの前方のところに四角いエリアがあって、そこが地下に潜って下がっていて、ピアノを乗せて、また上がってくるという感じでしょうか。やはりここもベルリンフィルハーモニーの設計と同じですね。

地下の廊下に展示されている写真の作品があります。「サントリーホール 2006 マーティン・リープシャー」。

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なんと写真に写っている人はすべてリープシャー本人!本人がひとつづつ椅子をずらして座っていったのを、1枚1枚ぜんぶ撮影して、合成したとのこと。 この中にたった1人だけ女性が写っていて、この女性がカメラマンだそうである。ボクは見つけることができました。

サントリーホールの名物写真なのですね。


つぎにエレベータで1階に戻り、いよいよ舞台の上に上がることに!

ステージ上から客席を俯瞰する。

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客席数は2,006席(1階:858席、2階:1,148席)。なんと2階席のほうが多いんですね。

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ステージの床は北米産の木材のこだわり。
舞台床板の無数の小さな穴は、チェロやコントラバスのエンドピンの穴。奏者は自分のエンドピンの位置がわかるそうです。床板は10年に一度交換します。

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そしてパイプオルガン。
国内最大級の規模のオルガンで、オーストリアのリーガー社のオルガン。
ストップ数(音色を選ぶ規模のこと。このストップ数でオルガンの規模が推測できる。)74,パイプ数5898本。

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大ホール天井の照明は、葡萄の葉がデザインされています。ガラスはHOYA製。
天井から吊るされている音響板がいくつもあります。これはステージから天井上空に上がる音をステージ・客席に返す役割で、その演奏規模(オケなのか室内楽なのか、など)によって、その吊るす高さを調整できるようになっています。 

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ホール形状は、ワインヤード。でもいまはワインヤードと言う呼び方ではなくて、ヴィンヤードって言うんですね。知らなかった.....

座席もけっこう拘りがあります。

1階席と2階席では、椅子の形が違うのである。
2階席のほうが、背もたれが高くできている、すなわちハイバックなのだ。

1階座席

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2階座席

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2階座席をハイバックにしているのは、ステージからの直接音を、この背もたれの部分で反射させ、客の耳に反射音を届ける意味合いだそうである。

なるほど.......


ふだん自分が経験するオーディオルームでの椅子は絶対ローバック(背もたれが低い)が基本である。

ハイバックはご法度。

それは2chステレオであれば、部屋の後方壁面からの反射音が、そしてサラウンド、マルチチャンネルであれば、リアSPからの音がハイバックの椅子だと背もたれに遮られて聴こえないからである。

昔、高級な椅子でハイバックな椅子を購入したが、リアからの音が背もたれに遮られて、全然聴こえなくて、もう即座に却下NG。

1日もしないで廃品処理した。

それ以来オーディオルームの椅子はソファーなどのローバックが基本であることを身に染みた。自分のようにマルチチャンネル、サラウンドを楽しむ場合は、リアからの音を遮るのは致命傷。

そういう経験があったので、この2階席のハイバックである理由は興味深かった。
ハイバックだとホールの壁からの反射音が後ろから聴こえないような気がするのだが、直接音から背もたれで直接反射を作るという意味なのですね。面白いと思いました。


そして最後は、ステージ上で、みんなで合唱をする。

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これが予想外に感動してしまった。

この大容積の、しかも空席のホールで、素人なのに、みんなで合唱するだけで、じつに綺麗なハーモニーとして、ホール内を響き渡るのである。なんか、あまりに美しいのでスゴイ感動!


これですべて終了。
サントリーホールのバックステージを体験できて一生の思い出です。
やはり自分がクラシック人生で、ずっとサントリーホールで育ってきた人間にとっていい思い出でした。

上京して28年目でようやく叶いました。

このサントリーホールのバックステージツアー、毎月1回で、抽選方式で応募参加できます。
サントリーホールのHPから申し込めます。


ヤクルトホール [コンサートホール&オペラハウス]

アムステルダム・コンセルトヘボウでRCOの公演を聴くのはもちろんあるが、アムス滞在日にもう1日、自由日があるので、この日の夜にもぜひコンセルトヘボウで公演を聴いてみたいと思い、コンセルトヘボウのホール側のHPで確認したところ、オランダフィルの公演があったので、それを聴くことにした。

オランダフィルと言えば、PENTATONEで録音することの多かったオーケストラで、若くして亡くなったクライツベルクが指揮することの多かったオケである。彼はこのコンビで実に多くの録音をPENTATONEに残してきた。そんな絶頂期だったので、彼が突然亡くなったのは、つい最近のように覚えていて大変ショックであった。

特に拙宅オーディオオフ会で お聴かせすることの多かったPENTATONEの優秀録音 クライツベルク指揮オランダ・フィルのドヴォルザーク 交響曲第8番。

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このディスクが録音されたのは アムステルダムのヤクルト・ホールということなのだがそれがどんなホールなのか、これまで良くわからなくて、謎のホールだったのである。
 
現在いろいろ調査しているのだが、アムステルダム市内にある「バース・ファン・ベルラーヘ(Beurs van Berlage)」という施設内に「ヤクルトホール」という小ホールがあるようで、そこではないか、という確信が得られてきた。旧証券取引所で、アムステルダム中央駅から徒歩10分弱くらい。

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このホールはアムステルダムの中心部ダム広場に近く 地元ではBEURS(バース)と呼ばれる歴史的建造物・旧証券取引場の中にある。BEURS自体は 非常に大きな建物で その中のおそらくかつての宴会場だったと思われる大きな広間がコンサート・ホールに改装され、ヤクルト・ホールと名付けられているのだ。

