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エディタ・グルベローヴァ [オペラ歌手]

オペラに開眼したのが遅かったので、エディタ・グルベローヴァの全盛期はもちろんこと、彼女の生の声を聴いたことがなかった。

2012年のウィーン国立歌劇場の来日公演「アンナ・ボレーナ」を最後に日本での引退宣言をしてしまい、自分としては、今後は、ヨーロッパにこちらから聴きに行く、というスタンスでない限り、もう縁のない歌手になってしまったという悲しい想いだった。

自分の中で一生悔いの残る、なんとも言えない気持。

そのことが、逆にグルベローヴァに対する猛烈な憧憬の念を、さらにひき立てることになってしまい、より一層遠い夢の世界の人のように感じてしまった。

40年以上もオペラ界でトップを走り続け、現在69歳で、カール・ベーム、ヘルベルト・フォン・カラヤン、カルロス・クライバー、そしてリッカルド・ムーティなど蒼々たるメンバーとの共演を誇り、「コロラトゥーラの女王」とか、「ベルカントの女王」の異名をとり、その圧倒的な歌唱力は、まさに世界最高のソプラノ。

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彼女に対する想いと、そのディスコグラフィーはほとんど聴き込み完全制覇して、日記にしたのが2013年。そんなグルベローヴァがなんと今年、奇跡の来日公演をおこなうという。

オペラ、オペラ・アリア、そしてリート(歌曲)・リサイタルと、オペラ歌手として考えられるすべてのパターンを網羅した3公演で、さらに東京だけでなく、日本縦断。まさにグルベローヴァという歌手のすべてを日本の方々に知ってほしいという企画のようにも思えた。

このような粋な計らいをプランニングしてくれ、実現の域まで導いてくれた招聘プロモーター(今回3公演で別々のエージェンシーが担当のようだった。)には、 本当に感謝し尽せないほど感謝している。本当にありがとうございました。

彼女の声を一言で表現するなら、”クリスタル”という感じだろうか。

超高音域につけ抜けるその透明感は、まさに驚異的な美しさがある。そして彼女の代名詞である、一つの音節に対して、複数の音(装飾音)が充てられる形、高音域で自由自在にクレシェンド・デクレシェンドして、速いフレーズの中に、軽快に音階を上下するコロラトゥーラと呼ばれる歌唱法。

そしてアジリタ・・・軽快、機敏を意味するイタリア語で、オペラでは細かい音符で書かれた早いパッセージ(装飾音)のこと。

コロラトゥーラというのは、ドイツ系のテクニックで、アジリタというのは、イタリア系のテクニックという使い分けをされている考えの方もいらっしゃるようだが、自分はどちらも本質的には変わらないものと考えるし、グルベローヴァの唱法を例えるなら、この2つの表現が一番シックリくる。


オーディオで聴く限り、この人の声、このフレーズを聴くと、まさしく天からの授かりものという感がある。

なにせ、じかに聴いたことがないので、彼女に関する逸話がどんどん一人歩き、自分の中で神話化することもあった。

本番のコンサートの直前では、自分の声のコンディションを維持するために、娘との会話でも筆談を使う徹底したプロ意識。

また、声楽、つまりオペラなどの歌手の声は指向性がある。つまり音の伝わる方向の角度が狭くて、歌手の向いている方向の座席に座っている人たちと、その方向から外れている座席に座っている人では、その声の聴こえ方が違う。だからオペラものは、結構座席選びが重要。 でもグルベローヴァだけは例外で、この人の声はどこの席に座っていても同じに聴こえる、全方位の無指向性だという。まぁそれが可能なだけの歌唱力、声量な訳で、ますます彼女に対する憧憬の念が増していった。


今回の3公演は、以下のような布陣。

オペラ~ ノルマ(ベッリーニ)@Bunkamuraオーチャードホール
オペラ・アリア~オペラ名曲を歌う~2つの狂乱の場@東京オペラシティ
リート&オペラアリア・リサイタル@川口リリア・メインホール