天井が非常に高い直方体、まさにシューボックスという空間で席は1F平土間だけで バルコニー席は無く 全部で1000席ぐらい。コンセルトヘボウの伝統を受け継いでステージは高い。オランダ・フィルは、ここを本拠地としており、リハーサルと演奏会両方で使っているとのこと。

今回、いろいろとPENTATONEにこだわる旅となる関係上、ぜひ取り入れてみたいホールだったりするのだ。


暗騒音 [コンサートホール&オペラハウス]

今日、上野の東京藝術大学にある奏楽堂を経験してきた。現在修復中の日本最古ホールの奏楽堂のほうではなくて、新しく建築された最新ホールのほう。

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あらかじめの期待を裏切ることなく、素晴らしいホールであった。

公演は東京・春・音楽祭で、今年はリヒテルの生誕100周年ということもあって、リヒテルが愛したプーランクやモーツァルトを演奏しようという粋な企画で、沼尻竜典さんの呼びかけで結成されたトウキョウ・モーツァルト・プレーヤーズの若々しい演奏家たち、そして指揮に2014年に日本デビューを果たした期待のヴァハン・マルディロシアン氏、ピアノに数々の国際コンクール優勝で世界中で音楽活動をしているリュドミラ・ベルリンスカヤさんを迎えて、素晴らしい演奏がおこなわれた。

特にモーツァルトが素晴らしかった。ディヴェルティメント、ピアコン17番、交響曲第31番とじつにモーツァルトの美味しいところ品揃えのような感覚で、十分楽しませてもらった。モーツァルトを初心者向けのように語る方もいらっしゃるが、やはり万人の方に受け入れられる癒しの旋律というか、そういう質の高さ、才能は卓越したものがあると思う。何年か前にあったモーツァルト・イヤーでのモーツァルトは健康にいい、というフレーズもよく理解できるような気がする。

後半のプーランクの舞踏協奏曲(オーバード)も楽しませていただいた。
舞踏、いわゆるステージの半分を使ったミニバレエ付きの演出で、とても新鮮であった。
久しくオペラやバレエという観劇ものを観ていないなぁ、とつくづく。
このままだと観劇に対する感性がどんどん鈍ってしまうような気がする。

そして、今回のコンサートの最も重要な目的、新しい奏楽堂を体験することだった。
中に入った瞬間、目の前に広がるのは、シューボックス・タイプの木造ホールで、全体に木目調の暖かい空間、という印象。

写真の撮影したポジションでもわかるように、ホールの1番最後列の後方座席。
結構奥行きがあるホールで、ステージが遠く見える。
さらに異常に高い天井。全体的に容積が大きい感じがして、この後方座席だと、ステージからの直接音がよく届かないのではないか、という感覚的な心配をした。

でも最初のモーツァルトのデヴェルティメントの弦の合奏の厚くて美しい旋律が流れてきたとき、かなりの大音量で明晰なクリアな音が伝わってきた。コンサートホールの形状タイプにもよるが、シューボックスだと、前方席では直接音が明瞭で、大音量で聴ける分、壁や天井、床などからの反射音というのは聴こえにくい。中央から後方席のほうが、こういった反射音がよく聴こえてきて、いわゆるホール全体の音、ホールトーンというのが堪能できる。逆に響きが多くなると直接音は遠く不明瞭な感じになり、音像が奥に引っ込むような感覚になる。

なので、結構座席選びというのは、カット&トライというか、この直接音と反射音(響き)の対バランスがどのように聴こえるのかが好ましいのかが各個人の好みによるところなのだと思う。自分は6:4(直接音:間接音)くらいで、響きがちょっと遅れてくるくらいが聴いていて気持ちがいい物差しを持っている。

今回も1番最後列なので、響き過多でかなり音像不明瞭なイメージを持っていたが、実際聴いてみると、響きの中に埋没せず、ステージの直接音が綺麗によく届いていた。こんな後ろでも対響きのバランスがよかった。あと結構、この広い空間の中で、立体的に定位していた感じがした。

非常に素晴らしいホールだと思う。

大学付属のホールで、似たような素晴らしい経験をしたお勧めのホールは、洗足学園音楽大学の中にある前田ホール。ここもじつに素晴らしかった。同じくシューボックスで、ウィーン楽友協会を手本に造られた日本で最初のシューボックスタイプのホール。やはり、今回と同じように響きが非常に豊富で、自分の周りを囲まれているような感覚になり、素晴らしい音響だった。

やっぱりシューボックスは音が濃いですよね。

音響の素晴らしいホールというのは、最初に入った時の暗騒音(無演奏のときのホールの静寂の音)を聴いたときに大体見当がつく。そして観客の話し声などを聴いていると、響き具合というか、ライブなのかデッドなのか、よくわかる。

いいホールというのは、この暗騒音のS/Nがすごくイイことが条件だと思う。(つまりNの部分。)澄み切った静寂さ、というか静けさが、いいホールには必ずある。逆にイマイチのホールは、静のときの空気が淀んでいるように聴こえる。


そういった点で、この奏楽堂は、入った瞬間、澄み切った空気感がよくわかり、S/Nがいい、と感じたところである。

こういったホールの暗騒音というのは、結構録音、再生の技術の歴史にも大きな影響を及ぼしてきた。

耳障りで音楽に集中できなくなるようでは困りものだがほどほどの暗騒音や演奏ノイズは 臨場感を高めると思う。一方で 録音・再生の歴史はノイズとの闘いであるから暗騒音や演奏ノイズを嫌うエンジニアも多い。
かなり前に亡くなられた若林駿介先生は、レコード芸術誌に録音評を書かれていたが暗騒音の目立つ録音は、歴史的な音源ならともかく新しい録音ならプロの仕事にあるまじきもの・・・とことごとく退けた。

デジタル録音の初期は、そうした傾向が最も極端だったと思う。

最初期にリリースされたCDを聴くとわかるが、ほとんど無音からいきなりジャンと楽音が立ちあがる。それがS/N比との闘いの目標でもあり成果だった。しかし しばらくすると それでは行き過ぎではないかという反論が演奏家や制作サイドから起こった。

収録されている音楽にもよるが、CDを再生して現場の暗騒音が静かに部屋に溶け込むように鳴ってそれから音楽が立ちあがる方が リラックスして音楽に入っていける・・・そんな考えが提示された。

一方で録音技術サイドからも 音が空間で混じり合う響きを美味しく捉えるにはある程度マイクを離して 暗騒音が入ってもやむをえない、それより自然な響きを大切にしようといった反動も起こった。

自分は明らかにこちらの方に肩を持つ。(笑)再生した途端にホール内の暗騒音が部屋中に広がって、その後に演奏が始まるほうがその場にいるような臨場感を感じる。さきほどいいホールの条件として、S/Nがいいことを挙げたが、それに負けずマイクの感度、指向性が高くて、ホール内の空気を録音できてしまうほうがうれしかったりする。

適度な暗騒音が臨場感を高めていると思われる名録音は・・・ 吉野直子さんのハープのスイスでの録音。

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月の光、シシリエンヌ・ヴァリエ~ハープ・リサイタル 吉野直子 . 

アルバム・タイトルにもなっているトラック10の「シシリエンヌ・バレエ」がとりわけ美しい。ハープは超低音まで音域がとても広いので その美しい響きをあますところなく捉えようとすれば、それなりに暗騒音も覚悟しなければならないのだろう。


上野旧東京音楽学校の奏楽堂 [コンサートホール&オペラハウス]

東京・春・音楽祭の会場は、東京文化会館をはじめ、多岐にわたるのだが、その中で奏楽堂という名前をなにげなく目にした。思わず懐かしいというか、自分が最後に通ったのは、確か2012年の4月頃。でもその後、老築化による修復作業のため、閉館・休館中になったと記憶している。はて?いま会場になっている奏楽堂というのは???

東京藝術大学の上野キャンパスの中に、新しく新設された奏楽堂というのがあるんですよね。東京春祭の会場になっているのは、この新しい奏楽堂のほうなのだと思いました。

東京藝術大学奏楽堂は、いわゆる新しいコンサートホールとして設立されたもので、シューボックス・タイプの最新音響のホールのよう。公式HPの写真を見る限り、確かに内装空間も近代的設計という趣で、音響も良さそうな感じ。

もちろん行ったことがないので、ぜひ体験してみたいと思い、今週末の東京春祭のコンサートに行くことにしました。今年はリヒテルの生誕100周年ということもあって、リヒテルが愛したブーランク&モーツァルトの曲をやる模様。楽しみです。

さて、一方で、いわゆる旧東京音楽学校の奏楽堂と呼ばれる建物。現在、老築の修復作業のため休館中なのだが、平成30年を目安に再オープンするようである。この旧東京音楽学校というのは、いまの東京藝術大学音楽学部の前身で、その施設だった奏楽堂は、日本最古の木造の洋式音楽ホールで、いまでは国の重要文化財に指定されている。

この建物の2階にある音楽ホールは、かつての滝廉太郎がピアノを弾き、三浦環が日本人による初のオペラ公演でデビューを飾った由緒ある舞台だそうだ。

奏楽堂

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2012年の4月にはじめて、この歴史的建造物の奏楽堂に入ったのだが、そのきっかけは、ここで、フィルハーモニア・アンサンブル東京というユニットの演奏会が開かれるためだった。

指揮はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で長年ヴィオラ奏者を務めた土屋邦雄さん。

このフィルハーモニア・アンサンブル東京というのは、土屋邦雄さんを慕い、2009年にソニーフィルハーモニック主催のメサイア演奏会のために結成されたアマチュアオーケストラで、このオーケストラの命名は、土屋さんによるもので、土屋さんが主宰していて活動したアンサンブル・フィルハーモニアベルリンに由来するのだそうだ。

この奏楽堂は、なんでも1958年に来日した作曲家ヒンデミットを迎えて、当時東京藝術大学の学生だった土屋さんが、ヒンデミットの無伴奏ヴィオラ・ソナタを演奏したという縁がある。

そしてそのことが土屋さんがドイツに留学することになるきっかけになったのだ。

その由緒あるステージに50年以上経過したいま再び土屋さんが指揮者として立つ。その当時はいかなる想いだっただろうか?

そんなとてもメモリアルな演奏会に、土屋さんのお誘いを受けて、ゴローさんがヴァイオリン奏者として参加することになった。その応援のために私らが行ったのだ。

その勇姿をぜひ観るべく、そして土屋邦雄さんがどんな指揮振りをするのか、という恐いもの見たさ(笑)に、参加することにしたのである。

そんな頃に訪れた日記が、mixiのほうで2012年4月に投稿していた。
いまは閉館になっている旧奏楽堂だけに、内部の様子は貴重かもしれないと思い、ブログのほうにも移植することにした。


奏楽堂の中に入ると、本当にクラシカルな歴史的建造物という感じで趣がある。うかつに触れると壊れてしまいそうな繊細感がある。

じつは当時の奏楽堂は、当時は毎週日曜日をはじめ、火曜、木曜と9:30~16:30まで一般公開されていて中に入ることができた。(入場料300円) しかも日曜日の14:00~15:00は2階にある音楽ホールでコンサートが開催され、鑑賞することが出来るのだ。この日曜日コンサートは藝大の学生が演奏している。

この土屋さんのコンサートの前に、ぜひ一度、中に入ってみたい、コンサートを聴いてみたい、ということでじつは事前に奏楽堂の中を見学に行ってきた。

日曜日コンサートはチェンバロのコンサートだった。

そこで奏楽堂の中をご紹介。

エントランスを入ってまっすぐの、ここから奥は未公開エリア。
どうなっているかすごく興味がありますが、残念ながら見ることはできません。

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2階の音楽ホールに上がってみましょう。 

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2階のこの部屋は、休憩室というか談話室、そんなスペースになっている。