オペラとオペラ・アリアでは、プラハ国立歌劇場を携えてのコンサートであった。

この3公演を体験して、感じたグルベローヴァの印象を統括的に述べてみる。

3公演を通じて感じたことは、彼女はすごいスロースターターだなぁ、ということ。(笑)

オペラ歌手や合唱団などの声もののコンサートは、自分が経験した中では80~90%の確率でこの定説は間違いなく当て嵌まる。ほとんどがそうだった。

最初のときは、喉が充分に暖まっていないこともあり、聴いている聴衆があれ?本当に大丈夫?と心配するほど、かなり不安定なものなのだが、中盤から終盤にかけて、エンジンがかかってきて、もう最高に感動するくらいの歌唱力で圧倒するエンディング。

特に、グルベローヴァはその傾向にあって、かなりのスロースターター。3公演ともそうだった。エンジンがかかりだすまで、結構時間がかかるという印象だった。もう御年70歳ということもあり、そういう部分もあるかな、と感じたし、なかなか全盛期のようにはいかないのだろうと思う。

オペラの「ノルマ」のときは、もう最初は絶不調の極みで、耳を疑った。
でも中盤から終盤にかけて、喉が暖まってくると、まさに感動の頂点とも思える様な熱唱ぶりで、前半と後半では別人のようだった。

生で聴いたグルベローヴァの声の印象は、いまどきの全盛期の歌手たちと比較すると、声の線が細くて、非常に繊細で、デリケートな声質だな、と感じた。圧倒的な声量でホールを圧するという馬力型のタイプの歌手ではなく、線の細い透き通るような美声で、でもツボに入った時の熱唱は、まさにホールを圧すると言ってもいいほどの聴衆への説得力があり、比較的緩急のある表現力をもった歌手だと感じた。

そして、印象的だったのは、選曲にもよるのかもしれないが、彼女の歌い方は、非常に難しい、テクのいる唱法だな、と感じたこと。なんかすごい歌うのが難しそうに感じるのだ。彼女の声が、いまいち不安定に感じるのも、その歌い方に起因していて、あの難しい声の回し方で、安定して歌うことって相当技術のいることなのでは?と思うのだ。

自分がいままでの聴いてきたオペラ歌手のソプラノは、もっと聴いていてイージーに歌っているように感じるし、安定感もある。でもグルベローヴァの歌い方は、声がデリケートな繊細な声質である上に、コロラトゥーラのような超絶技巧の唱法を伴って歌うので、本当にだれもが歌える訳ではない、普通のオペラ歌手では歌えない、コロラトゥーラ歌手だけが歌える技巧の難しい歌い方と感じてしまう。

だから余計不安定要素も目立ってしまう。。。そんな感じがするのだ。
そのような技巧的な歌い方をしながら、ツボに入った時の熱唱のアリアの部分では、まさにホールを圧するという感覚があるので、その相乗効果で聴衆はいっきに興奮のるつぼと化す。そんな感じの印象だった。彼女のコンサート全般を通して。


あと、もうひとつ驚異的だったのは、そのピッチ(音高)&キーの高さであろうか?

ピッチ&キーの高さが普通のオペラ歌手のソプラノより遥かに上域で、突き抜ける高音という感じがして、ちょっと自分がいままで聴いてきたオペラ歌手のソプラノとは異質な世界を感じた。コロラトゥーラの技法もさることながら、このような基本的な声域の高さが、ちょっと普通のオペラ歌手と違うので、いままで聴いたことのない脅威な声質だと感じた。

ちょっとこういうタイプの声質&歌い方をするソプラノ歌手は、聴いたことがないなぁという感じ。

オーディオなどのCDで聴いている分には、確かにすごい超絶技巧の歌い方であることはわかるのだけれど、でも実際生で聴いた感動は、その超絶技巧・表現力がより一層デフォルメされている、と思えるぐらい鮮烈に聴こえる。