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ここが音楽ホール、座席数は338。

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藝大生がチェンバロを弾いていた。

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ホール中央部天井をヴォールト状にするなど、視覚、排気、音響上の配慮がなされている。

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ある演奏者の方の感想によれば、このホール、随所に導入された工夫によりカーネギーホールで演奏するのと似た音が出るとか。

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正面にあるパイプオルガンは、日本最古のコンサート用オルガンだそうです。

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今回の日曜コンサートで使用されたチェンバロ

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さて、本番の日の土屋さんのコンサート。
こんな感じのコンサートであった。

日時: 2012年4月22日日曜日 午後6時15分開演
場所: 上野旧東京音楽学校 奏楽堂

指揮: 土屋 邦雄 
   (元ベルリンフィルハーモニー管弦楽団 ヴィオラ奏者)
演奏: フィルハーモニア・アンサンブル東京

曲目:
1. J. S. バッハ ブランデンブルグ協奏曲 第3番 
2. J. S. バッハ ブランデンブルグ協奏曲 第5番 
(ピアノ 元井 美幸、フルート 福原 美磯、 バイオリン 村井 美代子)
3. A. ドボルザーク 弦楽セレナーデ

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御世辞にも広いとは言えないステージにびっしりと楽器が詰まっていて、中央にはピアノが鎮座。面白いことにピアノの反響板が外されていた状態だった。土屋さんはじめ楽団員達が入ってくる。男性は黒の礼服、女性はいろいろな華やかな色どりのドレスであった。

ゴローさんを探したら......いた!緊張されていると思ったのだが、笑顔も見えて、なんか余裕の感じ。(笑)

コンサートは終始、土屋さんのMCを交えながら進んでいく感じ。

最初になんと凄いサプライズ!土屋さんが、「今日はじつは小澤征爾さんがお見えになっています。」と紹介。後ろを見たら確かに小澤さんだ!まさに館内は狂喜乱舞。私もびっくりしてしまった。

当時、ちょうど癌の手術の後の静養リハビリの期間だった。
土屋さんを応援に来るという、カラヤン時代を支えた両雄の厚き友情を垣間見た感じだが、まさかここで小澤さんに会えるとは思ってもいなかった。

まぁ、アマチュアオケの演奏であるから、それなりなのだが、なんか昔聴いたクラッシックの響き。

昔のホールは音楽専用とはいかず多目的ホールばかりであったから、残響時間が少なく、なんか昭和?いやもっと旧いのだろうけど、そんな印象を受けましたね。まぁステージのところにカーテンがあれだけ沢山あると響き、残響時間はかなりスポイルされると当時は思った。

残響という飾りが無い分、奏者には厳しい環境だと思ったのは事実。なんか、この旧奏楽堂の写真を見ると、本当に懐かしい限り。

今週末行く最新鋭のホールである奏楽堂はどんな感じだろうか?


トッパンホール [コンサートホール&オペラハウス]

今年の秋にタベア・ツィンマーマン擁するアルカント・カルテットのチケットを確実にゲットするために、トッパンホールのゴールド会員になった。おかげでコンサートのスケジュールや出演する指揮者、演奏家などのインタビューなどが掲載されている定期誌が送られてくる。

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これをずっと眺めてきた印象では、じつにコンテンツが豊富というか、企画力、招聘力があると思うことだ。

今が旬な若手のソリストをはじめ、ベテランに至るまで、じつに魅力的なリサイタル、室内楽コンサートがふんだんに開かれている。

いままで自分の好きなソリストが来日して、そのコンサートのチケットを取るために、たまたまトッパンホールのチケットを取るというサイクルだったのが、必然と彼らの年間公演カレンダーを俯瞰できるような立場になると、じつに魅力的な公演がずらっと並んでいることに気付く。

これはコンサートホールのようなハコものを運営していくうえで、死活問題だと思う。いかにハコが優秀であっても、それに見合うだけのコンテンツがないと、そのハコのクオリティを活かせないと思う。

どんなに音響が素晴らしくても、内装空間が美しくても、演奏者が一流でないと、そのホールの響きというのも美しく生きてこない。

大容積のコンサートホールは、よくそこのレジデンスオーケストラが育てるもの、と言われるが、まさにその通りだと思う。
そこに根付く固有のホールの響きというのは、オーケストラが育んでいくもので、音響だけにフォーカスするのは間違いだと思う。 演奏者とのバランスで議論するべきかと。(オーディオマニアにありがちな間違いです。)

トッパンホールは、ご存じ凸版印刷会社が設立した室内楽専用ホールなのだが、その両輪がものの見事に両立している素晴らしいホールだと感じる。

その特徴に、普通のいわゆる小ホールというのは、大ホールの付属的な立ち位置で、ややもすればオマケ的な感じの施設に感じてしまうのだが、ここのホールは、室内楽専用ホール単体として、その存在が独立しているというか、主張している素晴らしさがある。

これは水戸芸術館にもいえる。この違いだけでもずいぶんと受ける印象が違うのではないか。

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(トッパンホールの公式HPの写真を拝借しております。)

音響面の自分が感じた印象では、木造のホールなので、響きが暖かくてマイルド。壁面の木材は、低音域をほとんど反射し、高音域を程よく吸収するので、残響時間に高音、低音でばらつきが少なく平坦になりやすく、聴衆の耳に届くときには、位相の揃った感じに聴こえて、すこぶる心地よい。

ヨーロッパの木造ホールに音響上の失敗がない、と言われているのもこれが原因。

このトッパンホールもそんな代表的な木のホールという印象だ。先日のアラベラ・美歩・シュタインバッハーのリサイタルで、彼女のヴァイオリンの音色を聴いたのだが、じつに美しかった。

発音するときに、ふっと空間が浮かび上がるように聴こえて、音色が高・中・低域にバランスよく厚みがあって、それに重畳する響きがじつに瑞々しい。

いいホールでオケを聴くときに、よくサウンドステージが浮かび上がる、という表現を使うのだが、その室内楽版という感じ。ヴァイオリンの音色が人間の耳に美しく聴こえるのは、その倍音成分を聴いているからだ、とよく言われるが、まさにそういう成分がきちんとこのホールの空間では伝わっているんだな、ということがわかる。

彼女のリサイタルを聴いているとき、あぁぁいい音響のホールだな、と確信した。

あと木造空間の音色の素晴らしさは、その視覚効果もあるのだと思う。木材を見ていると自然と心が和むし人間の五感に優しい感じがする。 そんな感じを抱かせる色彩空間の配色がこのホールにはある。

そして、コンテンツの素晴らしさ、これが同居している素晴らしいホールだと思う。

ロビーホワイエ
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ホールへの入り口
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敢えて言えば、やはり駅からロケーションの悪さだろうか、JR飯田橋駅などからもあまりに遠すぎる。

室内楽を聴く分には、銀座の王子ホールもよく使用するが、こちらはじつはあまり音響的に印象がよくない。ちょっとデッドな響きに感じるし、内装空間が美しくない。(笑)ちょっとホールとして格が落ちるかな、と思うが、でもコンテンツの招聘力はなかなかなものがある。武蔵野もホール&コンテンツ両方において、バランスがいいホールだと思う。

自分は室内楽が好きなので、このトッパンホールのゴールド会員になって本当によかったと思う。
もちろん継続していきたい。

パリ、サル・プレイエルの終焉 [コンサートホール&オペラハウス]

パリ管弦楽団のフランチャイズで、パリを代表するコンサートホールのサル・プレイエルが、クラシックの演奏会をおこなうホールとして終焉を迎えた。

2日前の巨匠ピアニスト、スティーブン・コバセビッチのリサイタルが、このホールでの最後のクラシックの演奏会となったようだ。(児玉麻里さんの妹で同じピアニストの児玉桃さんのFB投稿でその事実を知りました。)

来年1月からは、このホールはポップス系やシャンソンの音楽ホールになるらしく、クラシックの演奏会は、北のほうにできたパリの新しいコンサートホール、「フィルハーモニー・ドゥ・パリ」で行われることになるそうだ。

長らくパリのクラシックコンサートホールとして第1線を歩んできたサル・プレイエルだけに、なにか寂しいというか、一時代が終わったのだな、という感傷的な気持ちになる。

2年前の2012年に訪問できたのだが、できればあともう1回くらいここでクラシックコンサートを聴きたかった。

サル・プレイエルは、世界的ピアノメーカー「プレイエル社」の専門コンサートホールとして 世界的に広く知られ、またそのメイン・ショールームも併せ持つ、パリの歴史的な建物だった。ショパンをはじめとする歴史上名高い数々の大音楽家達が盛んにコンサートを開いた会場としても有名で、プレイエル・ピアノの歴史とともに歩んできたコンサートホールでもある。

そんなプレイエル・ピアノも倒産でこの世から姿を消していった。時代の流れとはいえ、一抹の寂しい気持ちを抱いていたら、さらに追い打ちをかけるようにこのニュース。

シャンゼリゼ通りの凱旋門から歩いたところの近くにある。

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2006年10月にリニューアルオープンを果たしていて、 その際にはホールの音響の改修や、エントランスやロビー等の内装を1927年の創建当時に復元し、 プレイエル・ピアノのメイン・ショールームも再び新設した、とのことだったので再出発したばかりでもあった。

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ホワイエ空間に入ると、”ベージュとレッド” にのツートンカラーによるモダンな色彩空間の表現で、この色の組み合わせは、いかにもパリならではのちょっと小洒落れた感じのイメージが素敵だった。いかにもパリの匂いがする空間。

同じパリを代表する大きなコンサートホールであるシャンゼリゼ劇場のほうが、内装や椅子などクラシックな雰囲気で、サル・プレイエルの方は、どちらかと言うとモダンなコンサートホールという印象だった。大改装をする以前と比べると、木目の色味など、全体的にすごい明るい雰囲気に変わっている。

改修前の音響は全体的にデッドな上に さらにクセのある音響だったらしいのだが、改装後に聴いた分には、中庸でクセもなく、アベレージレベルの音響空間という印象で、これくらいの歴史のあるホールでは分相応というか十分ではないか、と思う感じであった。

2年前は、ここでドゥダメル指揮のベルリンフィルの演奏会を聴いた。一生忘れれない公演だった。

私は、このパリの匂いがするこのホールがとても好きだった。なんか格別の建築美や造形美を誇るという感じではまるでないのだけれど、どことなく小洒落た佇まいが素敵で、中庸の美という感じでパリの街の景観に溶け込んでいてじつにいい。

そしてプレイエル・ピアノのショールーム。

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ポップス系やシャンソンでもいい。やはりもう1度は経験してみよう。

さて、新しくパリのクラシックのコンサートホール、パリ管弦楽団のフランチャイズになるのが「フィルハーモニー・ドゥ・パリ」。おそらく日本の和称だと「パリフィルハーモニー」になるのだろうか.....