臨場感、迫力、発声の張り出し感など、その一瞬の感動の大きさは、やはり この点、生演奏には絶対かなわないと思ったところでもあった。


もちろんいいところばかりではない。自分は全盛期の彼女を知らないので、いまとの比較はできないが、どうしても高域の部分は、苦しそうな歌い方をしていたし、歌っている最中も、つねに不安定な部分が見え隠れするのも、全盛期だったら、ばっちり安定していたんだろうな、という想いを抱きながら聴いていたことも確かだ。

でもこれが御年70歳の歌手のパフォーマンスと思えるだろうか?信じられない位の若々しさで溢れ出ていたし、引退なんてまだまだしないでほしいし、いまでも十二分の一流のパフォーマンスができていると思う。




なによりも、最高に自分が感動、印象に残ったのは、カーテンコールなどでの彼女のステージ上での立ち振る舞い。

その振る舞いそのもの、手の指先の表情に至るまで、じつに往年のスーパースターらしい貫禄があって、まさに優雅で、凛とした立居姿・立振舞いに、長年オペラ界で最前線を走ってきたスーパースターの経験の積み重ねが自分の意識なしに、そういう所作、振る舞いに自然と現れているものなのだと思えた。

自分は、この最後のカーテンコールでの彼女の凛とした立居姿に、相当参ってしまった。

グルベローヴァに抱いていた積年の想いは成就した。
感無量としか言いようがない。

繰り返しになるが、今回のこの一連の公演を実現してくれた招聘プロモーターさんたちには、 本当に感謝の限りです。

じつは、非公式ではあるけれど、来年も「ランメルモールのルチア」で日本に来てくれるようなのです。

あっちなみにですが、一番最後の昨晩の埼玉県川口でのリート・リサイタルでは、アンコールの最後に、日本語で、「さくら・さくら」を歌ってくれる大サービス!もう観客席は、大歓声で、大いに盛り上がりました。

サービス精神旺盛で感動的なコンサートを本当にありがとう!


Bunkamuraオーチャードホールでのノルマ

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この上の写真はFBの「チェコへいこう!」さんの公式ページから拝借しています。

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東京オペラシティでのオペラ名曲を歌う。(前半と後半でドレス衣装替え!)

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川口リリア・メインホールでのリート&オペラアリア・リサイタル

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2016/11/6 ベッリーニ「ノルマ」
      Bunkamuraオーチャードホール

指揮:ペーター・ヴァレントヴィチ
      管弦楽:プラハ国立歌劇場

      ノルマ:エディタ・グルベローヴァ
      アダルジーザ:ズザナ・スヴェダ
      ポリオーネ:ゾラン・トドロヴィッチ 他


2016/11/9 エディタ・グルベローヴァ オペラ名曲を歌う~2つの狂乱の場~
      東京オペラシティ

      指揮:ペーター・ヴァレントヴィチ
      管弦楽:プラハ国立歌劇場

      前半
ロッシーニ 「セビリアの理髪師」序曲
      ドニゼッティ「シャモニーのリンダ」第1幕からアリア「私の心の光」
      ドニゼッティ「ドン・バスクァーレ」序曲
      ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」第2部 第2幕から~狂乱の場~
            (「あの方の優しいお声が」~アリア「苦い涙をこぼして下さい。」)
      ドニゼッティ「ロベルト・デヴリュー」序曲
      ドニゼッティ「ロベルト・デヴリュー」第1幕から
             (公爵夫人、熱心な嘆願を~」~アリア「彼の愛が私を幸せに
                                      してくれた」)


      後半
      ベッリーニ「ノルマ」序曲
      ベッリーニ「清教徒」第2幕から~狂乱の場~
           (「ここであなたの優しいお声が」~アリア「いらっしゃい、愛しい方」)
      マスネ  「タイス」から間奏曲”タイスの瞑想曲”
      ベッリーニ「異国の女」第2幕から
           (私は祭壇に・・・慈悲深い天よ」~アリア「ああ、儀式が始まり
                                 