結構サイトを探してもきちんとした情報が得られなくて、建物の外装や内装空間のリアルな写真を観たことがない。彼らのFBの公式ページにも登録しているのだが、完成予想図などのイメージ写真らしきものであれば見ることができる。

というより、まだ工事中ではないかとか、きちんと工事完成しているのか、とか疑問もわく。(笑)

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建物は最新の外観デザインで、内装空間は驚くべく流線型のデザイン。まぁ、ワインヤード型と言えば言えなくもないが、それにしても天井や壁の流線型のデザインはスゴイ。


ふつうコンサートホールというのは、ステージ上の発音体から360度無指向に発せられる音を、いかにいっせいに客席の方向に向けさせるかが設計のコツで、反響板、もしくはホールの形状そのものが、そのように反射構造になっているものなのだが、このフィルハーモニー・ドゥ・パリではそれが全く見当たらなく、音が反射するにしても、このような流線型のデザインでは、きちんと客席に音が向かうのだろうか、という感覚を抱く、この写真を見ると。

しかもアシンメトリー(非対称)だ!

こちらがアシンメトリーがはっきりと確認できる座席表。



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なにか自分が習ってきた古き音響学をまったく否定するような内装デザインで、この空間を見る限り、音響が良さそうに思えないのだが....(笑)ものごとを理詰めで考えるドイツ人などと違って、感性の生き物であるフランス人らしい設計といえば、まさにその通りという感じである。

昔ヨーロッパに赴任していたときに、技術系の会社がヨーロッパにR&Dのラボを置くなら、どこの国がいいのか、という話があって、やっぱりドイツかイギリスが1番ということになった。もちろん国としての技術力の問題が1番だが、それ以外にも国民性というのも大きな判断条件だ。

スペイン、ポルトガルだと国民性から仕事にならないだろう、昼間っからワイン、そしてたっぷりの昼休み(笑).....やはりヨーロッパの国々は各々国民性が豊かで、特色がある。日本人と合うのは、特にドイツだと自分は思う。

イギリスはやはり言葉の問題もあって、彼らネイティヴな人達は、我々ノン・ネイティヴな人の心の痛みというのがわからないではないか、と思うところがあり、コミュニケーションの問題でハンディキャップを感じる。その点、ドイツ人はお互いノン・ネイティヴ、お互いを分かり合おうという心の痛みが理解できてウマがとてもあう、と思うのだ。

その中で、フランスという国は、まさに唯我独尊で、自分のオリジナリティというのを主張する国なので、ヨーロッパで共通の規格作りなどの仕事に全く向かない。(笑)いわゆる芸術肌で、独自の路線を歩み続ける国民性なのだ。

この新しいパリのコンサートホールのデザインを観たとき、いやぁ、これぞフランスのホール、決して理詰めでは物事を決めない、彼ら独特のカラーというものを尊重する。古くからの音響理論、ホールの内装美など、まったく眼中にない、という感じだ。(笑)

2400席の大容積のホール。これはぜひ実際行ってみて、自分の耳でその音響を確認したい、その空間のありように接してみたいと思う次第。

パリ北部にあるようで、結構交通の便が難しいものがある。コンサートが終演の頃に、このパリ北部にあると都心に戻ってくる夜の交通の便があるのか、不安という情報もある。

情報によると、この新ホールはラヴィレット公園と隣接しているようだ。この公園はベルナルド・チュミが設計したもので、この近くにコンセルバトワールもあるらしい。

来年の海外音楽鑑賞旅行は、ウィーン&リンツともう行くところが決まっているのだが、その翌年は、スイス・ジュネーブのヴィクトリアホールでスイス・ロマンド管弦楽団を聴くという大きな目標があって、その足でそのままパリを訪問して、このフィルハーモニー・ドゥ・パリを訪問したいと考えている。(もう一都市寄ってくる予定だが、ナイショ♪)

あと2年先だと思うと、いてもたってもいられなく遠く感じてしまうのは、やはり自分は欲張りでせっかちな性分だからなのだろうか?(笑)


体験!よみうり大手町ホール [コンサートホール&オペラハウス]

アンチ巨人党の方にとっては、極めて居心地の悪い空間のホールだろう。堂々と読売新聞本社の中にあるホール。よみうり大手町ホールは、今年の春にオープンしたばかりの出来たてのホヤホヤのホール。いま売出し中である。

東京に来てはじめて入った大手町の読売新聞本社。東京メトロ大手町駅の改札から、そのまま直結している。

その読売新聞社のフロントは、こんな感じ。
受付のところのパネルに、”読売新聞”とあって、その下にきちんと”GIANTS”とある。(笑)
その横のところが社内へのエントランスなのだが、自動改札みたいな感じになっていて、厳重なセキュリティ・チェックが敷かれているみたいだ。
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念のため、外に出てみて確認してみると、確かに読売新聞社。
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よみうり大手町ホールは、この本社の5Fにある。
エスカレーターで昇っていくと、途中4Fが展示コーナーみたいな感じになっていて、簡素だが、写真展や読売新聞の歴史のような感じの展示がある。

そして、その中に発見してしまった!(笑)

”よみうりショップ ”

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あいにく土日、祝日は閉店のようで、中に入ることはできなかったが、ガラス越しに中を覗くと、予想はしていたが、ジャイアンツ関連グッズいっぱい!のショップ。

ジャイアンツ選手一同の集合写真、阿部慎之助タオル、バービー人形、ジャイアンツ選手のサインボール、その他もういっぱいのジャイアンツグッズ!

さすが読売新聞社!ジャイアンツファンにとっては堪らんだろうが、アンチの方にとっては、限りなく居心地の悪い空間だろう。(笑)

このホールは、そんな雰囲気のど真ん中にある。

そしてホールのある5Fへ。

ホワイエ空間

ドリンクコーナー


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クローク


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ホール入り口


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結構、新聞社ビル自体が、最新鋭の近代ビルなので、内装が都会的ですごく洗練されてカッコいい。開場時間が来て、中に通されて、ロビーまで入る。するとこんな洗練された空間が!


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このよみうり大手町ホールというのは、クラシック専門ホールではなくて、シンポジウムやコンサート、試写会などの多目的ホールなのだ。その用途に応じて、残響を調整できたりする。映像設備としてデジタル映写機を導入するなどまさに最新鋭。驚いたことに、能舞台も設けることができ、さまざまな伝統芸能の公演も可能なのだそうだ。

さっそくホール内に潜入。

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HPの写真であらかじめ知ってはいたが、改めて見ると、その壁面の拡散デザインはすごい圧迫感を感じる。ステージの開口から放射状に広がっていく空間で、天井もうなぎのぼりにぐ〜んと高くなり、かなりの高さである。ステージからの音が客席に向かってふわっと吹き出すような構造に見える。

キャパは室内楽サイズで、500席。コンテンツも室内楽やアンサンブルなどが中心になっていくのだと思う。もちろんクラシックだけでなく、いろいろな用途の多目的ホールなので、その目的に鑑みた容積なのだろう。

今日はこのホールで、ピアノのリサイタルを聴いた。

最初に抱いた音響の印象は、ピアノの音色の線が太い!角がとれているというか、かなり柔らかな質感で、暖色系のサウンドという感じであった。自分はピアノの音色に関しては、鋭利なソリッドな感覚が好きなので、ある意味自分の好みとは違うサウンドであった。

見た目だが、壁質が木材で出来ているような気がしたので、あぁぁ確かに木独特の柔らかい響きだよなぁ、と納得する感じがあった。

響きの量はかなり豊か。強打健の連打のところになると混濁寸前になるくらい。

もう少し感覚的な表現だと、少し濡れたようなグロッシーな艶感があって、自分の座席によく音がしっかり届き、距離がすごく近く感じる。ホールの音としては絢爛の音と言える、と思う。

でも不思議なことがあって、最初丸みを帯びた柔らかな質感と思っていたのが、コンサートも終盤に差し掛かると、演奏している曲のせいもあるかもしれないけれど、だんだん鋭利的でシャープな音触に感じてくるから不思議。

ホールの響きって時間が経過すると、どんどん変わってくるのかなぁ、とも感じた。全体が木でできているなら尚更だ。

さて、コンサートは、ロシアの女性ピアニスト、ピアニスト、エカテリーナ・メチェーチナのリサイタル。

エカテリーナ・メチェーチナ

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現在モスクワ音楽院ピアノ教師。モスクワの音楽一家に生まれて、ロシアで恵まれたエリート街道を進んできたピアニスト。日本ツアーも幼少の頃に10年間も続けているというから、親近感がわく。現在は、ソリストとして活動の他、モスクワ・ヴィルトゥオーゾ、ロシア国立フィルハーモニー管弦楽団、ロシア国立管弦楽団などのソリストとしても活躍しているようだ。

大柄な美人で、鍵盤さばきもかなりの強打健で、アルゲリッチを彷彿させる。
プログラムは、オール・ロシアプログラム。

パーフェクト!完璧だった。ミスタッチも全くなく、前半、ラフマニノフ特有のメランコリックな哀愁帯びた旋律をじつに優雅につま弾いてみせたと思ったら、後半の最高の山場であるムソルグスキーの「展覧会の絵」。じつに堂々たる演奏で、最後の第10曲「英雄の門、古都キエフ」では壮大なるフィナーレを怯むことなく弾き切り、聴いているこちらが思わず震えてしまうほど圧巻であった。

じつに素晴らしいピアニスト。

機会があれば、ぜひもう一度聴いてみたい、と思う逸材だ。


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エカテリーナ・メチェーチナ ピアノ・リサイタル
2014/7/19(土)14:00〜 よみうり大手町ホール

S.ラフマニノフ  幻想的小曲集op.3
         1.悲歌(エレジー)
         2.前奏曲
         3.メロディ
         4.道化役者
         5.セレナード


S.ラフマニノフ  ピアノソナタ第2番 op.36(第2版)
         第1楽章
         第2楽章
         第3楽章

 〜休憩〜

P.チャイコフスキー 「ドゥムカ〜ロシアの原風景」


M.ムソルグスキー  「展覧会の絵」
          プロムナード
          1.グノームス
          2.古城
          3.テュイルリ(遊びの後の子供たちの喧嘩)
          4.ヴィドウォ(牛車)
          5.殻を付けた雛のバレエ
          6.ザムエル・ゴールデンベルクとシュムイレ
          7.リモージュ、市場(大ニュース)
          8.カタコンブ(ローマの墓地)
          9.ニワトリの足の上に建つ小屋(バーバ・ヤガー)
          10.英雄の門、古都キエフ

ハコフェチ [コンサートホール&オペラハウス]

ハコ(ホール)フェチである自分は、クラシック音楽の楽しみ方自体、ふつうのクラシックファンとちょっと違っているが、それを変わっていると思い、委縮したことは1度もない。むしろ誇りに思うくらい。(笑)

国内のコンサートホール&オペラハウスでは我慢できなくなって、海外まで足を延ばすまでに至っている現状。

建築学には全くの素人だが、あの建物の外観、そして内装空間、あの建築美は、とても自分の感性を刺激するというか、興奮してしまう。

特に簡単には行けない海外のホールは、映像素材や雑誌などでそのお姿を眺めては、日頃ずっと憧れの念をいだきつつ、そしていざ本番で体験できるとなったとき、ホワイエでずっとドキドキしながら待っていて、いよいよ開場で、ホール内に入ったときに、目の前にその憧れの空間が迫ってくるようにぐっと広がる瞬間、逝ってしまうというか、凄い興奮状態に陥いる。(笑)

あの空間の態様が堪らなく好き。

自分は海外のホールでの公演は、開演ぎりぎりに行くのは好きではない。かならず1時間以上も前に行って誰もいない1番乗りなのだ。(笑) 憧れのホール空間にはじめて入るのに、すでに人がたくさん入っているのは耐えられないからだ。