ます。」)

      アンコール
      プッチーニ「トゥーランドット」(「お聞きください、王子様)
      J.シュトラウス「こうもり」(「無垢な田舎娘を演じる時間」)

2016/11/12 エディタ・グルベローヴァ ソプラノ・リサイタル
      川口リリア・メインホール

      ピアノ:ペーター・ヴィレントヴィッチ

      P.チャイコフスキー (6つの歌 Op.6)より、
                第5曲「なぜ?」
                (6つの歌 Op.16)より
                第1曲「子守歌」

      リムスキー=コルサコフ (春にOp.43)より
                   第3番「清くかぐわしいあなたの立派な花環」
                   第2番「高嶺に吹く風もなく」

      A.ドボルザーク (ジプシーの歌 Op.55)より
              第1番「私の歌が鳴り響く、愛の賛歌」
              第2番「さぁ聞けよ私のトライアングル」
              第3番「森はひっそりと静まりかえり」
              第4番「わが母の教えたまいし歌」
              第5番「弦の調子を合わせて」
              第6番「大きなゆったりした軽い亜麻の服を着て」
              第7番「鷹の翼はタトラの峰高く」

      ~休憩

      G.シャルパンティエ 歌劇「ルィーズ」より
                ”その日から”
      G.プッチーニ 歌劇「つばめ」より
               ”ドレッタの夢の歌”
      E.ディラクァ 牧歌
      A.アリャビエフ 歌曲「夜鳴うぐいす」
      J.シュトラウスⅡ 歌劇「こうもり」よりアデーレのアリア
               ”侯爵様、あなたのようなお方は”

      ~アンコール
      スメタナ キス
      ピアノソロ:ラフマニノフ ピアノ協奏曲第2番&その他の曲などの即興アレンジ
      ワーグナー タンホイザーより
      さくら






ダムラウを聴く。 [オペラ歌手]

ドイツの人気ソプラノのディアナ・ダムラウ。いままで腰を据えて聴いたことがなく、調べてみれば、R.シュトラウスの歌曲集を1枚持っているくらいであった。

FBのほうでも結構一押しで、気になっていた歌手だったので、今回の新譜を機会にじっくり聴きこんでみようと思った。

ダムラウはコロラトゥーラ・ソプラノ歌手。

そんな魅力がふんだんに楽しめる今回の新譜はドニゼッティの「ランメルモールのルチア」で、まさしく「狂乱の場」でその最高潮を極めるコロラトゥーラ技法満載という感じで、彼女の声を楽しむには持って来いの素晴らしい題材だと思う。

自分はこのルチアが好きで、2~3年前にサントリーホールで開かれたナタリー・デセイ&ゲルギエフ・マリンスキーの実演にも接した。

デセイのファンでもある自分にとって、ルチアで彼女を聴ける、というのは結構感涙もので、前半のときこそ、デセイもなんか息も絶え絶えという感じで、体調悪いのかな、とも思ったが、「狂乱の場」では、まさに彼女らしい感情が高ぶると、歌のテンポがすごく速くなって、オケや合唱を振り切って歌う(笑)感じで、同時に演奏される名物楽器グラスハーモニカがついていけない感じも見えたのだが、その瞬間は鳥肌が立つほど素晴らしかった。

そんなルチアをダムラウで聴ける。

楽しみにしていた新譜であった。

『ランメルモールのルチア』全曲 ロペス=コボス&ミュンヘン・オペラ管、ダムラウ、カレヤ、他

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フランスもので有名なエラートレーベルからの作品で、ミュンヘンのガスタイク・フィルハーモニー(1度は行ってみたいホールなのです。)でのロペス=コボス&ミュンヘン・オペラ管との演奏会形式を収録したライブ録音。(録音時期は2013年)

ライブ録音なので、オケの音など薄っぺらいというか化粧っ気なしの素撮りのような音で、そんなにいい録音という感じではないが、でも歌手の声はオンマイクなのか、音量も大きく明晰で、トータルとしてはいい作品に仕上がっていると思う。

腰を据えてオーディオで聴きこんでみたダムラウの声の印象は、声帯が広いというか発声のレンジに余裕があって、聴いていて抜けるような気持ち良さがある。

デセイのほうがレンジが狭くて、強唱のときに高域の音が少し耳にキツク感じることがあるのだが、ダムラウの声はスゴイ余裕があって、うるさく感じないというか、発声の許容レンジが大きいと感じた。

声質はとても美声で線というか芯が太いしっかりした声だと思う。
歌い方もとても情感的に歌う感じで、色っぽい。

もちろん彼女のコロラトゥーラ技法は素晴らしいの一言。

確かに一押しされるだけの才能あるソプラノ歌手だと感じた。

ルックスも、鼻筋から目のあたりがとても平坦でさっぱりした爽やかさが漂っていて、彼女のオペラの実演に接してみると、とても魅力的なんだろうなぁ、と想像できる。なんか全体に漂う雰囲気が御嬢さん的なので、役柄的に似合う、似合わないというのが出てきそうな気は確かにする。

それにしても「狂乱の場」でのグラスハーモニカ。じつに透明感があって音色が美しい。デセイの公演の時に、はじめてその楽器の姿を拝見したのだが、記憶が確かでないのだが、水のようなものに手を浸しながら(?)木琴のような形のユニークな楽器で音色を奏でていた。

現代版では、この部分はフルートが使われたりしているそうなのだが、やはり原典のグラスハーモニカのほうが断然いいと思う。

なにはともあれ、ルチアファンの人、そしてダムラウを聴いてみたい人には、絶好の素晴らしい録音だと思うのでお勧めします。

心をつかむ歌声にある「1/fのゆらぎ」特性。 [オペラ歌手]

ヒトラーが、非人道的で残虐な言動を繰り返していたのにも拘らず、そのスピーチに大衆が酔ってしまう現象に、彼の声質に「1/fのゆらぎ」の特性が含まれているからだ、という。同じくキング牧師などの「I have a dream......」に代表される名演説などもそうだ。

人の心を動かす、感動させるには、ひとつのリズムというか韻を踏むというか、人の心を高揚させる、決まった法則のリズム態があるように思えてならない。

これは文章体にもあてはまる。

自分に手短な例でいくと、他人のコンサート評やディスク評を読んで、感動が伝わってくる文章は、それなりのリズムを持っている、と感じることがある。

音楽評論家などのプロの文章は、商業文としてはレベルが高いのかもしれないけれど、その表現方法などはすごく抽象的な言い回しで、実際どのような演奏だったのか、どのようなサウンドだったのかが自分にはイメージしにくい場合が多い。定型の美文体なのかもしれないけれど、それだけでは正直(頭の悪い自分には、ですが)感動は伝わらない。星の数ほどいる評論家の中で、自分が知っている人、お付き合いがある(ネット上含めて)人の文章は積極的に読もうとも思うが、そうでない場合は、まぁ自分の頭の許容範囲が狭いこともあるが、ほとんど読んでも頭に入ってこない場合が多い。(というか...その前に読もうとしない。)

自分が感動する、共感を感じる文章というのは、美化された抽象的な言い回し、表現ではなく、もう少し自分の言葉に近い表現で、読んでいく内にどんどん高揚していくリズムを備えている、そしてわかりやすい文章。その場にいたかのような臨場感が湧いてくるような......

まぁ頭の悪い(笑)自分の勝手気ままなご意見としてご容赦願いたい、と思うのだが.....