他人(プロ)が撮ったホール空間の写真ではダメで、自分のカメラで撮影しないとダメ。
自分で撮影するが故に、行った証になるし満足感が出る。

いろいろ経験を積んでいくうちに、ホール空間を綺麗に撮るコツは、「後方座席の中央ブロックの上階席」のほうからステージを含め、客席全体を上から俯瞰するような景観で撮るのが、1番そのホールの特徴を掴めて、綺麗に撮れることが最近わかってきた。

なので、1番乗りでホールに着いたら、まず階段で後部の上階席のほうまで登って、そこからホールに入って撮影する。

ホール内の空間だけではなくて、ホワイエもすごく重要な、いわゆるホールの玄関口の顔ともいうべき空間。そこの空間デザインのありようだけでもセンスが伺える、というもの。あとクロークや、そしてトイレまで(笑)、すべてにおいて鑑賞するのが好き。

やはり病気でしょうか?(笑)

そしてオーディオマニアでもあるので、やはりそのホールの音響にはとても興味がある、というか、海外のホールまで行って、ただ写真を撮ってコンサートの感想記を書いているだけでは、オーディオをやる者として寂しいものがある。

音響工学の世界はとても奥が深く、専門的には数学の世界なので、そこまで立ち入ろうとは思わないが、素人の自分なりの物差し・基準で感じ取りたいという想いがある。オーディオルームとは、細かいところは違うけれど、ホールの音響のミニチュア版という感じがあるので、考え方に近いものがある。ホールの音響を自分の耳で感じ取って、その評価の仕方というのを素人なりに確立する訳。すべて独学我流。(でもきちんとした教育を受けたい、とも思っていますが。)

ホールトーンと言って、ホールにはそのホール特有の響きというのがある。

ホールの形状や容積、そして壁面の装飾加工や材質によって、その響きの質は決まってくる。そして座席によって、ステージからの音というのは凄い聴こえ方が違ってくる。国内のホールだと、何回も通うことで、どこの座席が1番自分の好みかわかってくるものだが、海外のホールだと何回も同じホールに通うことはできないので、そういうことは不可能。だからたまたま与えられたその座席でこのホール音響の印象をすべて述べないといけないという難しさがある。
それが私の悩み。

コンサートホール&オペラハウスだけではない。教会や大聖堂もとても魅力がある。

でも欧州なんかは、それこそ教会は無数にある訳で、それのどれでもいい、という訳ではないし、第一全部体験するなんて無理がある。

オーディオが好きなので、やはりレコード産業華やかし頃、いわゆる名盤の録音場所として使われた教会にとても興味がある。

訪問するなら、そういう教会を率先して訪問したい。2011年に訪問できたベルリン・イエス・キリスト教会は、いわゆる名盤生産基地でとてもメモリアルな貴重な経験であった。

教会は、西洋音楽が定期的に行われていた一番古い場所、そういう意味でクラシックの世界では教会で録音する、という事象が非常に多い。

なぜ教会の音響は、あんなにダイナミックレンジ(空間)が広くて、残響が長いのだろう、といつも思うのだが、自分の中できちんと理論づけて説明できない。ただ言えるのは、教会は天から音が降り注がれるように設計されているのだ。神の声が天から降りてくるように。

野外劇場、野外コンサートに関しては、やはりサウンド造りがPA主体にならざるを得ないので、ちょっと引く感じ。(^^;;)
クラシックの生音主義、原音主義に浸っていると、あの電気的な音には生理的に受け付けない、というか抵抗感がある。

(去年、東京ドームで実に久しぶりに聴いたロックコンサート:ポール・マッカートニーの公演で、そのあまりに酷いPAサウンドに辟易してしまい、さらに苦手感が.....)
でもベルリンフィルのヴァルトビューネは、ゴローさんの話だと、そういうPA臭さというのが全くなくて、フィルハーモニーで聴いているような感じで、じつにエンジニアがうまいんだよなぁ、と日記で書いていた。

コンテンツと器。普通の人はコンテンツ、つまりどのようなキャストで、どのような演目を鑑賞したいので、どこに行くという選択肢なのだろうが、自分は明らかに違う。まずどの器であるホールを経験したいのか、それを優先して決める。まずハコありき、なのだ。
(でも音楽祭は、ハコよりもコンテンツを楽しむイベントですね。)

それから会社で休みが取れそうな期間をピックアップして、それからその期間中にやっている公演を選ぶ、という1番最後に来る訳、私の場合。

15年以上も前にヨーロッパのロンドンとベルギーに赴任していたことがあるが、その頃はそういう趣向がなかったので、随分勿体ないことをしたなぁ、と本当に悔まれる。帰任した時に、もう海外旅行はもういいや、という感じでずっと封印していたのだが、2011年に再開した。15年前は、本当に赴任地からヨーロッパのいろいろな国に行ったのだが、再開した今は、普通の海外旅行ではなくて、音楽鑑賞をメインにした旅行にしようと思った。
(その主旨はいろいろなハコを経験したい、という意味です。)

どこまで続けられるか、わからないが、まずは欧州の有名どころのホールを経験して、それからいずれは米州はじめ、世界中のホールを経験できたら、という野望がある。まぁ、ひとつの夢ですね。夢の実現のため、毎日働いている、というそんな感じの人生観です。(^^;;)
ベルリンフィルハーモニー大ホール
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ベルリンフィルハーモニー室内楽ホール
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コンツェルトハウス・ベルリン大ホール
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コンツェルトハウス・ベルリン 室内楽ホール
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アムステルダム・コンセルトハボウ 大ホール
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ザルツブルク モーツァルテウム
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ルツェルン KKL コンサートホール
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