自分の日記の文章というのは、すごい長文で、人に読ませるというタイプだと自分でちゃんと認識している。(笑)もっと読みやすいように短文に、とも心がけるのだが、あれもこれも知って欲しい、という欲が多いもので。(笑)

久しぶりに ゴローさんの日記を読み返したとき、なんと短文なのだろう!まるでポエムみたい!詩の小作品の集まりのような感じで、それでいて毎日その日記を読んでインスパイヤーされていた訳だ。こんな短文でもみんなに感動を与えることができるのだ!と思った。思うに、やはりそこには高揚させるための文章のリズムというか、韻を踏む、というかそういうものがあるのではないか、と思ったことがある。

同時に、我々オーディオ仲間が、みんなゴローさんと面識があるから、知っている人の書いている文章だから共感を得やすいのではないか?と思うこともあった。

極端なことを言えば、ゴローさんを知らない世間一般人が読んで、果たして同じように感動するかどうか....
やっぱりその筆者を知っているかどうか、というのはかなり大きなファクターになると思う。自分の場合、知らない音楽評論家の文章が、まったく頭に入らないのと同様に......

話が大きく逸れて申し訳ない。

「1/fのゆらぎ」というのは、パワー(スペクトル密度)が周波数fに反比例するゆらぎのこと、らしい。(ただしfは0よりおおきい、有限な範囲。) ピンクノイズとも呼ばれ、具体例として人の心拍の間隔や、ろうそくの炎の揺れ方、電車の揺れ、小川のせせらぐ音などが例として挙げられている。(出典:ウィキペディア)

もう少し具体的なイメージ像を掴みたかったので、さらにネットでググってみると、

「規則正しい音とランダムで規則性がない音との中間の音で、人に快適感やヒーリング効果を与える。」、「規則的なゆらぎに、不規則なゆらぎが少し加わったもの」という表記があった。

まぁわかったような、いまいちのような表現だが(笑)。

概して言えば誰もが聴いても、そこに癒し、快感を感じる音声波形特性を持っているもの、ということは間違いないと思う。

この「1/fのゆらぎ」特性を持った声質の歌手というのが、日本歌手で言えば代表的なのが美空ひばりだという。他にもMISIA、宇多田ヒカル、松任谷由実、徳永英明、吉田美和などが挙げられている。

誰もが持てる才能でもなくて、持って生まれた声質、ある特定の歌手のみに見られるこの才能。

このネットの情報、どこまで精密に声紋解析された結果なのか信用できるのか、わからないが、これらの歌手名を見るとあながちデタラメでもなく、納得がいく感じがする。

ネット情報では日本の歌手しか情報がないのだが(それしか声紋解析できていない?)、それでは外国人歌手ではどうなのだろう?とすぐに思った。音楽のジャンルはいろいろあるので、手っ取り早く自分に1番身近なオペラ歌手だけに絞ってみた。個人的な嗜好もあるが、1/fゆらぎは交感神経の興奮を抑え、心身共にリラックスした状態を作る、とあるから、感覚的に考えると、やはり低音部よりも高音部だろう。

男性ならテノール、女性ならソプラノそしてメゾ。
自分が知っているだけでも今が旬のじつにたくさんの候補が頭に浮かぶ。

それぞれの歌手の声質(声紋)というのは、指紋と同じで、その人固有に決まっている特質。自分がファンであるオペラ歌手はいろいろいるが、それぞれ特徴的で個性的で、その声質のどのようなところが自分の好みなのか、いろいろ理由がある。

その中で今回の日記のテーマに沿って、自分が敢えて1人強引に選ぶなら、アンネ・ゾフィー・オッターかと思う。

もうご存知スウェーデンの歌姫で、一昔前の世代の人かもしれないが、ベテラン中のベテラン。オペラに限らず、リートを始め、そしてクラシックに限らずジャズ、シャンソンなど、いろいろなジャンルをこなすそのレパートリーの広さは他を卓越している才能の豊かさと言える。彼女の世代で最も優れた声楽家の一人として認められていて、世界の一流指揮者、オーケストラ、歌劇場から常に、求められ続けられている。最近は、どちらかというとオペラ(は引退?)よりもリサイタル系中心の活動のようにも思えるが、アルバムのほうもきちんと定期的にリリースしてくれるからファンとしても有難い。

自分はオーディオマニアなので、ただ劇場でオペラの実演を観る、というだけでは、満足できない。きちんと自宅のオーディオでその声を楽しめるディスクを出してくれる歌手、というのが必須条件になる。

そうするとオペラ全曲というより、歌曲集などを出してくれるのが有難くて、そちらで楽しむほうが好きだ。じつはオペラ鑑賞も、じつに体力が必要なので、どちらかというとリサイタ ルのほうが好き。オペラだとその好きな歌手が仮装して役に成り切る訳で、それよりもドレスなどの現代衣装でその歌手の素の姿で歌うリサイタルのほうが、自分に身近に感じて、気楽に声を楽しめるから好きなのだ。

オッターは、1985年から2009年までDGの専属アーティストとしてじつに膨大な録音を残している。その後2010年からパリのナイーブというレーベルと契約して現在に至る。

このDG時代の録音は、大分昔に結構な枚数を大量に購入したことがあって、それをしらみつぶしに聴いているのだが、なぜか大概が録音レベルが小さくて、なんかパッとしないものが多いのだが、結構時代を経て声質の変化というか、やはり最近などの晩年期のほうが声に柔らかさが出て、非常に耳にやさしいというか、経年による安定感というのを強く感じる。

彼女の声がいい、と思うのは、オペラでのアリアでの歌い上げるような強唱ではなくて、歌曲集で聴けるような、ちょっと力の抜けた感じの歌い方が非常に格好よいというか、ムーディーで、雰囲気があってとても素敵なのだ。

ハスキーではないと思うが、メゾの周波数帯域にあった声音域が、妙に聴いていて心地よいというか、まさに自分にとっての1/fのゆらぎによる心地よさを感じるのだ。

この日記テーマのときに真っ先に思い浮かんだ歌手だった。
DG、そしてナイーブと歩んできている彼女であるが、1回だけ自分の母国であるスウェーデンのBISからスウェーデン歌曲集を出したことがあった。 


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夏の日~スウェーデン・ロマン派歌曲集 オッター、フォシュベリ

皮肉なことに、このアルバムが彼女のライブラリーの中で、1番録音が素晴らしいと思っている。じつに素晴らしい優秀録音で、マルチチャンネル録音なのだが、質感が柔らかくて情報量が多いのがよくわかる録音で、SPから部屋中にふわっと広がるさまが素晴らしくて、オッターの声がみずみずしいというか潤い感溢れる感じで実に秀逸なのである。

彼女のライブラリーからこの1枚、というのであれば、絶対このアルバムを推薦します。絶対後悔しません!

最新のアルバムでは、パリのナイーブからフランス歌曲集を出している。 


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『優しきフランス~歌曲とシャンソン集』 オッター、フォシュベリ(2CD)

彼女のフランス語もまんざらでもない。素晴らしいと思う。
録音自体は、狭いスタジオでのセッション録音なのか、響きが少なく、空間をあまり感じないデッドな録音に聴こえるのだが、選曲の良さ、そして彼女の歌が妙に雰囲気があってとても素敵。

2枚組なのだが、特にDisc2のシャンソン特集がじつに秀逸。彼女の脱力した歌い方が格好良くて、フランスもの特有のちょっとアンニュイな雰囲気がよく出ていて、じつにこれぞシャンソン!という趣で素敵。このDisc2はお勧めです!

結局自分の好みの歌手のディスク紹介という展開になってしまったが(笑)、

「1/fのゆらぎ」、というのが万人がやすらぎを感じる、というのが前提であれば、オッターの声がみんなイイと思うかどうかは、?なのかもしれないが、でも彼女の声が嫌い、という人ははたしてそんなにいるだろうか?

外国人歌手の声紋解析で、この1/fのゆらぎの特質を持った外国人歌手をぜひ知りたいと思ってしまった。
ぜひ公式に解析してもらえないだろうか?(笑)


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